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Date: 1月 17th, 2018
Cate: Noise Control/Noise Design

聴感上のS/N比と聴感上のfレンジ(その7)

喫茶茶会記のスピーカーで、トゥイーターだけはCR方法がこれまでは試せなかった。
グッドマンのトゥイーターはハウジング内にハイパスフィルターが内蔵されていて、
それをパスすることができないからだ。

10月のaudio wednesdayから、トゥイーターはJBLの075にしている。
だからトゥイーターにもCR方法を実践できようになったし、もちろんやっている。

その効果は、来ている人がみなつけたほうがいい、という。
もちろんスコーカーのアルテックのドライバーにも取り付けてある。
これですべてのユニットに対して施してある。

そして別項で書いているSICAの10cmのダブルコーンのフルレンジユニットにもやっている。
ここでの効果は、喫茶茶会記のスピーカーユニットにひとつずつ試した時よりも大きかった。

フルレンジということもあろう、
それからスピーカーユニットとアンプとのあいだにネットワークがないことも、
深く関係しているのかもしれない。

CR方法については、(その1)で書いている。
私がこれまで試したところでいえば、
抵抗はDALEの無誘導巻線抵抗にかぎる。
この抵抗は、秋葉原の海神無線で入手できる。

DALEの無誘導巻線抵抗は、カーボン抵抗や金属皮膜抵抗に比べると高価だ。
といっても一本数百円である。

それからコンデンサーのリード線をユニットのアース側にもってきたほうが結果はいい。

既製品のスピーカーでは試しにくいモノもあろうが、
自作スピーカーであれば、試してみることはそんなに面倒でもないはずだ。
フルレンジユニットであれば、もっと簡単に行える。

ただしいずれも場合も、スピーカーユニットの端子に直接最短距離で取り付けるべきだ。

聴感上のS/N比の向上というと、機械的な雑共振を抑えることと受け止められるし、
たしかに機械的雑共振をどう抑えるかは、ひじょうに重要なこきとであるが、
同時に電気的な共振を抑えることも、聴感上のS/N比の向上には効く。

CR方法が実際にどう作用しているのかはっきりとしたことはいまのところいえないが、
少なくとも聴感上のS/N比は向上するし、聴感上のfレンジも上のほうにのびていく。

Date: 1月 17th, 2018
Cate: 川崎和男

KK適塾 2017(2月2日・補足)

今年度のKK適塾の二回目は、2月2日に行われる。
受付が始まっているが、ひとつだけ注意が必要だ。

スマートフォンから申し込む場合、Wi-Fiで接続していないと、
応募期間が過ぎています、というメッセージが出て、申し込みができない。

一回目のKK適塾、出先ということもあって、最初4G回線で接続していて、申し込めなかった。
帰宅してWi-Fiで接続して、やっと申し込めた。

今回、ある人を誘った。
その人から連絡があり、応募期限が過ぎている、と表示されて申し込めない、と。
スマートフォンからで4G回線での接続だった。
パソコンで接続したら、すんなり申し込めたそうだ。

あえてそういうふうにしているのかどうかははっきりとしないが、
もしスマートフォンで4G回線で接続していて、申し込めなかった人は、
Wi-Fiで接続するか、パソコンで申し込めば問題は生じない。

Date: 1月 17th, 2018
Cate: 川崎和男

KK適塾 2017(一回目・その4)

久坂部羊氏は、PPKといわれた。
ピンピンコロリを略して、PPKである。

健康で病院にもかからず、ピンピンしていて、ある日突然コロリと死んでしまう。
これは理想であろう。

私も昔、そんなふうに死ねたら……、と思っていたことはある。
私の周りにも、そんなことをいっている人は何人かいる。

昔から、細く長くか太く短くか、という。
けれど細く生きることを心掛けていたからといって、ほんとうに長く生きられるのか。
太く生きている人は、ほんとうに短い人生なのだろうか。

