Archive for category 戻っていく感覚

Date: 8月 15th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その6)

管球式コントロールアンプならば、どれでもいいというわけでないことは、
念のため、強調しておく。

優れた管球式コントロールアンプ、
完成度の高い管球式コントロールアンプの代表格といえば、
やはりマランツのModel 7がすぐに浮んでくる。

Model 7を20代のころ、手に入れる機会があった。
程度も上々だったし、「君になら、安く譲ろう」とその人は言ってくれた。

その人は、私に譲る前に、最後ということでModel 7の音を、
ひさしぶりに聴いたら、手放すのが惜しくなった──、
そういわれて手に入れる機会を逸してしまった。

その人の気持はわかる。
手元に置いときたい気持は、よくわかる。
常用の機器ではなくなっていても、Model 7だけは手放したくない──、
その気持が理解できないオーディオマニアは、私よりも若い世代なのだろう。

Model 7が完璧なコントロールアンプとは考えていない。
それでも完成度の高い管球式コントロールアンプの数少ない一つである。

とはいっても、Model 7とMark 2500を組み合わせてみたい気持は、まるでない。
Model 7をいまでも手に入れたい気持はあるけれど、
それとMark 2500とペアになるコントロールアンプ選びとは別のことである。

私がMark 2500と組み合わせてみたいと思っている管球式コントロールアンプは、
1970年代後半以降に登場してきた、いわゆる新しい世代のそれらである。

Date: 8月 14th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その5)

コンヴァージェントオーディオテクノロジーのSL1とSAEのMark 2500、
この組合せの音に関心はすごくあっても、現実的ではないのだが、
この組合せを思いついたきっかけみたいなことは、ずっと遡ったところにある。

セパレートアンプの場合、
同じブランドの組合せこそ最高という人がいる。

1980年代もなかばごろになると、
以前のように、コントロールアンプを得意とする、とか、
パワーアンプを得意とする、といったところは薄れてきたように感じていた。

ある程度キャリアを重ねてきたメーカーならば、
セパレートアンプならではの組合せ、
つまり違うブランドとの組合せをあれこれ試すのも面白いけれど、
落ち着くということでは同じブランドの組合せということになる。

確かにそうなのだが、オーディオはコンポーネントであり、
組合せを自由に試せることに楽しみがあると考える私は、
セパレートアンプは、あえて他社での組合せにこそ面白さがある、と捉えている。

その組合せのなかに、セパレートアンプならではの組合せは、
どちらかを管球式というのがある。

コントロールアンプを管球式、パワーアンプをソリッドステート、
その逆でコントロールアンプをソリッドステート、パワーアンプを管球式、
というのがある。

どちらがうまくいくかなんて公式みたいなものはない。
やってみるしかないわけなのだが、
個人的にはコントロールアンプを管球式というのが、好きである。

そのころ、そんな話を、オーディオ好きの人としていた。
その人は私よりも年上。彼は、私と反対でパワーアンプを管球式という考えだった。

彼は、管球式のコントロールアンプだとS/N比の点で不満があるからだ、と。
その頃はまだまだアナログディスク再生が、
コントロールアンプ選びでもウェイトが置かれていた時代で、
S/N比が……、という彼の主張も、アナログディスク再生に主眼をおいたものだった。

Date: 8月 3rd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その4)

いい結果が得られるかどうかはなんともいえないのだが、
一度SAEのMark 2500と組み合わせて、その音を聴いてみたいと思っているのが、
コンヴァージェントオーディオテクノロジーのSL1だ。

現行製品のSL1 LEGEND BLACK PATH EXTREMEと、
SL1 RENAISSANCE BLACK PATH EXTREMEが、何世代目にあたるのか、
よく知らない。

