Archive for 1月, 2014

Date: 1月 18th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その18)

「世界のオーディオ」のラックス号掲載の「私のラックス観」の最後は、こう結んである。
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 いろいろなメーカーとつきあってみて少しずつわかりかけてきたことだが、このラックスというメーカー、音を聴いてもデザインを見ても、また広告の文章でさえも、一見、ソフトムードを漂わせているかに見える。しかしこのやわらかさは、京ことばのやわらかさにも似て、その裏には非常に頑固というか自身というか、確固たる自己主張があるように思う。このメーカーは、ときとしてまるで受精直後の卵子のように固く身を閉ざして、外からの声を拒絶する姿勢を見せることがある。その姿勢は純粋であると同時に純粋培養菌のようなもろさを持ち、しかも反面のひとりよがりなところをも併せ持つのではなかろうか。
 本物の高級品は、たいていの場合、ひとりの優れた頭脳が純粋に発想し、それが永い時間あたためられ煮つめられ、世に出て愛用者の手に渡ることによってまた、少しずつ改良されながら洗練の極みに達する。かつてのラックスのパーツ類には、そういう本ものの匂いがあった。かつてのマランツやマッキントッシュにもそれがあった。いまならたとえばSME。この優雅なアームはいまなお世界中の愛好家に支持されて常に品不足の状態である。ハッセルブラッド(カメラ)また然り。完成度の高い製品は、国境を越えて多くの支持者を生む。しかしもしもそこに、ひとりよがりな考えが入りこんだが最後、奇抜なだけがとりえ、といった製品しか生まれない。ラックスの製品には、ときとして僅かとはいえひとりよがりな部分が嗅ぎとれる。おせっかいと言われるかもしれないが、人の意見も聞くべきは聞き、取り入れる面は取り入れて、本当の意味で多くの人に理解され支持される完成度の高い、洗練された製品を生み、育てて欲しい。
     *
この瀬川先生の、ラックスに対する指摘の鋭さには感服するとともに、
同時にこれはラックスへの期待のあらわれでもあるように感じている。

頑固、ひとりよがり、純粋培養菌のようなもろさ──、
これを書かれたのは1975年。
ステレオサウンド 3号が1967年、8号は1968年。

これらのこともラックスの、いわば伝統のひとつだったのかもしれない。

いまのラックス(それも一部の機器のデザイン)は、というと──、
ここで書くのはやめておこう……。

Date: 1月 18th, 2014
Cate: オーディオ評論

オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(300Bのこと・その6)

ステレオギャラリーQの300Bシングルアンプの登場から、
日本ではときどき300Bのアンプが製品化されてきた。

多くの人が記憶しているところではラックスからMB300という、
300Bシングルのモノーラルパワーアンプが出たこともある。
1984年ごろである。

300Bを、口の悪い人のあいだでは鳥カゴと呼ばれていた保護カバーで覆っていた。
これも電取法(電気用品取締法)のためである。

このころは300Bのアンプが出たことだけで話題になっていた。
いまではいくつかのメーカーから300Bを使ったアンプが登場してきていて、
300Bのアンプということだけでは、あまり話題にならなくなっている。

昨年、ウエスギから300Bのシングルアンプが登場した。
2013年のステレオサウンドグランプリに選ばれている。
いま書店に並んでいるステレオサウンド 189号で、
ステレオサウンドグランプリの座談会のまとめが読める。

ここに、300Bの一般的な音として、楚々としてやや細め、といった表現が使われている。
この表現そのものを問題としたいわけではない。
そういう音を出す300Bシングルアンプは、意外にも多いといえるのだから、
これまで市販された300Bシングルアンプの音を聴いてきて、そう思い込んでしまっても不思議ではない。

これが新製品紹介のページで、こういう表現が300Bシングルアンプに使われても、
わざわざここで取り上げたりはしない。
取り上げた理由は、座談会だから、である。

Date: 1月 18th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その17)

