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Date: 2月 13th, 2016
Cate: ロングラン(ロングライフ)

ロングランであるために(信頼性のこと・その4)

NASA、ハンダで連想するものに、アルミットがある。
日本のハンダがNASAに採用にされたということで、当時話題になった。
秋葉原でも売っていたので使ってみた。

そのころ使っていたハンダはアメリカのキースターのモノ。
アメリカにはキースターという優れたハンダがあるのに、NASAが日本製のハンダを採用したということは、
それだけの信頼性がアルミットにはある、そう判断しても間違いではなかった。

当時の、アルミット以外のハンダの製造がどういう状態なのかを、
サウンドボーイの編集長のOさんに聞いていた。
電子機器の信頼性に深く関係してくるハンダが、その程度の製造なのか、とがっかりした。

そういう時期にアルミットは登場した。
期待は大きかった。
いいハンダだ、と思う。

けれどキースターを使い続けた。
理由は、ハンダをやり直す際のことを考えて、だった。

キースターのハンダは、ハンダ付けした部品を取り外すときに、ハンダがきれいに除去できる。
アルミットは、キースターのハンダよりも面倒だった。

アルミットも改良されているだろうし、それに他の人はどう思っていたのかはわからないが、
少なくとも30年ほど前、当時使っていたハンダゴテと私の腕では、
アルミットよりもキースターの方が、部品を交換するのが楽で確実にできた。

でも考え方を変えれば、アルミットのそういう性質は、決してマイナスになるとはいえない。
人工衛星は打上げれば、修理をすることは考えられていない。
ならばハンダ付けのやり直しのしやすさを考慮する必要はない、ともいえよう。

Date: 2月 13th, 2016
Cate: audio wednesday

第62回audio sharing例会のお知らせ(マッスルオーディオで聴くモノーラルCD)

3月のaudio sharing例会は、2日(水曜日)です。

1988年も終りに近いころだった。
JR荻窪駅で電車を待っていたら、ホームで携帯電話をかけている人を見かけた。
携帯電話といっても、当時のそれは肩からかけるモノで、バッテリーも大きく、
固定電話のような受話器がついているモノだった。

その少し後だったか「帰るコール」という言葉が一時期流行った。
私がみかけた人も、まさしく「帰るコール」をしていた。

携帯電話(というよりも持ち運び可能な電話)が出ていたことは知っていたけれど、
本体価格、通話料金ともに高く、使っている人はどのくらいいたのだろうか。

後にも先にも、私が見かけたのが、この人だけだった。

それから約20年。2007年にiPhoneが登場し、スマートフォンという言葉も流行っていく。
確かに、あの頃の携帯電話からの進歩は、スマートフォンといえるほどである。
小さく軽く、バッテリーも持つようになり、
ただ電話をかけるだけのモノから、さまざまな機能を盛り込んだモノになっている。

スマートという言葉を使いたくなるのもわかるし、
スマートという言葉にふさわしいモノでもある。

いま、あのころの、大きくて重くて単機能の携帯電話が使えたとして、誰が使いたいと思うだろうか。
けれど、オーディオはそこが違う。

オーディオの世界も、スマートオーディオといえるようなモノが出てきている。
スピーカーにしても、大きくて重い、そして高能率のモノよりも……、という傾向はある。

スピーカーユニットにしてもそうだ。
3月のaudio sharing例会で予定しているのは、
JBLの2441を二本、2397ホーンに取りつけて、モノーラルCDを聴く、というものだ。
2441には600Hz以上を受け持たせる。

これがコーン型ユニット、ドーム型ユニットであれば、
ユニットの重量はせいぜい数kgである。
軽く片手で持てる重さでしかない。

たとえばATCのスコーカーがある。
ATCのスコーカーは400Hzあたりから使えるし、能率はホーン型よりは低いものの、
最大出力音圧レベル、リニアリティに関しては、
スタジオモニターとして高い評価を得るだけの能力をもっている。

