THE DREAMING(その3)
The Goldを購入したころに鳴らしていたスピーカーは、セレッションのSL600だった。
いくら分解クリーニングをしたとはいえ、いきなりSL600を接ぐ度胸はなかった。
まずはこわれてもいい、と思えるスピーカーを接いで鳴らした。
10cm口径のフルレンジである。
とにかくこのスピーカーで一週間、まったく不安を感じさせない動作と音であれば、
SL600を鳴らそう、と決めた。
凝ったエンクロージュアに入っていたわけではないし、
床に直置きで鳴らした小口径のフルレンジからは、
やっぱり The Goldと思える音が鳴ってきた。
高価でもないフルレンジがよく鳴る。
こんなにも鳴ってくれるのか、と思えるほどに鳴ってくれた。
二時間ほど聴いて、SL600にしたかった。
けれど我慢した。
三日ほど聴いて、ますますSl600にしたかった。
それでも我慢した。
とにかく一週間は様子をみようと決めたのだから。
五日あたりで“THE DREAMING”をかけてみた。
ここでまた驚いた。
こんなふうに鳴るのか、という驚きがあった。
ここでSL600にしようと、そうとうに心が動いた。
もう五日間、安定して鳴っている。
ここでSL600にしても、何の問題も発生しないはず。
それでも我慢して、六日目も“THE DREAMING”を聴いて、
七日目も“THE DREAMING”を聴いて、
ようやく八日目にSL600に接ぎかえた。
期待以上の音でSL600は鳴ってくれた。
数枚のディスクをかけてから、“THE DREAMING”をかける。
こちらの期待は、かなり大きくなっている。
10cmのフルレンジで、あれだけ鳴ってくれたのだから──、という期待があった。
SL600のほうが、10cmフルレンジよりもほぼすべての点でよかった。
けれど“THE DREAMING”では、
10cmフルレンジではスタティックな印象が消えてしまっていたのに、
SL600では残っている。
完全に払拭されていたわけではなかった。
これには少々落ち込んだ。