ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その4)
軽針圧のカートリッジ、つまりハイコンプライアンスのカートリッジの登場は、
ダイレクトドライヴの誕生と関係しているのでは? と書いてきたが、
もうひとつスピーカーシステムの能率とも関係していた、と考えている。
私がオーディオの世界に入ってきたときには、
すでにダイレクトドライヴが当り前であった。
ベルトドライヴ、アイドラードライヴのアナログプレーヤーのもつ音のよさが、
見直されるようになる少し前であった。
カートリッジもオルトフォンのSPUやEMTのカートリッジもあったけれど、
多くは軽針圧化のMM型でもあった。
スピーカーシステムもそうである。
フロアー型スピーカーシステムも当時はそれほと多くはなかった。
ブックシェルフ型全盛時代でもあったし、
さらに小型のスピーカーシステムが登場しはじめてもいた。
さらにいわれていたのは、スピーカーの能率の低下である。
といっても、現在のスピーカーシステムからすれば、
能率が低下していたといっても、十分高いといえるのだが。
ARがアコースティックサスペンション方式によって、
小型のスピーカーでも低音域のレスポンスをのばしたこと、
それによってスピーカーの能率が大きく低下したこと。
このことがカートリッジのコンプライアンスとも関係しているように感じているし、
さらに軽針圧化を後押ししたのがダイレクトドライヴの登場でもあった──、
そう考えているのだが、その時代のオーディオの変化を、私は経験しているわけではない。
上記したように、すでに変化していた時代でもあり、
再び変化しようという兆しの感じられる時代でもあった。