そういうユニットがずいぶん前から登場しているにも関わらず、
金属のかたまりのようなコンプレッションドライバーをひとつのホーンにダブルで取りつける。
ひどく時代に逆行しているようなことをやるわけだ。

それはお世辞にもスマートオーディオとは呼べない。
その対極にあるだけに、マッスルオーディオと、だから呼びたい。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 2月 13th, 2016
Cate: ロングラン(ロングライフ)

ロングランであるために(信頼性のこと・その3)

高信頼性の部品を使ったオーディオ機器が、高信頼性を実現できるかといえば、そうではない。

ときどき、音質最優先を謳い、アクロバティックといいたくなるような配線をやっているアンプが登場する。
そういうアンプを一部の人は高く評価する傾向にあるが、
こと信頼性において、高く評価できるモノだろうか、
そして人に薦められるモノであるだろうか、と疑問をもつことがある。

井上先生から以前聞いたことがある。
試聴が終り、オーディオの雑談の時間になったとき、
ハンダ付けの話題になった。

1980年代の話だから、部品で音が変ることは当然であったし、
ハンダの種類によっても音が変ることも常識になっていた。

アンプ製作においてハンダ付けは欠かせない。
どんなにいいハンダを使い、高信頼性の部品を使っていても、
ハンダ付けがいいかげんであっては、トラブルの原因となり、
信頼性を低下させることにつながる。

ハンダ付けの技術は音と信頼性に関係してくる。

では、部品と部品の結線、ワイヤー同士の結線において、
どういう方法がいちばんいいのか、ということになった。

そのとき井上先生は、NASAのマニュアルには、こう書いてある、といって、教えてくれた。

いまならインターネットの検索を使いこなすことで、NASAのマニュアルを探し出すことはできるかもしれない。
けれど井上先生がNASAのマニュアルについて話してくれたのは1980年代のことだ。
しかもつい最近見たという感じではなく、けっこう前のことのように話された。

どうやってNASAのマニュアルを入手されたのか、そこまで聞かなかった。
井上先生が、そこまで調べられていたことに、正直驚いていた。

Date: 2月 13th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その10)

一回目のベストバイの35号、二回目のベストバイの43号、
この二冊のステレオサウンドのあいだに、六冊のステレオサウンドと二冊の別冊が刊行されている。
性格には「世界のオーディオ」シリーズも刊行されているが、
編集意図が異る別冊なので除外する。

36号の特集は「スピーカーシステムのすべて(上)」、続く37号は「スピーカーシステムのすべて(下)」で、
この二冊で80機種のスピーカーシステムを試聴している。
38号は「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」、
39号は「世界のカートリッジ最新123機種の総試聴」、
40号は「世界のプレーヤーシステム最新50機種の総試聴」、
41号は「コンポーネントステレオ世界の一流品」、
42号は「プリメインアンプは何を選ぶか 最新35機種の総テスト」となっている。

別冊は1976年夏に「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」が出ている。
ここでは72機種のセパレートアンプの試聴が行われている。

もう一冊の別冊は1976年暮の「コンポーネントステレオの世界 77」で、
45の組合せが登場する。

この時代のステレオサウンドは、総試聴、総テストという言葉があらわしているように、
徹底した試聴と、そして測定を行っていた。

スピーカーシステムの総テストを二号にわたっておこなう。
このスタイルは44号、45号でも引き継がれている。
この二冊は「フロアー型中心の最新スピーカーシステム総テスト」であり、
さらに46号では「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」で、
つまり三号続けてのスピーカーシステムの特集となっていた。

25号と43号のあいだで、
ステレオサウンドはアナログプレーヤー、カートリッジ、プリメインアンプ、
コントロールアンプとパワーアンプ、そしてスピーカーシステムと、
全ジャンルの総テストを行っている。
(カセットデッキ、オープンリールデッキは隔月刊のテープサウンドが行っていた。)

