Archive for category 戻っていく感覚

Date: 4月 11th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その4)

私が熱心に読んでいたころのステレオサウンドは、カセットデッキ、オープンリーデッキをあまり取り上げていなかったのは、
姉妹誌に隔月刊のテープサウンドがあったからだろう。

私が住んでいた田舎の書店に、ステレオサウンド他オーディオ雑誌はけっこう並んでいたが、
テープサウンドは見かけた記憶がない。

テープサウンドがない、ステレオサウンドでもあまり取り上げない。そのこともカセットデッキ(テープ)にあまり関心を持てなかったことにつながっていると思っている。

それにLPを買ったらカセットテープに録音して、そちらを聴く──、
そういう習慣は私にはなかった。多くの人がそうだろうと思っていたら、
意外に多くの人が、まずカセットテープに録音していた、と話すのを聞いて、えっ、そうなのか、と驚いたことが何度もある。

LPの録音ということを積極的にやっていたら、カセットデッキ(テープ)への関心は相当に違っていただろうが、そうではなかった。

メタルテープが登場した時、もちろん興味はあった。でもそのころ使っていたカセットデッキはメタルテープ登場以前の機種ゆえ、当然対応していない。

メタルテープ対応のカセットデッキを買うだけのお金があれば、LP再生環境を良くしたい、と思っていたから、
メタルテープの音を聴いたことは数度あっても、自分で使ったことはずっとなかった。

メタルテープ対応カセットデッキを手に入れたのは2019年、ヤフオク!で落札したヤマハのK1dが初めてである。
カセットデッキは手に入れても、メタルテープも落札するまで、しばらく聴くことはできなかった。

自分のシステムで、自分で録音して(といってもCDのダビング)聴いたのは2020年になっていた。

私のカセットデッキ(テープ)への関心の薄さは、このことからもわかってもらえよう。

カセットデッキ(テープ)へ強い関心のある人にとってのナカミチと、
関心の薄い私にとってのナカミチの存在の大きさは、ずいぶんと違ってきて当然である。

Date: 4月 9th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その3)

1970年代のオーディオブームからの十数年。この間にオーディオに取り組んでいた人にとっては、
カセットデッキといえばナカミチ!、なのだろう。

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年ごろに、ナカミチのフラッグシップモデルの1000はII型になっている。
この時、それほど話題にはなっていなかったと記憶している。

