Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 11月 19th, 2013
Cate: VOXATIV

VOXATIV Ampeggio Signatureのこと(その5)

音が鳴り出すまでは一抹の不安がなかったわけではない。
ステレオサウンドにVOXATIV Ampeggio Signatureが紹介された記事を読めば、
パワーアンプとの相性が、ほかのスピーカーシステムよりも難しい面があるように感じられる。

アークのブースではオーディオリサーチのアンプが組み合わされていた。

VOXATIVの原型ともいえるローサーのユニットのイメージが強いこともあってだろう、
それまで鳴らしていたフランコ・セルブリンに接がれていたダニエル・ヘルツから、
管球式のオーディオリサーチへと替えられた。

オーディオリサーチのアンプはステレオサウンドでけっこう聴いている。
今と昔とでは変化しているのだろうが、
1980年代のオーディオリサーチのアンプは高能率のスピーカーシステムと組み合わせるには、
S/N比の面で、わずかとはいえ不満を感じないわけでもなかった。

VOXATIV Ampeggio Signatureの能率は100dBを超えている。
昔のオーディオリサーチのままであるわけがない、とわかっていても、
音が鳴り出すまでは、耳障りな音も若干するのではないか、とも思っていた。

アークのブースではVOXATIVにはオーディオリサーチのアンプが常に組み合わされていた。
ダニエル・ヘルツのアンプで鳴らされることはなかった。
そういう試聴条件でどれだけ確実なことがいえるのかといえば、
まったく、としかいいようがないのはわかっていても、
VOXATIVは、それほどパワーアンプを選り好みしないように感じていた。

一曲だけでもダニエル・ヘルツのアンプで鳴らされていたならば、はっきりしたことがいえる。
それでも初日と最終日とであわせて約二時間聴いていて、
アンプとの相性を疑うような鳴り方をすることはなかった。

Date: 11月 19th, 2013
Cate: VOXATIV

VOXATIV Ampeggio Signatureのこと(その4)

オーディオにも流行り廃れはある。
技術的なことでも、外観的なことでも、音を表現する言葉にも流行り廃れはある。

ずっと以前はよく使われていた音の表現でも、
ここ10年以上、あまり目にしなくなった言葉がある一方で、
以前はあまり使われてなかった表現が、いまでも誰もが当り前のように使うようにもなっている。

たとえば「音の粒立ち」。
昔(といっても私がオーディオに関心をもち始めたころ)は、よく目にした。
それが、いまではあまり目にしなくなっている。

それから「内声部」も以前ほどは目にしなくなっている。
以前は、クラシック、オーケストラや弦楽四重奏が試聴レコードとして使われた時には、
試聴記には、内声部についての表現があったものだ。

VOXATIV Ampeggio Signatureの音を最初に聴いていて、頭に浮んでいたのは、
これらの音の表現に関することだった。

つまり、これらの音の表現が実に良くなってくれる。
だからなのだろう、音が鳴り出した瞬間に、いい音だなぁ、と感じられる。
そして音楽に進むにつれて、最初の感想に疑いをもつどころか、
ますますそのおもいが確固たるものになっていく。

Date: 11月 18th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その19)

私が瀬川先生がJBLのD44000 Paragonを手に入れられたはず、と思える理由のひとつに、
岩崎先生の不在がある。

何度かこれまでも書いているように、
瀬川先生にとってのライバルは岩崎千明であったし、
岩崎先生にとってのライバルは瀬川冬樹であった。

だからパラゴンは、岩崎先生のメインスピーカーのひとつであった。
ステレオサウンド 38号に掲載されている岩崎先生のリスニングルームには、
パラゴンがいい感じでおさまっていた。

あの写真をみてしまったら、
同じオーディオ評論家としてパラゴンには手を出しにくい。

欲しければ、それが買えるのであれば何も遠慮することなく買ってしまえばいいことじゃないか──、
こんなふうに思える人はシアワセかもしれない。

岩崎先生にも瀬川先生にもオーディオ評論家としての、自負する気持があったと思う。
その気持が、パラゴンが欲しいから、私も……、ということは許せなくする。

もし岩崎先生が健在であったなら、
ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンの文章は違った書き方になっていたはず。
その意味で、59号の文章は、瀬川先生のパラゴンへの気持・想いが発露したものだと思えてならない。

Date: 11月 17th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その18)

ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンについての文章を読み返すたびに、
あれこれおもってしまう。

