オリジナルとは(その24)
ステレオサウンド 55号にダグラス・サックスのインタヴュー記事が載っている。
アメリカの”Audio”誌1980年3月号に掲載された記事の翻訳である。
記事のタイトルは「ディスク・レコーディングの可能性とその限界」となっている。
この記事の冒頭で、ダグラス・サックスはアナログディスク(LP)のダイナミックレンジは、
81dB前後だと語っている。
デジタルの場合、16ビットのPCMの理論値は96dBであるから、
アナログディスクの81dBは、そうとうに高い値であり、
ほんとうにそこまでとれるのか、と疑われる方もいよう。
私もこの記事を読むまでは、LPのダイナミックレンジがそこまで広いとは思いもしなかった。
けれどダグラス・サックスは、
ごく少数ながら81dB前後のダイナミックレンジをもつLPは世に出ていることで実証されている、といっている。
残念なのは、そのLPがなんであるかはわからない点である。
ただし、この81dBのダイナミックレンジを実現するには、
「よくカットされたラッカー盤から上質のビニールを使いうまく製盤され」なければならない、そうだ。
精選されていないプラスティック材料や平凡な製盤プロセスのレコードでは、
S/N比がすぐに10db程度おちてしまい、当然ダイナミックレンジもその分狭くなる。
LPのノイズは製造過程のどこで発生するのかについては、ダグラス・サックスは次のように語っている。
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レコード製造の問題のひとつは、ラッカー盤ばかりでなく、そのほかのプロセスの過程でも発生するノイズというものは、これはもう取り去ることはできないということてす。ラッカー盤のノイズばかりでない、質の悪いメタルマザーやスタンパーの発生するノイズ、マスターテープのいわゆるテープヒス、それからビニール自体の出す別なタイプのノイズがある。皆さんはこれら四種類のノイズをみんなきいているわけです。都合のわるいことに、これらのノイズはマスクされてきこえなくなるというものではく、みんなそれぞれがきこえてしまうということです。
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ダグラス・サックスがいう「四種類のノイズ」のうち、
私が衝撃的に感じたのはラッカー盤のノイズについて、である。