ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その2)
これまでに全身麻酔の経験は三回ある。
一回目は幼すぎてまったく記憶にない。
二回目、三回目は通常ならば全身麻酔ではないのだが、
喘息持ちゆえに全身麻酔をかけて、ということだった。
麻酔から醒めはじめの感覚はできればもう味わいたくない。
私の場合、二回目、三回目とも麻酔から醒めるのが遅かったようだ。
昼の手術(骨折の治療)なのに、麻酔から醒めはじめたのは夜中の一時すぎくらいだった。
それから夜が明けるまで眠れない。
病室の天井を、ぼんやりした意識で眺めていた。
病室のベッドの上で最期を迎えるということは、
病室の天井をうすれゆく意識で見るということなのか。
そんなことも思っていた。
五味先生も瀬川先生も岩崎先生も、みな天井を眺めるしかなかった……。