Date: 8月 16th, 2021
Cate: 戻っていく感覚
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SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その7)

1970年代後半に登場してきた新世代の管球式コントロールアンプの走りは、
コンラッド・ジョンソンのPreamplifierといっていいだろう。

丸いツマミが六つ、左右対称にフロントパネルに配置されている。
そのことでマランツのModel 7に重ねて語られることもあったが、
デザインの完成度という点では、コンラッド・ジョンソンは素人のそれである。

でも、音の評価は高かった。
シイノ通商が輸入元だったことも関係しているのだろうが、
実物を見る機会はほとんどなかった。

私は20代のころ、一度だけ見ているくらいだ。
当時は内部写真も見れなかった。
いまではインターネットのおかげで内部写真も、すぐに見ることができる。

次に登場したのが、プレシジョン・フィデリティのC4である。
この管球式コントロールアンプは、コンラッド・ジョンソン以上に気になった。

C4もデザインに関しては、素人のそれでしかないが、音の良さはかなりのレベルであったようだ。
ステレオサウンド 49号での新製品紹介でも、井上先生、山中先生の評価は高い。

49号と同時期に出た別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」の巻頭でも、
瀬川先生の高い評価が読める。
     *
78年度の動きのひとつに、真空管をもういちど新しい増幅素子として見直そうという動きがみえはじめたのはおもしろい。すでに海外に限らず、いまの三十才代以下の若手のエンジニア達は、学校でいきなりトランジスターから勉強をはじめた世代である。そうした彼等が、真空管を過去の素子としてはじめは退けていたが、トランジスターを一応手中に収めてこんにちのアンプを完成させたとき、ある部分はトランジスターよりも優れた面を持つ真空管という素材を、こんにちの技術でもういちど洗い直してみようと考えるのは当然かもしれない。
 そのあらわれが、たとえばコンラッド・ジョンソン(本誌48号)や、おそらくこれから紹介されるプレシジョン・フィデリティ(スレッショルドの社長のプライベートブランド)C4などのコントロールアンプにみられる。これらはおそらく、マランツ、マッキントッシュまでの管球時代を知らない人たちの作品だろう。また、オーディオリサーチのSP6のように、一旦は管球から出発しながらソリッドステートの方向に進み、再び管球に戻ってきたという製品もある。
 私自身は右の製品のすべてを良く聴き込んだわけではないが、プレシジョン・フィデリティのコントロールアンプは、管球特有の暖かい豊かさに、新しい電子回路の解像力の良さがうまくブレンドされた素晴らしい音質と思った。残念な点は、パネルフェイスが音質ほどには洗練されていない点であろう。そのことが残念に思えるほど逆に音は素晴らしい。
     *
聴きたくなるではないか。

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