Archive for category オリジナル

Date: 8月 29th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その27)

ダグラス・サックスへのインタヴュアーは、こんな質問もしている。
「ある人が莫大な資金をあなたに提供してレコード再生システムを改良するとしたら、どうやるか」と。

彼の答は、「レコード面に接触しないで再生する方法」である。
光学的に音溝をトレースして情報を読みとり電気信号とするもの。
この時点(1980年)では夢物語に近かった、この光学式プレーヤーも、いまや実現されている。
しかも登場したころ100万円をこえる、かなり高額だったものが価格的にも抑えられた機種も登場している。

ダグラス・サックスは、エルプの光学式プレーヤーをどう評価しているのか、知りたいところである。

なぜ彼は光学式だと答えているのか。
その理由については語られていないけれど、
従来の、ダイアモンドの針先で音溝を直接トレースして、
その振動を電気信号に変換して増幅・イコライジングという方法では、
再生機器の能力はカッティングレースの能力をこえることができないからだ。

だから彼は「ベターの段階でとどめておくべき」だと発言している。

機械式に音溝を読みとっていくかぎり、振動の問題から解放されることはない。
振動があれば共振の問題がある。
特にトーンアームの低域共振の問題は、トレース能力に大きく関係してくる。

もしカッティングでの限界である8Hzという低い周波数の音が大振幅でカッティングしてあったら、
どんなカートリッジ、どんなトーンアームをもってきても、まず完全なトレースは不可能であろう。

共振の問題からのがれるには光学式ということになる。
光学式はたしかに多くの技術的なメリットを持っている、と思う。
でも、心情的にはアナログディスクの再生は、
いままでどおりカートリッジでトレースして、の方式に惹かれるし、
アナログディスク再生の面白さは、こちらにあると感じている。

アナログプレーヤーの在り方について考えるのであれば、こういったレコードの事情を充分に考慮した上で、
アナログプレーヤーにおける「オリジナル」とは何か、について考えていく必要がある。

Date: 8月 27th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その26)

アナログディスクの周波数レンジは、どうなのだろうか。
ダグラス・サックスによると、カッティングレースは8Hzまでフラットなカッティングが可能、とのこと。
高域に関してはノイマンのレースでは25kHzまで、だそうだ。

8Hzから25kHzまで、CDと数値の上だけで比較してみると、遜色ない。
CDはDC(0Hz)から可能だが、現実にはそこまで帯域が延びている必要性を感じることは、まずない。
高域は単純に比較するとアナログディスクのほうが延びていることになる。

左右チャンネルのセパレーションは、どうだろうか。
15kHzのセパレーションを光学的な方法で測定すると35dBは確保できている、らしい。
このセパレーションの値だけは、CDと比較して大きく劣ることになるものの、
アナログディスクのもつスペックは、あなどれないことがはっきりとしてくる。

これらの値は、ひじょうに注意深くつくられたアナログディスクにのみいえることで、
S/N比と密接な関係にあるダイナミックレンジは、ダグラス・サックスが語っているように、
それぞれのプロセスで劣化していくものでもある。

とはいえ、アナログディスクの器としてのイメージは、
一般に思われているよりもそうとうに大きい、といえるわけだが、
このスペックはあくまでも、LPというレコードの最大スペックであり、
再生側がこれらの特性をあますところなく発揮できるかというと、そうではない。

ダグラス・サックスによれば、
中域・低域に関しては、市販されているいかなるカートリッジのトラッキング能力もこえるだけのレベルの記録は、
いまのどんなカッティングシステムももっている、とのこと。

彼はこう言っている。
     *
再生能力をこえるようなレコードをつくることはむしろよくない。そういうものをベストというべきではなく、ベターの段階でとどめておくべきであり、よい再生というのはその限界を心得たよいシステムによって得られるといえるでしょう。
     *
時代ととともに再生側は進歩している。
だからその進歩に応じて、ベターの段階も、年々向上していくように、
レコードの制作者側は、レコードをつくり送り出していた。

