Archive for 12月, 2013

Date: 12月 18th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(先入観・その1)

ステレオサウンド 4号の井上先生の文章では、「先入感」とあったので、
そのまま先入感としたわけだが、いうまでもなく先入観が正しい。

辞書には、前もってつくられた固定的な観念。それが自由な思考を妨げるときにいう、とある。
観念は、物事について抱く考えや意識、である。

「らしからぬ音」と口走ってしまうのは、先入観があるから、といえるし、
その先入観をつくってきたのは、オーディオ雑誌ではないか、という声もある。

そうだともいえるし、そうではない、ともいえる。
私は、そう思っている。

井上先生の、JBLのユニットについて書かれた文章は、
ステレオサウンド 4号に載っている。
ステレオサウンドが創刊されて、四冊目の号である。

ここで井上先生が書かれている「先入感」とは、何によってどうやってつくられたものなのか。
そのことを考えてみる必要はある。

先入観をつくってきた責任は、オーディオ雑誌だ、と言い切ってしまえば、
読み手としては、ある意味、楽である。
けれど、オーディオ雑誌が先入観をつくってきた、と考えることそのものが、
実は先入観であることもある。

Date: 12月 17th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その18)

アルテックの604に限らず高域用にホーン型を採用した同軸型ユニットであれば、
ウーファーのボイスコイル位置よりも、
かなり奥まったところにドライバーのボイスコイルが位置するわけで、
このふたつのボイスコイルの距離分だけの時間差が発生する。

この問題をUREIの813は、以前書いているように内蔵ネットワークで解決している。
813が登場したときは、ネットワークがどういう構成なのか皆目見当がつかなかったけれど、
あれから30年以上経っているいまでは、技術的な知識もあるし、
インターネットで813のネットワークの回路図も手に入れることができ、
こうやっていたのか、と疑問はなくなっている。

813の回路図を利用してネットワークを自作して、試行錯誤してみるのも、
オーディオマニア的には充分に楽しいことではある。
けれどデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを用意して、
マルチアンプ駆動した方が、手間もかからない、といえよう。

それにネットワークを自作した場合、一回でうまくいくという保証はどこにもない。
何度か試作を重ねれば、そこにかかる費用の面でも、
マルチアンプのほうが有利になることだってある。

それにデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを使う方が、
ネットワークでは無理な細かな時間差の補整も可能になる。

アルテックの604の、こういう使い方は実際にやられている人はすでにおられる。
では、同じ同軸型のタンノイのユニットで、同じことをやるのか、と問われれば、
これはやらない、と即答する。

Date: 12月 17th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ある文章)

「JBLらしからぬ音」
「JBLってこういう音がするんですか」。

どんなスピーカーであっても、そのブランドイメージがあって、
そのブランドイメージによって音が語られ、音が判断されてしまうことがある。

その人なりのブランドイメージがあって、
そのイメージとそぐわない音が鳴ってきたときに、
らしからぬ音、という表現を口にするのかもしれない。

JBLらしからぬ音、タンノイらしからぬ音、アルテックらしからぬ音……、
世の中にはブランドの数だけ、この「らしからぬ音」が存在しているといえるのだが、
その中でも、JBlほど、「らしかぬ音」が使われるブランドは、他にない。

JBLが古くから知られるブランドであるから、ということは理由にはならない。
アルテックにしてもタンノイにしても、古くから同じくらいに有名なブランドである。
にもかかわらずJBLだけが突出して「らしからぬ音」が語られるのは、なぜなのか。

ある文章を引用しよう。
     *
少々のクセはあるかも知れぬが高能率のスピーカーに悪いものは少ない。どうも昨今JBLブームの感もあるが、その意見について、どうも相当な誤解のある事は事実で、JBLと云えば派手なアメリカ的な音を想像されるだろうが巷で鳴らされているJBLは、まさしくその様子である。
 然しメーカーの指示に従い正しく使用すれば使い込む必要もなく最初から、使用者の意を受ける如く、おだやかな音を出してくれるのには驚かされる。臨場感というのか将に楽器が、そこにあり、音楽を聞くものに迫ってくる感じは、装置の存在をさえ忘れる想いがする。よくクラシック向きとジャズ向きときに装置のプログラムソースに対する順応性が云われるが、この組合せ程度以上になると、どうも余り、何とか向き、を感ずる事は少なくなる。常々思う事にどうもステレオファンには固有の感覚上と定義的な先入感で楽器の音を評価する方が多い。例えば全金属性ピアノ?(響板も金属性)等どうも音の評価のみに捕われている場合によれば音楽は、苦痛の原因ともなる。先ず音を聞いて、それから音楽を聞くのならまだ幸せだろう。音を聞いて感激した事は数多いが、音楽をレコードを通して聞いて感激する事の極めて稀になってしまった私にとってJBLのスピーカーは又夢を与えてくれた様子である。
     *
井上先生の文章だ。
ステレオサウンド 4号の特集記事(組合せ)で、
JBLの130Aと175DLHを中心とした組合せについて書かれたものである。