ナカミチの1000が、そしてナカミチという会社が、やっぱりすごいといわれたのは、
1980年に登場した1000ZXLである。

カセットデッキ(テープ)にあまり関心を持たない私でも、すごい製品を出してきたな、と思ったほどだった。

井上先生がステレオサウンド 57号の新製品紹介で1000ZXLについて書かれている。
     *
 このカセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして、あれほどの小型なカセットハーフと低速度ながら素晴らしい将来性を持つことを最初に印象づけたのは、昭和48年に発売されたナカミチ1000が登場したときであった。
 カセットデッキとしては異例に巨大な業務用ラックマウントサイズのパネルを採用した1000は、たしかに価格的にも異例なほど高価格な製品ではあったが、ダブルキャプスタン・スタガ一方式の走行系メカニズムとパーマロイ系のスーパーアロイを採用した独立3ヘッド構成をベースに、独自のヘッドアジマス調整機構、ユニークな3チャンネルマイクアンプ、リミッター機構などを備え、驚異的な性能と音質により聴く人を唖然とさせたことは、現在でも鮮烈な印象として残っている。
 当時、オープンリールを超した性能と音質といわれたが、確かに、3モーター・3ヘッド構成の2トラック19cm/secのデッキとの比較試聴でも、誰にも明瞭に聴き取れる優れた音質を1000は聴かせてくれた。
 それから4年後に発展、改良して登場した1000IIは、テープの多様化に対応してバイアスとイコライザー単独切替、アタックタイムを早くし、従来の−20〜+3dBから−40〜+10dBにレンジを拡大したピークレベルメーター、走行系の操作ボタンが機械的な押ボタン型から電気的なタッチセンサーに改良されるなどをはじめ、巻本的な走行系の中間プーリーの改良、耐久性を向上したスーパーアロイヘッド改良のステイブルレスポンスヘッド採用などかなり大幅な変更を受けた結果、聴感上でもよりナチュラルに伸びたワイドレンジ感と分解能の向上として聴きとれ、その内容が一段とリファインされた。
 しかし、時代背景として各社の開発競争の激化、とくに中級機から普及機ランクでの性能、音質が急激に発展し、高性能テープの登場とあいまって、1000が登場した当時ほどの格差は実感的に感じられなかった。世界最高のカセットデッキとしての座は不動のものではあったが、この第2世代の王者は完成度が高まった内容を持ちながら、印象度としてはさほど強烈なものではなく、いわば、安定政権とでもいった存在であったと思う。
 昭和53年になるとメタルテープの実用化が発表され、カセットデッキは激しい動乱の時代に突入し再スタートを強いられることになった。メタルテープの実用化に先だち、海外テープメーカーとも密接な関係をもつナカミチでは、早くからメタル対応モデルの開発が行なわれており、メタル対応デッキの技術開発は発表されていた。しかし、製品化はメーカーとしては比較的遅く、かつての1000の登場当時に似た、いかにもナカミチらしい凄さを感じさせた製品の登場は、1000IIのメタル対応機ではなくそれまでの500シリーズと700の中間を埋める位置づけにある680であった。
 この680の優れた性能とクリアーで抜けきった鮮明な音質は、またもやメタルテープ時代での新しいナカミチの独自の魅力を聴く人に印象づけた。680は、短期間のうちに自動アジマス調整機構を新採用した680ZXに発展し、670ZX、660ZXとでシリーズ製品を形成する。
 この時点から1000IIのメタル対応機の登場は時間の問題として噂され、すでに限界とも感じられる680ZXに、どれだけの格差をつけて登場するかが話題であった。
 今回、ベールを脱いで登場した1000ZXLは、第3世代のカセットデッキの王者の座に相応しい見事な製品である。
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私にとって、この頃のナカミチのカセットデッキといえば、1000IIではなく、井上先生の文章にも登場している680ZXだった。

1000登場時にカセットデッキ(テープ)に強い関心を持っていた人には、すごい衝撃だったのだろうが、1000IIは、どうだったのか。

1000IIが登場してすぐのステレオサウンドのベストバイ(43号)では、1000IIは選ばれていない。700IIは選ばれているのだが。

このことはナカミチも感じていたのではないだろうか。だからこその1000ZXLであり、一年後の1000ZXL Limitedなのだろう。

Date: 4月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その2)

