Archive for 9月, 2016

Date: 9月 27th, 2016
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その5)

ラックスキットのマニュアルを数点、インターネットで公開されている人がいる。
当然のことだが、ラックスキットのマニュアルには実体配線図が載っている。

どんな文章よりも、一枚の実体配線図が語るものは多いし、大きい。
マニュアルはモノクロだから、実体配線図もモノクロ。
いわば線画である。

実体配線図は、初歩のラジオについていた。
中学生のころ読んでいた。
初歩のラジオの実体配線図もモノクロの線画だった。

だから色鉛筆で、配線一本一本に色を塗っていた。
最初はいわば塗り絵でしかなかった。
けれどやっていくうちに、色分けするようになってきた。
電源ライン、信号ライン、アース関係と色分けしながら、色鉛筆で塗っていく。

小遣いが足りないから、つまり作りたくともそのための予算がないから、
こうやって塗って楽しんでいた。
塗っていくことで勉強になる。無駄ではなかった。

ラックスキットの中でも真空管のパワーアンプは、
プリント基板が使われていないから実体配線図が重要である。

実体配線図を描くのは、けっこう手間がかかる。
私も描いたことがある。
伊藤先生のアンプの内部写真をみながら、実体配線図を描いた。

つくるには、お金がかかる。
いいモノをつくろうとすれば、それだけの予算を必要とする。
すぐには取りかかれないことも、時としてある。
それでもやれることはある。

真空管アンプならば、実体配線図を描くということがある。

Date: 9月 26th, 2016
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その4)

BOSEbuild Speaker CubeとパイオニアのPIM16KTを対比させながら、
書いていこう、と最初は考えていた。

けれど(その2)からいきなり話が逸れてしまっている。
逸れてしまって思ったことがある。

製品についていくるマニュアルのことだ。

完成品のオーディオ機器にもマニュアルはついてくる。
海外製品ではついてこないモノはあるようだが、
国内製品でついてこないということは、まずない。

当然ラックスキットにもマニュアルはついている。
そのマニュアルは完成品とのマニュアルとは違うものだ。

例えばラックスのCL32とラックスキットのA3032は同じ内容・外観のアンプだが、
CL32は完成品で、A3032はキット。

A3032を完成させれば、CL32のマニュアルが必要になるが、
その前にA3032のマニュアル、完成させるためのマニュアルが必要である。

いったいどういうマニュアルだったのだろうか、といまごろ思っている。
いいかげんなマニュアルではなかったはずだ。

いいかげんなマニュアルでは、アフターサービスがさらに大変になるから、
親切丁寧なマニュアルだったように思う。

ラックスキットにはさまざまなキットがあった。
コントロールアンプ、パワーアンプ、プリメインアンプ、
それも真空管もあればソリッドステートもあった。

これらの製作マニュアルは、これから何かをつくろうとしている人にとって、
良い教科書になるのではないだろうか。

ラックスはラックスキットのマニュアルを公開してくれないのだろうか。

Date: 9月 26th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その11)

今週末にはインターナショナルオーディオショウだ。
今年も各ブースでは、プレゼンテーションが行われる。

インターナショナルオーディオショウでは、そのプレゼンテーションを講演と呼んでいるが、
私は、どうしても、あれを講演とは呼びたくないし、
プレゼンテーションと呼ぶべきだと思っている。

毎年ショウの一週間ほど前には、その講演スケジュールのPDFが、
日本インターナショナルオーディオ協議会のウェブサイトで公開される。
今年はまだのようだが、すでにアクシスのサイトでは先週から公開されている