ステレオサウンド 4号は1967年に出ている。

Date: 12月 16th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その13)

数年前に、SQ301というプリメインアンプがあったことに気がついた。
このSQ301の写真を見ていて、このときは直感で、
これは瀬川先生のデザインだ、と思えた。

SQ38FD/IIの実物、写真を幾度となく見ても一度も感じることのなかったことを、
SQ301の写真をみたときに感じ、
そのあともSQ301の写真をみるたびに、やはり瀬川先生のデザインのはず、と思ってしまう。

間違っている可能性もある。
それでも、SQ301は瀬川先生のデザイン、と確信できる雰囲気があり、
これがマランツのModel 7に感じている良さと、私の中では共通するところでもあるから、
そうとしか思えないのだ。

Date: 12月 16th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ホーンについて)

JBLのスピーカーユニットにおけるコンシューマー用とプロフェッショナル用の違いがあるように、
コンプレッションドライバーと組み合わせるホーンに関しても、
JBLには、ある違いがあった。

JBLのコンシューマー用のホーンには、すべて音響レンズがつく。
スラントプレートの音響レンズ(4343などのスタジオモニターに採用されたタイプ)、
パーフォレイテッドプレートの音響レンズ(LE175DLHとHL88の、いわゆるハチの巣)、
このどちらかがつくことになる。

例外といえるのはH5038Pである。
このホーンには音響レンズはないけれど、
このホーンを採用しているJBLのスピーカーシステムはD44000 Paragonであり、
Paragonはホーンの開口部を聴き手に直接向けているわけでなく、
中央の、大きく湾曲している反射板に向けているわけで、
音響レンズをつけなかった理由もここにあり、
なんらかの拡散を行っている。

ちなみにH5038Pのプロフェッショナル版は2343である。

プロフェッショナル用のホーンにも、スラントプレート、パーフォレイテッドプレート、
どちらの音響レンズつきのホーンはある。
スラントプレート型は2391、2392、2390、2395であり、パーフォレイテッドプレートは2305である。

プロフェッショナル用では、これらの他に、ディフラクション型の2397、
ラジアルホーン2340、2345、2355、2350がある。
1980年代にはいり、バイラジアルホーンがいくつも登場してくる。

当然これらのホーンの開口部には音響レンズはない。
プロフェッショナル用では、音響レンズつきとなしがラインナップされている。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その12)

ラックスは日本のメーカーである。
そのラックスを代表するアンプのひとつにあげられるSQ38FD/II。
このアンプを見ていて、日本的なイメージを感じるのかといえば、
私個人だけなのかもしれないが、微妙なところがある。

マランツのModel 7に私が感じている日本的なイメージを、
不思議なことに日本のアンプであり、ほぼ間違いなく日本人がデザインし、日本で製造されたアンプ、
しかもModel 7のデザインが、その下敷きとなっているSQ38FD/IIをみても、
日本的なイメージを感じとれないのは、なぜなのかが自分でもはっきりとしなかった。

このことが、SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生のデザインだとなかなか思えなかった最大の理由である。

瀬川先生が感じられていたModel 7のデザインのよさと、
私が感じているそれとでは、同じところもあれば違うところもあることだろう。

だから、私が感じている、Model 7の日本的なイメージを瀬川先生が感じられていたのかは、わからない。
そうではなかった、ともいえるわけで、
そうなると、SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生ではない、とする理由はなくなるわけだ。

それに瀬川先生はユニクリエイツというデザイン事務所で、ラックスからの出サインの依頼を受けられていた。
つまりラックスからみれば外注ということになる。

ユニクリエイツが優れたデザインを提案し採用されても、
そのままのデザインで世に出るとは限らない。
いくつかの事情により、ラックス社内でデザインに手が加えられることは、
他のメーカー、他の業種でもあることだ。

SQ38FD/IIも、そういう例かもしれない。
そう考えることはできる。
それでも、私には、どうしてもSQ38FD/IIが瀬川先生のデザインだ、と思えないところがあった。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(375と2440の違い)