現行ヴァージョンの音を聴いていない。
私が聴いたSL1の音は、もう二十年ほど前のモデルである。

そのころはステレオサウンドでの評価も高かった、と記憶している。
いまではどうだろうか。

217号のベストバイでは、上級機のSL1 LEGEND BLACK PATH EXTREMEに、
小野寺弘滋氏が星を一つだけ、である。

いまは、少しは改善されているのだろうか。
SL1は決して使い勝手のよいコントロールアンプではない。

デザインも優れているわけではない。
それでいてかなり高価な管球式コントロールアンプである。

価格的に、Mark 2500とはアンバランスである。
現実的な組合せだとは、まったく思っていない。

組み合わせた結果の音が仮に良かったとしても、
誰かにすすめられるような組合せではない。

それでもSL1(どの世代のSL1でもいい)とMark 2500との音は、
そんな機会はまず訪れないことはわかっていても、興味津々である。

Date: 8月 1st, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その3)

スレッショルドのSL10を、いまでも欲しいとは思っているものの、
SAEのMark 2500と組み合わせての音を期待しているわけではない。

組合せばかりは実際に、
その音を聴いてみないことにはいえないことが多々あるのはわかっている。
それでも直感として、うまくいきそう、とか、あまり合わなさそう、というものはある。

SL10とMark 2500は、ひょっとすると意外な音を聴かせてくれる可能性がなくもない──、
そう感じさせるところはあるが、あまり合わない、と思う気持の方がはるかに強い。

もっとはっきり書けば、SL10の音を聴いて感心したことがない。
といってもSL10の音をじっくり聴いたわけではない。
数回、聴く機会があったくらいなのだが、
そこでの印象は、ステレオサウンドでの菅野先生、瀬川先生の評価にかなり近いものだった。

悪くはない音である。
クォリティの低い音というわけでもないのだが、
音楽を聴いてワクワクするかというと、そうではない。

どこか禁欲的なところを感じてしまう。
禁欲的ということでは、スレッショルドのパワーアンプにも共通してある性格である。
少なくともSTASISシリーズまでは、そう感じていた。

それでも800AとかSTASIS 1には、凄みがあって、
決して禁欲的という域に留まらない表現力の深さと大きさがあった。

けれどSL10となると、そういうところを音に感じない。
コントロールアンプのラインナップ、
パワーアンプのラインナップの充実度の違いよりも、ここのところに、
スレッショルドはパワーアンプを得意とするメーカーということを感じるわけだ。

SL10のデザインは、それでも欲しいと思わせる。

Date: 7月 29th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その2)

スレッショルドのコントロールアンプSL10は、
その外観だけで、いまも欲しいと思い続けている。

スレッショルドのデビュー作、パワーアンプの800Aに衝撃を受けた。
日本にはあまり輸入されなかったようなのだが、
地元・熊本のオーディオ店には、800Aがあった。

スレッショルドには、そのころコントロールアンプはなかった。
なので800Aと組み合わせるコントロールアンプといえば、
私にとっては、ここでせマークレビンソンのLNP2だった。

SL10はスレッショルドの最初のコントロールアンプではない。
最初に出たのはNS10だった。

NS10を聴く機会はなかった。
あまり聴きたいとも思っていなかった。

理由は、800Aに似合うデザインではなかったからだ。
どこかヤボったさを感じるNS10、
そのころ瀬川先生は、アンプメーカーには、
コントロールアンプを得意とするところ、
パワーアンプを得意とするところがある、と書かれていたし、
スレッショルドは、パワーアンプを得意とするメーカーのように思えた。

スレッショルドに、コントロールアンプはあまり期待できないのかも──、
そんなふうに思っていたところに、SL10が登場した。

広告でカラー写真でSL10を見て、色っぽいな、と感じた。
実機を見て、さらにそう感じた。

NS10からSL10。
このあいだに何があったのだろうか。
特に大きな出来事がデザイナーにあったのではないのかもしれないが、
そんなことをつい想像してしまうほどに、
NS10とSL10のデザインは違う。

Date: 7月 27th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その6の追補)

(その6)に書いている無線と実験の記事は、
facebookでフォローしている方による情報によれば、1980年10月号に載っている。

タイトルは「音質の最前線訪問」で、九回目で菱三電機(現・リョーサン)がとりあげられている。
リョーサンは数年前にヒートシンク事業から徹底している。

Date: 7月 26th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その1)