そうなるとステレオサウンド 3号の下段の文章も参考にすることができる。

3号では瀬川先生はラックスのアンプのデザインについて書かれているのだろうか。
この時代のSQ38はSQ38Dであり、SQ301と共通のパネルデザインにはまだなっていない。

SQ301のところにはデザインについては触れられていない。
PL45のところに目的の文章はあった。
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パネルレイアウトを含めて、ウォールナットのケースを持った全体のイメージは、高級感を表現して仲々好ましい。デザインにどことなくマランツを下敷きにしたという印象は拭い去りにくいが、パネルのパターンやツマミ、レバースイッチなどにオリジナリティを盛り込もうとしている意図は十分に感じとれる。
このデザインは、細部を除いては、SQ301と全く共通のものだが、SQ77Tのところでも指摘したように最近のラックス独特の斜めカットはちょっと考えすぎで、かえって手ざわりがよくないし、スイッチポジションを表示するポインターとしての機能も、少々あいまいのように思われる。
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SQ77Tのデザインについては、どう書かれているのか。
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ツマミのレイアウトはSQ77を踏襲しているが、この配列には抵抗なく馴れることができて、人間工学的にたいへんよく考えられている。しかしツマミの形には問題がある。丸形ツマミの一部を斜めにカットしたユニークな形だが、この形ではポジションの指示があいまいで、つまんだ感じも指によく馴じむとはいいにくい。
     *
これらを読んでいると思い出す文章がある。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」シリーズの一冊目でラックス号にのっている、
瀬川先生の「私のラックス観」だ。

Date: 1月 18th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その16)

ステレオサウンド 3号のアンプ特集のページレイアウトは上半分がアンプの写真とスペック、
下半分が文章となっている。

その下半分の文章も二段構成になっていて、上段が、岡俊雄、瀬川冬樹、山中敬三、三氏による試聴記、
下段がそれぞれのアンプについての解説とデザインについての批評となっている。

試聴記は記名原稿なのだが、下段の文章は誰が書いたのはわからない。
最初に3号の、この特集を読んだ時は、瀬川先生ではなかろうか、と思った。

思ったけれど確証はなかった。
ただ、このころは編集部による表記の統一はあまりなされていなかったようで、
そこで判断すれば、瀬川先生である可能性は高い、といえた。

たとえばこのころの瀬川先生はサンスイを山水と書かれていた。
下段の解説のところもサンスイではなく山水である。
その他にもいくつかあるけれど、それだけで断定とまではいかなかった。

いまは瀬川先生の文章だと断定できる。
それはビクターのMST1000について、「試作品のイメージ」と書かれているのは、
試聴記ではなく、下段の解説・デザイン批評の文章のほうだからだ。

Date: 1月 17th, 2014
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その15)

瀬川先生は、ラックスのSQ301のデザインについて、何か語られているのか。

ステレオサウンドのバックナンバーを調べてみると、
8号(特集はオーディオアンプ最新66機種の総テスト)で、ふれられている。

厳密にはコントロールアンプのPL45についてであるが、
前にも書いているようにSQ301とPL45、SQ38Fのデザインは共通のものだから、
PL45のデザインのことはそのままSQ301にもあてはまる。
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PL45は、このスタイルをSQ301やSQ38Fで踏襲している基本形といえるが、ツマミの配置は一応よくできてはいるが、ボリュームとバランスの小型のツマミは、現在の入力セレクターとモードの位置に変えた方が扱いやすいし合理的ではないだろうか。尤も、ツマミの径が大きいために、スイッチのトルクが軽くなるという利点もあるが……。またバックパネルの方で、入出力のピン・ジャックの表示が、Rが上で、Lが下になっているが、L優先、即ちLを上に置くことは国際的な約束ごとで、他のアンプはみなこうなっている。もうひとつ、パワースイッチのON−OFFは、上下を逆にすべきだ。
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これだけでははっきりとしたことはわからない。
もう少しないものかとページをめくって気がついたことがある。

