ステレオサウンドについて(その9)
ステレオサウンド 43号の特集は、
35号に続いて二回目のベストバイである。
35号と43号とのあいだにはちょうど二年ある。
ベストバイは、その後47号、51号、55号……と続き、
毎年夏号掲載は冬号掲載に変り、現在に至っている。
私にとっては43号のベストバイが、最初のベストバイだった。
だから、というわけではないが、43号のベストバイがもっとも読み応えのあるベストバイ特集である。
35号はステレオサウンドで働くようになって読んだ。
43号以降、ベストバイ特集は一度も43号を超えてはいない。
だから35号のベストバイ特集が気になっていた。
35号は私が41号を手にした時には、すでにバックナンバーは売切れだったのだから、
期待は高まっていた。
35号のベストバイは43号のベストバイよりも、もっと読み応えがあるのかもしれない、と。
結果は43号のベストバイが、もっともいい。
そしてもうひとつはっきりといえるのは、
このころのベストバイといつのころからか変質してしまった現在のベストバイは、
同じ「ベストバイ」特集と謳っていても、同じとはいえない。
このことはベストバイの号だけ比較しての話ではない。
ベストバイの号とベストバイの号のあいだに発行されるステレオサウンドの特集と関係しているし、
ベストバイ特集が持っていた意味が大きく変化したというよりも、失われてしまった、ともいえる。