JBLのスピーカーユニットは、コンシューマー用とプロフェッショナル用で、
振動板に違いはない。

375と2440をくらべてみれば、磁気回路も同じである。
振動板も同じであれば、いったい何が違うのか。
375と2440(これに限ることはないけれど)を比較試聴してみれば、
コンシューマー用ユニットとプロフェッショナル用ユニットには、あきらかな音の違いがある。

375と2440を並べてみると、まずすぐにわかる違いとしては端子の違いがある。
どちらもプッシュ式の端子だが、2440についている端子の方がひとまわり大きい。

とはいえこの部分だけの違いで、375と2440の違いが生れるとは考えられない。

他に何が違うのか。
375と2440の例でいえばバックカバーの形状に、わずかな違いがある。

375のバックカバーは基本的に円である。
入力端子の取り付け位置だけ内側に凹んでいるだけで、
375の裏側となる水平面はフラットである。

2440はこの部分にわずかな傾斜がつけられている。
中心部はフラットなのだが、外周部に近くなるところで傾斜している。

375と2440のバックカバーの形状の違いはさわってみれば、すぐにわかる。

この違いが、なぜ音に影響するのか。
多少強度の違いは発生するだろうが、
これもそれほどはっきりとした音の違いになるとは考えにくい。

実はバックカバーの、このわずかな形状の違いにより、
同じ仕様の磁気回路なのだが、2440のほうが磁束密度が高くなる、という話をずっと以前にきいている。

そのころJBLの取扱いはサンスイだった。
サンスイの人たちもコンシューマー用とプロフェッショナル用のユニットの音の違いが、
なぜ生じるのか、そのことをはっきりとさせるために実験した結果、
バックカバーの形状の違いで磁束密度が変化することが判明した、とのことだ。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと

いまもJBLにはプロフェッショナル用の製品がラインナップされているけれど、
輸入元はコンシューマー用とは別になっている。
以前(1980年代ごろまで)は、どちらも同じ輸入元だった。
サンスイが取り扱っていたときも、ハーマンインターナショナルに移ってからも、
コンシューマー用、プロフェッショナル用、どちらも取り扱っていた。

スピーカーシステムにもスピーカーユニットにも、
コンシューマー用とプロフェッショナル用の両方が用意されているモノがあった。

スピーカーシステムではコンシューマー用がL300、L200プロフェッショナル用が4333、4331などがあった。
スピーカーユニットも、例えばドライバーでは375のプロフェッショナル用は2440、
LE85のプロフェッショナル用は2420、LE175は2410という具合に、
トゥイーター、ウーファー、フルレンジに、コンシューマー用とプロフェッショナル用があった。

このころJBLのスピーカーユニットに夢中になっていた人にはこれから書くことはわかりきったことではあるけれど、
そうでなかった人にとっては、
コンシューマー用とプロフェッショナル用のユニットの重量の違いが気になる、らしい。

たとえば375のカタログ発表値は11.8kg、そのプロ用の2440は11.3kg。
500g、プロ用のほうが軽い。
これは375と2440だけではなく、ほかのユニットに関しても同じで、
コンシューマー用のユニットの方が重く表示されている。

なぜ、わずかとはいえ重量の差が出ているかといえば、
コンシューマー用ユニットの重量は梱包材を含めての重量であり、
プロフェッショナル用の重量はユニットそのものの重量であるからだ。

なぜJBLが、コンシューマー用ユニットでは梱包時の重量を表示するのか、
その理由はわからない。

2441を眺めていて、そうだ、と思い出したので。

Date: 12月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その11)

ラックスのSQ38FD/IIは誰のデザインなのか、ではなく、
私が関心があるのは瀬川先生のデザインなのかどうかである。

SQ38FD/II(CL35III)のパネルデザインは、マランツのModel 7のパネルが、
その下敷きとなっている。

瀬川先生が、Model 7のデザインをどう評価されていたのかをまったく知らなければ、
SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生なのかどうか、ということに関心をもつことはなかったかもしれない。

Model 7とSQ38FD/IIのデザインは、違うといえば、かなり違うといえる。

Model 7のデザインをみていると、
ふとしたことで、日本的なイメージを受けることがある。

マランツはいまでこそ日本のオーディオメーカーてあるが、
いうまでももともとはアメリカのオーディオメーカーであり、
1970年代は、アメリカで設計して日本で製造だったこともあるが、
Model 7の時代は、アメリカのオーディオメーカーであり、アメリカで開発・製造されたアンプである。

しかもアメリカが豊かだった時代のアンプでもある。
そんなModel 7のパネルをみて、日本的なイメージを感じる、ということは、
お前のデザインへの感性がおかしいのだ、といわれるかもしれない。

