Archive for 6月, 2015

Date: 6月 4th, 2015
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(その4)

アメリカで1970年代におこったMC型カートリッジの再評価は、
半導体アンプの進歩により優秀なヘッドアンプの登場と、
日本製のMC型カートリッジがあってのことだといわれている。

そうであろう。
けれど日本製のMC型カートリッジが評価されたのは、
日本製のMM型カートリッジが輸出できなかったことも遠因のように考えられる。

日本には当時多くのMM型カートリッジがあった。
優秀なモノもあった。けれどこれらはすべて海外に輸出できなかったのは、
MM型カートリッジの特許をシュアーとエラックを取得していたからである。

日本では特許が認められなかった。
これには理由があって、日本では各社MM型カートリッジを開発・製造・販売することができた。

シュアー、エラックのMM型カートリッジの構造と、
日本製MM型カートリッジの構造には、ひとつ大きな違いがある。

つい先日ステレオサウンドから出た「MCカートリッジ徹底研究」。
このムック後半の「図説・MC型カートリッジ研究」におそらく載っているはずの図を見てほしい。

見開きで、右ページにMM型カートリッジの構造図、左ページにはMC型カートリッジの構造図、
それぞれレコードの溝をトレースしている。

MM型カートリッジの構造図ではカンチレバーがありその奥にマグネットがあり、
このマグネットの周囲にダンパーがある。
そしてこれらを囲むように、コイルが巻かれたヨークが四方に配置されている。

つまりヨークが形成しているのは四角形なのに対し、
マグネットの形状は円筒形である。
誰もがなぜマグネットを四角にしなかったのかと思うだろう。
事実、シュアー、エラックのマグネットは四角になっている。

円筒形のマグネットは日本のMM型カートリッジということになる。
これは推測すぎないのだが、おそらくマグネットの形も特許に関係しているのだろう。

MM型カートリッジの発電に関する基本特許は日本では認められなかったけれど、
細部に関する特許は認められていたのかもしれない。
少なくともなんらかの都合で、日本製のMM型カートリッジは円筒形にせざるをえなかったのではないのか。

Date: 6月 3rd, 2015
Cate: SP10, Technics, 名器

名器、その解釈(Technics SP10の場合・その11)

テクニクスのSP10の性能の高さを誰もが認めるところだが、
SP10のデザインとなると、私は最初見たときに、相撲の土俵を思い浮べてた。

いまも土俵だな、と思ってしまう。
台形の台座に、円形のターンテーブルプラッター。
ターンテーブルプラッターは中心ではなくやや右側に寄っている。

つまり優れたデザインだと思っていない。
けれどテクニクスはMK3まで、このデザインを変更していない。
私だけが優れたデザインと思っていないのであれば、それも理解できるのだが、
SP10のデザインは、ステレオサウンドを読んでもわかるように、決して高い評価を得てはいない。

SP10MK2が新製品として登場した時にも、デザインについて、井上先生と山中先生が語られている。
     *
山中 このスタイルというのは、人によって好き嫌いがはっきり分かれそうですね。
 僕個人としては、モーターボードの高さの制限を相当受ける点に、問題点を感じてしまうのですけれども、これは、実際にアームを取りつけて使ってみると、非常に使いにくいんです。
井上 モーターボードをもっと下げて、ターンテーブルが突き出たタイプの方が使いやすいと思いますね。
山中 ターンテーブルの、ひとつのベーシックな形というのは、昔からあったわけです。プロ用の場合には、そういったものに準拠して作っているはずなんです。
 なにもここでSP10の最初のモデルを固執する必要は、まったくないと思います。性能的にも、まったくの別ものといえるわけですし、旧型に固執しないほうがこのターンテーブルの素晴らしさが、もっとも出されたのではないかと思います。
(ステレオサウンド 37号より)
     *
かなり厳しく言われている。
これは井上先生、山中先生とものSP10の性能の高さは認められていて、さらなる改良が加えられ、
それだけでなくより洗練されて名器と呼べるモノになってほしいという気持からの発言ではないのか。
それだけの期待をSP10に対して持っていた、ということでもあろう。

けれど、テクニクスは名器よりも標準原器をめざしていたのであれば、
SP10の、あのデザインも、変更を加えなかったことも、理解できるような気がしてくる。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その2)

これまでに全身麻酔の経験は三回ある。
一回目は幼すぎてまったく記憶にない。
二回目、三回目は通常ならば全身麻酔ではないのだが、
喘息持ちゆえに全身麻酔をかけて、ということだった。

麻酔から醒めはじめの感覚はできればもう味わいたくない。
私の場合、二回目、三回目とも麻酔から醒めるのが遅かったようだ。
昼の手術(骨折の治療)なのに、麻酔から醒めはじめたのは夜中の一時すぎくらいだった。

