オーディオ機器を選ぶということ(その14)
オーディオ機器の中で、ユニバーサルということばがつくものといえば、トーンアームがまずあげられる。
ユニバーサルトーンアーム、という言い方がある。
その代表としてあげられるのが、SMEの3012である。
たしかに3012は、調整のポイントをしっかり把握した上で使いこなせれば、
かなり融通のきくトーンアームの、数少ないモノである。
私自身も3012-Rを使っていた時期があるし、
ステレオサウンドの試聴室のリファレンス・プレーヤーのマイクロのSX8000IIに3012-R Proだった。
カートリッジの試聴において使用するトーンアームは、私がいたころは、この3012-R Proだけだった。
3012-Rだけで、ハイ・コンプライアンスのカートリッジからオルトフォンのSPUまで、
MM型からMC型まで、じつにさまざまなカートリッジを取り付けては調整し、また交換しては試聴してきた。
だから私にとって、 SMEの3012-Rはもっとも手に馴染んでいるオーディオ機器である。
だからこそ、信頼して使えるオーディオ機器でもあった。
話はすこしそれるが、アナログディスク再生において、もっとも重要なことのひとつに、
この、手に馴染む、ということがあると、私は考えている。
もちろん基本性能の高いことはいうまでもないが、それだけではアナログディスクを再生、というよりも、
演奏するオーディオ機器としては不十分ではないだろうか。
たとえばカメラ。ライカのカメラの評価は素晴らしいものがある。
でもすべてのカメラ好きの人の手に、ライカが馴染むかどうかはどうなのだろうか。
最初にさわったときからすっと手に馴染む人もいるだろうし、
愛着をもってつかいこなしていくうちに、手に馴染んでくる、ということもある。
でも、世の中にひとりとして同じ人がいないのだから、
どうしても、どうやってもライカが手に馴染まない人もいて、ふしぎではない。
そんな感覚が、アナログディスクを演奏するオーディオ機器にはある。
とくにトーンアームこそ、そうである。
アナログディスクの演奏においてこそ、手に馴染む、手に馴染んでくるモノを使うべきである。
それを見極めるのも、アナログディスク演奏には重要なことでもある。