Archive for category ショウ雑感

Date: 8月 13th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続続々補足)

マッキントッシュにとって新しいコンストラクションの採用が、
MC2301の正式な登場まで、1年近く必要だった理由のひとつではなかろうかと思う。

トランジスター化されて以降、フロントパネルの裏側に、電源トランス、オートフォーマーは配置されていた。
ステレオサウンドで働くようになって、はじめてMC2255を持ち上げたとき、
こんなにもフロントパネル側が重いのか、と、重量のアンバランスさに驚いたほどで、
ひとりで抱えるには、フロントパネルを自分のほうに向けて抱え込むようにしないと無理で、
もし逆さまに持ち上げてしまうと、ひっくり返しそうになる。

井上先生が、かなり以前から指摘されているように、電源トランスの配置によって、
アンプ全体の重量バランスは大きく左右され、
重量バランスのとれているアンプだと、音場感情報もよく出るとともに、音像の輪郭が自然な感じとなるのに対して、
重量的にアンバランスなアンプでは、音像の輪郭がエッジが張った感じになり、
そのおかげで聴き応えのある音になるとともに、音場感の情報量は、減衰傾向にある。

アンプの音は、重量バランスだけで決るのではないし、
マッキントッシュは、あえてこの重量のアンバランスさをうまく利用していたのではないかとも、思える。

MC2301のコンストラクションは、重量バランスの変化による音の変化とともに、
アンプの主要パーツの配置が従来とは大きく変ったために、とうぜん内部配線処理も変更を受ける。
アースの処理の仕方も変わったであろう。

それまでの伝統的なノウハウだけでは対処できない面も生まれてきたため、
新たなノウハウを得るための時間が必要だったのではなかろうか。

Date: 8月 12th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続々補足)

マッキントッシュのパワーアンプは、トランジスター化されても、オートフォーマーを採用している。
いまだにオートフォーマーのことを出力トランスを書く人がいるけれど、
このオートフォーマーも、出力トランス同様、重量物であり、
マッキントッシュのトランジスターパワーアンプは、フロントパネル裏に、
オートフォーマーと電源トランスを配置している。
だから、重量的なアンバランスは、トランジスター化されても受け継がれてきてたわけだ。

マッキントッシュの歴代のパワーアンプのなかで、比較的重量バランスがとれているのは、MC3500だろう。
内部写真を見ると、対角線上にトランスを配置している。
それでもシャーシー四隅のうち、二隅にはあまり重量がかかっていないだろうから、
まだまだ検討の余地は残っている。

その点、MC2301は、シャーシー中央に重量物をまとめて配置しているから、実際に持ち上げてみることなく、
その重量バランスの良さは、すぐにわかる。
いままでのマッキントッシュのアンプにはないコンストラクションであり、
とうぜん、このことは内部配線にも関係してくる。

真空管アンプで300Wという出力の大きさと、新しいコンストラクション。
これまでのマッキントッシュのパワーアンプにはなかった面をきっと聴かせてくれるであろう、
と期待はふくらむばかりだ。

Date: 8月 12th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続補足)

MC2301に、これほど注目している理由のひとつとしてあげたいのは、重量バランスのよさである。

真空管のパワーアンプの場合、電源トランス、出力トランスという重量物が、モノーラル構成だと最低でも2つ、
ステレオ構成だと最低でも3つ必要となり、トランス同士の相互干渉を防ぐとともに、
いかにシャーシー上に、重量的なアンバランスが生じないように配置するのは、
内部配線との絡みもあって、そう簡単には解決できない問題である。

それに真空管アンプの場合、トランスの配置が、見た目の問題にも大きく関わってくるから、
よけいにやっかいともいえる。

マッキントッシュの真空管アンプをみてみると、トランス類はたいていシャーシーの片側にまとめられている。
MC275もそうだし、モノーラル機のMC75もそうだ。さらに古いMC30でも片側によっている。
これはなにもマッキントッシュの真空管アンプだけのことではない。
マランツの♯2や♯9でも、どちらかに片寄っていて、実際に抱え上げると、
かなりの重量的なアンバランスさを感じとれる。

Date: 8月 12th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・補足)