いいかえれば、アナログディスクの場合、つねにレコードの送り手(制作側)の技術的限界は、
再生側の技術的限界よりも上にあった、ということだ。
この点が、CDとの大きな違いである。

Date: 8月 26th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その25)

ダグラス・サックスは、こう語っている。
     *
最近の大きなノイズ源の要素はマスターラッカー盤にあるといえます。いまのラッカー盤は五年まえにわれわれが使っていたものよりよくない。私はむかしラッカー盤のS/N比を測ったことがありますが、それは基準レベルにたいして、75dBもあった。以前RCAが行った実験で、ラッカーマスターで90dBのS/N比をもっていたと報じられていたものです。私の見るところでは、ラッカー盤はいまやますます品質がわるくなっている。事実、数年前に、ラッカー盤ではきこえなかったノイズが、いまのはきこえるのです。
     *
ラッカー盤の品質が悪くなっている──。
これは1980年の話であり、CDは登場していない、いわはアナログディスク全盛時代の話にもかかわらず、
アナログディスクの製造過程における最初の段階のラッカー盤のS/N比が悪くなっている、ということは、
当時の私には衝撃的だった。

ダグラス・サックスが言っている5年前(1975年)には75dBあったS/N比が、
1980年においてどれだけ劣化したのは、その値についてはふれられていない。
数年前のラッカー盤では聴こえなかったノイズがきこえるということは、
数dBの劣化ではなく、もしかすると10dB程度の劣化はあった、とみるべきかもしれない。

それにRCAの実験での90dBのS/N比は、いつのことなのだろうか。
これも詳細はふれられていないが、1975年よりも以前のことだろう。

おそらく、この90dBがラッカー盤のS/N比としては上限なのだろう。
そこから1975年の時点で15dBの劣化、1980年の時点でさらに劣化している。

そういえば、ステレオサウンドにいたころ長島先生からラッカー盤がどうやって造られるのか、聞いたことがある。
詳細は、なぜかほとんど記憶に残っていない。
自分でも不思議なほど憶えていない。けれど、職人技が要求されるものであることだけは憶えている。

型に材料を流し込んで出来上り、というようなものではない。

つまりラッカー盤のS/N比の劣化は、人の問題でもあるはず。
そうであるならば、いまのラッカー盤のS/N比は、いったいどれだけとれているのだろうか、と思う。
90dBは絶対にない、75dBもおそらくないはず。70dBを切っているとみていいだろう。
1980年の時点で、ダグラス・サックスが75dBよりも劣化している、といっているわけだから、
60dB程度ということもあり得るかもしれない。

残念ながら、技術とはそういう面ももっているのだから。

Date: 8月 26th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その24)

ステレオサウンド 55号にダグラス・サックスのインタヴュー記事が載っている。
アメリカの”Audio”誌1980年3月号に掲載された記事の翻訳である。

記事のタイトルは「ディスク・レコーディングの可能性とその限界」となっている。
この記事の冒頭で、ダグラス・サックスはアナログディスク(LP)のダイナミックレンジは、
81dB前後だと語っている。

デジタルの場合、16ビットのPCMの理論値は96dBであるから、
アナログディスクの81dBは、そうとうに高い値であり、
ほんとうにそこまでとれるのか、と疑われる方もいよう。
私もこの記事を読むまでは、LPのダイナミックレンジがそこまで広いとは思いもしなかった。

けれどダグラス・サックスは、
ごく少数ながら81dB前後のダイナミックレンジをもつLPは世に出ていることで実証されている、といっている。
残念なのは、そのLPがなんであるかはわからない点である。

ただし、この81dBのダイナミックレンジを実現するには、
「よくカットされたラッカー盤から上質のビニールを使いうまく製盤され」なければならない、そうだ。
精選されていないプラスティック材料や平凡な製盤プロセスのレコードでは、
S/N比がすぐに10db程度おちてしまい、当然ダイナミックレンジもその分狭くなる。

