建造物としてのアナログプレーヤー(その6)
カートリッジの振動系以外は絶対に振動してはならない、
これをアナログディスク再生の理想とすれば、
レコード盤はターンテーブルプラッターに吸着することが、
より理想的であるわけで、レコード盤を浮すなどもってのほかということにもなる。
けれど世の中に無共振ということはありえないのだから、
それに振動を完全にコントロールすることも不可能なのだから、
ノイズも音のうち、と同じで、振動(共振)も音のうち、という考え方もできる。
究極を追い求めながらも、現実ではどこかで折り合いをつけることも求められる。
どこで折り合いをつけるのかは、人によって違ってきて当然であり、
どちらが正しいとか間違っているとか、他人が干渉すべきことではない。
アナログディスク再生の面白さは、こういうところにもある。
人それぞれ与えられた環境は違う。
その環境の中で、どう折り合いをつけていくのか。
また自分の感性とどう折り合いをつけるのか。
そのことに対して、いろいろなアプローチがやれるのがアナログディスク再生である。
こうでなければならないと決めつけてしまうのも、その人の自由ではあるけれど、
アナログディスク再生はそれでは面白さの半分も味わえないままになってしまうかもしれない。
ゲイルのGT2101、トランスクリプター、シネコのプレーヤーシステムのように、
レコード盤を浮すやり方は試そうと思えば簡単に試せることである。
確かにレコード盤の振動はターンテーブルシートに密着させるよりも増えることは、
実測データが示しているが、そのことがどう音に影響するのかは、
どんな本を読んでも書いてないし、それにケース・バイ・ケースでもある。
こうでなければならないと決めつけてしまったら、経験値を高めることはできない。
アナログディスク再生に必要なのは、高価なアナログプレーヤーやカートリッジではない。
使い手のアナログディスク再生への深い理解であり、
これを得るには、思い込みに捕われることのない耳(感性)とあらゆることを試してみる好奇心ではないだろうか。