Archive for category BBCモニター

Date: 5月 1st, 2011
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(余談・続々K+Hのこと)

K+HのOL10は当時160万円(ペア)、O92は150万円(ペア)で、
ほとんど価格差はない、といっていい。
どちらも3ウェイのマルチアンプドライブで、
内蔵パワーアンプの型番はO92用がVF92、OL10用がVF10と異っているものの、
ステレオサウンドに掲載されている写真を見るかぎりは、同じもののような気がする。

ユニット構成は、というと、ウーファーは25cm口径のメタルコーンのウーファーを2発、
10cm口径の、やはりメタルコーン型をスコーカーに採用しているのはOL10、O92に共通で、
トゥイーターのみ、O92はドーム型、 OL10はホーン型となっている。

大きな違いはエンクロージュアにある。正面からみれば、どちらも密閉型のようだが、
O92はアクースティック・レゾネーター型と称したもので、
エンクロージュアの裏板を薄く振動しやすいようにしてあり、
中央に錘りをつけてモードをコントロールしてある。

ここが、O92とOL10の音の違いに、もっとも深く関係しているように、
瀬川先生の試聴記を読みなおすと、そう思えてくる。

O92の試聴記には、こうある。
     *
ただ曲に酔っては、中低域がいくぶんふくらんで、音をダブつかせる傾向がほんのわずかにある。とくに案・バートンの声がいくぶん老け気味に聴こえたり、クラリネットの低音が少々ふくらみすぎる傾向もあった。しかし総体にはたいへん信頼できる正確な音を再現するモニタースピーカーだと感じられた。
     *
完全密閉型のOL10に対しては、
O92に感じられた2〜3の不満がすっかり払拭されている、と書かれている。

O500CはO92の後継機だが、アクースティック・レゾネーター型ではない、バスレフ型だ。

Date: 5月 1st, 2011
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(余談・続K+Hのこと)

あきらめてはいても、ときどきふっと思い出すことはある。
先日、そういえばK+Hって、いまもあるんだろうか、と思い、検索してみると簡単に見つかった。
いまも活動している会社だった。

ステレオサウンドにはK+Hと表記してあったが、
正しくはクライン・ウント・フンメル(Klein und Hummel)社で、
いまはノイマン/ゼンハイザーの傘下、もしくは協力会社のようだ。

K+Hのサイトの”Historical Products”の項目をクリックすれば、この製品が表示される。
そこにあるのは、092ではO 92だった。0(ゼロ)ではなくO(オー)だった。

O92は1976年から1995年まで製造されていたことがわかる。
資料もダウンロードできる。
OL10は1974年から78年まで、わずか4年間だけの製造で、しかも資料がなにひとつない。
これは残念だったけれど、O92のところに”Follow-up model is O 111″という表記がある。
O111のところには”Follow-up model is O 121/TV”とあり、
O121/TVのところには”Follow-up model is O 500C”とある。

このO500Cが、現在のK+Hのモニタースピーカーのラインナップのトップモデルになる。
外観の写真を見ると、ジェネレック(Genelec)のスピーカーのOEMか、と思ってしまった。
1037Cにユニット構成も、スコーカーとトゥイーターのまわりに凹みをつけている処理も似ている。
バスレフポートの形状が違うくらいで、雰囲気はそっくりである。
しかも1037CもO500Cもパワーアンプ内蔵のアクティヴだ。
ここまではK+HのO92も同じである(ただしエンクロージュアはバスレフ型ではない)。

これで終りだったら、O500Cに惹かれない。
O500Cは”Digital Active Main Monitor”と表記してある。

Date: 5月 1st, 2011
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(余談・K+Hのこと)

若いオーディオマニアの方は、もうそうでもないのかもしれないけれど、
私ぐらいまでの世代だと、スタジオモニター、モニタースピーカーというものに、
いまでも反応してしまうところがある(少なくとも私はいまでもそう)。

モニタースピーカーで思い浮べるスピーカーシステムは、けっこうバラバラかもしれない。
まっさきにアルテックの銀箱をイメージする人もいれば、やっぱりJBLの4320、いや4350とか、
私のようにBBCモニターだったりするだろう。