LPのノイズは製造過程のどこで発生するのかについては、ダグラス・サックスは次のように語っている。
     *
レコード製造の問題のひとつは、ラッカー盤ばかりでなく、そのほかのプロセスの過程でも発生するノイズというものは、これはもう取り去ることはできないということてす。ラッカー盤のノイズばかりでない、質の悪いメタルマザーやスタンパーの発生するノイズ、マスターテープのいわゆるテープヒス、それからビニール自体の出す別なタイプのノイズがある。皆さんはこれら四種類のノイズをみんなきいているわけです。都合のわるいことに、これらのノイズはマスクされてきこえなくなるというものではく、みんなそれぞれがきこえてしまうということです。
     *
ダグラス・サックスがいう「四種類のノイズ」のうち、
私が衝撃的に感じたのはラッカー盤のノイズについて、である。

Date: 5月 19th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(微小か微弱か)

MC型カートリッジは、一部の製品を除けば出力電圧はMM型(IM型、MI型などを含め)カートリッジよりも低い。
おおまかにいって一桁低い出力電圧である。

カートリッジの信号がもともと微小信号で、
MC型ではさらに低くなるためか、微弱な信号という表現をする人もいる。
オルトフォンのSPU-Aのカタログ上の出力電圧は、0.25mV(5cm=/sec.)、
シュアーのV15 TypeIIIは3.5mVだから、この電圧の差は大きいと感じるし、
SPU-Aの出力を、V15 TypeIIIよりも微弱だという思いたくもなるだろう。

このふたつのカートリッジを例にあげたのは、
1978年秋にステレオサウンドから発行されたHIGH-TECHNIC SERIESのVol.2、
「図説・MC型カートリッジの研究」で、
長島先生が「MC型カートリッジの特性の見方」の章で取り上げられているからだ。

1978年秋だから私は高校1年になっていた。オームの法則は中学校で習うからもちろん知っていた。
知ってはいたものの、「図説・MC型カートリッジの研究」を読んで、知っていただけなのを知った。
そしてカタログの数値の見方も知ることとなった。

長島先生はSPU-AとV15 TypeIIIを比較されている。
このふたつの出力電圧は上に書いた通り。
SPU-AはMC型だから負荷インピーダンスは低く、1.5Ω、V15 TypeIIIはMM型だから47kΩ。

電圧と抵抗(負荷インピーダンス)がわかっているから、出力電流がオームの法則から導き出せる。
SPU-Aの出力電流は166μA、V15 TypeIIIは0.106μAと、
出力電圧ではV15 TypeIIIのほうが10倍以上高い値だったが、電流値は逆転して1000倍以上SPU-Aが高くなる。

このことは出力電力の大きさに関係してくる。
電力は電圧×電流だから、SPU-Aは41.66nW、V15 TypeIIIは0.2606nWと、
約160倍近く SPU-Aの方が大きいわけだ。
(説明のため電流を書いているけれど、電力は電圧の二乗を負荷インピーダンスで割れば算出できる。)

これだけの電力の違いがあると、MM型カートリッジよりもMC型カートリッジの信号が微弱とは書けない。
そしてつねにインピーダンスに注意を払うようになった。

Date: 5月 18th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その23)

アナログプレーヤーとテープデッキを対比してみると、
アナログプレーヤーのカートリッジはテープデッキのヘッドである。
モーターはアナログプレーヤーにもテープデッキにも欠かすことのできない重要なパーツである。
アナログプレーヤーのターンテーブルは、テープデッキ(オープンリール)ではリールだろう。
トーンアームがキャプスタンか。

テープデッキの再生用アンプが、アナログ再生でのフォノイコライザーにあたるわけだが、
再生用アンプがコントロールアンプからテープデッキに統合・搭載されるのがごく当り前の流れとなったのに対し、
フォノイコライザーはコントロールアンプにずっと搭載されたままだった。