昔、山中先生がいわれていたことを思いだしていた。

細く長くとか太く短く、とかいうけれど、
人がコントロールできるのは太さだけであって、長さはどうすることもできないんだ、
細く短い人もいるし、太く長い人もいる、と。

そんなことをいわれていた。

昔の仕事関係の人のおじさんは、とても元気だったそうだ。
病院に行くことも、健康診断に行くこともなく、健康そのものだったらしい。

その人が、ある日突然倒れた。
病院に運ばれて検査の結果、癌だった。
末期の癌で倒れた日から、そう経たないうちに亡くなったそうだ。

もう手遅れ、ということで、治療も受けなかった、らしい。
この人は、PPKなのだろう。
倒れる日まで、ほんとうに元気(ピンピン)だったのだから。

KK適塾の翌日、12月23日には、ジャズ喫茶の閉店の話のほかに、
別の人からスピーカーがこわれてしまった、という連絡があった。

そのスピーカーシステムは、発売されてから25年以上経っている。
それほど数は売れていないけれど、私も欲しかったスピーカーである。

そのスピーカーでなければ聴けない音の魅力があった。
いま、そのメーカーはない。
純正の修理は無理ということになる。

スピーカーの故障の原因は、パワーアンプの異状である。
パワーアンプも同時期に購入されたモノだから、こちらもけっこう月日が経っている。

このことが重なったから、PPKについて、オーディオの場合なら……、ということを考えてしまう。

Date: 1月 16th, 2018
Cate: 「オーディオ」考

「虚」の純粋培養器としてのオーディオ(人が集まるところでは……)

不特定多数の人が集まるところでは、気持よく帰れることの方が稀だとおもう。
特にオーディオ関係の、そういう場では、げんなりしたり、イヤな気持になったり、
そういうことは必ずつき物だと思っていた方がいい。

昨年のインターナショナルオーディオショウでは、
別項「2017年ショウ雑感(会場で見かけた輩)」で書いている人がいたわけだ。

こういう人の他にも、音を聴きに来ているのか、自慢話を披露したくて来ているのか、
何が目的なのかわからない人もいる。

同好の士が集まる場だからといって、気持よく帰れるわけではい。
先日の「菅野録音の神髄」でも、残念なことに、そういう人たちがいた。

そういう人たちの方が圧倒的に少数であっても、
そういう人たちは目障り、耳障りであるために目立つ。

そういう人たち(そういう大人)に幻滅したくない、という人もいよう。
それで「菅野録音の神髄」に来なかった人もいる。

その人の気持がわからないわけではない。
それでも、やはり来るべきだった、といおう。

今年の最初に「オーディオマニアの覚悟(その7)」を書いた。
そこには、こう書いた。

オーディオマニアとして自分を、そして自分の音を大切にすることは、
己を、己の音を甘やかすことではなく、厳しくあることだ。

そうでなければ、繊細な音は、絶対に出せない、と断言できる。

繊細な音を、どうも勘違いしている人が少なからずいる。
キャリアのながい人でも、そういう人がいる。

繊細な音を出すには、音の強さが絶対的に不可欠であることがわかっていない人が、けっこういる。

音のもろさを、繊細な音と勘違いしてはいけない。
力のない、貧弱な音は、はかなげで繊細そうに聴こえても、
あくまでもそう感じてしまうだけであり、そういう音に対して感じてしまう繊細さは、
単にもろくくずれやすい類の音でしかない。

そんな音を、繊細な音と勘違いして愛でたければ、愛でていればいい。
一生勘違いしたままの音を愛でていればいい。

それでいいのであれば、幻滅したくない、イヤな気持になりたくない、
傷つきたくないということで、そういう場に出かけなければいい。それで済む話だ。

あとは本人次第だ。

Date: 1月 15th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その17)

