Date: 2月 15th, 2012
Cate: 朦朧体
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ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その57)

アンプの設計者には、どちらかといえばプリアンプに妙味を発揮するタイプの人と、パワーアンプの方が得意な人とに分けられるのではないかと思う。たとえばソウル・マランツは強いていえばプリアンプ志向のタイプだし、マッキントッシュはパワーアンプ型の人間といえるだろう。こんにちでいえば、GASの〝アンプジラ〟で名を上げたボンジョルノはパワーアンプ型だし、マーク・レビンソンはどちらかといえばプリアンプ作りのうまい青年だ。
     *
ステレオサウンド 52号の特集の巻頭言「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」のなかに、
瀬川先生はこう書かれていた。
このとき、私はまだGASのアンプ(ボンジョルノのアンプ)を聴く機会はなかった。
だから、この瀬川先生の言葉をそのまま信じていたし、
実際にGASのラインナップをみても、パワーアンプの方を得意とするメーカーのようにも自分でも感じていた。

GASを離れてSUMOをつくったボンジョルノは、The PowerとThe Goldを発表した。
しばらくしてThe Powerの弟分にあたるThe HalfとThe Goldの弟分のThe Nineも出した。
このことも、ボンジョルノはパワーアンプ型のアンプ・エンジニアだ、
と思い込むことに私のなかではつながっていた。

だからパンダThaedraが欲しかったのは、ボンジョルノにはたいへん失礼なことではあるけど、
フロントパネルのユニークさに惹かれて、が大きな理由だった。

マークレビンソンのLNP2やJC2とくらべると、
Thaedraは高さのあるシャーシーに、独特のレイアウトのコントロールアンプであり、
どちらが精緻な印象をあたえるフロントパネルかといえば、
LNP2と答える人はいても、Thaedraの方だ、と答える人はおそらくいない、と思う。

いかにも繊細な音を出してくれそうな、そして実際に出していたLNP2と、
ユニークで、しかもアメリカ的な(マッキントッシュの与えるアメリカ的なものとはまた違う)、
といいたくなるThaedraとでは、
私のなかでは正統派のコントロールアンプの最上級のところにLNP2がいて、
Thaedraはすこし外れたところにいるアンプ。
コントロールアンプとしてコントロールする、その操作に伴う精緻な感覚にただ憧れていた私には、
LNP2のマーク・レビンソンはコントロールアンプ型、
ユニークではあっても……のジェームズ・ボンジョルノは、どちらかといえばパワーアンプ型、
そんなふうに思っていたから、The Goldと接いだときの音は、意外だったのだ。

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