これだけのことが行われてきたうえでの、43号のベストバイ特集である。

Date: 2月 12th, 2016
Cate: 川崎和男

KK塾(五回目)

KK塾、五回目の講師は、内藤廣氏。

内藤廣氏の話の中に、西洋と東洋の時間の概念を図で表したものが出てきた。
西洋のそれは右肩上がり直線、
東洋のそれは弧を描く二本の線が円を成していた。

このふたつを合わせたものとしての螺旋状の図がスクリーンに表れた。
螺旋状の図は、コイルである。
この螺旋状の図は、未来予想図でもある。

まっすぐに規則正しい弧を描いているものが、外的要因で曲がったり、弧が崩れたりする。
そういう話をききながら、こんなことを思っていた。

この螺旋状の図は、何の未来予想図か。
世界の、日本の、それぞれの地域の螺旋状の図であり、
ひとりひとりの螺旋状の図であるとすれば、
そしてコイルとみなせば、活動によりコイルに電流が流れ、
コイルの中心には磁力線が発生する。

コイル同士が十分に離れていて、向きが直行していれば干渉は少なくなるが、
そうでなければ互いに干渉しあう。

けれどコイルがトーラス状に巻かれていたら、どうなるか。
つまりトロイダル型のコイルである。

もし螺旋状の図が、直線のコイルではなく、トロイダル状のコイルであれば、
磁力線の漏れはずいぶんと抑えられる──、こんなことを考えていた。

内藤廣氏は建築家だ。
東京・六本木のミッドタウンに虎屋菓寮がある。
内藤廣氏が手がけられている。
オーディオマニアとして、ここに行ってみようと思っている。

Date: 2月 11th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その9)

ステレオサウンド 43号の特集は、
35号に続いて二回目のベストバイである。

35号と43号とのあいだにはちょうど二年ある。
ベストバイは、その後47号、51号、55号……と続き、
毎年夏号掲載は冬号掲載に変り、現在に至っている。

私にとっては43号のベストバイが、最初のベストバイだった。
だから、というわけではないが、43号のベストバイがもっとも読み応えのあるベストバイ特集である。

35号はステレオサウンドで働くようになって読んだ。
43号以降、ベストバイ特集は一度も43号を超えてはいない。
だから35号のベストバイ特集が気になっていた。

35号は私が41号を手にした時には、すでにバックナンバーは売切れだったのだから、
期待は高まっていた。
35号のベストバイは43号のベストバイよりも、もっと読み応えがあるのかもしれない、と。

結果は43号のベストバイが、もっともいい。
そしてもうひとつはっきりといえるのは、
このころのベストバイといつのころからか変質してしまった現在のベストバイは、
同じ「ベストバイ」特集と謳っていても、同じとはいえない。

このことはベストバイの号だけ比較しての話ではない。
ベストバイの号とベストバイの号のあいだに発行されるステレオサウンドの特集と関係しているし、
ベストバイ特集が持っていた意味が大きく変化したというよりも、失われてしまった、ともいえる。

Date: 2月 10th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その2)

発表から一年。
コルグのサイト内にNutubeのページができ、ようやく概要がはっきりしてきた。

FAQもある。
ここでわかるのはNutubeは傍熱管ではなく直熱管だということ。
これには驚くとともに、冷静に考えれば消費電力の低さを実現するには直熱管が有利であることに気付く。

Nutubeのヒーターは電圧0.7V、電流17mAである。
この値ならば、定電圧点火よりも定電流点火のほうが楽になる。

電源電圧は5Vから80Vだから、
トランジスターを扱う感覚で真空管を扱えるようになる。
ただし直熱管ということもあってマイクロフォニックノイズには十分な配慮は必要だ。

こういった規格よりも気になっていたのは、
Nutubeそのものを一般市販してくれるのか、であった。

FAQには、個人ユーザーへの販売も予定している、とある。
これは、ほんとうに嬉しい。

Date: 2月 10th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その8)

