Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その7)

すでに書いているようにステレオサウンド 60号の318ページには図面も載っている。
4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付けた側面図である。

この図を見た人ならば、そこにパラゴンの図面が重なってくるであろう。

JBLのバックロードホーン型システムとして、C40 Harknesがよく知られているが、
このC40 Harknesより前にC34 Harknesと呼ばれる、やはりバックロードホーン型システムがある。

C40は横置きのエンクロージュアで、C34は縦置きでコーナー型という違いがある。
そのことを知っている人ならば、318ページの側面図を頭の中で90度傾けてしまうのだはないだろうか。

4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付け、横置きにする。
ウーファー用のホーンに構造の違いはあるものの、パラゴンの思い起すには充分である。

C55は1957年に登場しているが、C55はC550の型番を変更しただけであり、
C550は1955年の登場である。
パラゴンは1957年。

登場した年代はパラゴンのほうが後ではあるが、
パラゴンは構想から製品化まで10年近い年月がかかっている、ときいている。
とすれば、C55(4520)エンクロージュアのホーン開口部にHL88を取り付けるという発想は、
パラゴンのユニット配置が先にあったから生れてきたものかもしれない。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その3)

安定感のある音──、
こう書いてしまうと、誤解する人がいることをこれまでの体験から知っている。

安定感のある音、それはどっしりした音、
つまりに鈍い音、細やかさに欠ける音──、
そんなふうに受けとる人が、なぜかいる。

あえて書けば、安定感のある音、
これがあるからこそ、実は細やかな音、音楽の繊細な表情を、
同じアナログディスクから聴き得ることができる。

繊細な音を、どうも勘違いしている人が少なからずいる。
繊細な音を出すには、音の強さが絶対的に不可欠である。

音のもろさを、繊細さと勘違いしてはいけない。
力のない、貧弱な音は、はかなげで繊細そうに聴こえても、
あくまでもそう感じてしまうだけであり、そういう音に対して感じてしまう繊細さは、
単にもろくくずれやすい類の音でしかない。

そういう見せかけだけの繊細な音は、
音楽のもつ表情の変化に十全に反応してこない。
いつも脆弱な印象をつきまとわせ、聴き手に不安な印象を与える。

そんな音が好きな人もいる。
でも、私はそんな音で音楽を聴きたくはない。
音楽にのめり込むには、そんな音では困る。

聴き手に不安・不安定さを感じさせない、
そういう音でなければ、実のところ繊細な音の表現は無理だと、これまでの経験からはっきりといえる。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(その2)

EMTのアナログプレーヤー、930stは1970年代においても、
すでに旧式のプレーヤーとしての扱いだった。

国産のアナログプレーヤーはすべてがダイレクトドライヴ方式に移行していて、
ワウ・フラッターは930stよりも一桁安い価格帯の普及型プレーヤーでも、
930stのワフ・フラッターの値よりも一桁低いレベルに達していた。

1970年代の終りには、カッティングマシンもダイレクトドライヴ化されてきて、
ワウ・フラッターの低さを誇るレコード会社も現れていた。

そういう時代にリム(アイドラー)ドライヴの930stは、音のよいプレーヤーの代名詞となっていた。
とはいえ、オーディオマニアのすべての人が、そう認識していたわけではない。

「EMTの930stって、ほんとうに音のいいプレーヤーですか」という人は今だけでなく、昔からいた。
旧式ともいえるつくり、カタログ上のスペックにしても旧世代といえるものだから、
今も昔もいるカタログ上のスペックがなによりも優先する人たちにとっては、
930stというアナログプレーヤーは、旧式であるばかりか非常に高価なだけに、
物好き(骨董好き)が使うモノということになろう。

930stが旧式のプレーヤーであることは否定しないが、
音を聴けば、この旧式のプレーヤーでなければ求められない音の安定感があることにわかる。

930st以上の安定感を求めるならば、927Dstかトーレンスのリファレンスにしかないくらいに、
930stでかけるアナログディスクの音は安定している。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その6)

ステレオサウンド 60号、318ページの写真と図面を見た人ならば、
このシステムがいったいどういう音を出したのか──、
この手のシステムにあまり関心をもてない人であっても、気になるのではないだろうか。

