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Date: 10月 3rd, 2016
Cate: audio wednesday

第69回audio sharing例会のお知らせ(PIM16KTとつくることについて)

今月のaudio sharing例会は、5日(水曜日)です。

パイオニアは1951年にPE8を発売している。
PE8はシングルコーンのフルレンジユニットで、口径は型番が示すように8インチ(20cm)。
PE8は後にNHK放送博物館入りとなっている。

PE8の価格は5,700円。大学卒の初任給が6,500円〜8,000円の時代である。
かなり高価なユニットだった。

もっと安価なユニットを、という声に応えたのが、1957年に登場したPIM6である。
このころは口径をインチであらわしていた。
6インチ、つまり16cm口径のユニット、PIM16のことである。

PIM8はメカニカル2ウェイのフルレンジ型で、価格は1,700円。
PE8と同口径のPIM8(PIM20)は、2,900円。

PIM6は一度製造中止になっている。
発売から10年、売上げが落ちてきたから、だそうだ。
1967年、大学卒の初任給は二万円を超えている。
あえてローコストのユニットを選ぶ人も少なくなってきたためだろうか。

なのにパイオニアには製造中止に対して、批判の声が届き、
翌’68年に復活している。
このときに売上げを伸ばすためだろうか、PIM16KTが発売された。

このへんのことは1974年の電波科学に載っていると、
ユニットを譲ってくださった方からが教えてくれた。

PIM16KTともオーディオとも直接関係はない余談だが、
パイオニアはPIM8の発売の1957年に、テレビのキットも出している。
PVK14AとPVA14Bで、価格は52,500円だった。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その4)

テクニクスのSU-R1のボリュウムの、
アナログディスク再生時における操作性の悪さは、
インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのスタッフの人が実感していたはずだ。

針の溝への導入音は、音を判断する上で重要な手がかりとなるといっても、
オーディオショウという場で来場者に聴かせる類の音ではない、ともいえる。
極力聴かせないような配慮を、テクニクスのスタッフはしていた。

テクニクスのスタッフも、入力セレクターの切替えで対処することは考えた、と思う。
誰でも思いつくことなのだから。
それでも、テクニクスのスタッフは針の上げ下しに合せてボリュウムツマミをまわす。

その行為を、好き好んでバカなことやっている、面倒なことやっている、と見ていた人もいたかもしれない。
でも、私は感心して見ていた。

アナログディスク再生へのこだわりをもって、
ボリュウム操作をしている人が目の前にいたからだ。

それも自分のリスニングルームにおいてではなく、
インターナショナルオーディオショウという場において、である。
こういう場での音出しならば、入力セレクターの切替えを利用した方が、ずっと楽だ。

不思議なのは、こういう人がいるにも関わらず、SU-R1の電子ボリュウムは、
アナログディスク再生においては扱い難い、ということだ。

SU-R1はフォノイコライザーを搭載していないから、
開発時の試聴ではアナログディスクは使われなかったのかもしれない。
それでもSL1200Gの開発では試聴を行っているはず。
その時点で、SU-R1のボリュウムの問題点には気づかなかったのか。
ここは疑問として残る。

気づいてそのままにしておいたのか。
それとも開発時の試聴では入力セレクターの切替えで対処していたのか、
それとも導入音を出しての試聴だったのか……。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その3)

この項のタイトルは「アナログディスク再生とは」ではなく、
「私にとってアナログディスク再生とは」にしている。
あえて「わたしにとって」をつけている。

針の上げ下しの際にボリュウムツマミをまわすことにこだわって、
そのことについて書いている。

合理的に考えれば、(その2)で書いたように、
ボリュウムツマミではなく、入力セレクターを使った方が楽である。

たとえば昔の海外製のフルオートプレーヤーには、
出力にリレーが入っていて、針が降りてからリレーがオンになり、
針が上る前にオフになる機構がついているモノがあった。

この手のプレーヤーを使うのではあれば、あらかじめボリュウムツマミをまわしておけばいい。
そういう使い方が本来的といえる。
私はフルオートプレーヤーを使ったことはないが、
もし使うとなっても、ボリュウムツマミを針の上げ下しにあわせて回すような気がする。

EMTのプレーヤーには927Dst以外クイックスタート・ストップがあり、
出力をリレーで同期させている。
この機能を使えば、フルオートプレーヤー同様、ボリュウムツマミをあらかじめまわしておけばいいのだが、
トーレンス101 Limitedを使っていたときでも、ボリュウムツマミをまわしていたからだ。

