Archive for category 電源

Date: 11月 3rd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その5)

チェロからのパワーアンプの第2弾の アンコール・パワー(Encore PowerAmp)でも、
チョーク・インプットは採用されている。

アンコール・パワーのシャーシーにふれてみるとわかるが、
発熱量は、パフォーマンスとアンコール・パワー、それぞれの規模と比例するように、極端に少ない。
おそらく出力段のパワートランジスターにアイドリング電流を、それほど流していない設計なのだろう。

ML2Lが純Aクラス、パフォーマンスは、Aクラス動作領域が広いABクラス、
これらに対して、アンコール・パワーは、純Bクラスといいたくなるほど、
アイドリング電流は少ないものと推測できる。

純Aクラス動作のパワーアンプを理想とするならば、
アンコール・パワーはとんでもないアンプということになるのだが、
ことはそう短絡的に結論を出せるものではなく、
アイドリング電流を抑えることにより、ヒートシンクの存在が、アンコール・パワーにはない。

Date: 11月 3rd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その4)

マーク・レヴィンソンは、チェロを興してからは、電源に対する考え方が大きく変化したように感じられる。
チョーク・インプット方式の採用もそうだが、定電圧電源に関しても、そうである。
ML2Lは、出力段まで定電圧化された電源を採用しているのが特徴だった。

パワーアンプで、出力段の電源まで定電圧化していたのは、それまではテクニクスのSE10000の存在しかなく、
純Aクラスのパワーアンプで、すべて定電圧化するということは、
ここに使われる制御用トランジスターの発熱の分が増すために、非安定化電源のパワーアンプよりも、
放熱に関してはやっかいなこととなり、アンプの規模は必然的に大きくなっていく。
ML2Lの6つあるヒートシンクのうち2つは定電圧電源用である。

もしチェロのパフォーマンスが、出力段まで定電圧電源を採用していたとしたら、
スペースにたっぷりの余裕がある電源部のシャーシー内部は、ヒートシンクで占拠され、
さらに強制空冷用のファンが、アンプ本体部だけでなく、こちらにも取り付けられていたはずだ。

レヴィンソンの、というよりも、チーフ・エンジニアであったコランジェロの考え方の変化によることでもあろうが、
チェロのアンプには、ほぼ全面的にチョーク・インプットが採用されていく。

Date: 11月 1st, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その3)

マーク・レヴィンソンによるパワーアンプは、マークレビンソン時代のML2Lでは、
最初は、電源トランスはEIコア型だった。ケースはなかった。
つぎは、うなりを抑えるためにエポキシで固められた。これもケースはなかった。
そして、トロイダルトランスになり、ケースに電源トランスがおさめられるようになった。
ML2Lに次に出たML3Lでは、最初からトロイダルトランスで、もちろんケース入り。

それが、チェロになり、最初のパワーアンプ、パフォーマンスでは、EIコア型にもどり、
ケースもなくなっている。エポキシで固められてもいない。

ケースをなくし、EIコアにもどした理由を、当時、レヴィンソンは、こちらのほうが音がいいため、と語っていた。
たしか、音のために見栄えは無視した、といった類のこともつけ加えていた、と記憶している。

Date: 9月 23rd, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その2)

真空管アンプには、いくつか採用例があったチョークインプット方式だが、
トランジスターアンプになってからは、1987年に登場したチェロのパフォーマンスまで採用例はなかった(はず)。

チョークインプット方式の真空管アンプをつくられた方なら、おわかりになるだろうが、
チョークインプット方式では、チョークがうなりやすい。
このうなりは耳につく。

チェロのパフォーマンスでは、パワーアンプにも関わらず外部電源とし、
電源トランス、整流ダイオード、チョークコイルまでを、別筐体にまとめている。
しかもチョークの下にはかなり厚いゴムをはさみ、
チョークの振動がシャーシーに伝わらないよう配慮されていた。

もしアンプと同一筐体に仕上げられていたら、
もともと振動源が、コントロールアンプよりも多いパワーアンプにとって、
よけいに、それももっとも大きな振動源が増えることになる。

