BBCモニター考(その21)
少し話がずれてしまったが、無色透明であることがモニタースピーカーの条件ではない、ことはいえる。
1960年から70年にかけてスタジオモニターとして
各国のスタジオで使われることの多かったアルテックの604を収めたスピーカーシステムは、
誰が聴いても無色透明とは遠いところにいる音である。
イギリスの録音の現場で使われることの多かったタンノイにしても、その点は同じである。
音色としての個性は、どのスタジオモニターであれ、はっきりともっていた、といえる。
そういうスピーカーでモニタリングされながら、名盤と呼ばれるレコードはつくられてきた。
いまここでスタジオモニター、といっているスピーカーシステムは、
レコード会社の録音スタジオで使われるスピーカーのことである。
この項は「BBCモニター考」である。「スタジオモニター考」でも、「モニタースピーカー考」でもない。
これは日本だけのことなのかもしれないが、BBCモニター、とこう呼ばれている。
BBCはいうまでもなくイギリスの国営放送局で、BBCモニターはその現場で使われるスピーカーシステムのことで、
型番の頭には、LS、とつく。
ステレオサウンド 46号は、モニタースピーカーの特集号である。
この中で、岡先生が、当時の世界中のスタジオで使われているモニタースピーカーのブランドを数えあげられている。
資料として使われたのは、ビルボード誌が毎年発行している(いた?)
インターナショナル・ダイレクトリー・オブ・レコーディング・ステュディオスで、
この本は世界中の大多数の録音スタジオの規模、設備がかわるもの。
それによると、1975年当時、962のスタジオの使われていたスピーカーのブランドは次の通り。
アルテック:324
JBL:299
タンノイ:91(うちロックウッドと明示してあるのが40)
エレクトロボイス:60
ウェストレーク:21
KLH:17
K+H:14
カダック:13
AR:12
これを国別でみると、イギリスとフランスで圧倒的に多く使われていたのはタンノイで、
イギリスではタンノイ:20/ロックウッド:18、フランスではタンノイ:1/ロックウッド:12。
西ドイツではK+Hとアルテックがともに同数(9)でトップ。
気づくのは、BBCモニターを作っているブランドがない、ということ。
もっとも岡先生があげられたブランドの合計は851だから、
のこり100ちょっとスピーカーシステムの中にはBBCモニターのブランドがはいっている可能性はあるが、
少なくともARの12よりも少ない数字であることは間違いない。