オーディオ評論家を呼んでのプレゼンテーション、
呼ばずに自社プレゼンテーションのスケジュールである。

自社プレゼンテーションのところは、詳細は書かれていないが、
メーカー、輸入商社のサイトでは公開されているところもある。

アクシスのスケジュール
ステラ/ゼファンのスケジュール
ノア/アーク・ジョイアのスケジュール
ヤマハのスケジュール

アクシスはステージプログラム、ステラ/ゼファンはデモスケジュール、
ノア/アーク・ジョイアは演奏スケジュール、ヤマハは試聴スケジュールとしている。

少し前に書いてるように、私はヤマハのNS5000を愉しみにしている。
去年のショウではヤマハのCDプレーヤーとプリメインアンプで鳴らされた。
今年もそうなのか、それとも……、と思っていただけに、
ヤマハの試聴スケジュールを見て、嬉しくなったし、楽しみが増した。

Date: 9月 26th, 2016
Cate: 再生音

続・再生音とは……(その27)

その人の音を表現するものとして、
例えばその人がJBLのスピーカーを鳴らしていたとしたら、
JBLらしくない音という表現が、そこで使われることがある。

JBLのところは、他のブランドや型番に置き換わる。
アルテックらしくない音、タンノイらしくない音……、いろいろある。

これは褒め言葉なのだろうか。
一般的には褒め言葉として受けとめられている。

例えば「可能性が感じられる音ですね」とか「可能性が感じられるスピーカーですね」、
こういう言い方も時としてされることがある。

友人、知人が新しいスピーカーに買い換えた。
興味、関心のあるスピーカーだから、さっそく聴きに行く。
いい音が鳴っていれば、言葉には困らない。
けれどそうでない時が、どうしてもある。

そういう時、あからさまに「ひどい音ですね」という人もいるが、
たいていの人は、相手を傷つけまいと「可能性の感じられる……」ということがある。

そういわれて喜ぶ人もいれば、
これがそういう時に使われがちな言葉であることを知っている人もいる。

「らしくない音ですね」、
これも時として「可能性が感じられる……」と同じ意味合いで使われることがあるからだ。

「JBLらしくない音ですね」といわれたら、どちらなのだろうか。
喜ぶ人の方が多いのだろうか。

知人も、そういわれて喜んでいたし、
彼自身も、JBLらしくない音だと表現していた。

このことは、ひとつのテーマとして書けるぐらいに長くなりそうだが、
ここでは、再生音らしい、再生らしさについて書いていこう(考えていこう)。

Date: 9月 26th, 2016
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その3)

事実は小説よりも奇なり、とはよくいわれることである。
ラックスキットのアフターサービスはたいへんだろうな、という私の想像を、
現実ははるかに上廻っていたことを、さきほど知った。

facebookに(その2)へのコメントがあった。
そこにはリンク先があった。

AV Watchの記事へのリンクで、記事のタイトルは
52年前のアンプも復活!“末永く使う”視点で探るオーディオの魅力。ラックスマン修理現場に潜入」。

約二年前の記事だ。
先ほど読み終えたが、実におもしろかった。

修理という現場の大変さ、と、
そこにいる人たちのプロフェッショナルぶりが伝わってくる。

ラックスキットの話も、当然出てくる。
このところだけ引用しておこう。
     *
-修理に運び込まれる機器の中で、特に強敵というか、修理が難しかった製品はありますか?

土井:特にこの製品というのは無いですね。あえて言えば、アンプを自作するキットも販売していたので、キットの修理は強敵でしたね。お客様が作ったものを修理するわけですから、そもそもキチンと完成しているのかわからない状態から直さねばなりません。

 ケースを開けたらまず蜘蛛の巣のようなグチャグチャな配線があって(笑)、普通は抵抗パーツの足を短く切ってハンダ付けしますが、切らずに長い足のまま取り付けられていて、しかもハンダ付けではなくボンド付けというのもありました。ケース開けたら基板が全部ボンドで黄色いんですよ。思わず「これ、音出ていましたか!?」って聞いたら、「初めは出ていましたよ」と(笑)。ボンドでも最初は接点が繋がっていますが、だんだん電気が通らなくなるんです。もうこうなると、全部ハンダ付けからやり直し、キットの作り直しですよね。お客様から「もうこのキットはあげます。新しいのを買います」と言われたこともあります。
     *
ハンダ付けではなく、ボンド付け。
しかもリード線を切らず、にである。