井上先生は、電源トランスがうなっていてはだめだ。
うなりがあると、音場感がいともたやすくくずれてしまう、とよく言われていた。
電源トランスよりもうなるチョークがあっては、台無しである。

Date: 9月 23rd, 2009
Cate: 電源
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電源に関する疑問(その1)

チョークことについて、すこしふれたので、つづけて電源について書いていこうと思う。

チョークを採用した電源には、コンデンサーインプット方式とチョークインプット方式がある。
簡単に説明すると、コンデンサーインプット方式は、
整流回路(整流管、整流ダイオードで構成される)のすぐあとに平滑用のコンデンサーがあり、
そのあとにチョークが直列に挿入される。
チョークインプットは、整流回路のすぐあとにチョークが直列にはいり、その出力にコンデンサーがある。

つまりチョークに入る位置が異るともいえるし、最初にはいるコンデンサーの位置が異るともいえる。

どちらがオーディオ用として優れているかといえば、チョークインプット方式だと思う。
電圧波形を見るかぎり、コンデンサーの容量が充分にあれば、リップルはほぼ抑えられる。
けれど、電圧波形ではなく、電流波形をみると、
チョークを使った電源でも、コンデンサーインプット方式とチョークインプット方式では、
大きな違いがある。電流供給能力が高く要求されるパワーアンプにおいては、
チョークインプット方式に分があるといえる。

Date: 10月 20th, 2008
Cate: 電源

ACの極性に関すること(その3)

ACの極性によって音を変化させるものに、ACファンがある。
DCファンは、ACの極性は関係しない。

ACファンを使用しているオーディオ機器をお使いならば、
ファンのAC極性のみを反転した音を聴いてみてほしい。
電源のAC極性の違いと同じ傾向で、おもに音場感の再現が、ときには大きく変化する。

ACファンにも極性があることを知っているメーカーもあれば、知らないメーカーもあるようだ。

そういう例はないと思うが、ステレオパワーアンプで、ACファンを二基、
左右チャンネルにそれぞれ使用しているものでACファンの極性が左右でもし違っていたら、音場感はいびつになる。

以前、SUMOのThe Goldを使っているときに試したことがある。
ちなみに、ボンジョルノはACファンの極性のことを知っているようで、
アンプのACの極性をきちんととると、ACファンの極性も揃うようになっている。

ACファンの回転数を落としたいとき、直列に抵抗を使うのが一般的だが、
200V仕様のファンを100Vで使う手もある。
また抵抗の代わりにフィルムコンデンサーを使うこともある。
抵抗と違い、熱がほとんど出ないのがメリットだ。
どのくらいの値をコンデンサーを使うかだが、
ファンのインダクタンスとの兼合いがらみなので、いくつかの値のコンデンサーを用意して、試してみるのがいい。

Date: 10月 10th, 2008
Cate: 電源

ACの極性に関すること(その2)

ステレオサウンドでは試聴の準備で、CDプレーヤーやアンプはすべてACの極性をチェックする。
アース電位をデジタルテスターで測ってみる。
テスターに表示される数字の低い方を、基本的にはACの極性が合っていると判断する。
ただ一部の機器はメーカー側の指定があり、アース電位の高いこともある。

私がステレオサウンドにいたのは1988年12月までで、
それまで測った機種でアース電位が優秀だったのは、マッキントッシュのアンプだった。
いまのマッキントッシュのアンプがどうなのかは知らない。

マッキントッシュのコントロールアンプと、
機能を絞った、いわゆるハイエンドオーディオと言われるメーカーのコントロールアンプ、
アース電位が低いのはマッキントッシュである。

いうまでもなくマッキントッシュのコントロールアンプは多機能だから、
トーンコントロール、フィルターなどを装備しているため、どうしても内部構成は複雑になる。
にも関わらず、ほとんどコントロールアンプとしての機能を持たない機種、
つまり内部構成はずっとシンプルで、配線の引き回しも少なく、ディスクリート構成なのに、
アース電位はかなり高く、しかもAC極性を変えると、大きく値が変動する。
しかも測定している最中、アース電位がふらつく。