私にとって、チューナーにおけるマランツのModel 10B、セクエラのModel 1的位置にいるのは、スチューダーのA710である。

型番とルボックスとスチューダーの関係からわかるように、A710は、1981年に登場したルボックスのカセットデッキ、B710のスチューダー版だ。

ルボックスのB710は、ステレオサウンド 59号の新製品紹介で、瀬川先生が担当されている。
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 たとえば、カートリッジを比較の例にあげてみると、一方にオルトフォンMC30又はMC20MKII、他方にデンオンDL303又はテクニクス100CMK3を対比させてみると、オルトフォンをしばらく聴いたあとで国産に切換えると、肉食が菜食になったような、油絵が水彩になったような、そういう何か根元的な違いを誰もが感じる。もう少し具体的にいえば、同じ一枚のレコードの音が、オルトフォンではこってりと肉付きあるいは厚みを感じさせる。色彩があざやかになる。音が立体的になる。あるいは西欧人の身体つきのように、起伏がはっきりしていて、一見やせているようにみえても厚みがある、というような。
 反面、西欧人の肌が日本人のキメ細かい肌にかなわないように、滑らかな肌ざわり、キメの細かさ、という点では絶対に国産が強い。日本人の細やかな神経を反映して、音がどこまでも細かく分解されてゆく。歪が少ない。一旦それを聴くと、オルトフォンはいかにも大掴みに聴こえる。しかし大掴みに全体のバランスを整える。国産品は、概して部分の細やかさに気をとられて、全体としてみると、どうも細い。弱々しい。本当のエネルギーが弱い。
 B710とナカミチ1000ZXLとの比較で、まさにそういう差を感じた。そしてここでテープまで変えると、その差はいっそう大きく開き、ナカミチにはTDKのSA又はマクセルのXLIIを、そしてB710には、今回小西六がアンペックスと提携して新発売するマグナックスのGMIIを、それぞれ組み合わせると、国産はハイ上がりのロー抑え、いわゆる右上り特性の、ややキャンつきぎみの細身の音に聴こえるし、ルボックスはその正反対に、中〜低域に厚みのたっぷりある、土台のしっかりした、ボディの豊かな音に仕上る。そしてとうぜんのことに、こういう音はクラシックの音楽を極上のバランスで楽しませる。総体に、派手さをおさえて音を渋く、落ち着きのある色合いを聴かせるのだが、こういう音は、残念ながらこれまで国産のどのデッキからも聴くことができなかった。
 試聴はほとんどドルビーONの状態。そしてメカニズムその他の詳細については、残念ながら紙数の制約のため割愛せざるを得なかった。
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これを読んだ時から、カセットデッキはB710だ、と決めていた。
といっても、まだ学生だったし、ステレオサウンドで働く前のこと。40万円を超えるカセットデッキは、すぐにどうにかなるものではなかった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その1)

私が中学生、高校生だったころ、生録もブームになっていた。
音楽だけがその対象ではなく、その頃まだ走っていた蒸気機関車の音なども、生録の対象となっていた。

電源が確保できるところならば据置き型のテープデッキを担いで行く人もいたようだが、
蒸気機関車の音を録るのであれば、電池駆動のポータブル型デッキとなる。

ブームなのは知っていても、近くでそういう機会はなかったし、マイクロフォンも用意しなければならないし、
ポータブル型デッキを持っていたわけでもない。

そうなると録音の対象は、エアチェックしかない。
テープデッキは録音済みのミュージックテープを購入して聴くためか、
FM放送を録音(エアチェック)してのモノ。自然とそうなっていた。

当時はオープンリールのミュージックテープはいくつか出ていたが、10代の学生が買える価格ではなかったし、
2トラ38のオープンリールデッキを持っているわけでもない。
いつかは──、と思うだけだった。

カセットテープのミュージックテープは何本か持っていたが、同じ内容のLPと比べると、音質面で満足できるとはいえなかったし、
それにLPよりも高かった。

プレスで大量生産可能なLPと、高速ダビングとはいえ、プレスよりもずっと時間がかかるコピー工程ゆえ、多少高価になるのは理解できても、
そう多くはない小遣いをやりくりしてとなると、ミュージックテープに手は伸びない。

そうだったのだ、あのころのカセットデッキは私にとってエアチェックのためのオーディオ機器だった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その22)

アンプとのペア性を考えてしまうのは、国産プリメインアンプのほとんどがペアとなるチューナーを用意していたことを、
当たり前のこととして受け止めていたからなのかもしれない。

普及クラスのプリメインアンプにはもちろんペアとなるチューナーがあった。
あのころ20万円を超えるプリメインアンプの高級機にも、ペアとなるチューナーが、すべてではなかったが、やはりあった。