ステレオサウンド 42号、43号の表紙を見て私が想像したようなことは、
ステレオサウンド編集部はまったく意図していなかったことなのかもしれない。

意図しての表紙だったともいえるし、そうでないともいえる。
どちらなのかはわからないし、どちらでもいいと思っている。

当時中学生だった私が、42号、43号の表紙を見て、組合せを想像したことが大事なことであって、
こういう想像を喚起させる何かが、いまのステレオサウンドの表紙からはすっぱりと消えてしまっている。
そのことを残念だと思う。

いま書店に並んでいる197号。
表紙はB&Wのスピーカーシステムだが、
このモデルになることは、そこそこステレオサウンドを読んでいて、
新製品情報をこまめにチェックしている人ならば、容易に予想できていたはずだ。

だから12月に書店で197号を見かけて、やっぱりね、としか思えなかった。
それでもこちらが気づかない良さを表紙が感じさせてくれるのであれば、まだしもといえるけれど、
それすら感じられない表紙を見ていると、どうしてもなぜなんだろう? と考えてしまう。

現編集長の染谷一氏の年齢を知らない。
写真をみるかぎり、私よりも一世代若い方のようだ。
だとしたら42号、43号をその当時読んでいたわけではない。

でも、それだけが理由だろうか。
そういうことは理由にはならないようにも思う。

ステレオサウンドで働くということは、過去のステレオサウンドを自由に読めるということでもあるからだ。

Date: 2月 9th, 2016
Cate: 録音

最良の録音方式

エジソンの発明から100年以上が経っている。
そのあいだに、いろいろな録音方式が誕生した。

蝋管による録音はディスクへと変っていった。
磁気テープの録音が生れ、ディスクは録音メディアから複製メディアへとなっていった。

その流れのなかで、
ディスクの録音メディアの可能性を追求したのがダイレクトカッティングという録音方式である。

磁気テープの録音方式は、ダイレクトカッティングが行われるようになったのと同時期に、
デジタル録音方式が誕生した。
いまでは考えられないほど大きな筐体と消費電力を要求するデジタル録音機器は、14ビットがやっとだった。

デジタル録音はその後、16ビットが標準になり、18ビット、24ビット……となっていく。
サンプリング周波数も高くなっている。

それまでデジタル録音イコールPCM録音だったが、いまではDSD録音も出てきた。

これから先、まだ新しい録音方式が登場するかもしれないが、
コストや編集のしやすさ、その他のことを考えなければ、最良の録音方式とはどういうものなのか、と時折考える。

きわめて主観的ではあるが、ダイレクトカッティングがもっとも気持のよい音を出してくれたように思っているから、
私の答はダイレクトカッティング、それもディスクへのダイレクトカッティングではなく、
シリンダーへのダイレクトカッティングである。

ラッカー盤ではなくラッカー筒にダイレクトカッティングする。
ディスクとは違い、複製をつくるのが困難にはなるが、
ディスク状であることに起因する問題点は、ここにはないわけだ。

こんなのを聴く機会は絶対にないであろう。
それでも、どんな音がするのか──、
それを想像するのは、けっこう楽しい。

Date: 2月 8th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その7)

ステレオサウンド 42号、43号の表紙のことを書きながら、
もしあの時(1976年12月)、
「コンポーネントステレオの世界 ’77」ではなく「ステレオのすべて」を選んでいたら……、と考えていた。

ステレオサウンド 41号と「ステレオのすべて」を買っていたら、
ステレオサウンド 43号の表紙を見たときに、QUADの405の存在を果して感じただろうか。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」をくり返し読んでいたからこそ、
私の頭の中にはAGIの511と405のペアがあったからだ。

511と405を結びつけるものが私の中にあったから、
43号の表紙を見て、想像した。
43号での想像があったから、42号の表紙を見ての想像がある。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」、42号、43号は結びついている。
しっかりと結びついている。

その意味で「コンポーネントステレオの世界 ’77」を選んで幸運だった、といまも思っている。

Date: 2月 7th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その6)