2020年6月は、タンノイのコーネッタ、
2021年6月は、SAEのMark 2500を手に入れた。

ならば2022年6月はコントロールアンプの番だな、と妄想している。

Mark 2500と組み合わせたいコントロールアンプの筆頭は、
やはりマークレビンソンのLNP2である。
それもバッファー搭載のLNP2を使いたい。

とはいえ、LNP2の相場はかなり高い。
来年の6月、どういう状況におかれているのか。
買えるようになっているかもしれないし、まったく手が届かないのかもしれない。

LNP2こそ──、と思いながらも、
LNP2以外ならば、どのコントロールアンプをもってこよう、と違う妄想もしている。

Mark 2500と同時代のコントロールアンプなのか、
それとも少し新しい時代のコントロールアンプなのか。

Mark 2500の基本設計は、ジェームズ・ボンジョルノなのだから、
ボンジョルノ設計のコントロールアンプとして、GASのThaedraがある。

いい音が、きっと出てくるであろう。
でもThaedraは以前使っていた。
The Goldと組み合わせていた。

なんとなくなのだが、違うコントロールアンプを使ってみたい、
組み合わせてみたい、という気持がある。

そう思う理由のひとつとして、フロントパネルの質感の、両者の違いがある。

次に候補として浮ぶのは、スレッショルドのSL10である。

Date: 7月 24th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その6)

ヒートシンクだけを比較するならば、
SAEのMark 2500とラックスのM6000の出力がどちらも300W+300Wとは思わない。

Mark 2500はファンつきの強制空冷であっても、
ここまでヒートシンクの物量が違うものなのか。

ずっと以前、無線と実験で、柴崎 功氏が、
オーディオ機器に欠かせない部品に関して、
国内のメーカーの技術者にインタヴューした連載があった。

ずいぶん前、1980年ごろだったと記憶している。
その連載でヒートシンクのメーカー(どこだったのかは忘れてしまった)の回があった。

いくつか記憶に残っていることがある。
よく出力が同じでも、A級動作とAB動作とではヒートシンクの規模が違う。
とうぜんA級動作のアンプのほうが大きなヒートシンクを必要とする──、
そんなふうに言われているし、そう思い込んでいる。

けれど、ヒートシンク・メーカーの技術者によれば、
アンプの動作(A級、B級)に関係なく、最大出力で決る、ということだった。

たっぷりのアイドリング電流のA級100Wのアンプ、
純B級といいたくなるほどアイドリング電流を流していない100Wのアンプ、
発熱量は一般的な使い方であればA級100Wのアンプのほうが多い。

だからこそ、A級アンプには大きなヒートシンクということになるし、
実際の製品も、ほとんどの場合がそうである。

ところが最大まで出力を出すことを前提とするならば、
アンプの動作方式はヒートシンクの大きさには関係なくなり、
最大出力の値こそが重要である、ということだった。

四十年ほど前の記憶だが、おおよそ、そんなことだったはずだ。

Date: 7月 21st, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その4)

もちろんすべての製品が、二倍から三倍なのではなく、
たとえばSAECのトーンアームのWE407に関しては、
あえて当時の価格、現在の価格は書かないが、約二十倍である。

二〜三倍というのはひとつの目安であって、
それでもなんとなくの感覚でしかないが、
二〜三倍というのは、なんとなくしっくりくる。

SAEのMark 2500は、いまでは1,300,000円から2,000,000円くらいとなるのか。
この価格帯は、ステレオサウンドのパワーアンプのベストバイの価格帯、
100万円以上200万円未満と一致する。

では、217号で、どんなパワーアンプが選ばれているかというと、
ウエスギのU·BROS120R(1,180,000円)、U·BROS300AHPS(1,280,000円)、
アキュフェーズのA75(1,200,000円)、オーロラサウンドのPADA300B(1,600,000円)、
CHORDのULTIMA 5(1,700,000円)、ソウリューションの311(1,850,000円)、
マッキントッシュのMC462(1,200,000円)、フューズメーションのMA1500(1,600,000円)、
アキュフェーズのP7300(1,200,000円)、TADのTAD-M1000(1,350,000円)、
コンステレーションオーディオのStereo 1.0(1,900,000円)、
パスのX350.8(1,900,000円)などがある。