1978年3月に出たステレオサウンド 46号は「世界のモニタースピーカー そのサウンド特質を探る」が特集だった。
ダイヤトーン、JBL、アルテックといった代表的なモニタースピーカーのブランドのなかにまじって、
K+HとUREIが、新顔として登場していた。
UREIのスピーカーシステムは、その後もステレオサウンドに何度か登場している。
K+Hはというと、46号とその次の号(47号・ベストバイの特集号)に登場したきりである。
輸入元は河村研究所だったこともあり、記憶されていない方のほうが多いように思う。

K+Hには2モデルあった。
OL10とO92である。

記憶のよい方だと、O92ではなくて、092だろ、と思われるはず。
ステレオサウンド 46号、47号には092となっている。
だから私もつい最近まで092だと思っていた。

OL10と092では、型番のつけかたに、なんら統一性がない、とは以前から感じていたけれど、
疑うことまではなかった。
それに私が聴きたかったのはOL10のほうだったこともある。

46号で、瀬川先生は、書かれている。
     *
私がもしいま急に録音をとるはめになったら、このOL10を、信頼のおけるモニターとして選ぶかもしれない。
     *
47号では、☆☆☆をつけたうえで、「ほとんど完璧に近いバランス」と書かれている。

OL10は、瀬川先生が、どういう音を求められていたのかを実際の音で知る上でも、
どうしても聴いておきたかったスピーカーシステムのひとつなのだが、
そういうスピーカーに限って、実物すらみることはなかった。おそらくこれから先もないだろう。

Date: 4月 29th, 2011
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その21)

少し話がずれてしまったが、無色透明であることがモニタースピーカーの条件ではない、ことはいえる。

1960年から70年にかけてスタジオモニターとして
各国のスタジオで使われることの多かったアルテックの604を収めたスピーカーシステムは、
誰が聴いても無色透明とは遠いところにいる音である。
イギリスの録音の現場で使われることの多かったタンノイにしても、その点は同じである。
音色としての個性は、どのスタジオモニターであれ、はっきりともっていた、といえる。

そういうスピーカーでモニタリングされながら、名盤と呼ばれるレコードはつくられてきた。

いまここでスタジオモニター、といっているスピーカーシステムは、
レコード会社の録音スタジオで使われるスピーカーのことである。

この項は「BBCモニター考」である。「スタジオモニター考」でも、「モニタースピーカー考」でもない。
これは日本だけのことなのかもしれないが、BBCモニター、とこう呼ばれている。

BBCはいうまでもなくイギリスの国営放送局で、BBCモニターはその現場で使われるスピーカーシステムのことで、
型番の頭には、LS、とつく。

ステレオサウンド 46号は、モニタースピーカーの特集号である。
この中で、岡先生が、当時の世界中のスタジオで使われているモニタースピーカーのブランドを数えあげられている。
資料として使われたのは、ビルボード誌が毎年発行している(いた?)
インターナショナル・ダイレクトリー・オブ・レコーディング・ステュディオスで、
この本は世界中の大多数の録音スタジオの規模、設備がかわるもの。

それによると、1975年当時、962のスタジオの使われていたスピーカーのブランドは次の通り。
 アルテック:324
 JBL:299
 タンノイ:91(うちロックウッドと明示してあるのが40)
 エレクトロボイス:60
 ウェストレーク:21
 KLH:17
 K+H:14
 カダック:13
 AR:12
これを国別でみると、イギリスとフランスで圧倒的に多く使われていたのはタンノイで、
イギリスではタンノイ:20/ロックウッド:18、フランスではタンノイ:1/ロックウッド:12。
西ドイツではK+Hとアルテックがともに同数(9)でトップ。

気づくのは、BBCモニターを作っているブランドがない、ということ。
もっとも岡先生があげられたブランドの合計は851だから、
のこり100ちょっとスピーカーシステムの中にはBBCモニターのブランドがはいっている可能性はあるが、
少なくともARの12よりも少ない数字であることは間違いない。

