トランスからみるオーディオ(その18)
理屈はともかくとして、聴感的・感覚的には周波数特性をひろげると、
つまりワイドレンジにすれば、音の密度が全体に薄まってしまうことが多い。
実際には音の密度が、ワイドレンジにすることで薄まるとは考えられない。
それでも人間という聴き手にとっては、音の密度が薄まる。
このためもあって、いまでも昔のナロウレンジのスピーカーシステムを高く評価する人がいる。
とはいえ、ワイドレンジが間違っているわけではない。
ほんとうにみずみずしい音を出すには、やはりワイドレンジでなければならないし、
ナロウレンジが得意とすると一般には思われているやわらかい音に関しても、
ほんとうのワイドレンジでなければ、
倍音が豊かにきちんと再生されたうえでの、ほんとうのやわらかい音は、まず出ない、ともいえる。
それにしても、なぜナロウレンジでの密度の高い音は、ワイドレンジでは得にくいのだろうか。
たとえばワイドレンジと呼ばれている音、
しかも密度の薄いと感じられる音を、意識的に帯域を狭くしてみる。
たとえば抵抗とコンデンサーでローパスフィルターとハイパスフィルターを形成し、
周波数帯域を適度なところでカットしてみたところで、音の密度が高くなることはない。
密度の薄いままナロウレンジになり、
ナロウレンジの良さのない、ただナロウレンジなだけの音になってしまうことが多い。