この項では、テクニクスの名前を出さない書き方もできた。
それでもテクニクスの名前を出しているのは、
テクニクスのスタッフは、レコードのかけかえごとにボリュウムツマミをまわされていたからだ。
そこに感心したから、である。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 200号に期待したいこと(その5)

ステレオサウンド 50号と200号(創刊50周年記念号)。
号と年の違いはあるけれど、どちらも50という数字がつく。

ステレオサウンド創刊10周年は40号。
40号と50号を比較すると、50号がはっきりと記念号としての特集を組んでいる。

50号は春号だった。
次の51号の特集はベストバイだった。

200号は秋号。
次の201号の特集は、もう決っている。
ステレオサウンド・グランプリとベストバイである。

なんと似ているんだろう、と思ってしまう。
しかも51号のベストバイ特集は、以前書いているようにつまらなかった。
何も201号の特集が、51号のようにつまらない、といいたいわけではない。

もうマンネリの企画が201号で、変ることなくくり返されるであろうことに、
もううんざりしてきている。

201号にふさわしい企画は、望めないのははっきりしている。
けれど、ひとつ手はある。

ステレオサウンド・グランプリとベストバイをまとめて一冊のムックとして出すことだ。
そうすれば201号の特集は、次なる50年に向けての第一歩としての企画を組める。

ステレオサウンド・グランプリとベストバイのムック化は、
ずっと以前からそうすべきだと思っていた。
私と同じように思っている人も少なくないはずだ。

私が編集部にいたころは、
ベストバイの号だけは買わないという読者がいた。
ならばいま、ステレオサウンド・グランプリとベストバイの冬号は買わない、
という人がいても不思議ではないし、
反対にベストバイの号だけ買うという人もいたから、
ムックとして出版すれば、どちらの望みにも応えられる。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate: audio wednesday

第69回audio sharing例会のお知らせ(PIM16KTとつくることについて)

今月のaudio sharing例会は、5日(水曜日)です。

今日、宅急便でPIM16KTが届いた。
元箱に入っていた。

開梱して意外だったのは、緩衝材として発泡スチロールが使われていなかったこと。
箱もダンボールならば、中もダンボールの仕切りがあって緩衝材にもなっていた。

発泡スチロールは非常に安定した物質で、
土に埋めても、ものすごい年月が経過してもほとんと変化(分解)しない、ときく。

環境問題が問われるようになってきて、
発泡スチロールはずいぶんと減ってきている。

国内メーカーはダンボールを工夫して使っている。
感心するくらい、ダンボールに縦横に切れ目を入れて立体的にして、
仕切りと緩衝材として働くようになっている。

当日は元箱のまま持っていく。
マニュアルもついている。
箱の雰囲気も、いかにも感じる面がある。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate:

オーディオと青の関係(その12)

坂道のアポロン」という作品がある。
小玉ユキ氏の作品(マンガ)で、アニメにもなっている。

舞台は1966年初夏の長崎・佐世保から始まる。
それまでクラシックしか弾いたことがなかった主人公(高校生)が、
1960年代なかばの基地の町、佐世保でジャズに惹かれていく。

年代も佐世保という場所も、いい設定だと思う。
好きな作品だ。

村上龍氏も、このころ佐世保で高校生時代を過ごされている。
「世界のオーディオ」パイオニア号では、当時のことを語られている。
     *
──ジャズ体験はどんなかたちですか。
村上 いちばん最初は『テイク5』で、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンとかゲッツとジルベルトとかハービー・マンとか、そのへんです。そしてだんだんマイルス・デイヴィスとかセロニアス・モンクをきくようになっていった。もっともマイルスがほんとうにすごいなと思うようになったのは、高校を卒業してからです。いまも繰返しきいているけれど、マイルスのすごさはやっぱり二十才(ハタチ)を過ぎないとわからないと思う。
 高校のときは、カッコウつけてきいていたんでしょうね。そのころフリーが流行ったでしょう。佐世保にいたんですが、すごく詳しいマスターがいるジャズ喫茶に行って、コルトレーンの『オレ』をリクエストしたら、オーネット・コールマンをきいたかというですよ。きいてないと答えたら、コールマンをきいてないヤツにフリーはきかせられないっていわれて(笑い)。それで頭にきて、コールマンとドルフィーが一緒にやってるレコードをきいて、また出かけていったら、こんどはチャーリー・パーカーをきいてるか(笑い)。きいてないといったら、それじゃあダメだと(笑い)。そんな思い出があります。もっともそれ以来、前衛ジャズみたいなのに狂いましたが(笑い)。
     *
「坂道のアポロン」にはジャズ喫茶は登場しないが、
町のレコード店が登場する。
個人経営だから、ちいさな店だ。

