最良の録音方式
エジソンの発明から100年以上が経っている。
そのあいだに、いろいろな録音方式が誕生した。
蝋管による録音はディスクへと変っていった。
磁気テープの録音が生れ、ディスクは録音メディアから複製メディアへとなっていった。
その流れのなかで、
ディスクの録音メディアの可能性を追求したのがダイレクトカッティングという録音方式である。
磁気テープの録音方式は、ダイレクトカッティングが行われるようになったのと同時期に、
デジタル録音方式が誕生した。
いまでは考えられないほど大きな筐体と消費電力を要求するデジタル録音機器は、14ビットがやっとだった。
デジタル録音はその後、16ビットが標準になり、18ビット、24ビット……となっていく。
サンプリング周波数も高くなっている。
それまでデジタル録音イコールPCM録音だったが、いまではDSD録音も出てきた。
これから先、まだ新しい録音方式が登場するかもしれないが、
コストや編集のしやすさ、その他のことを考えなければ、最良の録音方式とはどういうものなのか、と時折考える。
きわめて主観的ではあるが、ダイレクトカッティングがもっとも気持のよい音を出してくれたように思っているから、
私の答はダイレクトカッティング、それもディスクへのダイレクトカッティングではなく、
シリンダーへのダイレクトカッティングである。
ラッカー盤ではなくラッカー筒にダイレクトカッティングする。
ディスクとは違い、複製をつくるのが困難にはなるが、
ディスク状であることに起因する問題点は、ここにはないわけだ。
こんなのを聴く機会は絶対にないであろう。
それでも、どんな音がするのか──、
それを想像するのは、けっこう楽しい。