PL45の次のページにはビクターのPST1000とMST1000が載っている。
ここにはこう書いてある。
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PSTの方は一応よいとしても、MSTの方は昨年も書いたように試作品のイメージで、価格と内容にそぐわない。
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ここでひっかかったのは、「昨年も書いたように試作品のイメージで」のところだ。
昨年とはステレオサウンド 3号のことである。

3号の特集は「内外アンプ65機種−総試聴記と選び方 使い方」である。

Date: 1月 17th, 2014
Cate: ラック

ラックのこと(その4)

ラックの使いこなし、と書いてしまうと、いかにも変な感じがするけれど、
ヤマハのGTR1Bの使い方は、最初のころとしばらく経ってからでは変ってきている。

GTR1Bはつねに試聴室では四台横一列に並べていた。
最初のころは、四台をくっつけて置いていた。

それでも、それまで使っていたテーブルにアンプやCDプレーヤーなどを置くよりは、
いい結果が得られていたから、特に問題とは考えていなかった。

それに試聴風景は撮影することが多い。
そういう時のことを考えても、ぴしっと並べてある、という印象のためにも、
ぴったりくっつけていたわけである。

どんな材質にも固有音があるということは、
どんなモノにもやはり固有音がある、というわけで、
GTR1Bにも、GTR1Bの固有音があり、試聴室という場所に置かれるラックとして、
そういう固有音はできれば抑えたい。

これが個人のリスニングルームであれば、その固有音をうまく活かす音づくりもあるけれど、
試聴室はあくまでもさまざまなオーディオ機器を試聴するための部屋であるのだから、
固有音に対しても違ってくるわけだ。

そういうわけで、GTR1Bにはいくつかの方法で、
GTR1Bの固有音を抑える(というより和らげる)ようにしていた。

そのひとつが、少し離して置くことである。

Date: 1月 16th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(その7)

飛びきりの音を聴かせるアンプという評価があって、
しかも飛びきり高価であるから、あちこちで聴けるというシロモノではなかった。

瀬川先生の評価は、特に高かった。

そういうLNP2だっただけに、ほんとうにまれにしか耳にすることはなかった。
ステレオサウンドで働くようになるまでにLNP2を聴いた時間はあわせて十数時間ぐらいだった。

だからよけいにLNP2に惹かれていったところもある。

ステレオサウンドの試聴室にはLNP2が常備してあった。
試聴室隣の倉庫にあるオーディオ機器は、メーカー、輸入商社からの借りているわけだが、
すべてがそうでもなかった。一分のオーディオ機器は購入したモノだった。
LNP2もそのひとつだから、ずっとそこにあった。

ステレオサウンドでは、初期のLNP2を購入し、リファレンス・コントロールアンプとして使っていた。
電源がPLS153になった時に、入出力端子がCAMAC(LEMO)コネクターの、いわゆるLNP2Lに変更されている。

じっくりと、そして自分でツマミに触れながら音を聴くことができたのは、
シリアルナンバー1614のLNP2である。

Date: 1月 16th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(続々・余談)

フロントショートホーンがなければ、
同じ音圧を得るためには振動板の振幅は大きくなり、つまり振動板はより速く前後に動かなければならない。

コーネッタのホーンは短い。
これでどれだけのホーンロードがタンノイの同軸型ユニットの振動板に対してかかっているのか。
はっきりとしたことはなんともいえないけれど、それほど大きなホーンロードとは思えない。

仮にある程度のホーンロードがかかっていて、
それが多少なりとも振動板とエッジに対して負担が増すことになっていたとしても、
フロントショートホーンがなければそれだけアンプのパワーを必要とし、
振動板の振幅が増すことは、エッジの負担が増すことでもあり、
実際にエッジに対して、どちらのほうが負担が大きく、傷みが早くなるのだろうか。

人はそれぞれの経験から、こうするとこうなるとか、
ああすればこういう結果になる、とかをいうものだ。

このエッジの傷みに関することも、少なくとも誰もきちんとデータを持って発言しているわけではない。

同じロットのタンノイのユニットを二本用意して、
同容積のエンクロージュアに取り付けて、同じ音圧で鳴るようにしておく。
それでずっと鳴らしぱなしにしておいて、どちらが早くエッジが傷むのか、
それとも差はないのか、実験してみるしかない。