今日もまたSICAの10cmスピーカーと対面してきた。
組み立てたのは先週の日曜日、約一週間経ったわけだ。

エンクロージュアは、いい感じで塗装されていた。
吸音材も追加で、私が指定した素材が入っている。
この素材は、秋葉原には売っていないものだ。

それからスピーカー端子のワイヤーの処理も、
一般的な方法ではなく、こうしたほうがいいです、といったやり方に変えられていた。

その上で今回はふたつのことをやってきた。
すごいことでもないし、特別なことでもない。
特殊なパーツやアクセサリーを使ったわけでもない。

ひとつは、このブログを丹念に読んでいる方ならば、あれか、とおわかりになるだろう。
もうひとつは、audio wednesdayにきている人ならば、おおよその見当はつくことである。

ほんとうはひとつずつステップを踏んで、その音を聴いてもらったうえで、
もうひとつの方法をやるというのがいいのはわかっていたが、時間的な関係と、
あまり頻繁にユニットを取り外しては取り付けるということをやりたくなかったので、
あえてふたつのことをいっぺんにやった。

私の頭の中では、おおよそこのくらいは変化するだろうな、という予測はあった。
予測していた方向に、いい感じで音は変った。

ただその変化量が、予測よりも少しばかり大きかった。
ここまで変化するのか、と正直驚きがあった。

驚いたのは私だけではない。
むしろ予測していないだけに、SICAのスピーカーの持主のほうが、
私よりも驚かれていた。

「かっこいい音だな」といわれた。
なによりの褒め言葉だと受け取っていた。

昨日の「菅野録音の神髄」で、
江崎友淑氏は菅野録音のことを「かっこいい録音」と表現されていた。

そのことがあったから、よけいに「かっこいい音だな」が嬉しかったわけだ。

Date: 1月 14th, 2018
Cate: 菅野沖彦

菅野沖彦氏のスピーカーのこと(「菅野録音の神髄」でのBeoLab 90)

菅野沖彦氏のスピーカーのこと(その16)」で、B&OのBeoLab 5を挙げた。
そんな私だから、「菅野録音の神髄」でのスピーカーシステムがBeolab 90であったことは、
我が意を得たり、でもあった。

来場者のなかには、BopLab 90という選択に不満をもっている人もいたように感じる。
なぜBeoLab 90になったのかについては、中央図書館の方からの説明があった。

いくつかの事情が重なってのBeoLab 90であったようだが、
そういう事情がなくとも、私が担当者だったら、BeoLab 90を選ぶ。

開場前の音は、かなりよかった、とも聞いている。
60人以上の人が集まった空間では、開場前とは大きく音が違って当然であり、
そのあたりへの配慮が足りなかったのは、
おそらく中央図書館としても、こういうイベントは初めてであろうから、致し方ない面もある。

十全に鳴っているとはいいがたかったが、
BeoLab 90という選択は、正しい。

Date: 1月 14th, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオは男の趣味であるからこそ(その13)

「菅野録音の神髄」での江崎友淑氏の話のなかに、瀬川先生、という言葉が出てきた。
江崎氏が若かったころの話をされた。

どこかのショールームで瀬川先生が話されたことだった。
「どんなに狭くてもひとりで音楽を聴ける空間をもちなさい」、
そういう趣旨のことだった。

どんなに広くてもリビングルームで聴いてはだめだ、と。
来場者から「なぜですか」と問われ、
「音楽に感動して涙をながしているところを家族にみられてたまるか」と。

瀬川先生もそうだったのか。
そういう音楽の聴き方(接し方)をされてきていたんだ、ときいていてうれしかった。

赤の他人ではなく、家族だろ、涙をみせてもいいじゃないか。
それはそれでいいし、そういう聴き方(接し方)もあろう。

けれど男がひとりで音楽に涙する空間こそが聖域であって、
それは城とは違う。

Date: 1月 14th, 2018
Cate: 菅野沖彦

「菅野録音の神髄」(その1)

今日は1月14日。
杉並区の中央図書館の視聴覚ホールにて、
オクタヴィア・レコードの江崎友淑氏による講演会「菅野録音の神髄」が行われる日である。

どんな器材なのかは、中央図書館のウェブサイトで紹介されていた。
スピーカーシステムはB&OのBeoLab 90、
SACDプレーヤー、コントロールアンプはアキュフェーズのフラッグシップモデル。
それからアキュフェーズのクリーン電源も用意されていた。