このレベルがあるとは想像できなかった。
どんな人であっても、うまい下手はあっても、ハンダ付けだけはなされているものだと思っていた。

キットは、自分で部品を集めるわけでもないし、
回路を設計するわけでもない。図面を引くわけでもない。
だから、プラモデルみたいなモノだと小馬鹿にする人もいるけれど、
キットはそういう見方をするものではない。

とはいえ、ボンド付けでは、まさしくプラモデルみたい、としかいいようがない。
ラックスのサービスマンは、こういうレベルで組み立てられたモノでも、
一から修理をしようとする。修理不能でことわってもいいだろうに……、と思うけれど。

AV Watchの、この記事(インタヴュー)は、
他にも引用したいところがいくつかある。
リンク先の記事をぜひ読んでほしいので、このへんにしておく。

昔マークレビンソンのアンプとモジュール構成が話題になっていた時期、
マッキントッシュのアンプ内部を、エポキシ樹脂で充填してしまったユーザーがいた、
という話をエレクトリの人から聞いている。

これも修理したそうである。

Date: 9月 26th, 2016
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その2)

以前はさまざまなキットがあった。
スピーカーからアンプ、アナログプレーヤーなど、という意味でのさまざまなキットと、
ハンダ付けができれば完成する簡単なモノから、
マランツのModel 7、Model 9といった、
ベテランでも完成させるのが難しいレベルのモノまで、という意味でのさまざまなキットである。

このころは税制がいまとは違っていて、
完成品にかけられる税があって、キットという未完成品には税が免除されていた。
そういうこともあって、キット専門のメーカーもあったくらいだ。

日本ではKE(京浜電子工業)、ケンクラフト(トリオ)、ラックスキット(ラックス)、
クリスキット(ユナイト)、SSL(ステレオサウンド)などが、
キット専門ブランドとしてあった。
これら以外に、アイデン、コーラル、ダイヤトーン、フォステクス、マイクロ、オンキョー、
パイオニア、タマサウンド、タムラ、テクニクス、ビクターなどもキットを販売していた。

海外ではヒースキットがキット専門ブランドで、ソニーサービスが輸入していた。
ダイナコ/ハフラーは有名だし、
ブラウン、グッドマン、KEF、ピアレスもスピーカーキットを出していた。

中でもラックスキットが、キットには関しては圧倒的に積極的だった。
製品数も多かったし、アンプだけでなく、アナログプレーヤーもあったし、
真空管のエレクトリッククロスオーバーネットワークもあった。
キットでしか出ていないモデルがあった。

当時は、ラックスキット、よくやってくれている、ぐらいに思っていたが、
アフターサービス面では、完成品よりも場合によっては手間も時間もかかることが発生する。

ラックスキットを購入したことがないので、
どの程度までアフターサービスでカバーしてくれるのか実体験としてはないが、
ラックスキットのアフターサービスが悪かったというウワサは聞いていないし、
むしろいいということを聞いたことがある。

キットをつくる人のレベルもさまざまだ。
プロを超える人もいれば、
ハンダ付けの技術も未熟な人が、いきなりレベルの高いキットに挑戦したりもするわけで、
そういう例であってもアフターサービスするのは、
完成品を組み立てるよりも大変なことは、容易に想像できる。

Date: 9月 25th, 2016
Cate: 楽しみ方

オーディオの楽しみ方(つくる・その1)

今年6月にBOSEからBOSEbuild Speaker Cubeが出た。

ニュース系サイトのいくつかで記事になっていた。
ほとんど記事にもあったように日本では発売されていない。
でも検索すれば、いくつかのところで取り扱っている。

BOSEbuild Speaker Cubeのことは、すぐにでも書こうと思ったけれど、
どんなふうに書こうか考えているうちに、
そういえば、と思い出したキットがあった。