いまさらこんな実験をやるところもやる人もいないだろう。
つまりは誰にも、はっきりとしたことはわからないわけだ。

はっきりとしないことを心配するのを悪いとはいわないけれど、
使っている以上は傷みは発生していくものである。
未使用の状態で保存していたからといって、長年保管していたスピーカーは、
新品とはいえないのがほんとうのところである。

どんなモノもどんな使い方をしても、傷んでいく(性能が落ちていく)。
そしてこわれていく。

それならば……、ではないだろうか。

Date: 1月 16th, 2014
Cate: ラック

ラックのこと(その3)

ヤマハのGTR1Bのステレオサウンド試聴室への導入はかなり早かった。
四台のGTR1Bが届いた。

それまで使っていたのは、いわゆるテーブルだった。
昔のステレオサウンドのバックナンバーをの試聴風景の写真をみれば、
どういうテーブルなのか、すぐにわかるし、中央に金属製の柱があるタイプである。

このテーブルから一転して、33kgという重量のGTR1Bの導入は、
音だけでなく試聴室の雰囲気もかなり変えたところがある。

GTR1Bには棚板が一枚附属してくる。
ただし本体は板厚50mmだが、棚板は割と標準的な厚みだった。
ステレオサウンド試聴室で、この棚板を試聴に使ったことはない。

GTR1Bのステレオサウンド試聴室での使い方は、
ラックというよりも、あくまでもそれまで使っていたテーブルの役割のかわり、
つまり置き台としてのものだった。

どんな素材にも叩けばなんらかの音がすることからわかるように、
それぞれに固有音があり、同じ材質でも厚みをませばQが高くなる。

GTR1Bの50mmの板厚は、マニアにとって嬉しい厚さともいえる反面、Qが高くなっているため、
あれこれ条件を変えて試聴していくとはっきりしていくことだが、
中域が、いい表現をすれば明快になるし、少し悪い表現では中域にあきらかな固有音がのってくる。

とはいえ一台36000円で、これだけのつくりのラックが買えるということ、
そして細かいことをいっていけば、あれこれ指摘できるけれど、
このラックの性格を掴んだ上で工夫すれば、
置き台の、ひとつの傾向である重厚長大型に好適といえるラックである。

Date: 1月 15th, 2014
Cate: ラック

ラックのこと(その2)

1982年あたりごろから、使いこなしのうえでいくつかの変化がはっきりとあらわれはじめてきた。

スピーカーの設置でも、それまでは部屋のどこに置くのか、スピーカーの振りの角度はどうするのか、
といったことに加えて、置き台に対する関心が増してきて、
たとえばフロアー型システム用として、
ダイヤトーンからDK5000という良質の木材のキューブが製品化されたし、
ブックシェルフ型システム用としては、スタンドの比重がそれまでよりもずっと大きくなっていった。

それまでのブックシェルフ型用のスタンドといえばキャスター付の鉄パイプ製が大半だった。
パイプを叩けばカンカンと響く。
しかも形状が横からみるとコの字型をしており、強度も十分だったとはいえなかった。

それが木製のスタンドが登場しはじめ、
ブックシェルフ型スピーカーが重量を増していく傾向とともに、
スタンドもよりしっかりしたものになっていく。
構造も材質も吟味されるようになった。

小型システム用のスタンドとなると、自分でなんとかするしかなかったのが、
イギリスでは専用スタンドがついてくるモノがあらわれはじめ、
日本よりもイギリスの方が小型スピーカー用スタンドは数が多かった、と記憶している。