それから夜が明けるまで眠れない。
病室の天井を、ぼんやりした意識で眺めていた。

病室のベッドの上で最期を迎えるということは、
病室の天井をうすれゆく意識で見るということなのか。
そんなことも思っていた。

五味先生も瀬川先生も岩崎先生も、みな天井を眺めるしかなかった……。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その4)

KEFのModel 105というスピーカーシステムは、
同時代の同じイギリスのスピーカーシステムであるスペンドールとくらべると、
音の性格そのものが本質的なところで違っている。

BCIIもBBCモニターの流れを汲むスピーカーとはいえ、
その音の本質は、聴き手に緊張を強いるところは排除されているといえるほど、
全体に艶のあるたっぷりとした響きをともなって聴かせる。

ゆえに瀬川先生はBCIIは、アキュレイトサウンドという括りをされているが、
《厳密な意味では、精確な音の再生と快い音の再生との中間に位置する》と、
「続コンポーネントステレオのすすめ」の中で指摘されている。

Model 105には、そういう面はない。
瀬川先生は《厳格な音の分析者》と表現されている。
そういう性質のスピーカーであり、
このスピーカーシステムの特徴でもあるインジケーターランプを使い、
KEFの指示通りのセッティングを行えば、冷静な音を聴き手の前に展開してくれる。
こういう鳴り方だと、聴き手はやや緊張が強いられるところもなくはない。

瀬川先生はステレオサウンド 45号の試聴記に、
《かなり真面目な作り方なので、組合せの方で例えばEMTとかマークレビンソン等のように艶や味つけをしてやらないと、おもしろみに欠ける傾向がある。ラフな使い方では真価の聴きとりにくいスピーカーだ。》
と書かれている。

そうなのだ、艶、色気がたっぷりしていなくともいい。
そこまでいったらもうKEFのModel 105とはいえなくなる。
だが、わずかな艶とか色気といった、
いわば、それはスピーカーでの演出ということになるのだが、そういった要素を求めたくなる。

そのことが、私の中では銀線と結びついていった。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: 老い

老いとオーディオ(音がわかるということ・その6)

丸山健二氏の「新・作庭記」(文藝春秋刊)からの一節だ。
     *
ひとたび真の文化や芸術から離れてしまった心は、虚栄の空間を果てしなくさまようことになり、結実の方向へ突き進むことはけっしてなく、常にそれらしい雰囲気のみで集結し、作品に接する者たちの汚れきった魂を優しさを装って肯定してくれるという、その場限りの癒しの効果はあっても、明日を力強く、前向きに、おのれの力を頼みにして生きようと決意させてくれるために腐った性根をきれいに浄化し、本物のエネルギーを注入してくれるということは絶対にないのだ。
     *
「その場限りの癒しの効果」を浄化という人がいるのではないだろうか。
「その場限りの癒しの効果」でしかない音を、よい音という人がいるのではないだろうか。

人は「優しさを装って肯定してくれる」何かに肯定されたいのだろうか。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: audio wednesday

第53回audio sharing例会のお知らせ(井上卓也氏を語る)

6月のaudio sharing例会は、3日(水曜日)です。

井上先生と最後に話したのは電話だった。
2000年の夏だった。
Macを購入されたということで、オーディオの話ではなくMacの話をしていた。

井上先生は、私がaudio sharingをつくっているのをご存知だった。
電話の最後に、「がんばっているそうじゃないか、がんばれよ」といわれたことを思い出す。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その7)

フランスのメトロノームからカリスタが登場したのはいつごろだったのか。
忘れてしまったけれど、ステレオサウンドでカリスタの写真を見て、
ゲイルのGT2101だ、と思ったことは憶えている。

非常に高額で、音もいいという評判のカリスタだけど、
GT2101が登場したときの衝撃を味わった者には、どうしても二番煎じとうつってしまう。

ターンテーブルとCDトランスポートという違いがあるけれど、
あとから登場したのだから、より洗練したモノであってほしい、と思ったことも憶えている。

GT2101の衝撃が大きかったのは、デザインだけではなかった。
私にとって、ジョン・カールがエレクトロニクス部分を設計していることも、理由のひとつである。

GT2101は10〜99rpmまで、0.1rpmステップで回転数を設定できる。
本体とカールコードで接続されている円筒状のコントローラー上部中心にあるボタンを押せば、
33 1/3rpmに固定可能なことは知っていたけれど、それ以上の操作方法に関しては、
当時のオーディオ雑誌からの情報ではよくわからなかった。

いまは「Gale GT2101」で検索すれば、画像だけでなく動画もすぐに見つかる。
今回、その動画を見て、こうやって回転数を変えるのか、その操作に関しても驚きがあった。

