Archive for category トーラス

Date: 4月 28th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その12・余談)

メビウスの環といえば、
ステレオサウンドが49号からはじめた「ステート・オブ・ジ・アート(State of the Art)賞」。
受賞した製品をつくりだしたメーカーには、トロフィーが贈られていた。

田中一光先生デザインで、メビウスの環をモチーフにした銅製のトロフィーだった。
こんな素敵なトロフィーが届いたら、どんなにか嬉しいことだろう。

ステレオサウンドの53号には、受賞メーカーから寄せられた感謝文が掲載されている。
そこには、ESLの横に、このトロフィーをもってほほえんでいるピーター・ウォーカーの写真も載っている。

なぜメビウスの環をデザインされたのか。
すごく知りたい……。
いまとなっては訊くことはできない。

Date: 4月 27th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その12)

初段が差動回路ではない、たとえば一般的な真空管アンプでは、
NFBは終段のプレートもしくはカソードから、非反転アンプであれば、初段のカソードにかえってくる。

つまり初段の、入力信号をうける真空管とNFB信号をうける真空管は同じである。
それが差動回路では、対となるトランジスターや真空管で、別個に受けるわけだ。

このことが、NFBをかける前は同一回路であっても非反転アンプと反転アンプとで、
歪率に差が生ずる原因である、とラジオ技術の記事では結論としていた。

NFBループを含めたアンプ全体の回路をトーラスとして捉えるのならば、
非反転アンプで、初段が差動回路ならば、なんらかの工夫が必要となるだろう。

初段が差動回路でなければ、非反転アンプもトーラスとして見えてくる。
反転アンプもトーラスだが、こちらは出力と入力の位相が180度異る。
つまりトーラス的にみれば、非反転アンプが通常の環(わ)だとすれば、
NFBのかかっている反転アンプは、メビウスの環といえるのではないだろうか。

ひねりのところはNFBループではなく、むしろ増幅部にあたる。位相が反転しているところだからだ。

メビウスの環的な反転アンプ。こういう考え方もあっていいのではないだろうか。

Date: 4月 26th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その11)

誰が付けたのはわからないが、「回路」ということばには、感心する。

電気的・電子的ではなく、この「回路」ということばからアンプを捉えれば、
NFBをかけた状態が、アンプとしての本来のあり方のように思えてくる。

現在の大半のアンプの初段は差動回路となっている。オペアンプにおいても、そうだ。
通常、アンプは入力と出力の位相が同じ、いわゆる非反転アンプとなっている。
アンバランス入力、アンバランス出力のアンプの場合、
出力は、信号を受けとるトランジスター(プラス側)ではなく、
対をなすトランジスター(マイナス側)の入力(ベース、FETであればゲート)にもどされる。

一方、入力と出力の位相が逆相となる反転アンプの場合は、というと、
出力は、入力信号を受けるトランジスターのベースにもどされる。

非反転アンプと反転アンプを見比べると、初段のトランジスターなりFETが、
前者はNFBのループから外れているし、後者ではループ内に収まっている。

かなり以前のラジオ技術誌で、オペアンプでの非反転動作と反転動作時の歪率を測定した記事があった。
いくつかのオペアンプで測定されていたように記憶しているが、例外なく反転アンプのほうが歪率が低い。

Date: 4月 26th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その10)

無帰還アンプが、ひじょうに気になっていた時期もあった。

それでも勉強していくすぐにわかることだが、トランジスター・パワーアンプで、
終段がエミッターフォロワーだから、無帰還を謳っているアンプでも、
厳密には完全な無帰還アンプではない、ということ。

いわゆるローカル・フィードバックはかかっている。
無帰還アンプとは、一般的な、ループ・フィードバックを排除したもので、
このふたつのフィードバックは性格の違うものである。

NFBはなにも、いわゆる静特性だけを良くしていく技術ではない。
うまく使えば、アンプの安定化にも寄与する技術でもある。
それに、NFBによって、アンプのかたちも変っていく。

いわば、アンプの歴史はNFBの歴史、NFBの歴史はアンプの歴史、である。
とにかくNFBを無視して、アンプについては語れない。

そして「回」だ。
これがトーラスなのだから、NFB(ループ・フィードバックのほう)も、
トーラスという見方・捉え方ができるのではないだろうか。

Date: 4月 24th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その9)

「回路」という言葉から連想しやすいアンプの回路技術といえば、
やはり帰還回路、つまりNFBやPFBではないだろうか。

出力信号の一部を入力にもどすことで、ゲインの安定化、周波数、歪率、S/N比などの諸特性を改善する、
この技術は、市販されている大半のアンプに採用されている、古くからある技術だ。

