2012年ショウ雑感
2002年からわずかな時間ではあって、インターナショナルオーディオショウには行くようにしていたけれど、
今年は風邪気味(というよりも風邪気味っぽい、と軽い症状)だったので、
行こうかどうしようかと迷って、結局行かずに終ってしまった。
これまでは特に聴きたいモノがあって、それを聴くために行く、というよりも、
とにかく行って時間の許すかぎり、いくつものブースをまわって、
目を引く(耳を引く)モノと出合えたらいいな、という感じで行っていた。
今年はぜひ聴いておきたいモノがあった。
エレクトリが輸入しているファーストワットのSIT1である。
風邪気味っぽいくらいだったので出かけるのが苦になるというわけではなかった。
でも、すこし冷静に考えてみたら、ファーストワットのSIT1の音が聴ける可能性は低いように思えた。
SIT1の出力は、わずか10W。
エレクトリのブースは広い方で、スピーカーはおそらくマジコ。
マジコの、どのスピーカーが使われるのかはわからないけれど、
仮にQ3だとして出力音圧レベルは90dB、カタログには推奨パワー30Wとある。
SIT1のパワーで、人が大勢集まっているエレクトリのブースという環境では、
十分な音量が確保できない可能性が非常に高い。
だから、展示のみで鳴らさないのではないか、と考えたら、急に億劫になってしまった。
ショウに行った数人の方に話をきいてみたところ、やはりSIT1は鳴っていなかったようである。
行かなかったから、数人の人の話を興味深くきいた。
ひとりの人はAというスピーカーの音を褒め、Bというスピーカーの音にはまったく関心を示さなかった。
でも、別の人は反対でBのスピーカーを高く評価し、Aのスピーカーの評価はまったく低かった。
スピーカーにかぎらず、ブースの音に関しても、同じだった。
こうも違うんだな、と改めて思う。
音だけではない、ショウのお目当てがなにかということも違う。
それはオーディオ機器が対象の話ではなく、
ある人はオーディオ評論家の講演が目的、という人、
オーディオ評論家の講演よりも海外のメーカーのエンジニアの話がききたいから、という人もいる。
便宜上、オーディオ評論家の講演、と書いているけれど、
菅野先生不在の今、オーディオ評論家という言葉を使うことに抵抗を感じるようになっているし、
講演という言葉を使うのは、さらに抵抗を感じる。
とにかくショウに何を求めていくのかは、人によってさまざまであり、
ショウに実際に行ける人たちよりも行けない人たちのほうが圧倒的に多い。
だからオーディオ雑誌がショウの記事を掲載するのを毎年読んでいると、
ページ数の少なさも大きな制約になっていることはわかっているうえで、
行った人にも行けなかった人にも、読んで面白いという感じさせる記事づくりは充分可能なはず。
でも今年も、代り映えのしない記事を読むことになるのだろう……。