だから何度も引用しておこう。
     *
 ステレオレコードの市販された1958年以来だから、もう23年も前の製品で、たいていなら多少古めかしくなるはずだが、パラゴンに限っては、外観も音も、決して古くない。さすがはJBLの力作で、少しオーディオ道楽した人が、一度は我家に入れてみたいと考える。目の前に置いて眺めているだけで、惚れ惚れと、しかも豊かな気分になれるという、そのことだけでも素晴らしい。まして、鳴らし込んだ音の良さ、欲しいなあ。
     *
この200字くらいの文章から読みとれることはいくつもある。
それは私の、瀬川先生への想い入れが深すぎるからでは決してない、と思う。

この文章を最初によんだ18の時には気づかなかったことが、いまはいくつも感じられる。

「外観も音も、決して古くない」
ここもそうだし、
「しかも豊かな気分になれる」
ここもだ。

瀬川先生とパラゴンについて、こまかいことう含めて、長々と書いていくことはできるけれど、
この文章だけで、もう充分のはずだ。

私は断言する。
瀬川先生はバラゴンを手に入れられたはずだ、と。

Date: 11月 15th, 2013
Cate: VOXATIV

VOXATIV Ampeggio Signatureのこと(その3)

VOXATIV Ampeggio Signatureの音は、
ジャーマン・フィジックスのUnicornを2002年に聴いた時と同じように、もう一度聴きたくなっていた。
だから最終日にインターナショナルオーディオショウに行った。

Unicornのときは、取扱いのタイムロードのブースでは、一日中鳴っていた。
他のスピーカーシステムが鳴っていることはなく、
どの時間帯に行ってもUnicornの音が聴けたのはありがたかった。

VOXATIV Ampeggio Signatureを取り扱っているアークの場合、そうはいかなかった。
アークのブースではVOXATIV Ampeggio Signatureの他に、ソナス・ファベールのスピーカーシステム、
それからフランコ・セルブリンのスピーカーシステムが交互に鳴らされるのだから。

最終日、朝から会場に行くことができていれば、
二回聴く機会はあったのだが、会場着は午前中に用事があったために一時過ぎだった。
最終日は終了時間は他の日よりも二時間早い。
そんなこともあって二時からの回だけを聴いてきた。

アークはオーディオ評論家と呼ばれている人による音出しではなく、
アークのスタッフによる音出しであるから、
初日に聴いた時と同じディスクが鳴らされる可能性もあった。

それはそれでもいい。
とにかくVOXATIV Ampeggio Signatureの音を、もう一度聴いておきたかったのだから。

VOXATIV Ampeggio Signatureについての説明は初日のくり返しだった。
ディスクは数枚は同じだったが、違うディスクの方が多かった。
初日とは聴く位置をあえて変えてみた。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その6)

池田圭氏がぎりぎり明治の生れだったとしたら、1981年の時点で70歳ということになる。
70にして、dbxの20/20を試聴もすることなく購入されたことを、どう思うのか。

池田氏はウェスターン・エレクトリックの大型ホーンを中心としたシステムを組まれている。
アンプは真空管アンプ。
池田氏の著書、盤塵集(ラジオ技術社)、音の夕映え(ステレオサウンド)を読めば、
池田氏のオーディオの考え方がある程度は掴めるし、
どういう取り組み方をされているのかも伝わってくる。

あの歳で、こういうシステムを使っている人ならば……、
そんな紋切り型の捉え方をするのであれば、
20/20の導入は、何を血迷われたのか、ということになるだろうし、
先入観にとらわれずに何でも自分で試される人という見方からすれば、
20/20の導入は自然なこととしてうつる。

池田圭氏はステレオサウンド 61号に、
「僕のオーディオは僕のためになるからである。」と書かれている。

そういう池田氏だから、20/20をすんなり導入されたのだろう。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その5)

dbxの20/20は、ジャンルとしてはグラフィックイコライザーということになる。

オーディオコンポーネントのなかではグラフィックイコライザーは、
アンプ、スピーカーといった主役級からすれば、脇役のように受けとめられがちである。

ステレオサウンドの新製品紹介のページで20/20が取り上げられることはなかった。
かわりに、というわけでもないのだろうが、
ステレオサウンド 61号から63号まで、池田圭氏による「フラットをもってものごとの始まりとす」が載っている。