この記事(スピーカーユニット研究)の筆者、園田隆史氏は次のように書かれている。
     *
 さて、今度は低音ホーン内部にHL88を据えつけたシステムに移ろう。最初は、中高音がウーファーより下から聴こえてくるのではないかという心理的な不安と、今まで見たことのないような面構えになかなか慣れることができなかった。ところが実際に音を出してみると、音源はウーファーとホーンレンズの中間にできることがわかった。これは標準的なフロアーシステムとほぼ等しい高さで、聴きなじんでゆくうちに、ドライバーとウーファーのつながりの良さも相まって、とても自然な音場が得られることに気づいた。前システムと比べると、ややドライバー帯域のレベルが下がり、ハイエンドがまるめこまれた印象になる。気掛かりな低音ホーン内部での回折効果も少なく、センターのファンタムチャンネルが抜けてしまうということもない。また、低音によってドライバーの音が妙な変調を受けることもなかった。
 むしろ、エネルギーの重心が明らかに下がり、ホーンドライバーの存在を意識させないメリットのほうが大きい。HL88をエンクロージュアに載せたシステムとは、明らかにスペクトラムが変ったという印象で、今まで聴いてきた数々の組合せのなかでは、最も滑らかな中高域が聴ける。ハイエンドがそれほどのびているわけではないにもかかわらず、トゥイーターの必要性をまったく感じさせないのは、帯生きないのクォリティが揃っているからだろう。聴かされているという印象の強かったこのPAシリーズのなかで、そうした威圧感が最も少なかったシステムだ。かといって迫力やエネルギー感に不満がないのは、こうした大型システムの余裕だろう。
     *
この試聴で使われている4520エンクロージュアは、プロ用なだけに黒の塗装仕上げで、
見た感じは、いかにも業務用スピーカーという印象が強い。
もちろんサランネットなどついてこないから、
バックロードホーンの開口部にHL88を取り付けると、
見慣れるまではかなり奇異な感じがつきまとうことだろう。

人によっては見慣れるということがないかもしれない。

だが4520の元となったC55には、
4520と同じ黒の塗装仕上げの他に、サランネットのついたウォールナット仕上げも用意されていた。

サランネット付きであれば、HL88を隠すことができる。
4520(C55)はかなり大型のエンクロージュアではあるが、
ウォールナットでサランネットがついて、
ホーンを含めてユニットがいっさい見えないのであれば、ずいぶん部屋に置いた感じも変ってくる。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その14)

シルエットとデザインについて考えていると思い出すことがある。

私が子供のころ、テレビではウルトラマンをやっていた。
ウルトラマンをやっていたころ、私の住んでいたところではNHK以外の民放局はひとつしかなかった。
そのあともう一局増えて、いまではさらにふえているけれど、
私が上京するまでは、民放は二つだけだった。

チャンネル数が、東京など大都市とくらべてずっと少なかった、そのころの地方では、
テレビ番組の数もそれに比例して少ないわけで、
ウルトラマンの放送する時間帯、
子供のいる家庭ではほとんどウルトラマンにチャンネルを合せていたことだろう。

みんなウルトラマンに夢中になっていた。私もそうだった。

ウルトラマンにのオープニングには、ウルトラマンや科学特捜隊のメカ、
それに怪獣たちがシルエットで描かれていた。

ウルトラマンに続くウルトラセブンでも同じだった。
主題歌が流れるオープニングではウルトラセブン、ウルトラ警備隊のメカ、怪獣が、
やはりシルエットで描かれていた。

シルエットが伝えてくれる、いわゆる情報量は少ない。
だがウルトラマン、ウルトラセブンでのシルエットは、
それだけで何が描かれているのか、子供にもすぐにわかるほど特徴的であった。
つまり、そのことはウルトラマン、ウルトラセブンに登場する、
ウルトラマンやウルトラセブン、車や戦闘機といったメカ、怪獣のデザインが、
シルエットだけで表現されていた、ということでもある。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その13)

パイオニアのExclusive F3は、
Exclusiveシリーズの他のモデルと同じようにヒンジパネルをもつ。
このポケットの中に電源スイッチ、ワイド/ナロウの切替え、ミューティングなどの六つのツマミが並ぶが、
ヒンジパネルを閉じた状態では、チューニング用のツマミだけが、
フロントパネルにある、ただひとつのツマミということになる。

ということはExclusive F3において、フロントパネルを占めるのは、
コントロールアンプのC3ではツマミだったけれど、
メーター、ダイアルスケールといった表示に関するものである。