それでもいい、
日本的なイメージをそこに感じとってしまうとき、
私にはModel 7のデザインが良くみえるときでもあるのだから。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その10)

いつ誰にきいたのかはもうはっきりとしないけれど、
ラックスのアナログプレーヤー(ターンテーブル)のPD121は、瀬川先生のデザインだときいた。

PD121は、テクニクスのSP10と同盗品でありながら、
SP10の、素っ気なさすぎるデザインとは違う、魅力的なプレーヤーとして仕上げているところに、
PD121は、愛用したい、と思わせる魅力がある。

ステレオサウンド 38号に載っている瀬川先生のリスニングルームにも、
EMTの930stの他に、PD121が写っていた。

そのPD121が瀬川先生のデザイン、であるとすれば、
PD121はいつかは手に入れたい、手もとに置いておきたい、と思っていた。

けれど、ほんとうに瀬川先生のデザインなのかを検証していくと、
どうも違っていることがわかってきた。

瀬川先生と一時期デザインの仕事を、同じ事務所でされていた木村準二さんのデザインである。

瀬川先生と木村さんは、ユニクリエイツというデザイン事務所を立ち上げられて、
ラックスのデザインの仕事をされていた。
PD121は、だからユニクリエイツのデザインということで、
そこから瀬川先生のデザインというふうにすりかわっていったのだろう。

いまでもPD121のデザインは、瀬川冬樹である、と書いている個人サイトがあるが、
木村さん本人に確認しているから、PD121は木村さんのデザインであり、
PD121のデザインをラックスの社内でみたとき、瀬川先生が悔しがられていた、という話も、
瀬川先生とデザインの仕事を一緒にされていた神戸さんからきいている。

PD121のデザインは木村さんだということは以前も書いているけれど、
瀬川冬樹デザインということが、いまも信じられているので、もういちど書いた次第。

このこともあって、SQ38FD/IIのデザインは、瀬川先生なのか、それとも違う人なのか、
自分のなかではっきりとした答を出せずにいた。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: 再生音

続・再生音とは……(虚構世界なりせば)

「虚構世界の狩人」は、
瀬川先生の著書のタイトルである。

いいタイトルだと思うし、瀬川先生も気に入られていた、ときいている。

「虚構世界」──、
音だけのオーディオの世界、
それもモノーラルではなくステレオフォニックになってからのオーディオの世界は、
まさしく「虚構世界」である。

虚構世界であるならば、そこに「正しい音」は存在しない、と考えべきなのかもしれない。
虚構世界であるからこそ、そこに「正しい音」とはなんなのかを考えていくべきなのかもしれない。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その9)

ラックスのSQ38FD/II、CL3535IIIのパネルデザインが、
マランツのコントロールアンプ、Model 7のデザインの影響を強く受けていること、
Model 7のデザインをベースにした、といってもいいだろう、
そういうデザインであることは、
これらのアンプの存在を知った中学生の時には気づいていたし、
デザインに多少なりとも関心のある人ならば、多くの人が気づくことでもあろう。

Model 7のフロントパネルには、ロータリースイッチ、ロータリボリュウム用のツマミが、
上下二段で四つ、左側にあり、中央にはレバースイッチがやはり四つ並ぶ。
そして右側には左側のツマミよりも径の小さなツマミが、左側と同じく上下二段で四つあり、
左端にスライド式の電源スイッチが、ちょこんとついている。

完全な左右対称ではないけれど、
左右対称のデザインを、ほんのすこしくずしたデザインといえる。

ラックスのSQ38FD/II、CL35IIIのツマミのレイアウトは、
マランツのModel 7をベースにしているといえる。
もちろん、まったく同じというわけではないが、あきらかにModel 7を強く意識しているデザインである。

中学生のころは、Model 7をベースにしたんだな、というところで止っていたけれど、
数年後に、ラックスのデザインは瀬川先生がいくつか担当されていた、ということをきいた。

こうなるとSQ38FD/IIのデザインに対する関心は,より深くなっていった。
いったい、このデザインは誰によるものなのか。

瀬川先生がModel 7のデザインを高く評価されていることは知っていたからこそ、
瀬川先生によるデザインなのか、それとも別の人のデザインなのか。
はっきりしたことはわからなかったし、判断もつき難かった。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その8)

ラックスの管球式プリメインアンプの代名詞ともなっているSQ38シリーズ。
昭和38年(1963年)に登場した初代SQ38は、よく知られるSQ38のデザインではなかった。
よく知られる、いわゆるSQ38のデザインになったのは、SQ38Fからであり、1968年以降のことである。