アナログプレーヤーもあった。
トーレンスのTD124にSMEのトーンアーム。
カートリッジはアキュフェーズのAC6にアキュフェーズのフォノイコライザーアンプ。

開場は13時30分。
私が着いたのは10分ほどすぎていたが、席は半分ほど埋まっていた。
どこに座ろうかと見渡していたら、最前列が空いていた。

そこまでの壁際には関係者の方たちが座っていた。
菅野先生の奥さまもいらっしゃった。
もう10年ぶりである。
挨拶をしたら、「うしろに……」といわれた。ふりかえると、
最前列の中央に菅野先生がおられた。

菅野先生が来られるとは、思ってもみなかった。

14時から「菅野録音の神髄」は始まった。
菅野先生の挨拶から始まった。

この時、あちこちからシャッター音がした。
振り返らなかったが、おそらく多くの人がスマートフォンやカメラをかまえていたんだろう。
私の隣の人も撮っていた。

おそらく個人のサイトやSNSに、公開する人もいると思う。
私は撮るべきではない、と思ったから、撮らなかった。
理由は書かないが、撮るべきでない、というのが私の判断だ。

Date: 1月 13th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(ユニットのキット)

この項の(その1)で、パイオニアののPIM16KTのことを書いた。
PIM16KTは、16cmフルレンジユニットを自作するキットである。

スピーカーシステムのキットではなく、しつこいようだが、
ボイスコイルが巻かれているボビンをコーン紙に接着し、というところから始まるキットである。

こんな製品は、そうそうないと思っていた。
さっき見つけたのが、ログオーディオのRK100とRK200である。

RK100/200も、スピーカーユニットの自作キットである。
エンクロージュアもついていくる。

コーン紙、ダンパー、センターキャップ、ボイスコイル取付治具、フレーム、磁気回路などが、
構成部品である。

こういうキットは、そんなに数がうれるものではないと思う。
それとも教材用として、ある程度の数が見込めるものなのだろうか。
そのへんのところはわからないが、
こういうキットが、いまもあるということは、伝えておきたい。

Date: 1月 13th, 2018
Cate: 新製品

新製品(ADCOM LUNA・その2)

(その2)を書くつもりはまったくなかった。
けれど昨晩、iPhoneのGoogleアプリが提示したカードには、
LUNAによく似たスピーカーが新製品として登場するというニュースへのリンクだった。
もちろんそのニュースはLUNAについては触れていない。

LUNAによく似たスピーカーが、Ankerというメーカーから登場する。
LUNA(月)と違い、このModel Zeroは、パッと見た印象としては、
女性用のバッグというイメージがする。

だから、上部のアーチ部分は、バッグの把手のようにも見える。

貫通している部分の形状も、LUNAとは少し違う。
真横から見たシルエットも違う。

細部の違いはいくつもあるから、似ているだけで、そっくりとはいえない。
つまりパクリではない、となるのだろうか。

Date: 1月 13th, 2018
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(自動補正がもたらすもの・その1)

dbxの20/20の登場で始まった自動補正の技術は、
デジタル信号処理の導入によって、20/20のそれとは比較にならないほど、
精度も高くなり、高度になっている。

いくつかのメーカーから、同種の製品が登場している。
これらのモデルを使えば、マルチアンプシステムにおいても、
あるレベルのところまでは簡単に構築できるようになった、といっていいだろう。

マルチアンプは、それほど難しくないから、やってみよう、
と安易に言ったり書いたりしている人ほど、
ひどく偏った音(間違った音)を出しているのを知っている。

マルチアンプにすれば調整の自由度の範囲が一挙にひろがる。
ひろがりすぎといってもいいほどに、大きくなる。

完成品のスピーカーシステムを、内蔵のLCネットワークで鳴らしていては、
決していじることのできないパラメーターもいじれるようになる。

いきおい、間違った音を簡単に鳴らせるほどになる。
瀬川先生は、マルチアンプをすすめるステレオサウンドの別冊においても、
マルチアンプの可能性についてふれながらも、安易にはすすめられていなかった。