このクラスのチューナーとなると、ペアとなるプリメインアンプを持っていなくても、チューナー単体で購入する人もいただろう。

もちろんペアとなるプリメインアンプを持たないチューナーもあったことはわかっていても、こうやってチューナーのことを振り返って書いていると、
アンプとのペア性のことが、私の中では浮上してくるだけでなく、
チューナーにとってのペア性は、アンプとの関係だけでなく、テープデッキとの関係においてもあるような感じがしてくる。

Date: 3月 29th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・続余談)

パイオニアのExclusive F3とオーレックスのST720の音を聴きたいがために、FMトランスミッターを導入して、音声信号をFM変調して送信。

それを受信して聴くというわけだが、少し考えると、FMトランスミッターのRF出力とチューナーのアンテナ端子とを、75Ωの同軸ケーブルで接続すれば、音質的には有利となる。

電波として飛ばして受信するのも楽しいと思うけれど、有線接続もまた楽しいはずだ。

Date: 3月 24th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・余談)

こうやってチューナーのことを書いていて、もしここに挙げた機種を全て手に入れられるようなことが起ったとして、どう楽しむのか。

先ほどAliExpressを眺めていたら、FMトランスミッターを見つけた。
車載用のモノが多いが、小型ながら据置型もある。入力はアナログの他にUSBも備えているので、デジタル入力にも対応している。

そういえば昔、テクニクスからSL-FM1というアナログプレーヤーが出ていた。
32,800円の普及クラスなのだが、型番が示すようにFMトランスミッターを搭載していた。
しかも乾電池(単一乾電池六本使用)でも動作可能だった。

どんな人が買うのだろうか、どんな使い方をするのか──、
なぜテクニクスはこんな製品を出したのだろうかと、やや冷めた目で見ていた。

でも今になって、FMトランスミッターを使って手持ちのチューナー、
パイオニアのExclusive F3とオーレックスのST720から音を出せる状態にしておくのもいいなぁ、と思っている。

Date: 3月 17th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その21)

アンプとチューナーにおけるデザインのペア性について忘れないうちに書いておきたいのは、薄型のチューナーのことだ。

マークレビンソンのJC2の登場は、国産アンプへいくつかの影響を与えたといえる。
まずアンプの薄型化である。

ヤマハのC2は、JC2の登場がなければ違ったスタイリングになっていたかもしれないし、JC2がなくとも、あのスタイルだったのかもしれないが、それでも、その登場は少し遅れたのかもしれない。

JC2はトーンコントロールを始め、いくつかのファンクションを、音質向上のためという名目で省いているが、
C2はトーンコントロールもしっかりと備えた上で薄型に仕上げているのは、ヤマハらしい。

C2の上級機のCIは、改良モデルが登場することはなかった。
C2はC2a、C2xと改良モデルが続いたロングセラーモデルだが、
ペアとなるパワーアンプのB2は最初から存在していたが、チューナーはなかった。

T2はしばらく登場しなかった。T2は薄型チューナーの先駆けでもあった。

このころ国産各社から薄型のチューナーが登場した。
パイオニアのF26、テクニクスのST9038Tなどがあった。

それ以前から、やや薄型のチューナーとしてラックスのT110があったが、10cmを切る薄さと比較すると、私の中では薄型チューナーの先駆けと感じるのは、上に挙げた三機種あたりからだ。

T2は新鮮に感じていた。C2とペアになるチューナーなんだ、と受け止めていたし、薄型のすっきりした印象は、チューナーは性能的にもサイズ的にも、こういう薄型チューナーで満足できる方がいいんじゃないか──、そんなふうに思わせた。

Date: 3月 15th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その20)

パイオニアのExclusive F3、ケンウッドのL01T、アキュフェーズのT104の三機種。

この中で音を聴いているのは、Exclusive F3だけだ。
音を聴いているといっても、私がいま住んでいるところは専用アンテナを用意できないし、
受信環境もいいとはいえないなので、音が鳴っているというレベルでしかなく、
その音について語れるわけでもない。