池田氏は秋葉原にあったヤマギワで「顧問のような役」をやられていた。
そのヤマギワで、20/20が眼に留り購入されている。
そのときのことをこう書かれている。
     *
20/20を一見してその凄味が判るような気がした。これは直感である。そして自分のこれまでのオーディオ体験から間違い無しと思う自惚れが拍車を加えた。よしやそれが無駄使いに終ろうとも悔いないだけの自信もあった。騙され透かされようと自業自得である。僕は清水の舞台から飛んだ。そして見事金的を射落した。
     *
このとき池田氏はおいくつだったのか。
伊藤先生と同世代だとすれば明治の生れなのだろうか。
とにかくわれわれの大先輩である。

その池田圭氏が、20/20を直感で導入されている。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その26)

何もスピーカーはフルレンジがベストである、と強調したいわけではない。
現実としては、優秀なマルチウェイのスピーカーシステムを私もとる。
フルレンジユニットだけでは鳴らせない領域の音を優れたマルチウェイのスピーカーシステムは提示してくれる。

そして優れたフルレンジは、優れたマルチウェイのスピーカーシステムが、
いまのところどうやってもうまく鳴らせない、フルレンジならではの領域をもっている。

井上先生は、2ウェイのスピーカーシステムは二次方程式、3ウェイは三次方程式、4ウェイは四次方程式、
こんなふうにユニットの数(帯域分割)がふえてくると、解くのが難しくなってくる、
といわれた。

そのとおりだと思うし、むしろユニットの数が増えることは、
つまりはフィルターの数がふえることでもある。

2ウェイであれば、ウーファーとトゥイーターにそれぞれひとつずつで二つ。
3ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつに、
スコーカーはハイカットとローカットのふたつのフィルター(バンドパスフィルター)が必要になり、
フィルターの数は四つになる。2ウェイの二倍になる。

4ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつ、
ミッドバスとミッドハイはふたつずつで、合計すると六つのフィルターが必要となる。

フィルターの数だけで考えれば、
2ウェイは二次方程式、3ウェイは四次方程式、4ウェイにいたっては六次方程式といえる。
しかもフィルターで難しくなるのは、
ひとつのユニットにハイカットとローカットを使うことであり、
しかもその帯域幅が狭いほど難しさは増してくる、といえる。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その4)

dbxのこの時代のほかの製品の型番は三桁の数時だった。
20/20だけが、他の機種とは型番のつけ方が違っていた。

dbxの広告(正確には当時の輸入元だったBSRジャパンの広告)に、その理由が書いてある。

20/20とはアメリカの視力検査表のいちばん下の段のことで、最もよい視力を表すものだそうだ。
つまりPerfectな視力→Perfectな分析・Perfectなイコライゼーションという意味がこめられている。

そして20/20の広告にも、マイコンという言葉が使われている。
「多次元にわたる部屋の音響特性を、マイコンによって自動的に測定、分析、管理、調整を敏速かつ確実に行なう」
とある。

20/20のフロントパネルの左下部には
dbx 20/20
COMPUTERIZED
EQUALIZER/ANALYZER
とある。

20/20は付属のマイクロフォンと聴取ポイントに設置して、
ピンクノイズのレベル調整を行ったあとに、AUTO EQと表示のあるボタンを押すだけで、
マイクロフォンの位置における周波数特性をフラットに自動的に補整してくれる。
これにかかる時間は約15秒である。

マイコンの利用が、それまでは操作に関係してくることに使われていた。
カセットデッキにおける利用も、音質への影響もあるとはいえ、やはり操作に関することだという面が濃い。
20/20が、音質の調整に、マイコンを利用した最初のオーディオ機器のはずだ。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その3)

1981年にdbxから20/20が登場した。価格は480000円。
この価格にのイコライザーとしては、10バンド(31.5、63、125、250、500、1k、2k、4k、8k、16kHz)。
このスペックだけでみれば、この時代のグラフィックイコライザーとしてみれば割高におもえる20/20には、
それまでのイコライザーにはなかった機能がもりこまれていた。

20/20の登場の数年前から、
オーディオ機器の広告やカタログにマイコンの文字が使われるようになっていた。
マイコンがもっとも積極的に搭載されたのはカセットデッキだろう。

カセットテープが普及しカセットテープの高性能化にともないテープの種類が増えていった。
メタルテープも登場した。
それらの、通常のテープよりも高音質で録音できることを謳ったテープの良さを引き出すには、
ユーザー側にそれなりの使いこなしが要求もされていた。

そういう調整を楽しんでやる人もいればめんどうだと思う人もいる。
楽しんでやる人のすべてが正しく調整できていたとは思えない。
せっかくのテープの良さを、間違った調整で充分に良さを発揮できないで使っていた人もいても不思議ではない。