なぜフォノイコライザーは、コントロールアンプ(またはプリメインアンプ)の中に存在し続けたのだろうか。

カートリッジの出力レベルは低い。
MC型カートリッジで、しかも低インピーダンスで鉄芯を省いた空芯型ともなれば、さらに低くなる。
まさしく微小信号であり、RIAA録音カーヴにより低域では加えてレベルが低くなる。

この微小信号をトーンアームのパイプ内の細いケーブルを通し、
トーンアームの出力のところから出力ケーブルが延びている。
ヘッドシェル内に昇圧トランスを内蔵したオルトフォンSPU-GTは特殊な例で、
それ以外のカートリッジは微小信号のまま、アンプまで伝送するという、不合理性が残ったままである。

ヤマハが発表したヘッドアンプHA2は専用ヘッドシェルが付属していて、
ヘッドシェル内にヘッドアンプ初段のFETを収め電圧−電流変換を行い、
ヘッドアンプ本体まで電流伝送するという、微小信号の扱いに配慮した製品だった。
最近では同様の手法を、DCアンプの製作者として知られる金田明彦氏が無線と実験に発表されている。

微小信号は、さまざまな影響を受けやすい。
接点の汚れや接触の不完全さ、外来ノイズ、それにケーブルそのものの影響も、
レベルの高い信号よりも受けやすいのは当然といえる。

いまはどうなんだろう──。
ずっと以前はトーンアームの出力ケーブルは、
MM型カートリッジ用とMC型カートリッジ用をきちんと用意しているメーカーがいくつかあった。

MM型用は静電容量の少ないもの、MC型用は直流抵抗の低いもの、とわけられ、
本来ならばカートリッジをMM型、MC型の両方を交換して使うのであれば、
交換のたびごとに出力ケーブルも交換したほうがいい(プレーヤーによってはひどく面倒なものもあるけれど)。

Date: 5月 17th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その22)

国内メーカーは総合メーカーと呼ばれるだけあって、
いくつものメーカーが、カートリッジからフォノイコライザーまで揃う。

たとえばテクニクス。
ターンテーブルは、有名なSP10がある。専用ベースのSH10B3がある。
開発時期は後にずれているがトーンアームにはEPA100があり、
カートリッジはそれこそいくつもの機種が存在するが、
EPA100と同時期に登場し型番的にも組み合わせることを前提としていると思われるEPC100Cがある。

これらの組合せがテクニクスによる、1970年代後半のアナログプレーヤーのひとつのかたちと受け取っていい。
フォノイコライザーは、どうだろう。

単体のフォノイコライザーは同時期に発売されていないから、
コントロールアンプに搭載されているフォノイコライザーを対象とするわけだが、
この時期のテクニクスのコントロールアンプには、SU-A2とSU9070IIがある。
価格は前者が160万円で後者が12万円と大きな差がある。
SP10MK2は15万円、EPA100とEPC100Cはどちらも6万円、SH10B3が7万円だからトータルで34万円。
価格的にはSU9070IIのほうが近くても、トップモデルということではSU-A2か。

SP10MK2+EPA100+EPC100C+SH10B3の組合せに、SU-A2をもってきてもSU9070IIをもってきたとしても、
そこにコンプリートされたという印象は、ほとんど感じられない、というのが正直な感想。

これはなにもテクニクスだけにいえることではない。
デンオンには有名な、誰でも知っているDL103があるけれど、
このDL103の本領を発揮するためのプレーヤーシステムということになると、
いったいどういうシステムになるのだろうか。
ターンテーブルは? トーンアームは? フォノイコライザー(コントロールアンプ)は?
(デンオンには業務用のプレーヤーが存在しているから、この機種がそうなるのか。)