だから瀬川先生が書かれたものを読むしかないわけで、この三機種には音の共通性があるように感じている。
少なくともExclusive F3とT104は、どちらかといえば女性的な音であり、ウェットなはず。

L01Tも、そういう面を持っていると思っているし、L02Tにさほど惹かれないのは、そういう面が希薄かなと感じているからでもある。

Exclusive F3、T104、L01T、この三機種はそれぞれペアとなるアンプがある。
Exclusive F3にはExclusive C3が、T104には C240が、L01TにはL01Aという存在がある。

T104とC240、L01TとL01Aと比べると、Exclusive F3とExclusive C3は、デザインとして統一感があまりないと感じる。

私が別格のチューナーと感じているマランツのModel 10BとセクエラのModel 1は、Model 10Bには Model 7という存在がいるが、Model 1には、そういう存在はいない。

QUAD、ウーヘルのチューナーにもペアとなるアンプがあった。

ヤマハのCT7000とオーレックスのST720にも、そういう意味でのペアがいない。

CT7000には、ヤマハのプリメインアンプCA2000、CA1000IIIがあったではないか、と思われる方もいるだろうが、
この二機種とペアとなるチューナーはCT1000であり、価格的にもサイズ的にもそうである。

CT7000は、サイズ的にも合わないし、ヤマハのデザインらしいという点では共通していても、
デザインのペア性では、CT7000はペアとなるアンプを持たない存在だ。

Date: 3月 10th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その19)

(その1)でチューナー篇から書き始めたのは、たまたま目の前にあったステレオサウンド別冊の表紙にセクエラがあったからだ、と書いている。

そうなのだが、もう一つ理由があって、チューナーはほぼ新製品が登場しないからだ。
ステレオサウンドのベストバイでも以前はチューナーのカテゴリーがあった。
いまではない。当然だろう。

いまチューナーの新製品といえば、毎年登場するわけではない。マッキントッシュとアキュフェーズが比較的新しい製品を出しているとはいえ、
昔と今とではチューナーの存在は薄くなりつつある。

チューナーを持っていないオーディオマニアがいても不思議ではない。

この項のチューナー篇を書いていて、ケンウッドのL02T以降のチューナーには、関心がない。
セクエラのModel 1が復活した時は、おおっ、と思ったが、それが最後だった。

これから先もチューナーの新製品は、数は少ないだろうが登場するだろう。高価なチューナーも現れるかもしれないが、その登場に昂奮することはないと思っている。

L02Tはすでに書いているように、どうしても欲しいとまでは思っていない。
私が欲しいと思っているチューナーの中で新しいモノとなると、アキュフェーズのT104である。

マランツのModel 10Bとセクエラを別格として、この二つのモデルよりも身近なチューナーとして欲しいモノは、
パイオニアのExclusive F3、ケンウッドのL01T、アキュフェーズのT104が並ぶわけだが、
ここまで書いてきて思い出すのは、ステレオサウンド 55号のベストバイである。

55号のベストバイの巻頭には、オーディオ評論家それぞれのベストバイ観があり、My BestBuyとして、各ジャンルから三機種ずつ選んでいる。

瀬川先生のチューナーのベスト3が、Exclusive F3とL01TとT104なのを思い出している。

Date: 3月 1st, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その18)

ケンウッドのL02A、L02Tは、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
くり返し聴くことができたのは、プリメインアンプのL02Aのほうで、チューナーのL02Tの方は、一度だけだった。

音を聴かなくとも、カタログやオーディオ雑誌の記事、それに実物を目の前にすれば、すごいと多くの人が感じたはずだ。

L02Aについてプリメインアンプ篇で書くことになるだろうから、ここではL02Tだけについて書く。

L02Tが登場したころ、オーディオをやっていた人は、セクエラのModel 1とL02T、どちらが高性能なのだろうか、と頭の中で比較したと思う。

L02Tは300,000円。セクエラは1,480,000円。
日本製とアメリカ製の違いがあって、単純にこの価格差だけでは比較の対象とはならないクラスであっても、
L02Tの内容を知るほど、どうなのだろうか、という興味は募っていった。