カセットテープは本来使いやすいものであっただけに、
どんなに高性能なテープであろうと、カセットデッキにセットして録音ボタンを押すだけで、
満足のいく音質で録音できるのが、カセットデッキ(テープ)の本来のあり方だとすれば、
これらの調整は、やはりめんどうなものでしかない。

日本のメーカーは、このところにマイコンを利用して、自動化していった。
こうやってオーディオ機器にもマイコンが使われるようになっていき、
dbx 20/20が登場した。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その25)

アルテックの405Aを、SUMOのThe Goldの前に使っていたアキュフェーズのP300Lでも鳴らしている。
そんなに聴いていたわけではない。
とりあえず、どんな感じになってくれるかな、という軽い気持で聴いていたし、
1日だけだった、と記憶している。

そのときの405Aの印象はそれほど残っていない。
10cmのフルレンジで、さほど高級なユニットでもないし、これくらいの音だな、というあなどりがあった。

そのあなどりがThe Goldで鳴らしていた時にもあった。
405Aを鳴らしていた1週間、そのあなどりがあった。

あなどりがあったからこそ、スピーカーをセレッションにSL600に変えたとき、
その変化はP300Lとの経験をもとに、このぐらいになるであろう、と想像していたし、
405Aを聴いていて感じていた良さは、SL600でも同じくらいに出るであろうし、
もしかするともっとよく出るかもしれない、と思っていた。

それが見事にくつがえされた。

405Aをあなどっていたことが、音として出たわけだ。

P300LとThe Goldという、ふたつのパワーアンプの違いは、
SL600の方がよりはっきりと出してくれる、という思い込みがあった。
けれど結果は、405Aの方がよりはっきりと出してくれた、ともいえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その24)

トータルでの音の良さということではセレッションのSL600に素直に軍配をあげるし、
その方が所有している者としてはうれしいわけだが、
それでもなおアルテックの10cm口径のフルレンジが聴かせてくれた良さにおいては、
SL600がかなわないこと。
それもセッティングをどうつめていこうとも適わない(敵わない)ということは、癪であった。

アルテックの405Aに関しては、SUMOのThe Goldの様子見のために鳴らしていたのだから、
セッティングもいいかげんだった。床に直置きだった。
スピーカーケーブルもそのへんに適当なものを接続しただけだった。

にもかかわらずSL600をきちんとセッティングして注意を充分にはらって鳴らしているにも関わらず、
405Aが易々と出してくれる良さが、どうしても出てこない。

それがスピーカーの面白さであることはわかっていても、
だからこそさまざまなスピーカーが存在している理由のひとつでもあるわけだが、
少なくとも価格が拮抗しているのであれば納得できても、
価格も製品としてのつくりもまったく違う、ふたつのスピーカーを鳴らして、
こういう結果になるのは腹立たしい部分もないわけではない。

しかもその部分は、どんなに強力なパワーアンプをもってきたところで、うまく鳴らない。
結局のところ、フルレンジユニットが鳴らす音の良さが身にしみた。

フルレンジユニットをそのまま鳴らす。
ユニットとパワーアンプの間にはネットワークを構成する部品(コンデンサーやコイル)を介在させない。
介在するのはスピーカーケーブルと端子ぐらいにしたときの、
フルレンジの良さは、マルチウェイのスピーカーシステムを聴くことがあたりまえになりすぎている世代にとって、
どういう位置づけになるのだろうか。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その2)

世の中には、いったいどれだけの道具が存在するのか。
どれくらい昔から道具が存在してきたのか。

文明とともに、それらの道具の大半は洗練され、電動化されていった。
電動化されたことで、人の手で動かしていた時よりも、ずっと高速に動き、高効率化された。

その電動化されたことによって、これまでにさまざまな試みがなされてきたのが自動化である。

すべての道具が電動化され、そして自動化されているわけではないけれど、
自動化への試みはいつの時代にも、どの道具に対しても試みられている。

オーディオにかぎっても自動化への試みは、これまでにもいくつもなされてきている。
アナログプレーヤーにかぎっても、そうだ。
簡単なところではレコードの最内周にカートリッジがくれば自動的にリフトアップする機構から、
フルオートプレーヤーのようにレコードをターンテーブルの上に載せ、スタートボタンを押すだけで、
あとの操作はいっさい必要なしになった。

