ステレオサウンドについて(その27)
ステレオサウンド 46号の表紙はアルテックの同軸型ユニット604-8Gだった。
ユニットの全景をとらえた写真だ。
604-8Gを構成している色は黒だ。
コーン紙も黒、エッジも黒、フレームも黒。
もちろんそれぞれの黒には微妙な違いがあって立体的な陰翳を醸している。
こういうモノは被写体としてどうなんだろう。黒以外の色はない。
46号の表紙では604-8Gの下にはアルミ(と思われる板)が敷かれている。
604-8Gの写真は、これでいくつもみてきた。
46号の表紙は、その中でのベストといえる。
この表紙をみているだけで、アルテック604-8Gがほしくなる。
604-8Gからは、私が求める音は決して出て来そうにないと感じながらも、
それでも手元にあってほしいユニット(カタチ)である。
古くからのアルテックの使い手は、604-8Gを低く評価する傾向がないわけではない。
604Eまでがアルテックの音であり、
604-8Gになり、それまで受け継がれてきた604シリーズに共通する音の美点が消えてしまった……、という。
それにフレームの形状も604-8Gから変更された。
フレームの塗装もそうだ。
604Dのアルテックグリーンでもなく、604Eのグレー(磁気回路)とホワイト(フレーム)でもない。
武骨な黒になってしまった。
そんなバイアスのかかった目には46号の表紙は、どう映るのか。
46号の特集は、表紙の604-8Gが象徴しているように「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質を探る」。
46号を書店で手に取ったとき、確かに表紙は604-8G以外にない、と思った。
でもいまはUREIのModel 813も表紙の候補に挙がっていたのではないか、とも思う。
Model 813は特集でも、新製品紹介でも取り上げられている。
どちらでも高い評価を得ている。
Model 813の中核を成すのは604-8Gであり、オリジナルのマルチセルラホーンが、
UREI独自の青いホーンに換装されている。
この青のホーンは、これはこれで映えた表紙になった、と思う。
それでも46号の表紙は604-8Gであり、それでよかった、と私は思う。