デンオンにはDP100にストレート型のトーンアームを搭載したDP100Mというプレーヤーシステムがある。
このDP100Mの登場は1981年ごろ。トーンアームの造りをみてもDL103というよりも、
軽針圧のDL303、DL305のほうが適しているように見える。
フォノイコライザー(コントロールアンプ)はPRA2000ということになるのか。

こんなふうにビクターは? ヤマハ? Lo-Dは? トリオは? マイクロは?……と考えていっても、
EMTの930st、927Dst、928といったプレーヤーシステムが使い手に与えるコンプリート感は稀薄である。

Date: 5月 16th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その21)

ステレオサウンドの43号に瀬川先生が書かれている。
     *
ずいぶん誤解されているらしいので愛用者のひとりとしてぜとひも弁護したいが、だいたいTSD15というのは、EMTのスタジオプレーヤー930または928stのパーツの一部、みたいな存在で、本当は、プレーヤー内蔵のヘッドアンプを通したライン送りの音になったものを評価すべきものなのだ。
     *
EMTのTSD15についての文章だ。

昔からTSD15の音は、EMTのプレーヤーで聴いてこそ、といったことがいわれている。
けれどEMTがSMEのトーンアームとの互換性をもたせた、
アダプターなしに一般的に使えるXSD15を出したためにXSD15は、
EMT以外のトーンアームに取り付けられ、その昇圧手段もEMT以外のトランスやヘッドアンプ、
それにフォノイコライザーに関してもさまざまなモノと組み合わされていった。

そうやって聴いたTSD15の音は、果して「オリジナル」といえるのだろうか。

カートリッジ・メーカーはいくつものメーカーが存在してきた。
モノーラルLP時代から数えても、いくつあるのだろうか。
早々と消えてしまったメーカーも多い。
多いけれど、カートリッジだけでなくトーンアームやターンテーブル、
さらにはフォノイコライザーまでつくってきたメーカーとなると、数は少ない。
古くはフェアチャイルドがある。そしてEMTがある。あとはノイマン、他には何があるだろうか……。

オルトフォンは古くからカートリッジを製造してきたものの、
専用トーンアームはあってもターンテーブルはない。
昇圧トランス、ヘッドアンプはあってもフォノイコライザーはない。

Date: 5月 15th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その20)

1970年代はCD登場前のことだから、市場にはじつにヴァラエティに富んだカートリッジが文字通り溢れていた。
価格もローコストのものからかなり高価なものまであり、
カートリッジのブランドもいろいろな国のものがあり、発電方式も多彩だった。

それにカートリッジまわりのアクセサリーも豊富だった。
ヘッドシェルの種類も多かった。材質の違いもいろいろあったし、
同じ材質でカートリッジのコンプライアンス、自重にあわせて重量の異るものがいくつか用意されてもいた。
カートリッジをヘッドシェルに取り付けるビスもアルミの他に真鍮製もあったり、
それにカートリッジのリード線も、いったいどれだけの数が出廻っていたのだろうか。

カートリッジは、シェル一体型のモノもいくつかあったけれど、
このように、大半のカートリッジはヘッドシェルを自分で選び、リード線もときに交換することがある。
つまり同じカートリッジでも、これだけでもいくつものヴァリエーションが存在するわけだ。

さらにカートリッジはトーンアームに取り付けられる。
そのトーンアームはプレーヤーベースに取り付けられ、
プレーヤーベースにはフォノモーター(ターンテーブル)も取り付けられている。
だから、プレーヤーシステムと呼ばれる。

ヘッドシェルでもいくつも種類があったのだから、トーンアームに実に多くのヴァリエーションがあった。
ヘッドシェルは固定するためのものであり可動部分はないけれど、
トーンアームはスタティック型とダイナミック型にまず大きくわけられ、
長さも通常のサイズとロングアームがあり、軸受けの構造もパイプの材質、太さなど、
興味深い違いが存在していた。