昨年のインターナショナルオーディオショウで、いちばん聴いてみたかった製品が、
ほぼ1年経ち、ようやく登場した。
マッキントッシュの管球式のモノーラルパワーアンプ、MC2301だ。
出力は300Wだから、同社の往年の名器、MC3500の350Wにはすこし及ばなかったが、
ここでの、50Wの差は、ないに等しいだろう。

出力管はKT88で、片チャンネルあたり8本使用している。
MC3500は、6LQ6を、やはり8本使っている。
電圧増幅には、マッキントッシュ・ジャパンのサイトで公開されている資料によると、12AT7が2本とある。
MC3500では、初段から使用真空管をあげていくと、まず12AX7、さらに12AX7がつづき、
6DJ8、6CG7、6DJ8となっている。
出力段の前段には、双三極の出力管6BL7GTAのカソードフォロワーになっており、
電圧増幅部の6CG7も初段の12AX7もカソードフォロワーだ。
つまりカソードフォロワーが3段あるわけだ。

MC2301の回路構成がどうなっているか、詳細は不明だからこそ、
電圧増幅部の真空管の使用本数が半分以下になっているのは、興味深い点である。

電圧増幅段の、NFBをかける前のゲイン(オープンループゲイン)は、かなり違うのだろう。
ということは、NFB量も違う。
MC3500は、30dB程度のNFBをかけていたと記憶している。

それにコンストラクションも、どちらもモノーラル構成だが、大きく違う。
MC2301はシャーシーの中央に、電源トランスと出力トランスという、
アンプ内でもっとも重量のある部品を置くことで、重量バランスの片寄りをなくしている。
出力管は、両側に4本ずつ振り分けている。

MC3500は、電源トランス2個(高圧用と低圧用)はフロントパネル側に、右寄りに、
出力トランスはリアパネル側の左寄りに、配置している。
出力管は8本まとめて、リアパネル側、出力トランスのとなりに置かれ、ファンによる強制空冷となっている。

フロントパネルの色も違う。
MC3500はホワイトハウスに納入するために開発されたもので、だからパネルがシルバーだという、
どこまで本当のなのかわからない話を、昔きいたことがある。
MC2301は黒だ。メーターの大きさもずいぶん違う。MC2301のもののほうがかなり大きい。

これらの変化・違いは、時代の変化によるものも含まれよう。

MC2301は、とにかく、いまいちばん聴いてみたいパワーアンプのひとつである。

Date: 10月 29th, 2008
Cate: ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その4)

ステサン──ステレオサウンドを、こう略して言う人は少なくない。
なぜ略すのか。

誌面に限りがあり、文字数をぎりぎりまで減らす必要があるならば、略すのもわかる。
しゃべりで、ステサンと言うのとステレオサウンドと言うのと、時間にしたらわずかである。
そんなに言葉を多く話すのがイヤなのか、それとも略すのをカッコいいとでも勘違いしているのか。

個人サイトやブログでも、略語を使う人はいる。
ネットの良さは、誌面の制限を受けないことだと思っている私には、略語を使う意味がわからない。
キーボードを打つのが面倒なら、単語登録しておけばすむこと。
そんなわずかな手間を惜しむのか。
だとしたら、「オーディオに向いていないよ、あなたは」と言いたくなる。
オーディオこそ、手間を惜しまず取り組むことを求められる趣味だから。

もうひとつ言いたいのは、モツレクとかベト7とか、ひどい略語についてである。
モツレクを、個人サイトではじめて見たとき、「えっ?」と、ほんのわずかな時間だが考えた。

モーツァルトのレクィエムのことである。ベト7はベートーヴェンの交響曲第7番のこと。
五味先生の著書を読んできた私は、レクイエムではなく、レクィエムと書く。

しかも、そのサイトの主は、モツレクは大好きな曲で愛聴盤だと書いている。
なのに「モツレク」である。言葉の響きとして、まったく美しくない。

モツレクと平気で言える人、書ける人の美意識──、
そんなのでほんとうにオーディオを追求していけるのか。

そんなことは音とは関係ないと言うだろう、そういう人たちは。
だけど、そんな小さなことにその人なりが表われるし、「音は人なり」である。

Date: 10月 29th, 2008
Cate: ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その3)

