「言葉」にとらわれて(その15)
ホーン型と呼ばれていても低音ホーンに関しては、いくつかの種類がある。
フロントロードホーン、バックロードホーン、クリプシュホーンなど、といったように。
これらのホーンも大きくふたつに分けられる。
ひとつはフロントロードホーンであり、
もうひとつはバックロードホーン、クリップシュホーンなどの折曲げ型、とにである。
このふたつのウーファーから放射された音がフロントロードホーンではそのまま聴き手を目指して直進してくる。
折曲げホーンの場合には、ホーン内部での折返しが生じる。
このふたつのホーンの違いは、
エレクトロボイスの30Wを、正面を向けて鳴らすのと、
壁に向けて(後向きにして)鳴らすのと、共通する違いかある。
フロントロードホーンではウーファーがピストニックモーションによってつくり出した疎密波は、
いわばそのまま出てくる。ピストニックモーションのままである。
一方クリプシュホーン、バックロードホーンでは、そうはいかない。
ホーンの構造からして、ウーファーがどれだけ正確にピストニックモーションをしていようと、
ホーンの開口部から放射される音はピストニックモーションとは呼べない状態になっているはずだ。
低音ホーンの採用は、低音の能率をすこしでも向上させるためである、というふうにいわれてきた。
たしかにモノーラル時代の、これらの大型スピーカーシステムが生れてきたときのアンプの出力は少なかった。
それでも十分な低音での音響出力を得るにはホーンの力を借りる必要があった。
それは理解できた。でもその理解だけに、そのときはとどまってしまった。
それ以上の理由を考えることはしなかった。
でもいま改めて考えてみると、あえて非ピストニックモーションの低音を得るためではなかったのか、
そんな気がしてならない。