ここでまた同じカートリッジでも、そのヴァリエーションはさらに増えてくる。

こんなふうに書いていってもキリがないから、ここから先は省略することになるが、
とにかく同じカートリッジを使っていたとしても、
使う人が違えば、そのカートリッジを機能させるための周辺の環境は同じであることは稀であり、
そうとうに違うわけだ。

しかも、そこにカートリッジの使いこなしが関係しているのである。

Date: 3月 30th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その19)

プリメインアンプ、コントロールアンプ側にテープ再生のイコライザーがあった時代には、
このテープデッキ(再生ヘッド)には、このコントロールアンプ(もしくはプリメインアンプ)を組み合わせる、
ということが行われていたと思う。

アナログディスク再生のカートリッジとフォノイコライザーアンプとの相性のように、
再生ヘッドとテープ再生用アンプとの相性があって、
そのことがオーディオ雑誌の記事にもなり、マニアのあいだでの話題にもなったであろう。

けれどテープ再生用アンプは、コントロールアンプ(プリメインアンプ)側から、
テープデッキ側に統合されていった。

いまでは想像しにくいことだが、
ずっと昔は秋葉原のパーツ店でヘッドが売られていた、ときいたことがある。
モトローラのヘッドが評判が良かったそうだ。

もし再生用アンプがずっとコントロールアンプ(プリメインアンプ)側にあったままだとしたら、
そしてテープ用のヘッド単体がパーツ店やオーディオ店で、カートリッジのように売られていたとしたら、
テープ関連のアクセサリーの数も、すこしは増えたのかもしれない。
でも、そうはならなかったのは、テープデッキは解体(細分化)の方向ではなく、統合へと向ったからである。

アナログプレーヤーとテープデッキは、こういうふうに違う道に分かれてしまった。
これはテープデッキが再生だけの器械ではなく、録音・再生機器という性質が大きく関係してのことだが、
同時にテープデッキの世界では、
他のオーディオ機器よりもプロフェッショナル用のモノが比率として多く存在する。
このことも、テープデッキが解体(細分化)に向わなかった大きな理由ではないだろうか。

たとえばアナログプレーヤーでも、プロフェッショナル機器としてEMTが日本では有名な存在である。
EMTのアナログプレーヤーは、930stも927Dstも928も、
ダイレクトドライヴ式になってからの950や948など、すべてイコライザーアンプを搭載しており、
ラインレベル出力となっていることは、改めて言うまでもないだろう。

Date: 9月 1st, 2011
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その18)

テープデッキに詳しい方には不要な説明だが、
なぜ昔のテープデッキには録音アンプは搭載されているのに、再生アンプがなかった理由のひとつは、
録音にはバイアスを電流が必要になることがあげられる。

録音ヘッドには音声信号だけが録音アンプから流されているわけではない。
音声信号を録音ヘッドによって磁気変化に変換され、それによりテープが磁化されるわけだが、
そのままではテープ表面の磁性体がうまく磁化されないからである。

これを解決するために録音時に音声信号とは別の、
テープを磁化させるために必要な強さをもつ交流を録音ヘッドに加えている。
これがバイアス電流と呼ばれているもので、その周波数は、テープデッキによって異る。
ローコストのデッキでは50〜70kHz程度、
プロ用のデッキともなれば100kHzをこえ、高いものでは200kHzのものもある。
このバイアス電流の周波数が低ければ、たとえば20kHzあたりだと可聴帯域にはいってしまい、
音声信号と干渉するため、できるだけ高い周波数が理想的ということになるが、
録音ヘッドの性能との兼ね合いもあり、どこまで高くできるものでもない。

バイアス電流は、その周波数とともに強さも、録音性能に関係してくる。
周波数が高くて、バイアス電流が多ければ、それですむというものではない。
録音に使うテープの種類、それにオープンリールデッキではテープスピードなども考慮して最適値が決められる。

このバイアス電流が必要なため、テープデッキには録音アンプは内蔵されてきたわけだ。
そして録音には、このバイアスだけでなくイコライザーもテープによって調整することになっている。