インターナショナルオーディオショウで見かけた、あることについて書く。

20代か30歳そこそこといった若い感じの人が、あるオーディオ評論家の方に、
ステレオサウンドに書かれていた記事について、質問されていた。

盗み聞きしてはいけないと思いながら、それとなく聞いていたら、
どうも、質問されている人の勘違いのようで、そのオーディオ評論家の方も
「家に帰られたら、もういちど読み返してほしい。そんなふうには書いていないから。
それでも、もしそう受けとめられたら、明日も明後日も私はここ(会場)に来ているから、
また声を掛けてください」と真摯に応えられていた。

それに対して、若い感じの人は
「いやー、ステサンは買ってないんですよ。立ち読みです。
でも重たいから立ち読みも大変なんですよ」と笑いながら自慢気であった。

いいかげんに立ち読みして、勘違いして、そのことで、何の落ち度のない人を煩わせて、
へらへらして平気な顔をしている。

立ち読みを勧めはしないが、真剣に立ち読みをすれば、つまらない勘違いもしない。
情報があふれ返っていることに馴れきってしまったことの不幸なのだろう。

Date: 10月 6th, 2008
Cate: ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2)

今回のインターナショナルオーディオショウで「これは聴いてみたい」と思ったのは、
マッキントッシュのパワーアンプMC2301だ。
型番こそ、2301とステレオ機のそれだが、MC2301はモノーラルの管球式アンプだ。
KT88を片チャンネル8本使い、300Wの出力。
ほとんど、以前のMC3500の現代版である。
MC3500は、同社最後の管球式アンプだった(その後、管球式が復活したため最後ではなくなったが)。
MC3500の出力は350W。実物を見たことはあるが、実は音を聴いたことはない。

MC2301は、見た目も、きっと音も、MC3500よりも洗練されている。
安定度も問題なく高いはずだ。

このアンプを、マッキントッシュジャパンのブースで見ていたら、
タンノイのスピーカーで聴いてみたくなった。
カンタベリー15と組み合わせて聴きたい。

まだ熊本に住んでいた頃、ロックウッド社のジェミニというスピーカーを聴いたことがある。
ロックウッドのスピーカーはタンノイのユニットを、
独自のバスレフ型エンクロージュアに収めたもので、
ずいぶんタンノイ純正のスピーカーとは異る印象を受けた。

聴いたといってもわずかな時間だし、ずいぶん昔のことだけど、
タンノイのユニットとは思えないほどエネルギッシュな音だった。

もしかすると、あの時の音が、MC2301で鳴らすカンタベリー15から聴けるような気がしてしまう。

Date: 10月 5th, 2008
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その1)

インターナショナルオーディオショウで、個人的に印象に残っているのは、
ベーゼンドルファーの不在である。

去年、聴いたベーゼンドルファーの音を
もういちど聴きたくて会場に足を運んだといってもいいくらいだっただけに、残念である。

今年はじめ、ベーゼンドルファーをヤマハが買収したニュースをきいて、
いちばん心配だったのがスピーカーの製造が終了してしまうことだった。
案の定だ。

ピアノメーカーがつくったスピーカーだけに、ピアノの再生は得意だけど、
ほかのものは……、という印象が強かったようだが、
響きの忠実性は、高いものを持っていたスピーカーだった。

去年のノアのブースでかけられていたカンターテ・ドミノだが、
教会で録音されていることはよく知られているが、
この教会は石造りではなく、木で造られた教会だけに、
一般にイメージされる教会の響きと違い、暖かく柔らかい。
この木の感じを、よく出してくれる。

そして次にかかった、同じ教会でも石造りのところで録音されたCDでは、
そういう響きを見事に響かせてくれる。

いわゆる音場感とは違う、響きの再現性。
なかなかこういうスピーカーはないだけに、ひじょうに残念だが、
ベーゼンドルファーのスピーカーに関する主要スタッフは、ふたりだけらしい。
もしかすると、彼らが独立して、またスピーカーづくりをはじめるかもしれない、
という情報も耳にした。期待している。