Date: 8月 6th, 2012
Cate: 朦朧体
Tags:

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その62)

朦朧体ということで、浮んでくるアンプに、クレルのKSA100がある。
クレルのデビュー作のステレオ仕様のAクラスの100W+100Wの出力をもつパワーアンプ、
これとコントロールアンプのPAM2を組み合わせたときの音は、いまも想い出せる。

はじめてクレルの、このペアを聴いた時に、ハッとした。
おそらくこのペアが奏でる音を、あの当時聴いたことがある人ならば、
私と同じようにハッとされたことだとおもう。

トランジスターアンプから、こういう質感の音がやっと出てくるようになった、とも感じていた。
マークレビンソンとはあきらかに違う質感、肌ざわりのよい音がそこにはあった。
聴き惚れる音とは、こういうものかと思わせる音だった。

ただ、この素晴らしい質感の音は、
以前も書いているようにフロントパネルの処理が変化していくにつれて、変っていった。
その変り方は小改良の積重ねによるもの、と捉えれば、それなりに評価できるものではあるけれど、
あまりにも最初のころのPAM2とKSA100の音が見事すぎたために、
そして魅力にあふれた音だったために、それらはすべて薄まっていくように感じてしまった。

それ以降、クレルのアンプは、確かにクレルのアンプであり続けたけれど、
ごく初期のクレルのアンプだけが聴かせてくれた良さは、もう二度と戻ってこなかった。

もっともクレルの創始者であり、
現在はクレルを離れ、自らの名前を冠したブランドを新たに興したダゴスティーノの新作は、
そういうごく初期のクレルの魅力が甦っている、らしい。

私は、あのとき、クレルのKSA100に惚れていた。
そんなとき、ある人から聞かされた話がある。
アメリカでは、クレルのパワーアンプはGASのAmpzillaをマネしたアンプだ、といわれていますよ──、
あまり聞きたくないことを、その人は言っていた。
「回路もそっくりなんですよ」と続けて言っていたこと憶えている。

そのときは、それほど気にしなかった。
仮にAmpzillaと同じ回路だとしても、回路定数や使用部品には違いがあるし、
コンストラクションだって、違うはずなのだから、
似ているところはいくつかある……、その程度のものだろう、とろくに調べもせずに勝手にそういうことにしていた。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]