Date: 1月 1st, 2011
Cate: BBCモニター, PM510, Rogers, 瀬川冬樹

BBCモニター考(特別編)

昨年秋、また瀬川先生が書かれたメモとスケッチをいただいた。
その中に、BBCモニター、というよりもロジャースのPM510についてのメモがある。

1年前の今日も、瀬川先生のメモを公開した。
今年は、去年に比べるとずっと量は少ないが、このPM510についての「メモ」を公開する。
     *
◎どうしてもっと話題にならないのだろう、と、ふしぎに思う製品がある。最近の例でいえばPM510。
◎くいものや、その他にたとえたほうが色がつく
◎だが、これほど良いスピーカーは、JBLの♯4343みたいに、向う三軒両隣まで普及しない方が、PM510をほんとうに愛する人間には嬉しくもある。だから、このスピーカーの良さを、あんまりしられたくないという気持もある。

◎JBLの♯4345を借りて聴きはじめている。♯4343よりすごーく改良されている(その理由を長々と書く)けれど、そうしてまた2歩も3歩も完成に近づいたJBLを聴きふけってゆくにつれて、改めて、JBLでは(そしてアメリカのスピーカーでは)絶対に鳴らせない音味というものがあることを思い知らされる。
◎そこに思い至って、若さの中で改めて、Rogers PM510を、心から「欲しい」と思いはじめた。
◎いうまでもなく510の原形はLS5/8、その原形のLS5/1Aは持っている。宝ものとして大切に聴いている。それにもかかわらずPM510を「欲しい!!」と思わせるものは、一体、何か?

◎前歴が刻まれる!
     *
内容からして、なにかの原稿のためのメモであろう。
そして最後の1行の「前歴が刻まれる!」だけ、インクの色が違う。しばらくたってから書き足されている。

注意:若さの中で改めて、とあるが、「若」の字がくずしてあり、他の漢字の可能性も高いが、
ほかに読みようがなく、「若さ」とした。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その20)

耳の固有音に関係してくるのは、時代と風土も、無視できないだろう。

ほぼ同じだけのオーディオのキャリアもつ人がふたりいたとしても、生れた時代によって、
耳にしてきた音の性格も異る。

アクースティックな蓄音器の時代から、レコードの音を聴いてきた耳の固有音と、
ステレオ時代しか知らない世代の耳の固有音、
それからCD以降の音しか知らない世代が、これからキャリアをつんだときの耳の固有音、
これらは違って当然だろう。

1963年生れの私は、オーディオに関心をもつまでに、もっとも長く耳にしていたスピーカーの音は、
それはテレビに内蔵されているスピーカーの音であり、ラジオのスピーカーだった。
幼いころにあったテレビは、まだ真空管式だったはずだ。
スピーカーは、紙コーンのフルレンジ型。

テレビも音声多重放送がはじまると、フルレンジ型だけでなく2ウェイ構成のものも登場してきた。
ラジカセも、私が学生のころはフルレンジだけだったのが、いつのまにかマルチウェイ化されていった。

テレビ、ラジオといった身近なスピーカーの音も、時代によって変化している。
外に出ればわかるが、いま音楽を聴くのは、
スピーカーよりもヘッドフォン、イヤフォンが多いという人も増えている。

キャリア(時間)が同じだとしても、
ステレオサウンドの「スーパーマニア」に登場した人たちと同じ構成の装置を、
これからの人たちの耳が選択するとは思えない。

これはどちらがレベルが高いとか、センスがいいとか、そういったことではなく、
生まれ育った時代による耳の固有音の形成され方の違いということでしかない。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その19)

耳の固有音について考えると、もちろん個人差があるし、同じひとりの人間でも、
それまでの体験の蓄積によって、耳も成長し、耳がもつ固有音も変化していくのだろう。

ステレオサウンドの50号ごろからはじまった「スーパーマニア」の連載の初期のころに登場された方々が、
なぜ真空管アンプ(それもシングルアンプが多かったように記憶している)で、
高能率のスピーカーを鳴らされていることに、つよい関心があった。