でも、ここが主人公がジャズにめざめていく場所である。

1952年生れの村上龍氏だから、高校生の時分は1960年代後半にあたる。
「坂道のアポロン」と同じころだ。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その2)

レコードの無音溝に針を降ろす。
音が鳴り始まるまでは、ほんのわずかしかない。
そのわずかのあいだにボリュウム操作を的確に行う。

上げすぎでもなく低すぎでもなく、ぴったりの音量になるようにすばやくボリュウムをまわす。
ボリュウムのツマミにふれている時間は、わずかだ。
そのわずかな時間でも、従来のポテンショメーターのボリュウムであれば、
すっと上げられもできたし下げることもできた。

だが電子式ボリュウムの中には、そうはいかないものがある。
テクニクスのSU-R1だけではない。
ジェームズ・ボンジョルノ設計のAmbrosiaもそうだと聴いている。

クルクルクルクルと何回もツマミをまわさないと、十分な音量まであげられない、そうだ。
ボンジョルノは、このボリュウムのプログラミングまで自分で行った、そうだ。
でも、その部分だけは外注すべきだったのではないたろうか。

レコードをかけるときのボリュウムの上げ下げは、
針が溝に落ちる際の音をまったくきにしない人であれば、
レコードかけかえごとに、ボリュウム操作はしないだろうから、
SU-R1やAmbrosiaのようなボリュウムでも、特に問題とは感じないであろう。

こう書いていくと、針の上げ下しのときには、
入力セレクターをPhonoポジションではなく、その他のポジションにすれば解決する、
そういう人がきっといる。

でも、違う。
レコードをかけるということは、
レコードをジャケットから取り出してターンテーブルにのせ、
針の上げ下しからボリュウム操作までを含む。

少なくとも私はそう考えている。
そんな面倒な……、と思うような人は、アナログディスク再生には向いていない、といえる。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その1)

瀬川先生のレコードのかけ方は見事だった、と、
それを間近で見てきた人は、そう言う。

私も熊本のオーディオ店で見て知っている。
レコードをに針を降ろして、ボリュウムをさっとあげるまでの動きのスムーズさ。
流れがある、とはこのことだと思う。

その瀬川先生でも、流れが留ってしまうだろう、という光景を目にした。
インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのブースでだった。

またテクニクスのブースでのことになってしまうが、
ここで指摘する問題はテクニクスだけではない。
テクニクス以外にも、同じ問題を抱えているオーディオ機器(コントロールアンプ)はある。

いままで見落していたところであり、
たまたまテクニクスのブースで気づかされた。

テクニクスのコントロールアンプSU-R1のボリュウムは、
従来のポテンショメーターではなく、いわゆる電子式である。

音がよければ、ポテンショメーターであろうと電子式であろうと、
どちらでもいいわけだが、ここには操作性の問題が関係してくる。

テクニクスのスタッフがレコードをかけかえるたびに、
針の上げ下しの歳に、SU-R1のボリュウムのツマミをせわしくなく回されていた。

かなりまわさなければ、十分な音量まであげられないし、
音を絞ることができないのだ。

SU-R1はフォノイコライザーを搭載していない。
アナログディスク再生をしないという人ならば、
このボリュウム操作の問題は、さほど気にならないかもしれない。

だがアナログディスクではそうはいかない。

Date: 10月 2nd, 2016
Cate:

オーディオと青の関係(その11)