パイオニアが1974年か1975年ごろに出したPIM16KTである。
古くからのオーディオマニアならば、型番から、どんな製品(キット)なのか想像がつく。

PIM16KTは、16cm口径のダブルコーン・フルレンジユニットPIM16のキット版である。
スピーカーシステムを自作するためのキットではなく、
スピーカーユニットを自作するキットである。

価格は1975年の時点で1,720円、PIM16Aは2,600円。
1979年には2,100円、PIM16Aは2,600円で変らず。

このくらいの価格であれば中学生だった私にも買える。
買おうかな、と考えた。
けれどキットが2,100円で、
500円(二本だから1,000円だが)足すと完成品のPIM16Aが買える。

PIM16KTはPIM16Aをバラバラにしたものだった。
振動板、ダンパー、ボイスコイル(ボビン)、センターキャップ、フレーム、磁気回路、
ガスケット、ネームプレート、マグネットカバーなどからなる。

作業はほとんどが接着なのだが、正確に組み立てる自信がなかった。
PIM16Aよりもかなり安かったら手を出していたかもしれないが、
価格差がほとんどない、ということ、PIM16Aをそれほど欲しいとも思っていなかったので、
結局買わなかった。
いま思えば、買っておけばよかった、と後悔する気持がちょっぴりある。

Date: 9月 25th, 2016
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(ラックスCL32・その6)

ラックスのCL32について、いつか書こうと以前から決めていた。
CL34のことは触れないか、さらっと触れるぐらいにするつもりだった。

けれど今回のような書き方にしたのは、少し前にラックスからLX380という、
プリメインアンプの新製品が登場したからである。

LX380の型番からわかるように、SQ38シリーズの最新モデルにあたる。
LX380の前にはSQ38uというモデルがあった。

SQ38uを見た時も、ラックス、ほんとうにどうしたんだろうか……、と思ってしまった。
LX380でも、またそう思ってしまう。

正確にはラックスマンとしなければならないのだが、
以前はラックスだったし、
「どうしたんだろうか……」には、
ラックス時代の製品を知っているからこそのおもいが入っているから、ラックスとしておく。

まず型番について書いておきたい。
私はこのブログでは基本的には「−(ハイフン)」は省略している。

以前のラックスの型番のつけ方にはひとつのルールがあった。
最初のアルファベットが二文字のときは数字との間にハイフンは入らない。
SQ38、CL35、MQ36など、当時のラックスの広告を見てもらえば、確認できる。

一文字の場合は数字との間にハイフンがはいる。
L-390V、C-1000、M-6000というようにだ。

それがいつの間にか変更になっている。
ラックスマンのウェブサイトで製品情報のページをみてもらえれば、
アルファベットが二文字だろうと一文字だろうと、数字との間にハイフンが入る。

今回の新製品LX380も、正確にはLX-380である。
SQ38uもSQ-38uである。

日本のオーディオ機器はハイフンを使う機種がほとんどだ。
その中にあって、ラックスは少し違っていた。
それがラックスらしさでもあったのに、いまは違う。

型番のハイフンなど、ほんとうに細かなことである。
そんなことを取り上げたところで、音とは関係のないことじゃないか──、
そう思う人の方がいまでは多いのかもしれないが、
そのこまかなことの変更が、いまのラックスのデザインに深く関係しているとも感じられる。

Date: 9月 25th, 2016
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(ラックスCL32・その5)

SQ38FD/IIが1978年にモデルチェンジし、SQではなくLX38になり、
ウッドケースを脱ぎ捨てた。

SQ38FD/IIとLX38のどちらに魅力を感じるかといえば、
私はLX38である。
ウッドケースがないということも理由として大きいけれど、
それ以上に私にとってLX38には、別の想い出があるからだ。
そのことは以前書いているので、ここではあえてくり返さない。