ここまでが写真とコメント付きで紹介されていて、
これら以外に、あと八機種ベストバイとして選ばれている。

こうやって眺めてみると、
1,900,000円クラスとなると、同価格帯とはいえ、ランクが一つ上だな、と感じる。
それから真空管アンプが四機種あるのも、少し意外に感じる。

このへんを省いていくと、Mark 2500クラスの、現代のパワーアンプということでは、
アキュフェーズのP7300、マッキントッシュのMC462、TADのTAD-M1000あたりだろう。

これら三機種のパワーアンプとMark 2500を直接比較すれば、
時代が四十年違うわけで、その差ははっきりとあるはずだ。
歴然とした差があって当然であり、それほど違いが感じられないということにもしなれば、
それは、なにか(どこか)で間違っている、ということになる。

Date: 7月 21st, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その3)

SAEのMark 2500が現役だったころといまとでは、
オーディオ機器の価格はどれだけ変動していったのだろうか。

当時の初任給といまの初任給を比較すればすむことだろうか。
検索してみると、ほぼ二倍になっている。

それをそのままオーディオにあてはめてもいいのかと思って、
ロングセラーモデルの価格の変動を見てみると、
たとえばデンオンのDL103がある。

DL103は当時19,000円だった。
いまもDL103は現行製品で、41,600円(税抜き)である。
約二倍である。

ラックスの管球式プリメインアンプのLX38とLX380は、
198,000円と460,000円と、ここでも約二倍といえなくもない。

LX38とLX380とでは内容的にもかなり違っていて、
DL103のように、そのまま当時の価格といまの価格を比較して、
これだけ違う、というのは無理があるのはわかっている。

それにカートリッジとアンプという違いもあるのだから、
そういうことも含めての比較しなければならないのだろうが、
そのへんはばっさり省いての、約二倍である。

QUADのESL63とESL2812は、860,000円と2,100,000円。

ESL63とESL2812も基本的構成は同じであっても、
フレームの強度が、ESL2812ではずっと増している。
もし同等の造りであれば、やはり二倍程度ということになるであろう。

もう一つ挙げれば、テクニクスのSP10Mk3とSP10Rがある。
250,000円と800,000円である。約三倍だ。
SP10の場合も、内容的にかなりの違いがある。

数少ない例だし、これだけで決めつけることはできないのはわかっていても、
この四十年のうちに、
同クラスといえる製品の価格帯は二倍から三倍あたりに移行している──、
大雑把に、そう捉えてもいいであろう。

Date: 7月 16th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その2)

四十年前のアンプ技術と現代のアンプ技術。
差があって当然であって、その差とは、いわゆる進歩といえる。

四十年間のアンプ技術進歩。
いろいろありすぎる。
一つ一つ取り上げていったら、項を別にしてもなかなか終りそうにないくらいにある。

それでも大きなことを挙げるとすれば、
D級アンプの進歩とスイッチング電源の進歩である。
それから面実装部品の多用である。

SAEのMark 2500は、そのいずれも採用していない。
四十年前のアンプのなかにも、D級アンプはあったし、スイッチング電源のアンプもあった。

だから、そういうアンプとの比較はできる。
別項で触れているAliExpressを検索すれば、
五万円で購入できるパワーアンプは、まあまあある。

それにMark 2500を五万円ほどで手に入れたとはいえ、
手を加えるのが前提の五万円であるから、
手を加えるのに必要な部品の費用を、まず五万円に足さなければならない。

それから私の手間賃をどう加算するのか。
どこか業者に頼めば、そこそこの技術料を請求されるだろう。

けれど、自分でやれば、時間はとられるものの、現金が減っていくわけではない。
とはいえ、自分の技術料をまったく考慮しないのも、なんだかずるい気もする。

部品代には数万円かかる。
面倒なので、部品代と同じだけの技術料とすると、
Mark 2500は十万円を超えることになる。

十数万円のパワーアンプ。
それも日本のオーディオ店で取り扱っていることにこだわらず、
海外からのインターネット通販も含めれば、面白い比較ができるように思うが、
実際に、それらの製品を聴いているわけではないので、妄想でしかない。

