SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その10)
私がステレオサウンドを読み始めた頃と、
ラックスのCL32が登場した時期と重なっていて、
CL32の記事はよく目にしていた。
それらのほとんどに書いてあったのは、
だまって本機を見せられたら、管球式アンプだとわかる人はいないだろう──、
そういうことだった。
当時はマークレビンソンのJC2に影響を受けた日本のメーカーから、
薄型のコントロールアンプがいくつも登場していた。
そんななかでのラックスのコントロールアンプCL32は、
真空管を横置きとすることで、薄型を実現していた。
同時期のCL35/IIIが、プリメインアンプのSQ38FDIIと同じデザインだっただけに、
CL32の薄型はよけいにきわだっていた。
真空管を横置きするのは、マランツのModel 7もである。
けれどModel 7は薄型ではない。
おそらくJC2が登場していなければ、CL32は違うプロポーションになっていたであろう。
結局は、薄型の筐体におさめられる薄型の電源トランスができれば、
薄型の管球式コントロールアンプはさほど困難ではない、というわけだ。
ただし管球式アンプの電源トランスは、ソリッドステートアンプの電源トランスよりも、
高電圧と低電圧の巻線が必要になるため、サイズは大きくなりがちだ。
ラックスはトランスメーカーでもあったからこそ、
外部電源とせずに薄型の管球式コントロールアンプが実現できたのだろう。
CL32の評価は、当時は高かった。
中学生だった私はLNP2に憧れながらも、CL32の音を聴きたい、と思っていた。
真空管のよさが聴けるコントロールアンプというふうに、思えていたからだった。
あのころCL32に関する文章を読んでいても、
新しい世代の管球式コントロールアンプというふうには思えなかった。
他の国産メーカーが管球式アンプをやめていくなかで、
ラックスはトランジスターアンプを主としながらも、継続していた。
管球式アンプの歴史をもつラックスがつくった管球式アンプの新製品、
それも薄型のコントロールアンプ、
私の目には、そう映っていた。