こんなアナログプレーヤーが1977年か78年ごろに登場している。
ゲイルのデザイナーは誰だったのか、どんな人だったのか。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その6)

カートリッジの振動系以外は絶対に振動してはならない、
これをアナログディスク再生の理想とすれば、
レコード盤はターンテーブルプラッターに吸着することが、
より理想的であるわけで、レコード盤を浮すなどもってのほかということにもなる。

けれど世の中に無共振ということはありえないのだから、
それに振動を完全にコントロールすることも不可能なのだから、
ノイズも音のうち、と同じで、振動(共振)も音のうち、という考え方もできる。

究極を追い求めながらも、現実ではどこかで折り合いをつけることも求められる。
どこで折り合いをつけるのかは、人によって違ってきて当然であり、
どちらが正しいとか間違っているとか、他人が干渉すべきことではない。

アナログディスク再生の面白さは、こういうところにもある。
人それぞれ与えられた環境は違う。
その環境の中で、どう折り合いをつけていくのか。
また自分の感性とどう折り合いをつけるのか。

そのことに対して、いろいろなアプローチがやれるのがアナログディスク再生である。
こうでなければならないと決めつけてしまうのも、その人の自由ではあるけれど、
アナログディスク再生はそれでは面白さの半分も味わえないままになってしまうかもしれない。

ゲイルのGT2101、トランスクリプター、シネコのプレーヤーシステムのように、
レコード盤を浮すやり方は試そうと思えば簡単に試せることである。

確かにレコード盤の振動はターンテーブルシートに密着させるよりも増えることは、
実測データが示しているが、そのことがどう音に影響するのかは、
どんな本を読んでも書いてないし、それにケース・バイ・ケースでもある。

こうでなければならないと決めつけてしまったら、経験値を高めることはできない。
アナログディスク再生に必要なのは、高価なアナログプレーヤーやカートリッジではない。
使い手のアナログディスク再生への深い理解であり、
これを得るには、思い込みに捕われることのない耳(感性)とあらゆることを試してみる好奇心ではないだろうか。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その7)

1990年代にはいってから、
アンプの電源部の応答速度がオーディオ雑誌で活字になることが増えてきた。

たいていは大容量の電解コンデンサーよりも小容量のコンデンサーを使った方が、
応答速度の速い電源部がつくれる、とか、
そのことでアンプの音も、いわゆるハイスピードといわれる音となる、
そんな感じのことがいわれ出してきた。

ゴールドムンドのパワーアンプが話題になるとともに、
このこともよくいわれるようになってきた、と私は記憶している。

そのころラジオ技術で、コンデンサーの充電・放電の速度を測定したデータが載った。
確かに同品種のコンデンサーで測定すると、
大容量よりも小容量のほうが早いことは確かである。

その差はわずかとはいえるけれど、差があることは事実である。
それかどの程度聴感上影響しているのかははっきりとしたことはいえない。

大容量のコンデンサーよりも、小容量のコンデンサーを多数並列接続した方が、
応答速度の速い電源部はつくれるのかもしれない。
けれどリップル率を考えると、ある一定の容量はどうしても必要となり、
小容量ならばその容量を満たすまで並列接続することになる。

並列接続するためには配線が必要となる。
大容量のコンデンサーをひとつ使うのと、
小容量のコンデンサーを並列接続するのとでは、後者の方が配線は長くなる。

配線が長くなれば、それ自体がもつインダクタンス成分により、
電源部の高域インピーダンスはわずかとはいえ上昇することにもなる。

大容量か小容量かは電気特性だけで判断していいのだろうか。
ここにも機械的共振を考える必要がある。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: Friedrich Gulda

eとhのあいだにあるもの(その3)

バッハの平均律クラヴィーア曲集。
よく聴いてきた、つまりつきあいの長いレコードとなるとグレン・グールドの平均律ということになる。
他のピアニストの平均律クラヴィーア曲集は持っている。

それらの中で、40代後半ごろから頻繁に聴くようになってきたのがグルダの平均律だ。
私がもっているのはフィリップス・レーベルから出たCD。
ジャケットをみればわかるけれど、廉価盤扱いのCDである。

そこで聴ける音に大きな不満はないけれど、
もう少しいい音なのでは? と思わないわけではない。
それでも、ずっと聴いてきていた。

今日、グルダの平均律クラヴィーア曲集を録音したMPSから、
新たにCDとLPが発売になるというニュースが、
タワーレコードHMVのサイトで公開された。

どれだけの音の違いがあるのかはわからない。
さほど良くならないのかもしれないし、かなり期待していいものかもしれない。
予感としては、かなり良くなっているのでは、と思っている。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアとして(その呼称・その2)

あくまでも私のなかでの、ということわりをつけてではあるが、
五味先生はオーディオマニア、
高城重躬氏はHi−Fiマニア、
となる。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その5)

