五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その7)
1990年代にはいってから、
アンプの電源部の応答速度がオーディオ雑誌で活字になることが増えてきた。
たいていは大容量の電解コンデンサーよりも小容量のコンデンサーを使った方が、
応答速度の速い電源部がつくれる、とか、
そのことでアンプの音も、いわゆるハイスピードといわれる音となる、
そんな感じのことがいわれ出してきた。
ゴールドムンドのパワーアンプが話題になるとともに、
このこともよくいわれるようになってきた、と私は記憶している。
そのころラジオ技術で、コンデンサーの充電・放電の速度を測定したデータが載った。
確かに同品種のコンデンサーで測定すると、
大容量よりも小容量のほうが早いことは確かである。
その差はわずかとはいえるけれど、差があることは事実である。
それかどの程度聴感上影響しているのかははっきりとしたことはいえない。
大容量のコンデンサーよりも、小容量のコンデンサーを多数並列接続した方が、
応答速度の速い電源部はつくれるのかもしれない。
けれどリップル率を考えると、ある一定の容量はどうしても必要となり、
小容量ならばその容量を満たすまで並列接続することになる。
並列接続するためには配線が必要となる。
大容量のコンデンサーをひとつ使うのと、
小容量のコンデンサーを並列接続するのとでは、後者の方が配線は長くなる。
配線が長くなれば、それ自体がもつインダクタンス成分により、
電源部の高域インピーダンスはわずかとはいえ上昇することにもなる。
大容量か小容量かは電気特性だけで判断していいのだろうか。
ここにも機械的共振を考える必要がある。