「限りなく透明に近いブルー」。
村上龍氏のデビュー作であり、1976年の芥川賞受賞作である。

ステレオサウンド1978年別冊「世界のオーディオ」のパイオニア号に、
村上龍氏のが登場されている。
パイオニアのオーディオ機器を使っているユーザー訪問記事で、
タイトルは「私とおーでぃお」。
村上龍氏のほかには、粟津潔、小室等、立木義浩の三氏も登場されている。
     *
村上 芥川賞の記者会見のときに、新聞記者の一人から、あなたは音楽がお好きのようだけど、ご自分ではこの『ブルー』でどういう音楽をイメージされますか、と質問されたんです。
多分だれもがロックという答えを期待されたんでしょうが、ぼくはキザにも、シューマンのピアノ曲と答えたんですね。あまりにもキザにきこえたんでしょう、新聞にはかかれなかった(笑い)。でも、ぼくはほんとうにそう思っているんですよ。
     *
シューマンのどのピアノ曲かというと、
クララ・ヴィークの主題による変奏曲、クライスレリアーナ、謝肉祭を挙げられている。
好きな曲は「抒情的で、おしゃべりじゃあない音楽」だとして、
バッハも好きで、ブランデンブルグ協奏曲、ゴールドベルグ変奏曲、パルティータも挙げられている。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: 価値・付加価値

オーディオ機器の付加価値(その4)

オーディオ機器の付加価値にはどういうものがあるのだろうか。

ついこのあいだ話に聞いたのだが、
ハイエンドオーディオ機器を購入する人の中には、
このスピーカー(アンプ)は、日本に輸入された一号機なんです、
という人がいるそうだ。

「日本に輸入された一号機」には、自慢が込められている。
ハイエンドオーディオ機器だから、かなり高価である。
それだけのモノを、日本で最初に買えるということは、
それだけの財力があるわけだし、自分にはモノを見る目があって、
それも人よりもいち早く、そのモノの真価を見極められるからこそ、
一号機を購入できる、という自慢。

あとは輸入元、およびオーディオ店の人たちと懇意な間柄であることも、
自慢したいのかもしれない。

でも、自慢するようなことなのだろうか。
本人にとっては自慢であっても、
周りの人はどう思っているのかはわからない。

一号機だから、何か特別な価値が、そのオーディオ機器にあるのだろうか。
一号機ということは、オーディオ機器にとって付加価値といえるのだろうか。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: audio wednesday

第69回audio sharing例会のお知らせ(PIM16KTとつくることについて)

今月のaudio sharing例会は、5日(水曜日)です。

別項で、パイオニアのスピーカーユニットのキットPIM16KTのことを書いた。
それを読んでくださった方から、
未組立てのPIM16KTが一本ありますから譲ります、という連絡があった。

こんな展開になるとは思っていなかった。
なので、今回はPIM16KTを持っていき、つくるというテーマについて話そうと考えている。

最初はインターナショナルオーディオショウが終ってすぐなので、
ショウについて話そうかとも考えていたが、
ショウをじっくりまわる時間がとれそうにないので、他のテーマを考えていたところに、
PIM16KTの話。

昨夜、インターナショナルオーディオショウの後に友人三人で会っていた。
みなオーディオマニアだ。
オーディオの話より、それ以外の話のほうが多かったが、
あるスピーカーのことが話題になった。

非常に高価なスピーカーシステムで、ステレオサウンドでも高い評価を得ている。
これを買った人が、エンクロージュア内部を見たところ、ひどいハンダ付けだったそうだ。
それでハンダ付けのうまい人に、すべてのハンダ付けをやり直してもらったところ、
みちがえるほど音が良くなった、という話だった。

友人のひとりが、本人から聞いている話だ。
そのスピーカーの価格を書いてしまうと、
どのスピーカーなのか特定されるから伏せておくが、ほんとうに高価なスピーカーである。

それでもお粗末なハンダ付けがなされている。
オーディオ機器をつくるということは、いわば接着ともいえる。

接着剤による接着、ハンダによる接着、ボルトやクギによる接着。
そのことにふれながら、語っていく予定だ。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: ケーブル, ショウ雑感

ケーブル考(ショウ雑感・その2)

インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのブース。
SL1200Gについての説明と音出しが行われていた。

SL1200Gは電源コードと信号ケーブルを交換できる。
もちろん製品にはどちらも同梱されている。

が、この日の音出しは、説明もされていたが、
電源コードはアキュフェーズ、信号ケーブルはゾノトーンのモノを使っていた。

話に聞けば、テクニクスの試聴室でも信号ケーブルはゾノトーンとのこと。
いわばテクニクスにとって、信号ケーブルはゾノトーンが標準といえる。

だからそのケーブルを、インターナショナルオーディオショウでの音出しでも使う。
そういう理解もできるわけだが、
それではなんのために信号ケーブルと電源コードを同梱しているのか。