ステレオサウンド 43号を一通り読み終ってから42号の表紙を見ると、
43号の表紙を見た時と同じことを想像した。

ここにはアナログプレーヤーとプリメインアンプが写っている。
スピーカーシステムが写っていない。
ここでのスピーカーシステムは何を想定していたんだろうか……、と。

ヤマハのCA2000とラックスのPD121。
カートリッジはエンパイアの4000D/IIIにトーンアームはSME。

このシステムが鳴らすスピーカーシステムを、43号の特集ベストバイを読み終って考えていた。
43号の特集にはいくつものスピーカーシステムが紹介されている。
その中から何を選ぶか。

CA2000と同じヤマハのスピーカーシステムNS1000Mでは当り前すぎて面白みに欠ける。
ならば、他にどんなスピーカーが、ここに似合うか。

KEFの104aBは良さそうに思えた。
価格的にはバランスがとれている。
個人的にはカートリッジを、もう少し艶っぽい音色を聴かせてくれるモノに変更したいが、
4000D/IIIの乾いたタッチが、この組合せでもピアノを案外うまく鳴らしてくれそうな気がする。

価格的なバランスは崩れてしまうが、
アルテックのModel 19もよさそうな気がした。
新しいフェイズプラグの採用で、
従来と同じ振動系のコンプレッションドライバーの高域特性を改善したModel 19は、
高能率なだけに、CA2000をA級動作(出力は30W+30W)で鳴らす。
出力に不足はないし、A級動作の音の良さが、人の声の再生にうまく働いてくれそうで、
決して大げさにならないシステムで、べたつくことのない音色で気持ちの良い音が聴けるのではないか。

こんなことを想像していた。
他にもこれはどうだろうか、と頭の中で、そこで鳴ってくる音を想像していた。
43号のベストバイの特集に載っていたスピーカーシステムに限っていえば、
このふたつが、42号の表紙の背後に浮んできた。

そんな楽しみ方ができた。

Date: 2月 7th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その5)

ステレオサウンド 43号の表紙を飾るのは、
セレッションの小型スピーカーUL6とAGIのコントロールアンプ511。
UL6の上に511、これを真正面からとらえた写真が使われている。

この表紙をみるたびに思うことがある。
コントロールアンプとスピーカーシステムということは、
ここには写っていないけれどパワーアンプの存在を意識する、ということだ。

そのパワーアンプとはQUADの405のことである。
AGIの511にはペアとなるパワーアンプがなかった。
開発中という噂はあったけれど、ついに実現することはなかった。

QUADの405に関しても、33というコントロールアンプがあったけれど、
開発年代の違いから、405のペアとなるコントロールアンプととらえている人は少なかった。

誰もが405とペアとなるコントロールアンプ44の登場を期待していた。
44が登場するのはまだ先であった。

そんなこともあって511と405は組み合わされること多かった。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」でも511と405の組合せは何度か登場している。

スピーカーシステムが決まり、アンプの候補として登場し、
最終的な組合せとしても、瀬川先生のKEFの104aBの組合せ、
井上先生のキャバスのブリガンタンとロジャースのLS3/5Aの組合せの両方に選ばれている。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」を何度も何度も読み返していた私には、
43号の表紙には、そこには写っていなくとも、QUADの405を感じる。
43号を手にしたときも、いまも、である。

AGIの511、QUADの405、セレッションのUL6の組合せ、
小粋なシステムだと思う。

42号の表紙も同じことを想像させる。

Date: 2月 6th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その4)

ステレオサウンド巻末にあるバックナンバー紹介のページ。
41号のこのページには33号から40号までと、岡先生の「レコードと音楽とオーディオと」が、
42号には33号から41号までが紹介されていた。

けれど41号、42号とも35号は載っていない。
35号は売り切れとある。

そうなると35号が気になる。
バックナンバー紹介のページを見ると38号が興味深く感じられた。
その38号よりも35号は面白いのか。
いったい特集は、どういう企画だったのか。
想像しても、何の手がかりもなかった。