Date: 7月 15th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その1)

昔、オーディオ雑誌の読者の相談コーナーに、
○○製のアンプの音が気に入っている、
このアンプの音を活かすスピーカーを教えてほしい、というのが、わりとあった。

瀬川先生は、この手の質問をばっさりと切られていた。
スピーカーが主役であり、スピーカーが決ってから、
そのスピーカーをいかにうまく鳴らすか、そのためのアンプ選びだ、と。

そういう趣旨のことを、熊本のオーディオ店に来られている時も話されていた。

そうである、気に入っているスピーカーがなければ、
ある意味、オーディオは始まらない。

今回、SAEのMark 2500を手に入れた。
鳴らすスピーカーは、コーネッタである。

Mark 2500とコーネッタは同時代である。
1970年代後半の音を聴くうえでは、興味ある組合せではあるが、
スピーカーは古いままでも、アンプ、特にパワーアンプを最新のモノにすることで、
聴き馴染んだスピーカーから、新しい魅力を抽き出すこともある。

昨年後半、喫茶茶会記では、マッキントッシュのMA7900で鳴らした。
最新とまではいえないMA7900だが、古いアンプではない。
現代のマッキントッシュのプリメインアンプといえる製品だ。

コーネッタは四十年以上前のスピーカーだが、
だからといって古いアンプで鳴らさなければならない、なんてことはない。
なのに、Mark 2500を手に入れて、浮れている私がいる。

そのことは、
つまりは私にとってMark 2500は、現代アンプに負けない魅力を持っている、ということなのか。
だとしたら、現代アンプとの比較ということで、どのアンプを持ってくるのか。

Mark 2500は四十年前に650,000円だった。
ならば、いまの同価格のアンプとの比較なのか。

Mark 2500は、あの時代、最高級パワーアンプの一つだった。
ならば、現代の、そういえるアンプとの比較となるのか。

Mark 2500は、ヤフオク!で五万円(送料込み)ほどで手に入れた。
ならば、五万円クラスのアンプと比較すべきなのか。

Date: 7月 15th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その5)

SAEのMark 2500とラックスのM6000は同じ価格といっていい。
日本市場では、為替相場の変動でMark 2500が数万円高かった時期もあったが、
同じ価格だった時期もある。

SAEはアメリカ製、ラックスは日本製。
当時の為替相場や関税などを考慮すると、
海外製品は割高といわれていた時代である。

この時代は、
輸入元によっては1ドルあたり500円以上で換算したような値づけのモノもあった、ときいている。

Mark 2500とM6000、投入されている物量からいえば、
あきらかにM6000のほうが上である。

ラックスの製品でいえば、M4000とMark 2500が内容的には同クラスとなろうか。

前回、マッキントッシュのMC2300をM6000は意識している、と書いた。
MC2300とMark 2500は、といえば、あきらかにMark 2500はアメリカの新世代のアンプである。

内部の造りを比較して、そういえる。
Mark 2500はメインテナンスがしやすい。
表現をかえれば、手を加えやすい。

もし、いまM6000を手に入れたとしよう。
積極的に手を加えるかといえば、おそらくやらないだろう。

内部に関しては写真でしか見ていないが、やりにくそうだし、
50kgを超える重量からして、体力も必要となるし、場所もそれなりにとる。

Mark 2500は増幅回路は3ブロックに分れている。
電圧増幅部、ドライバー部、出力段である。

そしてヒートシンクも、M6000のような豪華なモノではなく、
アルミ板をコの字に曲げただけのモノだ。

Date: 7月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その4)