L01Tでは、そんなことは思わなかった。

以前、別項で書いているように、ステレオサウンドの試聴室でL02Tとナカミチのカセットデッキ、700ZXEとで、シルヴィア・シャシュの日本公演の放送を録音したことがある。

L02Tを聴いたのは、この時かぎり。仕事ではない録音だし、他のチューナーと比較試聴したわけでもない。
それにステレオサウンドの試聴室でチューナーを聴いたのも、この一回かぎりだった。

なので聴いたとはいえ、どれだけの実力なのかの判断基準があったわけではない。
単純に、最高といえる(それに近い)チューナーとカセットデッキで、大好きなシルヴィア・シャシュの公演を録音していることが嬉しかった。

ステレオサウンドで働いていたからできたことで、そうでなければ普及クラスのチューナーとカセットデッキでの録音がやっとだっただろう。

そういう個人的な思い出があるL02Tだけに両方欲しいと思いながらも、誰かにL01Tとどちらかが欲しいときかれたら、L01Tと答える。

Date: 2月 28th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その17)

パイオニアのエクスクルーシヴ・ブランド、
トリオのケンウッド・ブランド。

どちらも同じようなところを目指しているように見ている人もいただろうが、エクスクルーシヴ・ブランドとケンウッド・ブランドには、はっきりと違いがあった。

ケンウッドは意欲的といえたし、もっといえば少しばかり実験的なところがあった。

ケンウッド・ブランドの最初のモデル、L01AとL01Tは、その後のケンウッド・ブランドのモデルと比較してもそうだった。

ケンウッド・ブランドの次のモデルはアナログプレーヤーのL07Dだった。
高剛性を追求し、ゴムなどの弾性体を排除する方向で開発されている。

曖昧な素材を排除して、高剛性と重量で、アナログプレーヤーの問題に対処するのは、
マニアックなアマチュア的アプローチともいえる。

それでも当時は、高剛性追求が一つの流れとしてあった。
L07Dは、L01Dではなかった。
ケンウッド・ブランドであっても、01と07は違っていた。この点も、エクスクルーシヴ・ブランドでは起こらなかったはずだ。

その次のモデルは、待望のセパレートアンプだった。私はL01Aのセパレートアンプ版を期待していたが、出てきた製品は違っていた。

そして、その次のモデルが、ケンウッド・ブランドの集大成といっていいL02AとL02Tだった。

Date: 2月 27th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その16)

1970年代の終り近くになってアンプの音の解析が一歩進んだように感じた。
スルーレート、ライズタイム、TIM歪といった動的特性がクローズアップされるようになってきただけでなく、
アンプの非磁性体化も、各メーカーで取り組むようようになってきた。

サンスイのAU-D907 Limitedがそうだし、ケンウッドのL01A、L01Tもそうだっただけでなく、より徹底していた。

L01Aはプリメインアンプにも関わらず、電源部を独立させている。
筐体も底板に木、フロントパネルにはアクリル材、それにアルミを組み合わせることで構成している。もちろんツマミやスイッチからも磁性体を徹底的に排除している。

それでも最後まで残るのが、電源トランスという鉄のかたまりだ。
とはいえ、電源トランスを排除できるわけではないので、別筐体とすることで、非磁性体化の目標を、可能な限り追求、実現している。

この非磁性体化をチューナーにも持ち込んだのがL01Tだ。
チューナーはプリメインアンプほど電源トランスの容量を必要としないこともあってだろう、L01Tでは電源トランスは本体の筺体内に収められている。

L01Tの特徴は非磁性体化だけではなく、回路的にはL01Aよりも意欲的な試みをやっている。

L01Tを聴く機会はなかった。L01Tは160,000円だった。
トリオのKT9700は150,000円、後継機のKT9900は200,000円だったから、
価格だけで判断すれば、L01Tが突出しているわけではなかった。