ゲイルGT2101の振動実測データをみると、やっぱりな、と多くの人が思うことだろう。

「プレーヤー・システムとその活きた使い方」は、
当時の日本ビクターの音響研究所長の井上敏也氏の監修によるもので、
多くの実測データはビクターによる測定である。

Galeでのハウリングの実験とついている章では、ふたつの実装データが載っている。
ひとつは、ターンテーブルプラッター外周に三つあるレコードを支持する箇所に、
カートリッジを降ろしての測定、
もうひとつはレコード支持部間にカートリッジを降ろしての測定である。
つまりレコードが浮いている状態の測定となる。

レコード支持部での結果は25Hzにピークがあるがそれもそれほど大きくはない。
それ以上の周波数ではかなり低く抑えられていて、かなり優秀な特性を示している。

レコードが支持部から離れて浮いている状態だとどうなるのか。
21Hzと50Hzに大きなピークがある。
60Hz以上の周波数ではうねりが見られ、
あきらかにスピーカーからの音圧によってレコードが揺すられていることがわかる。

その状態であっても、マグネフロートが効果的に働いているのか、
アクリルというベースの特質なのか、面積をできるだけ抑えたベース形状のおかげなのか、
ハウリング特性は優秀である。

レコードを浮すと音が大きくなる、という人がいる。
カートリッジは振動を電気信号に変換するものだから、
レコードそのものがスピーカーからの音圧でゆすられ振動が大きくなっているのだから、
その振動も含めてカートリッジはピックアップして電気信号へと変換するのだから、
音が大きくなって当然といえよう。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: オーディオマニア, オーディスト

オーディオマニアとして(その呼称・その1)

何者か、と問われれば、オーディオマニアと答える。

いまはオーディオマニアといっているけれど、
ずいぶん昔には音キチという呼称もあった。
オーディオマニアの「マニア」の部分を嫌う人はオーディオファイルを使ったりする。
レコード演奏家という呼称もある。

ほんの一時期ではあるが、ステレオサウンド誌上に「オーディスト」なる呼称も登場した。
幸いにもいまでは使われなくなっている。
オーディストについては、別項で書いているのでそちらをお読みいただきたい。

誰がどんな呼称を気に入って使おうと他人があれこれいうことではない。
オーディスト以外であれば。

私はオーディオマニアを使う。
音キチと呼ばれてもいいと思っている。
けれど、だからといってHi−Fiマニアと呼ばれるのは抵抗を感じる。

オーディオに関心のない人、もしかすると関心をもっている人でも、
オーディオマニアとHi−Fiマニアは呼び方の違いだけで同じと思っているだろうが、
私の中ではオーディオマニアとHi−Fiマニアは、同じところはあってもはっきりと違うところもある。
だから、あくまでも私はオーディオマニアである。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その4)

「続コンポーネントステレオのすすめ」で、瀬川先生は次のように書かれている。
     *
 たとえば、イギリス・トランスクリプターの Transcriber や、同じくイギリスのゲイルGT2101のように、一種前衛彫刻を眺めるようなデザインの奇抜さは、他に類のないという点で、とりあげるに値するかもしれない。フランスのシネコMark2002は、前二者ほどユニークではないにしても、透明のアクリルベースの美しさがユニークだ。
     *
ゲイルもトランスクリプターも同じ時代に、同じイギリスから生れている。
《一種前衛彫刻を眺めるようなデザイン》に関しては、ゲイルのGT2101の方につよく感じる。

GT2101は大小の三角形から成り立っている。
この三角形は直線から成るものではなく、内側にカーヴしている三角形で、
アクリル製なので透明な三角形でもある。

大きな三角形がベースで、三つの頂点に脚部がある。
この脚部は希土元素酸化物マグネット使用のマグネフロート方式で、
そのためベース部分は二枚のアクリルが使われている。

ターンテーブルプラッターは小さな三角形で、レコードは頂点にある円形のステンレス、
スピンドル周辺の円形のステンレスの四点によって浮くことになる。

瀬川先生が挙げられているトランスクリプターもシネコも同じようにレコードを浮している。
シネコは外周の六点とスピンドルの計七点支持、
トランスクリプターは外周六点、スピンドルとその間に三点の計十点支持である。

レコードをターンテーブルプラッターに密着させない。
これは昔からアマチュアの間でも試みられている。
私もずっと昔に実験したことがある。
いまも、レコードは浮した方がいいと主張する人はいる。
エアーキャップ(通称プチプチ)をターンテーブルシート代りにする人もいる。

音に関してはあえて書かないが、
レコードを浮すことによるレコードそのものの振動についての実測データはある。
誠文堂新光社から出ていた「プレーヤー・システムとその活きた使い方」に、
ゲイルのGT2101を使った実測データが載っている。