置き方による音の変化の問題は、
スピーカーだけにとどまらず、そのころ登場したCDプレーヤー、それにアンプでも、
少しずついわれるようになってきた。

そうなるとラックの重要性が増しはじめたころに、タイミング良く登場したのが、
ヤマハのラック、GTR1Bだった。

50mm厚の板を使った四角い箱である。
前後は開放で、重量は33kgという、しっかりしたラックというよりも、箱だった。

Date: 1月 15th, 2014
Cate: カタチ

趣味のオーディオとしてのカタチ(その3)

私が初めて買ったステレオサウンドは41号と、
同時期に発売になった「コンポーネントステレオの世界 ’77」の二冊。

41号の表紙はJBLの4343、「コンポーネントステレオの世界 ’77」の表紙はアルテックの601だった。
どちらも正面から撮った写真だった。
正直に書けば、最初は604だと勘違いしていた。
けれど、ホーンの感じがなんとなく違うことに気づいて、
あれこれ調べて601-8Eだと気づいた。

表紙の4343を見て、かっこいいと感じた。
表紙の601を見て、4343に感じたかっこいいとは違う意味で、いいカタチだ、と思っていた。

そのころまでのホーンは指向性の改善のためにマルチセルラホーンだったり、
ホーン内部にフィンが設けられてたり、開口部に音響レンズが取りつけられたしていた。

理論上ではホーン内部や開口部に何かがあるのはマイナスとなる。
604のマルチセルラホーンにしても、指向性の改善であっても、
高い周波数では指向性がヤツデ状になるという面もある。

604をベースにしたUREIのシステムでは、
マルチセルラホーンを独自のホーンにつけ替えている。
604も604-8H以降はマンタレーホーンに変更されている。

伝聞ではあるが、ハーマンインターナショナルでは、
JBLに対して4343の後継機をつくってほしい、と希望した、と。
それもスタイルは4343と同じ。つまり音響レンズ付で、ということだったらしい。

JBLは、音響レンズつきのホーンはホーンの理論から外れている。
だから音響レンズつきのホーンを採用したシステムはつくらない、ということだった。

10年近く前にきいた話で、どこまでほんとうなのかはわからないけれど、
JBLが音響レンズつきのホーンをつくらない理由は、納得できる。

音響レンズつきのホーン、マルチセルラホーンは、もう旧い時代(理論)のホーン、
2397ですら、おそらくそういうことになっているはず。

そんなことはわかっている。
それでもアルテックの604を正面からみれば、いいカタチだと思うのだ。

Date: 1月 15th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(続・余談)

コーネッタのホーンは全長127mm。
このホーンの長さのコーネッタが、ステレオサウンド 38号に載っているモノ。

実際にSSL1という型番で市販されたコーネッタでは、
エンクロージュアの構造との兼ね合いもあり、約110mmに変更されている。

コーネッタの設計段階で、ホーンの検討のために試作されたのは、
カットオフ周波数200Hz全長762mmのコニカルホーンで、
これをベースに全長を1/2、1/4、1/8、1/16と短縮して測定されている。
その実測データはステレオサウンド 38号に載っている。

127mmは、762mmの1/6の長さである。

コーネッタのフロントホーンは、短い。
まさしくフロントショートホーンである。

それにユニットの前面をいったん絞っているわけではない。
いわゆるコンプレッションドライバーとホーンの組合せとは、ここが大きく違う。

そして38号には、フロントショートホーンの有無による周波数特性の変化を示すグラフが載っている。
これをみれば、100Hzから1.5kHzにかけてホーンによる音圧が上昇している。
100Hzあたりでは上昇はわずかだが、もっとも上昇している周波数において、約5dBの差がついている。

ようするに音圧がこれだけ上昇すればその分アンプの出力は小さくてすむ。
同じ音量を得る場合にも、フロントショートホーンがついていれば、パワーは小さくていい。
それはコーン(振動板)の振幅が小さいということである。

Date: 1月 15th, 2014
Cate: 程々の音

程々の音(余談)

