ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その54)
私ととしては、ジェームズ・ボンジョルノの最高傑作は、SUMOのThe Goldだ、といまでも思っている。
それは音だけではなく、特許取得の、バイアス回路を省略した出力段、
電源トランスを中央に配して、重量バランスへの配慮も十分で立体的なコンストラクション。
The Goldを使う前に、各部をクリーニングするために一度バラしてたとき、つくづくそう感じた。
これで、もう少し丁寧な造りであったならば、と想いはしたものの、
ボンジョルノのひらめきがこれほどつまっているアンプはない、と断言できる。
The Goldはバランスアンプなのでフォーンジャックによるバランス入力がメインであり、
コンシューマー用パワーアンプとしての互換性からアンバランス入力も設けている。
アンバランス信号だとバランス信号と比較すると、反転用のOPアンプをよけいに通るようになっている。
バランス出力をもつコントロールアンプのほうが、その意味では音質的には有利になる。
だから、というわけでもないが、
当時は930st(トーレンス 101 Limited)を使っていたからバランス出力は簡単に取り出せる。
それでバランスのアッテネーターを用意してバランス接続していた。
CDプレーヤーは、
まだスチューダーのA727が登場する以前のときはトライアッドのトランスを介してバランスに変換していた。
その一方で、マークレビンソンのJC2を筆頭にいくつかのコントロールアンプも接続していた。
当然アンバランス出力しか装備していない、これらのコントロールアンプだと、
使い勝手はアッテネーターより当然いいものの、音質的には満足できるところもある反面、やはりそうでない面もあった。
そんなとき、GASのThaedraの初期モデル、それもひじょうに程度のいいモノを手に入れることができた。
Thaedraが欲しかったのは、実はフロントパネルの白で、ツマミが黒の、
いわはパンダThaedra(勝手にそう名づけている)のユニークさに惹かれるものがあって、
ボンジョルノのファンとしては、パンダThaedraを手もとに置いておきたかった、それだけの理由だった。
パンダThaedraは無理だったが、代わりというわけではないが、同じ初期のThaedraが入手できたわけだ。
そういう理由だったので、正直期待はさほどしていなかった。
それに前述しているとおり、アンバランス接続だとOPアンプを余計に信号が通ることになる。
Thaedraのラインアンプは、スピーカーを直接鳴らせるほどの出力段をもっている。
けれどThe Goldのアンバランス入力のインピーダンスは1MΩと、ひじょうに高い値に設定されている。
となると、コントロールアンプに、Thaedraのようなものは必要としなくなる……。
なのに、Thaedraを接いで出てきた最初の音に、もう驚くしかなかった。