その時の音が、まだ耳に残っている、と感じるときがある。
まったく別の音を聴いている時に、その時の音がふっと甦ってくるような感覚があるからだ。

CL32が1976年、このころのラックスはラボラトリーシリーズを出していた。
コントロールアンプの5C50、パワーアンプの5M21(メーターなしは5M20)、
プリメインアンプの5L15、チューナーの5T10、5T50、
トーンコントロールユニットの5F70、ピークインジケーターの5E24があった。

それまでのラックスのソリッドステートアンプもウッドケースが標準だったがが、
ラボラトリーシリーズはさっぱりと脱ぎ捨てている。

真空管コントロールアンプのCL35IIIもモデルチェンジして、
1978年にCL36になったと同時にウッドケースから抜け出している。

ウッドケースなしのラックスの製品がすべて優れていて、
ウッドケースつきの製品がそうではない、といったレベルの話ではなく、
このころのラックスは何かから脱却しようとしていた印象があるのだ。

CL36の音は聴いていないのでなんともいえないが、LX38はよかった。
ラボラトリーシリーズはすべてを聴いているわけではないが、
いいアンプという印象がいまも残っている。
CL32も、ここに含まれる。

CL34は、ここには含まれない。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その4)

ステレオサウンド 60号に菅野先生のリスニングルームが載っている。
それ以降のステレオサウンドにも何度か載っている。

手元にある方は並べて見較べると、ある変化に気づかれるだろう。
変化はひとつだけではないのでヒントを書いておくと、
スピーカー・エンクロージュアの上に注目してほしい。

それはただ乗っているだけではない。
間には柔のモノが使われている、とだけ書いておこう。

菅野先生から、いろいろ試してみた、という話を聞いている。
そしてあるモノに落ち着いた、ということだった。

ゴムやフェルトなど、そういったモノを使うとき、
何を選ぶのか。

私は基本的には自然の素材をまず試してみるようにしている。
天然ゴムもそうだし、フェルトも使えば、木や紙もある。
その後に人工のモノを試すようにしている。

1980年に入ってからか、ソルボセインという素材が登場した。
優れた振動吸収性を持つ、というこの素材は人工筋肉として開発された、ということだった。
青いシートで売られていた。

いまではかなりポピュラーな素材のひとつである。
もちろんずっと以前に試してみた。

この手のものは、どこかにどう使うかということの方が重要であり、
ただ単に敷いてみた、ぐらいの使い方では、はっきりとしたことは何も言えない。

ソルボセインを使っていて気になったのは、触った感じだった。
あまりいい感じはしなかった。
自然素材のいいところは触った感じの良さもある。

結局のところ(といっても私が試した範囲ではあるが)、
おおむね触っていい感じのするものが、音でも好結果につながるところがある。
必ずしも絶対とはいえないけれど、
スピーカーやアナログプレーヤーにおいては、その傾向が顕著であると感じる。

ソルボセイン以降もさまざまな新素材が登場している。
消えていったものもある。
それらすべてを触っているわけではないし、試してみたわけでもないが、
最近、興味深い素材があるのを知った。

Technogel(テクノジェル)という素材だ。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(ラックスCL32・その4)

ラックスのCL32をデザインしたのは、木村準二氏である。
ターンテーブルPD121も、木村準二氏のデザインである。

ラックス PD121で検索すると、
瀬川先生のデザインとしている人(サイト)が複数あるが、
瀬川先生ではなく、くり返すが木村準二氏のデザインであり、
PD121のデザインを見た瀬川先生は、非常に悔しがられた、という話も聞いている。

CL34のデザインが誰なのかは知らない。
木村準二氏ではないはずだ。
CL32をベースに、誰か他の人のデザイン(というか手直し)であろう。

手直しと書いてしまったが、
手直しとは到底いえない変更である。
手直しならば、CL32よりもCL34の方が優れていなければならないのだが、
実際にはそうではないことは、CL32とCL34の写真を較べれば誰の目にも明らかだ。