いまはデジタル信号処理の自動補正機能をもったモデルによって、
それ以前では一年とか二年(人によってはもっと必要となる)ほどかかるレベルになるまで、
しかもそのレベルは、いわばマルチアンプのスタート地点といえるところに、
わずか一日(数時間)で、そこに立てるようになる。

大幅な時間の短縮であり、
そこからスタートすれば、よりこまかな調整に没頭できる──、
そう思われるかもしれないが、ほんとうにそうだろうか。

マルチアンプのスタート地点に立つために、ひとりで四苦八苦する。
この経験の積み重ねがでるからこそ、そこからのこまかな調整ができるようになる、
そう考えることもできる。

初めてのマルチアンプシステムで、自動補正による大幅な時間の短縮、
そこからスタートする人には、それまでの積み重ねが薄い。

ゴールに向うための力を養えるのは、どちらだろうか。

Date: 1月 12th, 2018
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その15)

SACDとCDのハイブリッド盤では、
当然のことながら、SACDへのマスタリングとCDへのマスタリングは同じではない。

器(メディア)のカタチ(DSDかPCM)、サイズ(記憶容量)が、SACDとCDでは違うのだから、
その器におさまるもののマスタリングが違うのは、ごく当り前のことである。

とはいえ「THE DIALOGUE」のSACDの音は、そうとうに違う。
まっとうなSACD、それもハイブリッド盤で、CDの音と比較すると、
低音域が1オクターヴとはいわないまでも、半オクターヴほど低いほうにのびる印象がある。

このことは私だけでなく、多くの人が感じられていることだろう。
古くからの友人でオーディオマニアのKさんも、まったく同じことを言っていた。

これまでラックスのD38uでのCDレイヤーの再生では、
もう一息、低音が下のほうまでのびてくれれば……、と思い続けていた。

喫茶茶会記のウーファーはアルテックの416-8C。
JBLのウーファーとは、そこが大きく違うところだな、と感じてもいた。

ここでいうJBLのウーファーとは、
私が「THE DIALOGUE」のアナログディスクを聴いて驚いたJBLのスタジオモニター、
つまり4343と4350Aに搭載されている2231Aのことである。

「THE DIALOGUE」のSACDの音は、その領域が416-8Cからも出てきたのである。

CDでもおそらく出ていたのであろう。
けれど、どこか空振り気味だったのかもしれない。
しっかりと音として伝わってこなかった(聴こえてこなかった)。

それがSACDでは、はっきりと聴きとれる。
この違いは、ほんとうに大きいだけでなく、音楽の本質的なところに関ってくる。

Date: 1月 11th, 2018
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その27)

フルレンジからスタートする瀬川先生の4ウェイへのプラン。
このプランで、見落してはいけないのは基本的にマルチアンプドライヴである、ということ。

LCネットワークはミッドハイのハイカットとトゥイーターのローカットのみだ。
フルレンジからスタートするのはいい。
けれど、この瀬川先生のプランはアンプの数が増えるし、それだけシステムの規模は大きくなる。

そういいながらも、瀬川先生がLCネットワークを極力使われない、というのも理解できる。
フルレンジからスタートするプランであるからこそ、LCネットワークの排除とも考えられる。

フルレンジを一発で鳴らしたときの音の良さは、
ユニットが最少限ということもあるが、アンプとフルレンジユニットの間に、
コイルもコンデンサーも、抵抗も介在しないことによる良さがある。

