Date: 10月 5th, 2013
Cate: 930st, EMT
Tags:

EMT 930stのこと(その3)

安定感のある音──、
こう書いてしまうと、誤解する人がいることをこれまでの体験から知っている。

安定感のある音、それはどっしりした音、
つまりに鈍い音、細やかさに欠ける音──、
そんなふうに受けとる人が、なぜかいる。

あえて書けば、安定感のある音、
これがあるからこそ、実は細やかな音、音楽の繊細な表情を、
同じアナログディスクから聴き得ることができる。

繊細な音を、どうも勘違いしている人が少なからずいる。
繊細な音を出すには、音の強さが絶対的に不可欠である。

音のもろさを、繊細さと勘違いしてはいけない。
力のない、貧弱な音は、はかなげで繊細そうに聴こえても、
あくまでもそう感じてしまうだけであり、そういう音に対して感じてしまう繊細さは、
単にもろくくずれやすい類の音でしかない。

そういう見せかけだけの繊細な音は、
音楽のもつ表情の変化に十全に反応してこない。
いつも脆弱な印象をつきまとわせ、聴き手に不安な印象を与える。

そんな音が好きな人もいる。
でも、私はそんな音で音楽を聴きたくはない。
音楽にのめり込むには、そんな音では困る。

聴き手に不安・不安定さを感じさせない、
そういう音でなければ、実のところ繊細な音の表現は無理だと、これまでの経験からはっきりといえる。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]