DTPが普及し始めた1990年代後半、
こんなことがいわれていた。

雑誌編集部が連載記事のデザインを、デザイナー(デザイン事務所)に依頼する。
DTPだからデータで入稿される。
その後は、最初のデータをフォーマットとして、
編集部で連載記事のレイアウトをしていく。

連載記事であればそちらの方が経費がかからずに済むし、
何もデザイナーに毎回発注する必要はないだろう、という判断のもとで、だ。

毎回まったく同じパターンで連載記事をつくっていくのであれば、
デザイナーに対しては失礼なことであっても、うまくいくのかもしれない。
でも実際の編集作業は、細かな変更が必要になることもある。

そういうときに編集者がMacとそれ用のアプリケーションを使って、
細かな変更を加える。
問題が発生するのは、こういう時からである。

編集者がデザインの意図を100%理解しているのであればまだいいが、
表面的な理解に留まっている場合、
連載が続けば続くほど、少しずつ元のデザインから離れていってしまう──、
こういう問題が指摘されたことがある。

CL32とCL34のデザインの違いについて書いていて、そのことを思い出してしまった。
木村準二氏がCL34のデザインを手がけられたら、結果は違っていたはず。

CL32のデザインをきちんと理解している人がCL34を手がけていれば、
また違っていたはずだ。

ところがリニアイコライザーからトーンコントロールへの変更、
それに伴うツマミがひとつ増えることを、
あまりにも安易に処理してしまった例がCL34のように思ってしまう。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(コメントを読んで・その4)

2008年9月から、このブログを書き始めて、これが6650本目である。
これだけ書いていると、最初からすべて読んでいる人よりも、
途中から読みはじめた人の方が多いように感じている。

最初から読んでいる人でも、以前読んだことは忘れてしまっていたりする。
それでもコメントをされる方には、もう少し読んだ上で……、といいたくなることがある。

今回のコメントには、
《あなたも雑誌社の人だからこういうマーケティングの問題点には踏み込むことはできないでしょうけど。今でも広告主様には筆が鈍る印象がありますね。》
とある。

私は雑誌社には勤めていない。
私がステレオサウンドを辞めたのは、日付の上では1989年1月20日である。
有給休暇が残っていたので、1988年12月下旬から休みに入っていた。
なぜこう思い込まれたのだろうか。

広告主には筆が鈍る印象──、
このブログをふくめて、audio sharingに広告主はいない。
広告を募集したところで、ここに広告を出すような企業はないであろう。

このブログで、あからさまに書いてはいこうとは思っていないし、書くつもりもない。
私の判断で、いまは書かないこと、書く順番などを決めている。
だから書くのを控えていることがかなりある。
そのため時として、そんな印象を受けられるかもしれないが、
ありもしない広告とはまったく無関係である。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(コメントを読んで・その3)

コメントをくださったインコ様から、今朝またコメントがあった。
     *
たとえばハイレゾやPCオーディオの問題点を指摘できずに一方的にCDを貶めるような人がいますけど、これなどはメディアリテラシーがない、自分で物を判断できずに流れに乗らされているような事例であり、ゼネラルオーディオ的なポジションでピュアオーディオに土足で入りこむ弊害でしょう。
あなたも雑誌社の人だからこういうマーケティングの問題点には踏み込むことはできないでしょうけど。今でも広告主様には筆が鈍る印象がありますね。
掲示板などを見ればこの手の事例がたくさん見られます。
     *
このコメントを読んで、audio sharingを公開してしばらくして届いたメールのことを思い出していた。
audio sharingを公開したのは2000年8月。
一年くらいして、ある方からメールがあった。

