建造物としてのアナログプレーヤー(その4)
「続コンポーネントステレオのすすめ」で、瀬川先生は次のように書かれている。
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たとえば、イギリス・トランスクリプターの Transcriber や、同じくイギリスのゲイルGT2101のように、一種前衛彫刻を眺めるようなデザインの奇抜さは、他に類のないという点で、とりあげるに値するかもしれない。フランスのシネコMark2002は、前二者ほどユニークではないにしても、透明のアクリルベースの美しさがユニークだ。
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ゲイルもトランスクリプターも同じ時代に、同じイギリスから生れている。
《一種前衛彫刻を眺めるようなデザイン》に関しては、ゲイルのGT2101の方につよく感じる。
GT2101は大小の三角形から成り立っている。
この三角形は直線から成るものではなく、内側にカーヴしている三角形で、
アクリル製なので透明な三角形でもある。
大きな三角形がベースで、三つの頂点に脚部がある。
この脚部は希土元素酸化物マグネット使用のマグネフロート方式で、
そのためベース部分は二枚のアクリルが使われている。
ターンテーブルプラッターは小さな三角形で、レコードは頂点にある円形のステンレス、
スピンドル周辺の円形のステンレスの四点によって浮くことになる。
瀬川先生が挙げられているトランスクリプターもシネコも同じようにレコードを浮している。
シネコは外周の六点とスピンドルの計七点支持、
トランスクリプターは外周六点、スピンドルとその間に三点の計十点支持である。
レコードをターンテーブルプラッターに密着させない。
これは昔からアマチュアの間でも試みられている。
私もずっと昔に実験したことがある。
いまも、レコードは浮した方がいいと主張する人はいる。
エアーキャップ(通称プチプチ)をターンテーブルシート代りにする人もいる。
音に関してはあえて書かないが、
レコードを浮すことによるレコードそのものの振動についての実測データはある。
誠文堂新光社から出ていた「プレーヤー・システムとその活きた使い方」に、
ゲイルのGT2101を使った実測データが載っている。