Exclusive C3をシルエットで表しても、
ツマミの数、配置によって、オーディオ機器を見慣れている人であれば、
このシルエットはExclusive C3だと判断できても、
フロントパネルにツマミがひとつしかないExclusive F3を、
シルエットだけで、そうだということを言い当てられる人がどれだけいようか。

ツマミの少なさから、ほとんどの人がシルエットだけでもチューナーということはわかる。
だが、そこから先、どのメーカーの、どの機種なのか、となると、
各社のチューナーのデザインに相当な関心をもっていて、
しかもそれらを記憶していなければ言い当てることはまず無理である。

このシルエットだけでそれがどのオーディオ機器であるのか、
それがわかることは、オーディオのデザインにおいてどれだけ重要なことなのか、
それともさほど重要なことではないのか、
これについては迷っている。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: 「オーディオ」考

なぜオーディオマニアなのか、について(その3)

具体的な何かを、意識的に音楽に求め得たいがために、音楽を聴いているわけではない。
モーツァルトにしろ、ベートーヴェンにしろバッハにしろ、
彼らの音楽を聴きたいとおもったり、何かで感じたりしたから聴いてきた。

その結果として、そこで鳴ってきた音楽を受けとめて、
何かを感じたり、何かを得たりすることがある。

同じ音楽(ディスク)をかけたからといって、常に同じものを感じたり得たりできるわけではない。

ヒーリングミュージックというのが、ほんとうに存在するのであれば、
いついかなる時も、ヒーリングミュージックと呼ばれる音楽を鳴らしさえすれば、
どんな人であっても、どんな時であって癒しが得られなければならないわけだが、
決してそんなことは起り得ない。

ある人にはヒーリングミュージックと呼ばれるものが癒しを与えてくれたとしても、
別の人にとっては、なんてことのない音楽でしかなかったりするだろうし、
同じ人であっても、癒しを感じる時もあれば、そうでない時もあってふしぎではない。

音楽のもつ力を信じてやまない。
音楽の効能を信じてもいるし、感じてもいる。
だから別項で、「wearable audio」を書き始めた。

音楽を聴き続けていくうえで大事なことは、
己が何を聴きたいのか、欲しているのかを、きちんと感じとれるかどうかである。

身体が欲しているものを食べること──、
このことだってそう簡単なことではない。

われわれはどれだけ素直に聴きたい音楽を選んでいるのだろうか。

Date: 10月 4th, 2013
Cate: 「オーディオ」考

なぜオーディオマニアなのか、について(その2)

モーツァルトの音楽を聴きたくなる。
モーツァルトの曲ならば、なんでもいいという時もあれば、
ピアノ協奏曲が聴きたい時、交響曲が聴きたい時、オペラが聴きたい時などがあり、
さらにピアノ協奏曲の第20番が聴きたい、とか、交響曲の第40番が、「魔笛」が聴きたい時がある。

ピアノ協奏曲にしても、他の曲にしても、一枚しかディスクを持っていないということは、まずない。
あまり頻繁に聴かない曲に関しても、数枚のディスクがあり、
好きな、よく聴く曲に関しては、もっと多くの枚数のディスクを持つのは、
音楽好きの人ならばいうまでもないことであり、
数あるディスクの中から、同じ「魔笛」にしても、誰の演奏にするか決めていくこともあれば、
「魔笛」のディスクの置いてあるところを見て、この人の演奏にしよう、と決めることだってある。

さらにはこの作曲家の、この人の演奏によるディスクを聴きたい、と思い、
そのディスクを探す過程で目についた、まったく違う作曲家の、違う演奏家のディスクをかけてしまうこともある。

そうやって鳴らした音楽によって、結果として癒されたり、元気を得たりすることはもちろんある。
思わぬ感動を得られることもあるし、なにがしかの啓示といいたくなるものを感じることだってある。

だからといって、癒しを得たいからモーツァルトのディスクを選んでいるわけではない。
モーツァルトの音楽を聴きたい、と思った時、
無意識のうちに癒しを求めていたのかもしれない。

だが、ここが大事なのだが、癒しを欲しいから、そこでモーツァルトのディスクを選んでいるわけではない。
あくまでも聴きたい、と思える曲が先にあり、
その曲を自分のオーディオで聴いた時に、結果として癒しがあったり、
他のことが起ったりする──、
そういうふうに音楽を聴いてきた(選んできた)ような気がする。

Date: 10月 3rd, 2013
Cate: 「オーディオ」考

なぜオーディオマニアなのか、について(その1)