そういった方々の多くの人は、そうとうな遍歴を経た上で、誌面に登場されたときの装置を選択されている。

そのとき、まだ10代なかばだった私は、関心をもちながらも、その理由についてはまったく想像できなかった。
けれど、耳の固有音の形成如何によっては、それまでどういう音を聴いていたかによっては、
高能率スピーカーと真空管のシングルアンプの組合せが、無色透明とはいかないまでも、
意外にも、それほどつよい個性を感じさせずに、自然と音楽が響いてくる音なのかしれないと、
ここ数年思うようになってきた。

これが歳を重ねるということなのだろう。

Date: 7月 12th, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その18)

では、いま現在、無色透明な音は存在し得ないのか。

そんなことはないと思う。
スピーカーひとつひとつに固有音がある。アンプやその他のオーディオ機器に固有音がある。
もちろんレコード(録音)にもあるし、アンプやスピーカーを構成するパーツや素材にも、固有音は存在する。

固有音が存在しないものは、いまのところ世の中にはない。
そう、聴き手であるわれわれにも、固有音があるのではなかろうか。
だから、同じ部屋で同じ音を、同時に聴いて、音の評価が大きく異なることがすくなくないのも、
そのことが関係しているのかもしれない。

個々人の耳に、それぞれ固有音があるとしたら、あるとき、ある瞬間だけ、
固有音すべてが相互に関係し合い、打ち消し、補整することで、無色透明の音は存在し得ないとはいえない。

すべて人にとって共通の無色透明は音は、いまのところない。
あるひとにとって、未来永劫、無色透明な音もない。
けれど、すべての条件が、たまたまうまく絡み合ったときに、起き得ないと、だれが言えるのだろうか。

Date: 7月 12th, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その17)

ずっと以前は、モニタースピーカー・イコール・アラ探しのためのスピーカーと捉えられていたようだ。

いま、そういう捉え方をする人は、ほとんどいないだろうし、そういうスタジオモニターも、
ほとんどないといってもいいだろう。

ならば、モニタースピーカーの定義とは、何なのだろうか。
はっきりした定義は、いまだないように思う。

なんとなく、これはモニタースピーカー、あれは家庭用スピーカーだな、と個々人が、
勝手に、そこに境界線を引いているという、あいまいさが残ったままなのか。

どんなスピーカーにも、かならず、そのスピーカーならではの固有音がある。
固有音、つまり個性・癖がまったく存在しないスピーカーこそ、無色透明のスピーカーとなるわけだが、
いまのところも、これからもさきも、少なくともあと10年、20年ぐらいで、
「スピーカーの音」というものがなくなるとは思えない。

いまのスピーカーの原理であるかぎり、パワーアンプから送られてくる電気信号の、
ほんのわずか数%しか音に変換できない。のこりは熱となって消費されているわけだ。

これが70%以上、そんなにいかなくてもいいかもしれない。
50%程度でも音に変換できるようになれば、スピーカーの音というものは、ずいぶん大きく変容することだろう。

さらに80から90%ほど音に変換できるようになれば、ほとんど変換ロスがなくなってくれば、
スピーカーの音は、かぎりなく無色透明になっていくのであろうか。

Date: 7月 12th, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その16)

1990年前後から日本の録音スタジオにモニタースピーカーとして導入され、
知名度を急激に上げていったスピーカーがある。

絶賛する声も、現場では多かった反面、
「このスピーカーでは仕事(モニタリング)ができない」という声もあったときいている。

このスピーカーと、たとえば誰も絶賛しないけれど、誰も「使えない」と全面否定もしない、
いわば可も不可もなく、といったモニタースピーカーがあったとして、
さて、どちらがモニタースピーカーとして優れているのか、
あえて点数をつけるとすれば、どちらが高い点数を獲得するのか。
そんなことを考えてみたくなる。

前者のスピーカーには、ひじょうに高い点をつける人もいれば、
まったく点を与えない人もいるだろう。そうすると平均点はそれほど高くならない。

後者のスピーカーはどうか。高い点は得られないだろう。でも極端に低い点をつける人もいないだろう。
となると平均点は、前者のスピーカーと対して変わらない、ということになるかもしれない。

