オーディオ機器との出逢いには、ふたとおりあると思う。
ひとつは、もちろんオーディオ機器と使い手・聴き手との出逢い。
オーディオ機器と人との出逢いだ。
もうひとつは、オーディオ機器とオーディオ機器との出逢いがある、といえないだろうか。
これも、オーディオ機器と人とオーディオ機器との出逢いというべきだろうが、
それでも所有しているオーディオ機器が、
なにか、それと組み合わされるべき相手となるオーディオ機器と出逢う、ということがときとしてある。
モノがモノを呼び寄せる、そのようなものだろうか。
私の場合では、The Goldを手に入れてしばらくして、GASのThaedraを手に入れることができた。
それも初期のThaedraの、ひじょうにコンディションのいいモノだった。
よく世間ではGASのアンプの音は、男性的という表現で語られる。たしかにそういう面を強く持っていた。
でも、それは必ずしもGASのアンプすべて、すべての時期についていえることではないくて、
ごく初期のGASのアンプの音は、そういう男性的な、と語られるところをうまく抑制して、
素直で表情豊かな音を聴かせてくれていた。
というよりも一般に語られているGASの男性的と表現される性格は、
やや意図的に出されてきたものではないかとも、私は思っている。
サイケデリック風のロゴがアンプのパネルに描かれるようになってから、音の印象があきらかに変化している。
だから、初期のThaedraが入手できたことは、うれしかった。
それにThe Goldと組み合わせたときの音、これはいまでも憶えている。
The Goldが、いままで見せてくれなかった、生き生きとした表情で鳴ってくれた。
こういうふうに鳴りたかった──、そんなことが伝わってきそうな感じだった。
The Goldは、というよりもボンジョルノのつくるパワーアンプは、基本的に素直な性格をもつ。
コントロールアンプの違いを、よりはっきりと出す。
相手を選り好みする、というのではなくて、わりとストレートにコントロールアンプの性格を音として出す。
それはパワーアンプとしての性能が高くなってきたThe Goldにおいて、もっとも顕著だった。
オーディオ機器とオーディオ機器との出逢い、それに立ち合えた経験を一回でもお持ちなら、
いま書いたことを理解してくださると信じている。