オートチャンジャーのプレーヤーではレコードかけかえもプレーヤーがやってくれる。
実物を見たことはないし、日本には輸入されなかったはずだが、
1970年代の終りごろにCEショウには、自動的にレコードを裏返すプレーヤーも登場していた。

さらにフルオートプレーヤーは、
それまでメカニズム中心の設計から電子制御が加わり、
レコードのサイズを検出して回転数の設定から選曲も可能になっていった。

カセットデッキについても自動化は、カセットテープへの自動対応、
オートリバース機構など、いくつもの試みがなされてきた。

どんなに自動化されようとも、これまではディスク(テープ)の選択は、人まかせだった。
レコード棚から聴きたいレコードを選んで取り出して、
プレーヤーのところにまで持ってきて、ジャケットからレコードを取り出してターンテーブルに乗せる。
そしてクリーニングする。
少なくともここまでは自動化されることはなく、聴き手がやることだった。

自動化はあくまでも限られた範囲での自動化であった。

私が、この項で書いていくのは、この自動化について、である。
オーディオにおける自動化(オートマティック)だ。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: EXAKT, LINN

LINN EXAKTの登場の意味するところ(その1)

今年登場したすべてのオーディオ機器を聴いているわけではない。
今回のオーディオショウで見て聴いたモノ、
ステレオサウンドを始めとするオーディオ雑誌での情報、
それらを総合して、私にとっての今年登場したオーディオ機器のなかで、もっとも注目すべきは、
LINNのEXAKTである。

音だけに関していえば、私にとっての今年最大の注目すへきオーディオ機器はVOXATIVであるが、
オーディオについて、オーディオのこれからについて、あれこれ考えさせられる、
その意味でEXAKTということになる。

二日前に別項「オーディオ・システムのデザインの中心(LINN EXAKT)」でも、
EXAKTのことについて書いた。
オーディオ・システムのデザインの中心に関してもそうだが、
それ以上に私がEXAKTに強い関心を抱くのは、
オーディオが音楽を聴くための道具として考えるのであれば、
オーディオの道具考として、EXAKTの機能は、
人間(聴き手)と道具(オーディオ機器)との関係性について再考を求めてくるところがある。

しかもこの再考は、考えれば考えるほど楽しくなっていく感じがしている。

EXAKTのシステム全体としての価格は、なかなか高価だ。
EXAKTの音に興味を持った人でも、おいそれと手が出せる人はあまりいないかもしれない。
そんな高額なシステムだから、最初から関心がない、なんてことはいわずに、
音よりもEXAKTというシステムの意味を考えていくことは、
つまりはEXAKTということにとどまらず、
こういう機能をそなえるオーディオ機器(というよりもオーディオシステム)が登場してきたことを、
どう受けとめ、どう考えていくか、では、今年のオーディオ機器のなかではダントツである。

Date: 11月 3rd, 2013
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, ショウ雑感

Bösendorfer VC7というスピーカー(2013年ショウ雑感)

Bösendorfer VC7というスピーカー」という項を立てて、(その28)まで書いている。
まだ書いて行く。

Bösendorfer(ベーゼンドルファー)からBrodmann Acousticsに変ってから、
日本へは輸入されていない。
現行製品ではあるけれど、日本ではいまのところ買えない。

だからこそ書いていこう、と思っているし、その反面、輸入が再開される可能性も低いだろう、と思っていた。

今年のインターナショナルオーディオショウでの、予想していなかった嬉しい驚きは、
Bösendorfer(Brodmann Acoustics)のスピーカーシステムが、
フューレンコーディネイトのブースの片隅に展示されていたことだった。

目立たないように、という配慮なのだろうか。
うっかりすると見落してしまいそうな感じの展示である。

今日の時点ではフューレンコーディネイトのサイトには何の情報もない。

Brodmann Acousticsのスピーカーシステムの日本での不在の期間(三年ほどか)がひどく永く感じられた。
このスピーカーシステムは、だからといって日本でそれほど売れるとは思えない。
思えないからこそ、このスピーカーシステムの輸入を再開してくれるフューレンコーディネイトには、
感謝に近い気持を持っている。

スピーカーのあり方は、決してひとつの方向だけではない。
そんなことはわかっている、といわれそうだが、
実際に耳にすることのできるスピーカーシステムの多くがひとつの方向に集中しがちであれば、
この当り前のことすら忘れられていくのではないだろうか。

その意味でも、Brodmann Acousticsが聴けるということは、
大事にしていかなければならないことでもある。
フューレンコーディネイトが、その機会をふたたび与えてくれる。