もう10年ほど経つのだろうか、
音楽に癒しの力がある、とかいわれ始め、
ヒーリングミュージックという言葉が急に目につくようになったことがある。

笑い話なのだが、
ある大型レコード店で、この手のヒーリングミュージックのCDばかり集めたコーナーをつくっていた。
でも、そこには大きく、ヒアリングミュージック、と書かれていたことがあった。

たしかに音楽は聴くものだから、ヒアリングミュージックは間違ってはいないのだろうが。

──という話をしてくださった菅野先生とふたりで大笑いしたことがある。

ヒーリングミュージックを聴く人は、
なにかしらの癒しを、そこでの音楽に求めているわけだろう。

癒されたい、音楽から元気をもらいたい、刺戟が欲しい、とか、
何かを、音楽に求めて、その音楽を聴く、という行為は、一般的なのだろうか。

まぁ一般的だから、ヒーリングミュージックという言葉が流行ったともみてもいい。

それでも、ヒーリングミュージックと呼ばれる音楽に関心のない私は、
ほんとうにそうなのか……、というおもいを捨てられない。

音楽は好きである。
あまり聴かない(好まない)音楽もあるけれど、
ずっとながいこと聴き続けている音楽がある。

けれど、いま振り返ってみると、
癒されたいから、この音楽を聴く、
元気になりたいから、そういう音楽を聴く、
そういった、ある種のはっきりとした目的意識をもって、
音楽家にはっきりと求めるものを意識して──、
そんなふうにして音楽は聴くものだろうか……、と思うし、そういう音楽の聴き方をしてきただろうか。

Date: 10月 3rd, 2013
Cate: audio wednesday, 瀬川冬樹

第34回audio sharing例会のお知らせ(瀬川冬樹氏のこと)

11月のaudio sharing例会は6日(水曜日)である。
翌7日は、瀬川先生の命日であり、33回忌となる。

だから、前日6日のaudio sharing例会では、
私が所有している瀬川先生の未発表原稿(未完原稿)、
デザインのスケッチ画、かなり若いころに書かれたある記事のプロットといえるメモ、
瀬川先生が考えられていたオーディオ雑誌の、いわば企画書ともいえるメモ、
その他のメモなどを持っていく。

これらはいずれきちんとスキャンして公開していくつもりだが、
原稿、メモ、スケッチそのものを公開するのは、この日(11月6日)だけである。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 10月 2nd, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その16)

JBLのパラゴンを「欲しいなあ」と書かれたステレオサウンド 59号とほぼ同時期に、
特別増刊として「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」が出た。
この別冊の巻頭言は、瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」だった。

書き出しはこうだった。
     *
 二ヶ月ほど前から、都内のある高層マンションの10階に部屋を借りて住んでいる。すぐ下には公園があって、テニスコートやプールがある。いまはまだ水の季節ではないが、桜の花が満開の暖い日には、テニスコートは若い人たちでいっぱいになる。10階から見下したのでは、人の顔はマッチ棒の頭よりも小さくみえて、表情などはとてもわからないが、思い思いのテニスウェアに身を包んだ若い女性が集まったりしていると、つい、覗き趣味が頭をもたげて、ニコンの8×24の双眼鏡を持出して、美人かな? などと眺めてみたりする。
 公園の向うの河の水は澱んでいて、暖かさの急に増したこのところ、そばを歩くとぷうんと溝泥の匂いが鼻をつくが、10階まではさすがに上ってこない。河の向うはビル街になり、車の往来の音は四六時中にぎやかだ。
     *
おそらく誰しもが、あれっ? と思われたはず。
私も、あの世田谷の、本漆喰のリスニングルームはどうなったのか? とまず思った。
なぜ、都内の高層マンションを借りて住まわれているのか。

いまの歳だった、そういうことなのか、と察しがつく。
けれど、1981年の時点で18だった若造の私には、その理由がなんともわからなかった。
ただ、あのリスニングルームではないということだけがわかっていた。

このこととが、59号のパラゴンが「欲しいなあ」が、この時は結びつかなかった。
だが、いまは違う。
だから、59号のパラゴンについて書かれた文章を読み返すことで見えてくるものが出てきたのだ。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その5)

言葉で説明されるよりも、一枚の写真、一枚の図のほうが、
それこそ「好奇心の輪」をひろげてくれる。

ステレオサウンド 60号を、1981年6月に手にした時、
特集のカラーページの写真も迫力があり、ページをめくる指がとまった。
同じようにページをめくる指がとまったのが、317ページ、318ページに載っている写真だった。

