ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その64)
クレルのKAS100とGASのAmpzillaの回路図を比較すると、
確かに似ている、というよりもそっくりといっていいかもしれない。
特に言葉だけで回路の内容を表現しようとすれば、文字の上ではそうとうに似てくる。
これだけでKAS100、つまりクレルがGASのマネしているとは言い難い面もある。
技術は進歩することによって収斂していく面もあわせもつ。
だから回路構成が似ているからといって、
後から登場したアンプ(メーカー)がマネをしたとは、かならずしもいえない。
ではその他の点に関してはどうだろうか。
アンプの音は回路構成と使用部品によって決まるわけではないことは周知のとおり。
筐体構造をふくめたコンストラクションも大きな音に影響している。
AmpzillaとKSA100のコンストラクションを写真を使わずに、
これもまた言葉だけで表現するとすれば、回路ほどではないにしても似てしまう。
Ampzillaの場合フロントパネルの右側に電源トランス、左側にヒートシンクがあり、
このあいだに平滑用の大容量の電解コンデンサーが配置されている。
KSA100はこの配置と基本的には同じである。
フロントパネルのすぐ裏側に電源トランス、それから電解コンデンサー、ヒートシンクと一列に並んでいる。
AmpzillaもKSA100もファンを使った強制空冷をとっている。
AmpzillaとKSA100の違いは、KSA100は完全なデュアルモノーラルコンストラクション、
そして空冷ファンとヒートシンクの位置関係。
Ampzillaは空冷ファンを下側に、その上にヒートシンクを置く。
KSA100はヒートシンクの上に空冷ファンを置いている。
こんなふうに見ていくと、KSA100はたしかにAmpzillaに似ているといえば似ている。
でも、マネをした、は言い過ぎというよりも、KSA100を正しく理解していない、というべきだ。
KAS100は回路構成の特徴よりも、内部コンストラクションの特徴の方をどちらかといえば謳っていた。
KAS100のシャーシーは奥行きが長い。
Aクラスで100W+100Wの出力をもつアンプだけにサイズがある程度大きくなることは想像できるものの、
それにしてもKAS100のシャーシーは奥に長いすぎる、という感じ。
自然空冷であればAクラス100Wの発熱を処理するためには、
それなりの大きさのヒートシンクが要求されそれにともないアンプ自体も大型化していくわけだが、
KAS100は強制空冷をとっている。巨大なヒートシンクはもっていない。
にもかかわらず奥に長いシャーシー内部には、
電源トランス、平滑用の電解コンデンサー、ヒートシンクを中心とするアンプ・ブロック、
これらが余裕をもたせて配置してあることが、天板をとり中を覗いたときにすぐに気がつく点だ。
それぞれのブロックの電磁的、熱的などの相互干渉をおさえるためにこれだけの距離が必要であり、
これ以上の小型化はできない、という説明がなされていた。