オリジナルとは(その16)
いちど解体(細分化)の方向に向った勢いは衰えることなく、
勢いを増して、さらに解体・細分化されていく。
たとえばカートリッジはヘッドシェル、トーンアームまでを含めて、
これでも最低限の括りであるにも関わらず、実際にはヘッドシェル単体が発売され、
ヘッドシェル内のリード線も単体で売られるようになり、
ヘッドシェルへの取りつけビスまでも、と細分化されていった。
LPを再生するのに、カートリッジの発電コイルからスピーカーのボイスコイルまで、
いったいどれだけの長さの信号経路があるのか、
その非常に長い経路のわずか数cmの長さしかないシェルリード線を交換すると、音は変化する。
取りつけビスが一般的なアルミなのか、それとも真鍮なのかステンレスなのか、もしくは非金属なのか、
材質によっても、長さによって(長すぎるビスは使わないようにしたい)音は、どうしても変化する。
オーディオマニアは音の変化ばかりを追い求めている、喜んでいる、と、
オーディオにさして関心のない人は、そんなふうに思っているようだが、
私個人は、音が変化するのを確認することは楽しい反面、
もうこんなことで音が変化してほしくない、という気持が、どこかに芽生えてくることがある。
アナログプレーヤーに関するものは、ヘッドシェル、シェルリード線以外にも、
ターンテーブルシート、スタビライザー、インシュレーターなど、いくつもの関連アクセサリーが出てきた。
しかもこれらは簡単に交換できる。ということは、すぐに元の状態に戻せる。
その手軽さ、気軽さがあって、ひとつふたつは多くの人が試されているだろうし、
はまっていった人は、スタビライザーだけでもけっこうな数が、
いまデッドストックになっているのではないだろうか。