Posts Tagged 長島達夫

Date: 8月 2nd, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その11)

カウンターポイントのチューナー開発は結局は形となることはなかった。
どこまで話が進んだのかは知らない。

ただ長島先生が強い関心を示されていた、ということは、乗り気であった、ということでもある。
おそらく長島先生の頭の中には、チューナーとしてのあるべき構成、アイディアがなにかしらあったのだろう。
それは内部に関することだけではなかったはずだ。

長島先生はデザイナーではないけれど、
コントロールアンプ、チューナーといった、使い手が直接触れる機器のインターフェースに関しては、
長島達夫としての考えをお持ちだった、と私は感じていた。

このころの私は、いまのようにチューナーに対して、チューナーのデザインに関しては、
ほとんど興味・関心がなかった。
いまだったら、長島先生がチューナーのインターフェイスをどういうふうに考えられていたのかを、
あれこれきいた、と思う。

そういえばステレオサウンドにいたころも、チューナーの話はほとんど記憶がない。
話題になることがあっただろうか。

もし私が10年早く生れていて10年早くステレオサウンドで働くようになっていたら、
チューナーについての話をいろいろきくことができただろう。

でもそんなことをいってもどうにもできないわけだから、
チューナーの写真をとにかく見ている。
チューナーの写真だけではない、レシーバーもまたチューナーであるからだ。

そうなるとB&Oのレシーバーであり、
Beomaster6000ということになる。

Beomaster6000といっても、1980年代のBeomaster6000ではなく、
1975年ごろの4チャンネル・レシーバーのBeomaster6000のことだ。

Date: 8月 1st, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その10)

長島先生はマランツのModel 9を使われない理由を話されていたことがある。
Model 9が素晴らしいパワーアンプだということはわかっているけれど、
長島先生の性分としてつねにベストな状態にしておきたい。
となるとModel 9は調整箇所が多く、大変だから、ということだった。

少しくらい出力管のバイアス電流が変動しても気にならない人もいれば、
すごく気にする人もいる。
こればかりはその人の性分だから、まわりがとやかくいうことではない。

Model 9のように調整・チェック用のメーターがついているアンプは、
細かなことが気になる人、つねにベストの状態にしておかないとダメな人には向かない、ともいえる。
視覚的に動作チェックができるアンプは、どうしてもメーターに目が行ってしまいがちになる。

そういう長島先生だから、あえてModel 10Bをとらなかったかもしれない……、
そんな想像もできる。

Model 10Bの調整箇所がどれだけあるのか、
それがどれだけ大変なのかは、正直わからない。
けれど使用真空管の数からして、つねにベストの状態を維持しようとなると、そう簡単なことではないだろう。

カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団の公演の放送もやってくれるFMである。
けれど、これだけの内容のものとなるとそう度々放送されるわけではないし、
ラジオなのだから、少し気楽に聴いていたい、という気持もある、と思う。
少なくとも私にはある。

いいチューナーは欲しい。だけど調整が大変なチューナーはできれば勘弁、というのが私の本音である。
長島先生がそうだったのかはわからない。
でも、Model 10Bにされなかったのは、案外そういう理由なのではないのか。

だとしたらカウンターポイントのマイケル・エリオットが構想していた、
受信部(高周波回路)は半導体で、低周波の回路は真空管で、
というチューナーに、強い関心を示されたのも納得がいく。

Date: 8月 1st, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(その9)

長島先生のアンプ遍歴は、ステレオサウンド 61号に載っている。
私がステレオサウンドに入ったころ、長島先生は岡先生や山中先生から、トラさんと呼ばれていた。

なぜトラさんなのか、疑問だった。
そのころ長島先生はコーヒーといえば、トアルコトラジャばかり注文されていた。
まさか、それでトラさんということはないだろうとは思っていたけれど、
トラさんのトラの意味がわからなかった。

結局、山中先生にだったと記憶しているが、「長島先生はなぜトラさんなんですか」ときいた。
答は「最初にトランジスターに飛びついたから」だった。

そういえばステレオサウンド 61号の記事にも、かなり早い時期からトランジスターについて勉強し、
無線と実験に連載記事を書かれていたことを思い出した。

私がステレオサウンドを読みはじめたころは、すでに長島先生は真空管アンプ派の人だと思っていたから、
トランジスターのトラとは思いもしなかった。

その長島先生が使われていたルホックスのチューナーFM-A76はトランジスター式である。
長島先生はマランツのModel 7、Model 2を愛用されていた。
このマランツの管球式アンプに惚れ込まれていた。

きっと長島先生はチューナーもマランツのModel 10Bで揃えられたかったのだと思う。
そして長島先生が10Bを手に入れられたら、きっと各部の調整をしっかりとやられていたはずだ。