SL1200Gは330,000円(税抜き)するアナログプレーヤーである。
このクラスのモノを買う人が、なんのケーブルも持っていないとは考えられない。
ならばSL1200Gは、最初から信号ケーブルも電源コードもなしでもいいという考えもできる。

それでもテクニクスはケーブルをつけている。
どんなグレードのモノなのかはしらないが、
つけておけばいい、という考えによるモノではない、と思う。

あまりにも安っぽいモノを、330,000円のモノにつけるだろうか。
きちんとしたケーブルがついてくるのではないだろうか。
だとしたら、それはSL1200Gにとって、
標準といえる信号ケーブルと電源コードであるわけだ。

でも、それらのケーブルを使ったSL1200Gの音を、オーディオショウで聴かせない。
テクニクスの試聴室においても、そうであろう。

ここで井上先生の言葉を憶いだす。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: ケーブル, ショウ雑感

ケーブル考(ショウ雑感・その1)

井上先生は、製品に同梱されているケーブルで接続した音を、
まず聴くことの重要性を、くり返しいわれていた。
瀬川先生も同じことをいわれていた、と聞いている。

昨今のオーディオ機器は信号ケーブルだけでなく、
電源コードも交換できるようになっている。

アメリカやイギリスなどの海外製のアンプはかなり以前からそうだったのに対し、
国産のオーディオ機器は電源コードを交換できるようにはなってなかったが、
いまでは交換できないモノの方が少ないようだ。

電源コードが交換できるオーディオ機器にも、電源コードは付属してくる。
その電源コードが、いわば標準となる。

オーディオショウでは各ブースで、さまざまなケーブルが使われているのを目にする。
少しでもいい音を出したい、ということからのケーブルの選択であるはずだ。

いま信号ケーブル、電源コードが付属されているオーディオ機器は、
どのくらいの比率なのだろうか。
電源コードはおそらく100%同梱されているはず。
信号ケーブルは、そうではないだろう。

オーディオショウでは、このあたりはどうしているのだろうか。
信号ケーブルが付属していないのであれば、どのケーブルを使ってもいい、といえる。
電源コードはどうだろうか。

付属のコードをではなく、別の電源コードに換えてしまう。
その音を聴かせることを、出展社のスタッフはどう考えているのか。

Date: 9月 30th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その15)

今年もアナログディスクをプログラムソースとするブースは多かった。
積極的に鳴らしているブースもある。

そんなブースのひとつに入ったときだった。
あるレコードがかけられていた。
何度か聴いているレコードだから、その鳴りに少し首を傾げたくなった。

もう少しこんなふうに鳴るのでは……、そういうふうに思えてしまう鳴り方だった。
それでふと視線をアナログプレーヤーの方に向けると、
あきらかにトーンアームの高さ調整がおかしい。

低いのだ。尻下りになっている。
私とプレーヤーとの距離は1m以上はあった。
にも関わらずはっきりと高さ調整に不備があるのが、視覚的に確認できた。

わずかに低いというレベルではなく、大きく傾いているといえるレベルであった。
使われているターンテーブルもトーンアームも、そうとうに高価なモノだ。
カートリッジも、そうであったはずだ。

それでも、こういう調整で使われていた。
どのブースなのかは書かない。

これだけ傾いていると、私以外にも気づいた人はいると思う。
100%の調整は無理であっても、基本といえる調整はきちんとしておくべきである。

Date: 9月 30th, 2016
Cate: ショウ雑感

2016年ショウ雑感(その14)

テクニクスのブースはD棟の一階にあったから、
D棟四階のA&Mのブースに、次に行った。

マジコのスピーカーシステムが鳴っていた。
パワーアンプは来年発表予定の試作品で、211のプッシュプル。
出力は100W以上になる。

マイルス・デイヴィスのレコードがかかっていた。
曲が終ったところで、後の席の誰かが拍手をされた。

新形のパワーアンプは、マジコのS3を鳴らすことを目標にしている、とのこと。
こういう発言は、なかなかおもしろい。

試作品でもあるし、完成した状態を100とすれば、まだ60くらいの状態の音だというから、
音についてこまかいことを書いてもしようがない。

その後二曲聴いた。
できればもう少し聴いておきたいとも思ったが、時間の余裕がそんなにないのでブースを後にした。

こういう主張のはっきりとしている音は、聴いていておもしろいし楽しい。

私がいた時間は、すべてアナログディスクによる音出しだった。