1970年代後半、マッティ・オタラ博士が、多量のNFBによるTIM歪の発生について発表があったころから、
NFBをやにくもに使うことが見直され、パイオニアからは、
独自開発のスーパーリニアサーキット(SLC)による無帰還アンプ、C-Z1、M-Z1が登場した。

オーディオに興味をもちはじめて、アンプの回路技術にも関心をもちはじめた時、
まっさきに疑問をいだいたのは、この帰還回路だった。
アンプ内の信号の伝わる速度は無限大ではない。ということは、NFBにおいて、
出力信号の一部が入力にもどるときには、入力には次の信号が来ているはず。
音楽信号はつねに変化しているものだから。
その時間は、ごくごくわずかなものであっても、遅れることは変らない。

それに多量のNFBをかけるトランジスターアンプと違い、
比較的軽めのNFB、もしくは無帰還の真空管アンプは、
NFBをかける前(オープンループ時)の諸特性が優れている、ということも、盛んにいわれていた。

Date: 4月 23rd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その8)

マークレビンソンのパワーアンプML2には、電源トランスがEI型のものとトロイダル型、2つのコアの種類がある。
どちらが音がいいのかは人それぞれだろうが、以前書いたように、
EI型のものをエポキシで固めたものが、ML2らしい音をもっともよく抽き出すと、
私のまわりに限っては、高く評価する人が多いように感じている。

Oさんの受け売りだが、トロイダルコアの電源トランスは、一般的にいって、音が甘くなる傾向が強い、とのこと。
その理由として、巻線の巻き方にある、ときいている。

EIコア型の場合、巻枠にコイルを巻いていく。このとき、巻きのテンションは管理され、
しっかりと巻かれていくことが多い。
ところがトロイダルコアの場合、線材をあらかじめコイル(バネ)状にして、
そのままトロイダルコアに回転させながら絡ませていくだけだから、
どうしてもコアに対してしっかりとテンションをかけて巻いていくことができない。
比較的、ゆるゆるな巻きになるから、だそうだ。

巻きが緩いものを、あとからピッチで固めてもだめなことは、容易に想像できる。

この話をきいたのは1982年頃のことだから、現在のトロイダルコアの電源トランスが、
いまもこういうふうに巻かれているとは限らない。
テンションをしっかりとかけながら(管理しながら)が可能な方法が生み出されているかもしれない。

その点、フィデリティ・リサーチのMCカートリッジの昇圧トランスは、ひとつひとつ手巻きだったと聞いている。

Date: 4月 22nd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その7)

回路──、ここにも「回」の字がある。

だから回路は、すべてトーラスである、とは言わないけれど、
トーラスとは何なのか、トーラスがオーディオ機器の中に存在しているのかどうか、
存在しているとしたら、どういうかたちでなのか、
そういった観点から、アンプや回路を見て考えていく、というのも「あり」だと思うようになっている。

たとえばアンプの部品でいえば、トロイダルコアがトーラスである。

ノイズ環境がひどくなってきたいま、ノイズフィルターとして使われるコイルは、
トロイダルコアに巻かれているし、
電源トランスに、トロイダルコアを採用してきたものは、1970年代後半から増えてきた。
信号用トランスでは、フィデリティ・リサーチのMCカートリッジ用昇圧トランスが、
早い時期からトロイダルコアを採用している。

あまり知られていないようだが、真空管のパワーアンプで、
トロイダルコアの出力トランスを搭載しているのもあった。
Gotham(ゴッサム)社のアンプがそうだ。
残念ながら現物をみたことはないが、聴いたことのある人(サウンドボーイの編集長だったOさん)の話では、
相当にいい音だった、らしい。

真空管アンプに関しては、人一倍うるさ型のOさんが褒めるわけだから、
機会があれば、ぜひ聴いてみたいとずっと思っているアンプのひとつだ。

Date: 4月 17th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その6)

S-F1を発売当時見たときには思わなかったことだが、
なぜ振動板を円にしなかったのだろうか。

S-F1の各ユニットの口径は、ウーファーが40cm角、スコーカーが15cm角、
トゥイーターが6cm角、スーパートゥイーターが2.6cm角となっている。

クロスオーバー周波数は500、2.5k、8kHzなので、ウーファー、ミッドバス、
ミッドハイ、トゥイーターと呼べないことはないが、
パイオニアの表記にしたがって呼ぶことにする。

S-F1のウーファーとスコーカーは振動板、ボイスコイルの形状ともに角型であるが、
アルミハニカムにベリリウムスキンを貼り、
よりいっそうの軽量化をはかっているトゥイーターと
スーパートゥイーターのボイスコイルの形状は円型となっている。

なぜここだけ円なのか。

S-F1の振動板を円型にしなかったのは、同軸型構造としたために、
ウーファー部分の面積が減り、すこしでも面積を稼ぐために、
同じ幅ならば、円よりも矩形型のほうが面積をめいいっぱい利用できる。