35号の特集がわかったのは43号が出てからだった。
43号の特集はベストバイである。

43号がベストバイであることは42号のアンケートはがきが、ベストバイの投票用紙であったし、
はがきのところに、43号の特集はベストバイだと書いてあったからだ。

アンケートはがきにはベストバイと考える機種を、各ジャンルごとに一機種ずつ記入していく。
ステレオサウンドを一年くらい読んでいればすぐに記入できただろうが、
まだ41号と42号、それに別冊の三冊しか読んでいない。

市場に出廻っている製品も知っているモノのほうが少ない。
それでもベストバイ(Best Buy)の意味を調べて、
中学生が考えるベストバイ機種と記入していった。

4月10日が締め切りだった。
だったらもう少し早く発売してほしい、と思いながら、
あれこれ悩みながらの記入だった。
参考にしたのは41号ではなく、もっぱら「コンポーネントステレオの世界 ’77」だった。

ベストバイ。
これだけでは43号のどういう内容なのか、
それ以上のことはわからなかったし、想像もそんなにはできなかった。

何度も書店に通い、ようやく発売になったステレオサウンド 43号。
これがベストバイなのか、と思ったことをいまでも憶えている。
あのころのベストバイは面白かった。
夢中になって読んでいた。

Date: 2月 5th, 2016
Cate: 世代

世代とオーディオ(ガウスの輸入元のこと)

ステレオサウンド 38号にガウスのユニットが新製品紹介のページに載っていることは、すでに書いている。
この時点では輸入元について何の記述もなかった。

その後シャープに決まるまで輸入元はないように思っていたが、
今日41号を読み返していて、1976年10月から正式に販売されていることがわかった。

輸入元はウェストレックスである。
販売業務は今井商事がやっていた。

そのことが41号の501ページに記事になっている。
とはいえ、その後の今井商事の広告でガウスを見たことはない。

Date: 2月 5th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その3)

ステレオサウンド 41号には、次の号がいつ出るのかという予告はなかった。
巻末にバックナンバーの紹介ページがあって、年に四冊出ていることはわかったから、
春には42号が出るのはわかっても、正確な発売日がわかったわけではなかった。

1977年春、42号が書店に並んでいた。
表紙はヤマハのCA2000とラックスのPD121にSMEの3009S2の組合せ。
手前にはハーマンミラーの椅子。
迷わず購入した。

42号の特集はプリメインアンプだった。
岡先生、菅野先生、瀬川先生が試聴を担当され、実測データが載っていた。
一機種あたり五ページが割かれていた。

写真とスペック、機能一覧表で一ページ、
三氏の試聴記で一ページ、
実測データと、井上先生と上杉先生によるテクニカルリポートが三ページあった。

プリメインアンプだけで、ずっしりとボリュウムのある特集だった。
試聴記もテクニカルリポートも、実測データも何度も読み、何度も見た。

一台のアンプをどう捉えるのか。
そのことを学べた一冊だった。

まだ中学生だった私には、当時のステレオサウンドは読み応えがほんとうにあった。
次の号が待ち遠しいという気持とともに、三ヵ月というスパンはちょうどいいようにも感じていた。

42号の奥付には、43号の予告があった。
そこには6月上旬発売予定、とあった。

ここでステレオサウンドの発売日がなんとなくわかった。
3月、6月、9月、12月なのだ、と。

上旬とあるから、43号は6月10日までには出るものだと思った。
6月になると、毎日のように書店に行った。
10日になっていないのだから、まだ出ていなくともしょうがないのはわかっていても、
上旬だから5日ごろに出てもおかしくはない。

今日もない……、そう思う日が続き、
10日になった。まだ書店には並んでいない。
そうなると、さらに一日一日が待ち遠しい。
当時は20日すぎが発売日だった。上旬ではなく中旬でもなく、下旬だった。