バックロードホーン・エンクロージュアのC55のプロフェッショナル版であり現代版である4520、
そのホーン開口部に蜂の巣ホーン(HL88)が取り付けてある。

最初はぱらぱらとめくっていただけで内容は読んでいなかったけれど、
すぐさまスピーカーユニット研究の最初のページに戻り、読み始めた。

C55(4520)は縦型のエンクロージュアだから、
ウーファーはエンクロージュア上部に、ホーン開口部は下部に位置する。

ホーン開口部にHL88を取り付けるということは、
ウーファーが上に来て、ホーン・ドライバーが下部、それもかなり床に近いところに位置することになる。

60号318ページの全形写真は、4520のホーン開口部だけでなく、
エンクロージュア上部にもHL88を乗せている。
横一列に並んでいるE145-8を上下のHL88でサンドイッチしている。

迫力があるともいえるし、奇異ともいえる。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その15)

ステレオサウンド 59号の瀬川先生の文章の最後に出てくる「欲しいなあ」。
それは「欲しい」ではなく「欲しいなあ」であった。

本心では、この項に関しては、これ以上各のは蛇足だと思っている。
「欲しいなあ」に込められている瀬川先生のおもいを感じとれる人ならば、
ここまでで充分ではないのか……、そう思いながらも書いていくつもりでいる。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その12)

チューナーには、とにかくダイアルスケールがフロントパネルの大半をしめることになる。
選択した局の周波数を直接数字で表示できるようになるまでは、
ダイアルスケールが、チューナーの顔といえた。

そしてチューニング用のツマミ。
このふたつの要素は、チューナーのフロントパネルに欠かせない。

そして、このダイアルスケールには、なんらかの照明が必要になる。
そしてダイアルスケールの前面には、そのことと関係してアクリルもしくはガラスの透明パネルがつけられる。

フロントパネル自体はアミルであっても、
フロントパネルの視覚的中心となるダイアルスケールは、透明パネルと照明の組合せとなる。

私がチューナーのスケッチをまるでしなかったのも、
ここに理由があるのかもしれない。
デッサンの訓練を受けている人ならばまだしも、
中学生、高校生の素人のスケッチでは、
ダイアルスケールの質感、照明の具合などは表現できるはずがない。
ただパネル、ツマミ、メーターなど輪郭線を描いてるようなものだったから。

無意識にチューナーのスケッチは、素人には無理だとわかっていたのかもしれない。

そしてチューナーには、メーターが必要である。
最低でもシグナルメーターとチューニングメーターはいる。

パイオニアのExclusive F3では、このふたつのメーターに加え、
マルチパス検出メーターとピークレベルメーター、計四つのメーターがつく。

Date: 9月 30th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その4)

ステレオサウンドのスピーカーユニット研究の筆者は園田隆史という人だった。
それ以前のステレオサウンドにはまったく書かれていなかったはず。
いきなり登場した人が、熱っぽい企画をやっている、という印象で読んでいた。

園田隆史がどういうひとなのかは、ステレオサウンドで働くようになってわかった。
いまはまだ書かないでおこう。

スピーカーユニット研究は、面白い企画だと思いながらも、
記事が私にとって面白かったか、というと、正直、不満がないわけではなかった。

スピーカーユニット研究は、筆者の園田さんの嗜好が強烈に出ている。
そこが、この記事の魅力であり、
私にとって、もうひとつのめり込むことができなかった理由ともなっている。

それでも興味深い内容ではあった。
スピーカーユニット研究はJBL篇ではじまり、アルテック篇へと続いていった。
JBL篇の最終回は60号だった。

この60号の誌面に、非常にそそられる写真と図面が載っている。
現代版080システムの再現である。
どんなシステムかについては、記事を引用しておこう。
     *
たまたま、今回の取材で編集部をおとずれたときに、C55エンクロージュアの図面のコピーを見せられ、ホーン開口部にHL88ホーンレンズをマウントした状態の側面図に目が止った。HL88をC55のホーン開口部にそっくり納めたシステムが存在したことを聞かされたことはあったが、実際に図面を手にしてみると、むらむらと好奇心の輪がひろがりどうしても実現させてみないと気がすまなくなった。
     *
私もスピーカーユニット研究に出てきた、いくつもの組合せで、
もっとも興味津々だったのは、この080システムの再現だった。