マッキントッシュの方は低いだけでなく、AC極性を反転させても、
ほとんどアース電位が変化しない。しかも安定している。
もちろんアース電位の値だけで音が決定されるわけではない。
けれど、AC極性の反転で電位の変化幅の大きいアンプは、音の変化も大きい。
マッキントッシュのアンプも、AC極性を変えると音は変化するが、それほど大きい差ではない。

人の価値観はさまざまだから、どちらを優秀なアンプとして評価するかは異るだろうが、
少なくともアンプとして安定しているのはマッキントッシュである。

Date: 10月 9th, 2008
Cate: 五味康祐, 電源

ACの極性に関すること(その1)

1981年か82年ごろか、あるオーディオ誌に連載をお持ちのあるオーディオ評論家が、
「ACに極性があるのを見つけたのは私が最初だ」と何度か書いているのを見たことがある。
なぜ、こうもくり返し主張するのか、声高に叫ぶ理由はなんなのか……。

少なくとも、このオーディオ評論家が書く以前から、
ACの極性によって音が変化することは知られていた。
私でも、1976年には知っていた。

この年に出た五味先生の「五味オーディオ教室」に、次のように書いてあったからだ。
     ※
音が変わるのは、いうまでもなく物理的な現象で、そんな気がするといったメンタルな事柄ではない。
ふつう、電源ソケットは、任意の場所に差し込みさえすればアンプに灯がつき、アンプを機能させるから、スイッチをONにするだけでこと足りると一般に考えられているようだが、実際には、ソケットを差し換えると音色──少なくとも音像の焦点は変わるもので、これの実験にはノイズをしらべるのがわかりやすい。
たとえばプリアンプの切替えスイッチをAUXか、PHONOにし、音は鳴らさずにボリュームをいっぱいあげる。どんな優秀な装置だってこうすれば、ジー……というアンプ固有の雑音がきこえてくる。
さてボリュームを元にもどし、電源ソケットを差し換えてふたたびボリュームをあげてみれば、はじめのノイズと音色は違っているはずだ。少なくとも、どちらかのほうがノイズは高くなっている。
よりノイズの低いソケットの差し方が正しいので、セパレーツ・タイプの高級品──つまりチューナー、プリアンプ、メインアンプを別個に接続して機能させる──機種ほど、各部品のこのソケットの差し換えは、音像を鮮明にする上でぜひ試しておく必要があることを、老練なオーディオ愛好家なら知っている。
     ※
これを読んだとき、もちろん即試してみた。お金もかからず、誰でも試せることだから。
たしかにノイズの量、出方が変化する。

もっともノイズでチェックする方法は、
現在の高SN比のオーディオ機器ではすこし無理があるだろう。
音を聴いて判断するのがイチバンだが、テスターでも確認できる。
AC電圧のポジションにして、アース電位を測ってみるといい。
もちろん測定時は、他の機器との接続はすべて外しておく。

ここで考えてみてほしいのは、
なぜ五味先生はACの極性によって音が変化することに気づかれたかだ。

マッキントッシュのMC275に電源スイッチがなかったためだと思う。
五味先生が惚れ込んでおられたMC275だけでなく、マッキントッシュの他のパワーアンプ、
MC240も、MC30などもないし、マランツのパワーアンプの#2、#5、#8(B)にも電源スイッチはない。
マッキントッシュの真空管アンプで電源スイッチがあるのは、超弩級のMC3500、マランツは#9だけである。

MC275の電源の入れ切れは、
コントロールアンプのC22のスイッチドのACアウトレットからとって連動させるか、
壁のコンセントから取り、抜き挿すするか、である。

あれだけ音にこだわっておられた五味先生だから、おそらく壁のコンセントに直に挿され、
その都度、抜き差しされていたから、ACの極性による音の変化に気付かれたのだろう。

なにも五味先生に限らない。
当時マランツの#2や#8を使っていた人、マッキントッシュの他のアンプを使っていた人たちも、
使っているうちに気づかれていたはずだ。
だから五味先生は「老練なオーディオ愛好家なら知っている」と書かれている。

そして、誰も「オレが見つけたんだ」、などと言ったりしていない。