そこには、なせ高城重躬氏の書かれたものを公開しないのか、とやや強い口調で書いてあった。
audio sharingで公開している文章は、私自身が強く影響を受けたものだ、と返事した。
その返事に対して、前回よりもさらに強く、
はっきりいえば怒りのメールといえるものが届いた。

こう書いてあった。
オーディオ協会から金をもらってサイトをつくっているんだろう。
だったらオーディオ界に貢献した高城重躬氏の文章も、即公開しろ、と。

なぜ、この人が、私がオーディオ協会から委託され(報酬をもらって)、
audio sharingをつくっていると思われたのか、理由はまったくわからない。

ものすごい独りよがりな思いこみとしかいいようがない。
audio sharingは私の個人サイトであり、どこからもお金をもらっているわけではない。

必要だと思ったからつくり公開しているだけである。

その人は会社からメールを出されていた。
メールアドレスを見ると、一部上場企業だということがわかる。
誰もが知っている大企業である。

それにしてもなぜ、そんな思いこみをされたのだろうか。
audio sharingは個人サイトである、と説明したメールを送ったが、それっきりだった。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(ブームだからこそ・その5)

日本唯一のレコードプレスメーカー東洋化成のエンジニアにレコードの疑問について聞いてみた」という記事が、
今年5月に公開された。

記事が公開されたsoundropeというサイトは、このとき知った。
facebookで、この記事をシェアしている人がいたから知ることができた。

タイトルに「疑問」とある。
ということは、あの疑問について東洋化成にストレートに訊ねるのかと期待した。
結果は期待外れだった。

といってはsoundropeのスタッフの方たちに失礼だろうが、
それでも期待外れであり、タイトルに「疑問」とつけたのだから、
疑問についてきいてみるべきであろう。

東洋化成にアナログのマスターレコーダーがないことは、
オーディオ関係の人ならば、かなり多くの人が知っている。
オーディオ業界で働いていない私でも、けっこう前から知っていたことである。

soundropeの人たちがどういう人なのかは知らないが、
少なくともサイトを運営して、東洋化成を訪問して記事をつくるぐらいだから、
オーディオの素人であろうはずがない。

ならばsoundropeの人たちも、東洋化成にマスターレコーダーがないことは知っていたであろう。
仮に知らなかったとしても、アナログディスクの製作過程を知る人ならば、
取材の段階でマスターレコーダーがないことにすぐに気づくはずだ。

知らなかった、気づかなかった……、はお粗末すぎる。
東洋化成にアナログのマスターレコーダーがないことは、
soundropeの人たちは知っていた、気づいていたはずだ。

そのうえでタイトルに「疑問」という言葉をいれたのだろうか。

Date: 9月 23rd, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その10)

インターナショナルオーディオショウを含めて、
オーディオショウは楽しむ場であって、楽しませてくれる(もらえる)場ではない。

インターナショナルオーディオショウのあるブースに入ったとして、
そのブースのスタッフが至れり尽くせりで、あなたを楽しませてくれるわけではない。

出展社のスタッフは、あの条件のなかで、
来てくれた人にいい音を聴いてもらおうとは思っている(に違いない)。
中には、あまりやる気の感じられないところもないわけではないが、
それでも出てくる音がどうでもいいと考えているところはひとつもないはずだ。

出展社のスタッフの人たちは、
登場したばかりの新製品や、一押ししたい製品を来場者にアピールするのが仕事であって、
来場者を至れり尽くせりでもてなすのが仕事ではない。

こんな当り前すぎることを書いているのも、
「楽しませてもらおう」「楽しませもらえると思っている」耳、
つまり受動的な耳の人もいると感じるからだ。

そういう耳では、大半のブースで不満が生じるかもしれない。
楽しむことなんてできないかもしれない。
楽しめたとしても、わずかなブースだけだったりするであろう。

でも楽しむ耳、つまり能動的な耳であれば、どのブースであっても楽しめるはずだ。