つまりこのふたつのモニタースピーカーは、ほぼ互角かというと、決してそんなことはなく、
ここがスピーカーの選択・評価の、微妙なところであり、面白さであろう。

Date: 7月 12th, 2009
Cate: BBCモニター, JBL, Studio Monitor

BBCモニター考(その15)

JBLの4343もモニタースピーカーだし、ロジャースのLS3/5AもLS5/8も、やはりモニタースピーカーである。

モニタースピーカーとはいったいどういう性格の、性能のスピーカーのことをいうのだろうか。
コンシューマー用スピーカーとの本質的な違いは、あきらかなものとして存在するのであろうか。

たとえばヤマハのNS1000Mの型番末尾の「M」はMonitorの頭文字である。
だからといって、NS1000Mが、モニタースピーカーとして企画され、開発製造されていたとは思わない。
あきらかにコンシューマー用スピーカーなのだが、1970年代、スウェーデンの国営放送局が、
このスピーカーをモニタースピーカーとして正式に採用している。
そうなると、単なる型番の名称ではなく、「モニタースピーカー」と堂々と名乗れる。

QUADのESLも、純然たる家庭用スピーカーの代表機種にもかかわらず、
レコーディングのスタジオモニターとして採用されていたこともある。

スタジオモニターといえば、大きな音での再生がまず絶対条件のように思われている方もおられるかもしれないが、
モニタリング時の音量は、アメリカ、日本にくらべるとイギリス、ドイツなどは、かなり低めの音量で、
一般家庭で聴かれているような音量とほとんど変らないという。

だから、ESLでも、多少の制約は、おそらくあっただろうが、
もしくはESLで、なんら制約も感じないほどの音量がイギリスでのモニタリング時の一般的な音量なのだろう。
とにかくESLは、十分モニターとしての役割を果していた。

Date: 5月 31st, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その14)

105.2ほどではないにせよ、BBCモニター系列のスピーカーは、
左右でシリアルナンバーの揃っているモノ、続き番号のモノが出荷され、ユーザーの手もとに届く。

4343までのJBLとは、ここが違う。

モニタースピーカーという、同じ枠の言葉で括られてしまうのがおかしいほどに、
JBLのスタジオモニター・シリーズとBBCモニタースピーカーは、違いが多々ある。
JBLの場合、スタジオモニターという名が付くスピーカーだけに、これらを使う者は、
プロもしくはそれに準ずるレベルをもつ人であり、相応のシステムを装備していることを前提としていると思える。

スタジオには多素子のグラフィックイコライザーもあれば、スペクトラムアナライザーもあろう。
だからスピーカー側にも、連続可変のレベルコントロールをウーファー以外のユニットすべてにつけて、
細かく調整可能にしておけばいいと考えではなかったのか。

そうしておけば、少々のバラツキは、使い手側で、ほぼ完全に補正できるからだ。
作っている側もプロなら使う側もプロ、そういう前提を無視して、
あまりにも4343までの、JBLの一連のスタジオモニターについて語りすぎていたのではなかろうか。

そうして4343への誤解が生まれていった。

Date: 5月 31st, 2009
Cate: 105, BBCモニター, KEF

BBCモニター考(その13)

現代スピーカー考(その11)の補足でもあるが、
クックは「105はフェイズリニアのスピーカーではない」といい、リニアフェイズスピーカーというのは、
再生周波数帯域内の位相特性が水平で一直線のことであり、技術的には不可能なこととも言っている。

「日本でリニアフェイズとされて売られているスピーカー」──テクニクスのスピーカーのことである──は、
クックによると、そのスピーカーの再生周波数帯域においてリニアフェイズではなく、
ある特定の帯域のみリニアフェイズだということらしい。
600〜6000Hzくらいの帯域でのみリニアフェイズを実現している、とのこと。

一方105はというと、位相特性のグラフの線は低域から高域にいくに従って下がっていくが、
再生周波数帯域内ではカーブを描いたり、段差がついたりせず、直線だということだ。