だが、この録音時のイコライザーカーヴには、
アナログディスク再生のRIAAカーヴのような規格があるわけではない。
テープデッキのイコライザーカーヴに関しては、国際的に規格として決められているの再生時だけである。
だから、プリメインアンプ、コントロールアンプ側にテープ再生のイコライザーが搭載されていたわけだ。

Date: 8月 22nd, 2011
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その17)

音の入口となるオーディオ機器には、アナログプレーヤーの他にチューナーやテープデッキがある。
ここではアナログプレーヤーとテープデッキの比較について書いていくが、
テープデッキ(オープンリールデッキ、カセットデッキ)では、
アナログプレーヤーのような豊富なアクセサリーはなかった。

テープデッキ関係のアクセサリーといえば消磁器、ヘッドクリーナーが、パッと浮ぶ。
これらは音を意図的に変える類のアクセサリーではなく、メンテナンスに必要なアクセサリーであって、
消磁器やヘッドクリーナーを使うことによって音の変化はあるが、
それらヘッドが磁化したり汚れていたりして、
本来の性能を出し切れていなかったものを本来の状態に戻した結果の音の変化であり、
アナログプレーヤーにおいてシェルリード線を交換して音が変化した、というものとは性質が異る。

テープデッキではヘッドが、アナログプレーヤーのカートリッジにあたる。
トーンアームが、テープデッキではキャプスタンやピンチローラーなどの走行メカニズムといえるだろうし、
モーターは、アナログプレーヤーにもテープデッキにもある。

アナログプレーヤーでは、これらがバラバラに売られているが、
テープデッキではそういうことはない。
どちらもデリケートな器械であるにも関わらず、アナログプレーヤーとテープデッキは、やや違う途を歩んできた。

一時期、マランツのModel 7やマッキントッシュのC22、ダイナコの管球式のアンプ、
それからトランジスターのものではJBLのSG520には、テープヘッド用の入力端子がついていた。
それぞれのアンプで端子につけられている名称は違うが、
テープデッキの再生ヘッドの出力を直接受けるためのもので、
イコライザーカーヴも、フォノイコライザーアンプのRIAAカーヴを切り替えることで対応していた。

つまりある一時期、テープデッキの再生ヘッドに関しては、
アナログプレーヤーのカートリッジ的な扱いをされていた。
けれど、それは長く続くことはなく、
その再生ヘッドに最適に合せた再生アンプがテープデッキ側に搭載されるのが当り前となり、
アンプ側からTape Head端子は消えていった。

Date: 8月 22nd, 2011
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その16)

いちど解体(細分化)の方向に向った勢いは衰えることなく、
勢いを増して、さらに解体・細分化されていく。

たとえばカートリッジはヘッドシェル、トーンアームまでを含めて、
これでも最低限の括りであるにも関わらず、実際にはヘッドシェル単体が発売され、
ヘッドシェル内のリード線も単体で売られるようになり、
ヘッドシェルへの取りつけビスまでも、と細分化されていった。

LPを再生するのに、カートリッジの発電コイルからスピーカーのボイスコイルまで、
いったいどれだけの長さの信号経路があるのか、
その非常に長い経路のわずか数cmの長さしかないシェルリード線を交換すると、音は変化する。

取りつけビスが一般的なアルミなのか、それとも真鍮なのかステンレスなのか、もしくは非金属なのか、
材質によっても、長さによって(長すぎるビスは使わないようにしたい)音は、どうしても変化する。

オーディオマニアは音の変化ばかりを追い求めている、喜んでいる、と、
オーディオにさして関心のない人は、そんなふうに思っているようだが、
私個人は、音が変化するのを確認することは楽しい反面、
もうこんなことで音が変化してほしくない、という気持が、どこかに芽生えてくることがある。

