トランスからみるオーディオ(その12)
しっかり巻いていくには適度なテンションが必要となる。
細い線よりも太い線ほどテンションは高くなっていくもの。
けれど思うには、理想的な巻線とは、テンションをまったくかけずに、
つまり線材にストレスをかけずにしっかりと巻くことではないのか。
そんなことはいままでは無理だった。
しっかりと巻くにはテンションをかけていかなければならないし、
テンションをかけなければ巻線と巻線の間に隙間ができたりして、しっかりと巻けない。
けれど3Dプリント技術が、これから先、進歩していくことで、
トランスをアウトプットできるようになれば、
この矛盾する巻き方、テンションをかけずにしっかりと巻くが、可能になるように思えてならない。
従来のトランスと同じ設計・構造でも、これが実現できれば、
トランスの音はずいぶんと変っていくはずだ。
さらにいくつもの可能性も考えられる。
タンゴ・トランスがもうすこしでなくなってしまう。
つまりトランスの職人が、これから先減っていくばかりで増えていくことはない、ということである。
それでもいいじゃないか、トランスなんて前世紀の遺物なんて、
いまのオーディオに必要ない──、
そんなことをためらいもなく口にする者もいる。