水平ではないが、帯域内では直線の位相特性の105、
600〜6000Hz内ではほぼ水平の位相特性だが、
600Hz以下では上昇カーブ、6000Hz以上では下降カーブを描くテクニクスのスピーカー、
どちらがステレオ用スピーカーとして、聴感上優位かといえば、個人的には前者だと考える。
もっとも位相特性をほとんど考慮していない設計のスピーカーでは、帯域内で急激な位相変化を起こすものもある。

クックは、さらに大切なこととして、「軸上だけでなく、軸上からはずれたところでも聴いて、
そのよしあしを判断すべき」であり、「スピーカーの周りをグルッと回って聴くことも必要」だと語っている。
しかも耳の高さもいろいろ変えてみると面白いとつけ加えている。

クックがステレオ用としてのスピーカーのありかたを意識していることが、
ここに伺えるような気がして、ひじょうに興味深い。

Date: 5月 31st, 2009
Cate: 105, BBCモニター, KEF

BBCモニター考(その12)

レイモンド・クック(Raymond E. Cooke)はステレオサウンド「コンポーネントの世界’78」のインタビューで、
これからのスピーカーはコヒーレントフェイズ(Coherent Phase)、
もしくはフェイズリニアになっていく必要がある、と答えている。

それは、やはりステレオ再生用スピーカーとして求められる条件だと、クックは考えていたのだろう。
モノーラル再生で優れた音を再現してくれるスピーカーが、
必ずしもステレオ用として優れているかどうかは断言できない。

モノーラル時代のスピーカーには求められなかったこと、
ステレオ時代のスピーカーに求められることは、左右のスピーカーがまったく同一であることも含まれる。

インライン配置の左右同一か左右対称のユニットレイアウトだけでなく、測定できるすべての項目において、
バラツキがひじょうに少ないこともあげられよう。
位相特性も重要なことだが、フェイズリニアが論文として発表されているのは、
クックによると、1936年のことらしい。モノーラル時代のことだ。
発表したのは、ジョン・ヘリアーという人で、ベル研究所の人物らしい。

コヒーレントフェイズは、クックとKEFの技術重役フィンチャムが、1976年9月、
東京で講演したのが最初だという。
そしてフェイズリニアのスピーカーとして最初に市販されたのは、
QUADのESLで、1954年のことだ、とクックは語っている。

1954年、やはりモノーラル時代のことである。

Date: 5月 31st, 2009
Cate: 105, BBCモニター, KEF

BBCモニター考(その11)

KEFの105は、製造ラインをコンピュータ管理していること、
振動板の素材にバラツキの少ない高分子系のモノをつかっていることなどから、
もともと品質・特性のバラツキは少ないスピーカーであったが、
105.2になり、さらにバラツキは少なくなり、KEFの研究所にある標準原器との差は、
全データにおいて1dB以内におさめられているモノのみ出荷していた。

JBLの4344、4343からすると、このバラツキのなさ(少なさというよりもなさと言ってもいいだろう)は、
KEFという会社のスピーカーづくりのポリシー、
そして中心人物だったレイモンド・E・クックの学者肌の気質が結実したものだろう。

出荷の選別基準を1dB以内まで高めたことは、製造時のバラツキの少なさの自信の現われでもあろう。
バラツキの大きいものが作られれば、その分、廃棄されるものも増え、製造コストは増していくばかりだ。

バラツキの少ない素材の選定から製造ラインの徹底した管理などともに、
バラツキを抑える有効な手段といえるのが、ネットワークの高次化ではなかろうか。

特性を揃えるということは、できるだけユニットをピストニックモーションの良好な帯域のみで使い、
分割共振が増してくる帯域はできるだけ抑えることでもある。
コントロールがきかなくなりつつある分割共振の帯域が、レベル的に高いままユニットから出ていては、
スピーカーシステム・トータルの特性もバラついてくる。

もちろんバラツキをなくすためだけに高次ネットワークを採用したわけではなかろう。
それでも高次ネットワークと出荷選定基準の引き上げは、決して無関係ではないと考えられる。