それでもトリオ・ブランドのチューナーにはない質感が、L01Tにはあるように感じた。
音は聴いていないものの、チューナーとして中身が全く同じであっても、
筐体がまるで違うのだから、音もかなり違う仕上がりとなっていたはず。

いまも中古品として並んでいるL01Tを見つけると、買ってしまおうかな、という衝動がある。

Date: 2月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その15)

オーディオに興味を持つ前まではアマチュア無線の免許を取ろうと勉強していた。
初歩のラジオを読みながら、合格したら、どの無線機を買おうか、と思っていた時期がある。

トリオの名前は、オーディオよりもアマチュア無線のブランド(メーカー)として、先に知っていた。

トリオのチューナー、というよりもチューナーのトリオという印象があった。
トリオのチューナーは定評があった。でもカタログやオーディオ雑誌に掲載されている写真をみると、なんとなく、どこかにギラついた印象が残っている感じがして、好きにはなれなかった。

チューナーとしての性能、音も優秀なんだろうけど──、私の中では、そこのレベルでとまっていた。

トリオのチューナーに対して印象ががらっと変ったのは、L01Tの登場によってだった。

L01Tという型番からもわかるように、それまでのKTで始まるトリオのチューナーとは、違っていた。
ブランドもトリオではなく、ケンウッド。

いまでこそトリオではなくメーカー名もケンウッドになっているが、当時はトリオが会社名でありブランド名であり、ケンウッドは海外でのブランドだった。

そのケンウッドの名称を、国内の別ブランドとして展開するようにしたのは、パイオニアのエクスクルーシヴ・ブランドと似ている。

パイオニアの場合、最初はパイオニア・ブランドでのExclusiveシリーズだったが、途中から販売会社パックスをつくり、エクスクルーシヴ・ブランドとなった。
その後、パックスは解散して、パイオニアに戻る。

L01Tがチューナーで、ペアとなるプリメインアンプがL01A。この二機種の登場は、私にとっては新鮮だった。

Date: 2月 25th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その14)

ステレオサウンド 43号、ベストバイで五人が選んでいるチューナーはトリオのKT9700で、
井上卓也、岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹、山中敬三の票を集めている。

パイオニアのExclusive F3を選んでいるのは、上杉佳郎、瀬川冬樹の二人。

KT9700は150,000円、Exclusive F3は250,000円。
おそらくだが、チューナーとしての性能はKT9700の方が上だっただろう。

でもKT9700とExclusive F3の写真を見比べると、KT9700が女性ヴォーカルをしっとりと鳴らしてくれるふうには思えなかった。

瀬川先生は《音の傾向は、9300と同系統の、やや硬質で鮮明な印象。反面、音のやわらかさやふくらみや豊かさという面では、たとえばパイオニアのF3あたりの方に軍配が上がるが、この辺は好みの問題だ》と書かれている。

こういうのを読むと、やっぱりExclusive F3だな、と十四歳の私は思っていた。

いつかはExclusive F3と思うようにもなっていたが、少し冷静になれば、チューナーに二十五万円払えるだけの経済的余裕が持てるようになれば、
同レベルのアンプ、スピーカー、プレーヤーも手にしているわけだし、だとすれば、好きなレコード、聴きたいレコードは躊躇うことなく買えるだろうから、
チューナーを介して好きな曲を聴くということ、つまりレコードが買えなくてFM放送を聴くことはほとんどないだろうから、チューナーの音に好みを求めることはあまり意味がないことにも気づいていた。

それでもセクエラのModel 1、マランツのModel 10Bを別格の存在とすれば、
Exclusive F3は、そのころの私にとっては最高級チューナーといえる存在だった。

そのExclusive F3は、いま手元にある。岩崎先生が使われていたモノがある。