アナログプレーヤーに関するものは、ヘッドシェル、シェルリード線以外にも、
ターンテーブルシート、スタビライザー、インシュレーターなど、いくつもの関連アクセサリーが出てきた。

しかもこれらは簡単に交換できる。ということは、すぐに元の状態に戻せる。
その手軽さ、気軽さがあって、ひとつふたつは多くの人が試されているだろうし、
はまっていった人は、スタビライザーだけでもけっこうな数が、
いまデッドストックになっているのではないだろうか。

Date: 5月 14th, 2011
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その15)

蓄音器の時代、それはひとつの「器」だった。
クレデンザにしろ、HMVにしろ、その他のアクースティック蓄音器は、それひとつで完結していた。

アクースティック蓄音器は、1925年ごろから電気の力によって、いわゆる電蓄になっていく。
ライス&ケロッグによるコーン型スピーカーを搭載したパナロープや、マグナヴォックスその他から登場している。
日本での大学出の初任給が60〜70円の時代に、これらのアメリカ製の電蓄は1500〜3500円で売られている。
このころの電蓄は、アクースティック蓄音器と同じく、それひとつで完結している。

レコードがSPからLPになっていくことで、電蓄の高性能化を求められるようになり、
電蓄という器が解体されていき、プレーヤーシステム、アンプ、スピーカーシステムと独立していき、
コンポーネントという形態に変化していくことで、オーディオは大きな発展を遂げることになる。

使い手の自由度は増していくことになるとともに、
コンポーネントの難しさもその拡大とともに次第に増していくことになる。

Date: 5月 2nd, 2011
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その14)

瀬川先生は、よく「オーディオパーツ」という表現を使われていた。
アンプやスピーカーシステム、カートリッジなどをひっくるめて、オーディオ機器、とはいわずに、
オーディオパーツといわれていた。

アンプにしろ、スピーカーシステムにしろ、なにがしかのオーディオ機器を買ってくるという行為は、
完成品を買ってきた、とつい思ってしまう。
でも、いうまでもなく、アンプだけでは音は鳴らない。スピーカーシステムだけでも同じこと。
以前ならカートリッジ、プレーヤーシステム、アンプ、スピーカーシステムが、
いまならばCDプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムが最低限、音を出すためには必要となる。

つまりCDプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムが揃った状態、
つまり音を出すシステムそのものが、実のところ「完成品」であって、
それ単体では音を出すことはできないだけに、アンプも、スピーカーシステムも、CDプレーヤーも、
システムを構築するためのパーツであると考えるならば、オーディオパーツという表現には、
瀬川先生のオーディオに対する考え方が現われている、ともいえるはず。

市販されているアンプやスピーカーシステムを、パーツということに抵抗を感じる方はおられよう。
パーツとは、アンプなりスピーカーを自作するときの構成要素のことであって、
アンプの場合では、トランジスター、真空管、コンデンサー、抵抗、コイル、トランスなどがパーツであって、
アンプそのものはパーツではない、という考え方ははたして正しいのだろうか。

アンプを自作する人がいる。どんなに徹底的に自作するひとでも、トランジスターや真空管は作れない。
コイルはつくれても、コンデンサー、抵抗を作ることも、意外と大変だ。
トランジスターアンプの出力段のパワートランジスターのエミッター抵抗は0.47Ωとか0.22Ωなので、
凝り性の人は自分で巻く人もいるかもしれないが、高抵抗値のものを作っている人はいないと思う。
ここまでやられる人でも、銅線から自分で作る、というわけにはいかない。

つまり市販されているトランジスター、真空管、コンデンサー、抵抗なども、パーツであるとともに、
完成品ともいえるわけだ。
アンプの自作においても、これらの完成品のパーツを買ってきて、それを適切に組み合わせて(設計)して、
組み上げて(作り上げて)いるわけだ。

CDプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムを組み合わせてシステムを構築するのと同じことであって、
このふたつの違いは、その細かさ、つまりの量の違いでしかない。