この項で書いているコーネッタはフロントショートホーン付のエンクロージュアである。

ホーンがついているからホーンロードがユニットにかかる。
そのためエッジを傷める──、
今回、この項を書いていて、そういう説が世の中にあることを知った。

これと同じことで思い出したことがある。

遠くの人を呼ぶ時に両手を口の周りにもってきてメガホンのようにする。
こうするとホーンロードが喉に負担を与えて、こうやって話しつづけると喉が痛くなるでしょう、
というものがある。

いかにももっともそうな理屈で、意外にもこれに納得している人がいるようだが、
ほんとうにそうなのだろうか。

遠くの人を呼ぶ時には両手でメガホンをつくるだけでなく、大きな声をだしている。
喉を痛めるのは、ホーンロードによる喉の負担が増して、ではなく、大きな声を出しているからではないのか。

手でメガホンをつくって、ふつうの大きさの声で話す、としよう。
メガホンがあることで音(声)が周囲に広がってしまうのはなくなる分だけ、
聞き手に届く声は大きくなっている。
相手に同じ音の大きさで声を届けるのであれば、メガホンなしよりも小さな声ですむ。

これはホーンがついているスピーカーでも同じことである。

Date: 1月 14th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(その6)

バウエン製モジュールがのったLNP2の音で、松田聖子のCDを聴いていて、
思い出していたことがある。

黒田先生がステレオサウンド 59号に書かれていることだ。
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すくなくともぼくがきいた範囲でいうと、これまでマーク・レヴィンソンのコントロールアンプのきかせた音は、適度にナルシスト的に感じられました。自分がいい声だとわかっていて、そのことを意識しているアナウンサーの声に感じる嫌味のようなものが、これまでのマーク・レヴィンソンのコントロールアンプのきかせる音にはあるように思われました。針小棒大ないい方をしたらそういうことになるということでしかないのですが。
 アメリカの歴史学者クリストファー・ラッシュによれば、現代はナルシシズムの時代だそうですから、そうなると、マーク・レヴィンソンのアンプは、まさに時代の産物ということになるのかもしれません。
 それはともかく、これまでのマーク・レヴィンソンのコントロールアンプをぼくがよそよそしく感じていたことは、きみもしっての通りです。
     *
黒田先生が指摘されているところが、LNP2、JC2、それにML6(シルバーパネル)にはある。
そこのところが黒田先生という聴き手にとっては、嫌味のように感じられ、
瀬川先生という聴き手にとっては、魅力的ということになる。

30年前、まだハタチだった私という聴き手にとって、LNP2のそういうところは魅力的であり、
それだけにバウエン製モジュール搭載のシリアルナンバー1010のLNP2が、
素っ気ない(少し誇張したいいかたなのだか)感じに、音楽を聴こえてしまっていた。

あのころはマークレビンソンのアンプの音に惚れ込んでいた。

Date: 1月 13th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(その5)

そのCDは松田聖子のアルバムだった。
そういえば松田聖子をディスク(LP、CDどちらとも)で聴いたことはなかったなぁ、と思いながら、
まずLD2モジュール搭載のLNP2の音を聴いていた。
それからUM201モジュールに差し替えて、また松田聖子のCDを聴いた。

声の感じが違う。
どちらのモジュールがいい音か、ということよりも、
松田聖子は日本人の女性歌手なんだ、という、この当り前すぎることを、
バウエン製モジュールUM201のLNP2は、聴き手の私にそう意識させてくれた。

LD2モジュールのLNP2だと、そういう感じはしてこなかった。
松田聖子がスリムになっている感じもする。

松田聖子の歌を、自分のシステムだけでなく、
誰かのシステム、ステレオサウンドの試聴室でも聴いたことのない私には、
松田聖子とはテレビでみていたときのイメージしかないわけで、
それに近かったのはUM201モジュールのLNP2だった。

こう書いてしまうと、UM201のときの音はテレビ的だととられるかもしれない。
そうではなく、テレビでみていたときの松田聖子の顔、しぐさといったことが、
UM201のLNP2で聴いていると浮んでくる。

これは素直にいい、と思って聴いていた。
しかもLD2のLNP2のときには気づかなかった松田聖子の声の表情の変化も、うまく出してくれていた。