ラックスのM6000の容積と
マッキントッシュのMC2300の容積を比較すると、M6000の方がわずかに小さい。

重量もMC2300は58.1kgだから、これもM6000のほうが6kgほど軽い。
しかもMC23000はファン付き、M6000はファン無し。

MC23000はオートフォーマーを含めてトランス類の数は三つ、
M60000は電源トランスが二つ。
その分、チムニー型の鋳物によるヒートシンクを持つ。

こんなふうに比較していくと、M6000はMC2300を意識していたように思えてくる。

M6000が登場した1975年のステレオサウンドのムック「世界のオーディオ」のラックス号、
ここで、井上先生がM6000について語られている。
     *
 私はこのアンプを見たときに、ラックスのハイパワーアンプに対する姿勢が、かなり他社と違っていることを、一番感じたわけです。というのは、いままで、ハイパワーアンプというのは、主として、「業務用」とか、プロフェッショナル用とかいう、お墨付きをもらったもの、もしくは、その方向を志向した製品が多かったでしょう。これが、ラックスの場合には、あきらかに、コンシュマーユースという目的にしぼったデザインをしていますよね。ここに、このM6000の現時点での特異性があると思います。
     *
マッキントッシュのMC2300は、管球式のMC3500のソリッドステート版である。
MC2300と、同じマッキントッシュのほかのパワーアンプとは風貌からして違う。
いわゆる「業務用」としての役割を果たせるアンプである。

MC2300を意識しながら、MC2300とは好対照な存在。
それがラックスのM6000というアンプだと思う。

SAEのMark 2500は、というと、
19インチのフロントパネルからも、プロフェッショナルということを意識しているはずだ。

それゆえに強制空冷であるし、
電源トランスの一次側には、通常のフューズだけでなく温度フューズも使われている。
温度フューズを嫌うメーカーは多いなかで、アメリカ製としては珍しい。

Mark 2500の基本設計がジェームズ・ボンジョルノということで、
Mark 2500も動作が不安定で、よくスピーカーを壊すアンプだと思い込んでいる人が、
どうも日本のオーディオマニアはいる。

Mark 2500が不安定なアンプだということは、いままで聞いたことがないし、
ステレオサウンド 41号で、瀬川先生は、
《中でも300W×2のMARK2500は、動作の安定なことはもちろんだが、その音質がすばらしく、出力の大小を問わず現代の第一級のパワーアンプである》
と書かれている。

Date: 7月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その3)

M6000のことをこうやって書いていると、
DA07のことを思い出す。

1988年に登場した、このD/Aコンバーターは、大きかった。
200W+200Wクラスなみの大きさと重さのD/Aコンバーターだった。

ラックスのずんぐりむっくりのプロポーションは、
いま思えば、このDA07から始まったのかもしれない。

とにかくDA07の筐体は、それまでのラックスのイメージからはほど遠く、
その時は感じられたのだが、いまM6000のことを書いていると、
ラックスという会社は、
いきなり、こういう大きさと重さの製品を出してくるところがあることに気づく。

M6000という超弩級のパワーンア符の存在が、十年以上前にあったのだから、
ラックスはDA07というD/Aコンバーターを世に送り出した──、
というより送り出せたのではないだろうか。そんな気がする。

M6000は前脚は通常の固定脚だが、後脚はキャスターになっている。
多少なりとも扱いやすいように、という配慮だろう。

でも思うのだが、横幅が57cmあるから、そのころ発売されていたラックには収まらない。
収まるようなラックがあったとしても、重量が52kg。
そうとうに頑丈に作られたラックでなければ、やはり無理である。

あの時代、M6000を購入した人たちは、どうしていたのだろうか。
ラックを特註したのか、それとも床に直置きしていたのか。

私は見たことがないが、鉄フレームの専用ラックも発売されていた、ときいている。
そういうモノまで用意するくらいなら、モノーラル構成にしたほうがよかったのでは──、
とは多くの人が思うはず。

M6000の内部は、
電源トランスから左右チャンネルで独立しているデュアルモノコンストラクション。

モノーラル仕様だったら、入出力端子のすんなり設けられただろうし、
専用ラックを用意することもなかったわけだ。

それでもステレオ仕様にこだわったのは、
マッキントッシュのMC2300の存在を意識してのことのようにおもえる。