LCネットワークでシステムを組むのであれば、
フルレンジユニットに対して、ローカットとハイカットのフィルターが入ることになる。

その26)で、4ウェイになると、ユニットは四つだが、フィルターの数は六つになり、
フィルターの数で考えれば、4ウェイは六次方程式を解くようなものだ、と書いた。

六次方程式なのは、LCネットワークであろうとマルチアンプであろうと変りはしないが、
どちらがより難しい六次方程式かといえば、LCネットワークのはずだ。

しかもネットワークの次数が高次になればなるほど、さらに難しくなっていく。
そうやって考えると、ボザークがスコーカーに16cm口径のフルレンジ的ユニットをもってきて、
ネットワークを、もっともシンプルな6dB/oct.のネットワークとしたのは、
位相重視の設計もあっただろうが、
フルレンジの音質的メリットを活かす意味合いも大きかったのではないか。

そういう視点から、
別項で書いているSICAのフルレンジユニットを中心としたマルチウェイのシステムを考え直すと、
違うシステムの構築の仕方が求められてくる。

Date: 1月 11th, 2018
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その16)

SICAの10cm口径のダブルコーンのフルレンジユニットの音を聴いていて、
頭を擡げてきたのは、瀬川先生の4ウェイのプランである。

何度か書いている。
フルレンジからスタートして、2ウェイ、3ウェイと発展し、
最終的には4ウェイとなるシステム構築である。

40年近く前、これをやってみようと思ったことは、いまもはっきりと憶えている。
結局フルレンジスピーカーはいくつか鳴らしてきたが、
2ウェイ、3ウェイ……と発展させることはなかった。

それでも数年おきに思い出す。
思い出すごとに、いまだったら、どのユニットをでやるだろうか、と思う。
思うだけで実行することはなかった。

SICAの音を聴いて、このままフルレンジとして聴くのもいいけれど、
4ウェイまで発展させなくとも、3ウェイで、イギリスのBBCモニター的なスタイルでつくれないものか、
そんなことを考えていた。

ウーファーは20cm、25cmくらいか。
30cmも捨て難い。

30cmにするなら、JBLの4311的なまとめ方もいいかもしれない、と、
BBCモニター的なことから外れたことを、もう考えてしまっていた。

いやいや最初に考えていたスペンドールのBCIIくらいの大きさの3ウェイならば……、
と考えを元にもどす。

となるとウーファーは大きくても25cmくらいまでで、
トゥイーターはドーム型、もしくはAMT(ハイルドライバー)にしたい。

エンクロージュアはあまりガチガチにしたつくりではなく、
BBCモニター的に奥に長いプロポーションで、あまり重たくしたくない。

いやいや──、とまた思い直す。
今年は、押入れで眠ったままのQUADのESL63 Proを直すことを最優先したい、と。

その他にもプランはいくつかある。
私の場合、どれかひとつに絞って「始めろ」と自分自身にいうことなのは、
よーくよーくわかっている。

それでもフルレンジから始めるマルチウェイシステムは、
オーディオ少年真っ只中だったころの残り火であって、いまもくすぶっているのを感じていた。

Date: 1月 11th, 2018
Cate: ディスク/ブック

超画期的木工テクニック

特に用事がなかったけれど、ぶらっと新宿の東急ハンズに行っていた。
六階に上ったら、「木工、やられてます?」と声をかけられた。

毎週木曜日、15時から六階の工具売場で行われている木曜木工という実演販売だった。
電動工具がなければ、正確な木工は難しいと思いがちである。

けれど木曜木工の人は、手引鋸でいとも簡単にまっすぐに角材を切っていく。
鋸が特殊なわけではなく、ノコギリガイドを使っていた。
といっても、このノコギリガイドも特殊なものではない。
ただ側面にマグネットシートが貼られているだけである。

マグネットシートに鋸がくっつく。
だから刃が湾曲することもなく、まっすぐに切ることができる。
たったこれだけのことなのに、効果は確かですごい。

いままでスピーカーの自作を考えながらも、切断のことで二の足をふんでいる人は、
一度、木曜木工の実演を見たら、いい。

実演されていた方は、杉田豊久氏で、
「超画期的木工テクニック」と「杉田式・ノコギリ木工のすべて」の筆者でもある。