オリジナルとは(その15)
蓄音器の時代、それはひとつの「器」だった。
クレデンザにしろ、HMVにしろ、その他のアクースティック蓄音器は、それひとつで完結していた。
アクースティック蓄音器は、1925年ごろから電気の力によって、いわゆる電蓄になっていく。
ライス&ケロッグによるコーン型スピーカーを搭載したパナロープや、マグナヴォックスその他から登場している。
日本での大学出の初任給が60〜70円の時代に、これらのアメリカ製の電蓄は1500〜3500円で売られている。
このころの電蓄は、アクースティック蓄音器と同じく、それひとつで完結している。
レコードがSPからLPになっていくことで、電蓄の高性能化を求められるようになり、
電蓄という器が解体されていき、プレーヤーシステム、アンプ、スピーカーシステムと独立していき、
コンポーネントという形態に変化していくことで、オーディオは大きな発展を遂げることになる。
使い手の自由度は増していくことになるとともに、
コンポーネントの難しさもその拡大とともに次第に増していくことになる。