同じパネルデザインをもつコントロールアンプCL35は1970年発売。
CL35もまた管球式アンプである。

この二機種だけをみていると、
SQ38FのデザインがCL35にも採用された、ということになるが、
もう少し詳しくラックスのアンプについて眺めていくと、
1967年にSQ301が登場していて、このアンプのデザインが、のちのSQ38Fであり、CL35のそれである。

SQ301はトランジスター式のプリメインアンプである。
SQ38F、CL35のデザインはまったく同じかというと、若干違うところはある。
インプットセレクターとモードセレクターのツマミが、
SQ38F、CL35では形状が円から長方形へと滑らかに変化していくのに対して、
SQ301では円筒状(一部カットしてある)である。

それからフロントパネル中央にあるレバースイッチのツマミ、
パネル右下にある電源スイッチとスピーカースイッチのツマミが、
SQ301と基本的な形は同じなのだが、SQ38F、CL35ではボリュウム感のあるものに変更されている。
それにレバースイッチの数もSQ301は四つだが、SQ38F、CL35では五つ、という違いもある。

これらの違いからSQ301のほうがすっきり、ともいえるし、ややおとなしい控え目な感じがする。
とはいえSQ38F、CL35のパネルデザインはSQ301のパネルデザインの改良版であることは、
誰の目にも明らかなことだ。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その15)

テクニックだけを堂々とひけらかす、
そんな演奏は、音楽として美しいといえるだろうか。

そういう演奏は、凄いと思わせるところがないわけでもない。
だが、凄いは、美しいとはほとんど関係のないことである。

レコード演奏家として求めていくものは、精進していくものは、
そういったテクニックではなく、美であるはずだ。

その美がなかったからこそ、フランケンシュタインがつくり出した「理想の人間」は、
理想の人間ではなく怪物と呼ばれるようになったのと、同じことではないのか。

そんなことはない、いい音で鳴れば、そこには美がある。
どんなオーディオ機器の配置をしようと、ぶざまなケーブルの這わせ方をしようとも、
その結果得られる音が良ければいいわけだ──、
という考えは、もう捨て去るべきであるし、いつまでもそんなことをいっていては幼稚なだけである。

それでも個人で満足してやっているのであればまだいい。
ひどいのになると、誰かのところへ出かけていって、そんな機器の配置やケーブルの這わせ方をして、
音が良くなっただろう、というのがいることだ。

そんな人がいう、音が良くなった、というのは、音が変った、ぐらいに思っておけばいい。
そこには、美はないのだから。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その17)

タンノイをはじめとするイギリス系のスピーカーシステムに関してはマルチアンプ駆動は考えていない、
と書いておきながら、
同じタンノイのスピーカーシステムでも、Kingdom(現行製品のKingdom Royalではなく、最初のモデル)なら、
全帯域のマルチアンプ駆動は考えないものの、46cmウーファーだけは専用アンプをもってきたい。
いわゆるバイアンプ駆動を試みてみたい。

結局、マルチアンプにするのかしないのか、は、
私の場合、そのスピーカーシステムが生れた国と関係していながらも、
Kingdomのように、これは積極的にマルチアンプで鳴らしたいスピーカーシステムもある。

マルチアンプにするのかしないのか、
その分れ目はどこにあるのか、私の中にはどうもはっきりと存在している、と感じているけれど、
それを言葉にして書くとなると、意外に難しいことに気づく。

ではイギリスを始めとするヨーロッパ以外のスピーカーシステムに関してはどうかといえば、
JBLのシステムだから、といって、すべてのJNLのスピーカーをマルチアンプで鳴らそうとは思っていない。

4350、4355といった、JBL側がバイアンプ仕様としているスピーカーシステムを除いて、
バイアンプをふくめてマルチアンプで鳴らしたいのは、4343が最初にくる。

内蔵ネットワークで鳴らす4343のスタイルもいいと思っていても、
瀬川先生が書かれていたころのステレオサウンドを熱心に読んできた者には、
どうしても4343はいちどはマルチアンプ(バイアンプ)で鳴らしてみたいスピーカーなのである。

他に何があるだろうか。
自分の手で鳴らしてみたいスピーカーシステムで、しかもマルチアンプで、というスピーカーシステムが。

アルテックの604シリーズは、同軸型ユニットのメリットを最大に活かす、という意味で、
デジタル信号処理のディヴァイディングネットワークによるマルチアンプ駆動は、ぜひやってみたい。