おそらく、理由はこのへんにあると思うけれど、もしかすると開発者の方は、
「回」の字から、S-F1を発想されたのかもしれない。

S-F1の写真を見れば見るほど、そう思えてくる。
そのくらい、S-F1は、「回」そのものではないだろうか。

もしそうだとしたら、日本人だからこその発想から生れてきたスピーカーといえるわけだ。

Date: 4月 11th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その5)

1980年代のオーディオ機器に詳しい方ならば、私と同じモノを思い浮べられるだろう。
パイオニアのS-F1である。

矩形の平面振動板を採用し、4ウェイの同軸型を実現したスピーカーは、
あとにもさきにもこれだけである。
大半の同軸型スピーカーは2ウェイである。
ジェンセンのG610はたしかに3ウェイだが、トゥイーターの中心軸が、
ウーファーとスコーカーの中心軸とぴったり揃っているわけでなく、
真横から見た場合、上に少しズレている。

S-F1は平面型振動板のメリットを活かし、4ウェイすべての振動板の位置をそろえることにも成功し、
同軸型のメリットを最大限に活かせる構造ともいえよう。

S-F1の同軸型ユニットを正面から見れば、まさに「回」である。
「回」がトーラスならば、S-F1の同軸型ユニットもトーラスなのかもしれない。

Date: 4月 10th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その4)

川崎先生の3月9日のブログ「デザイン解としての回答、その強度」を読んでいたら、
回答の「回」の字が目に飛び込んできて、瞬間、トーラスに見えた。
じっと見れば見るほど、これはトーラスだ、と思えてきた。

それですぐさまTwitterに、
“回答の「回」が、ドーナツ(トーラス)とだぶって見えました。”
とつぶやいたところ、
“当たりです! トーラスってホントにすごい形態です。”
という返事をいただいた。

回がトーラスである、そう思った瞬間、頭に浮かんできたスピーカーシステムがあった。

Date: 3月 29th, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その3)

PT100はバッフル板にとりつけて使用するのが前提になっているように、
フレームのつくりを見ると思える。

バッフル板にとりつけるのではなく、独立したホーン型として、その外側の形状を考えていくと、
トーラスが、ひとつの答えとして、頭に浮かんでくる。

トーラス、いわゆるドーナツ状のことだ。

じつはこのことをTwitterでつぶやいた。3月7日のことだ。
このつぶやきに、川崎先生の返信があった。

「トーラス」という形態の持つ価値をまだ人類は見だしていません。
と書いてあった。
さらに、トーラス状とすることで、指向性・無指向性が制御できるユニットが考えられる、ともあった。

川崎先生は、トーラス状の食器洗いのスポンジ「RON」をデザインされている。

Date: 3月 23rd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その2)

以前からときおり考えていたことだが、ホーンの形状について、その外側はどうすればいいのか。

ホーンの内側の形状については、ホーンのノドの部分から開口部までカーブを描かないストレート、
カーブを描くものには、エクスポネンシャル、コニカル、ハイパボリックなどがあり、
開口部の形状も円もあれば四角もある。また非対称型もあるが、
意外にホーンの外側までデザインされているモノは、ほとんどない。

私の記憶のなかにあるモノで、外側まで配慮されているのはパイオニアのPT100ぐらいだ。
10分割のマルチセルラホーンを半球状の中央に配置したかっこうで、ホーンが半球を二分割している。

前面から見たシルエットは円となる。

ホーン型スピーカーの理想は、無限に続くホーンだろうが、実際にはどこかでホーンを切らなければならない。
ホーンが終ったところで、どんな現象が起こっているかを考えれば、
ホーンの形状は内側だけの問題ではなく、外側まで及ぶことは容易に想像できる。

Date: 3月 22nd, 2010
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(その1)

今年昨年末に、アルテックの604-8Gが届き、じつはこれと一緒にKEFのiQ7も、いま手もとにある。
どちらも同軸型ユニットで、「素朴な音、素朴な組合せ」の項で書いているように、
アルテックの409-8Hもある。これも同軸型ユニットで、計3組がそろった。

同軸型といっても、それぞれの構造は異る。
409-8Hは20cmのフルレンジユニットに、コーン型トゥイーターを後付けしたような構造だし、
604-8Gはコーン型とホーン型を組み合わせている。
KEFのUni-Qユニットは、コーン型とドーム型の組合せで、しかもボイスコイル位置を揃える工夫がなされている。

これらがそろったので、「今年は同軸年(イヤー)だな」といっていた。
そんなことをいいながらも、まだ具体的な行動にはうつれていないが、
ある事柄から、「やはり今年は同軸年だな」と実感しつつある。