Archive for category JBL

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その22)

ダイヤトーンのDS505は見た目からして、
アラミドハニカムの振動板をウーファーとミッドバスに採用したとで、
それまで紙コーンが黒色に対して、山吹色といったらいいか、色合いからして、それまでと異る。
ミッドハイ、トゥイーターのドーム型も振動板とボイスコイルボビンを一体化したDUD構造とするなど、
いわばダイヤトーンとしての新世代のスタートを切るスピーカーでもあった。

それをブックシェルフ型で、価格も38万円(ペア)というところで出してきて、
市場の反応を見るというのが、日本のメーカーらしいといえよう。

DS505の音だが、実は一度も聴いたことがない。なかなか聴く機会がないまま、
ステレオサウンドで働くことになり、しばらくしたらDS5000が登場してきた。

ダイヤトーン新世代スピーカーの頂点にあたるモデルとして開発されたDS5000が、
ステレオサウンド試聴室に搬入されたとき、
ダイヤトーンの技術者が「4343が置いてあった場所にそのまま置けます」と言ったのをはっきりと憶えている。

4343の横幅は63.5cm、DS5000の横幅も63.5cmは同じで、
4343からの買い替えを狙って、この横幅に決定した、とのことだった。
奥行きは、4343が43.5cm、DS5000が46cmとすこしだけ大きいが、
4343はサランネット装着すると、奥行きは46cmくらいになる。
高さは、4343が105.1cm、DS5000が105cmと、徹底して4343を意識した寸法となっている。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その21)

スレッショルドの800Aは、1976年当時、118万円だった。
価格的に4343とほぼ同じだが、まったく無名の新興ブランドということもあってか、
実物を見たこともないという人も少なくない。

けれど、800Aが、国産ブランドのアンプの技術者に与えた影響は、4343のそれと匹敵するかもしれない。
800Aの登場以降、国産アンプの謳い文句に「Aクラス」の文字が増えている。
思いつくまま挙げれば、テクニクスのクラスA+(SE-A1に採用されている)と
ニュークラスA(SE-A3などプリメインアンプにも採用)、
ビクターのスーパーAクラス、デンオンのリアルバイアスサーキットによるAクラス、
Lo-DのノンカットオフA動作、などがある。

800Aも登場したばかりのころは、正確な情報がなかったため、純Aクラス・アンプのように思われたが、
実際は基本動作はABクラスで、出力が増えてBクラス動作に移行したとき、
通常ならば発生するスイッチング歪、クロスオーバー歪を、
特殊なバイアス回路の採用で発生そのものを抑えている。

これに刺激されて、各社から、独自のノンスイッチングアンプが登場したわけだ。
このとき、ステレオサウンドは、国産メーカー各社のアンプ技術者にアンケート調査を行なっている。
自社の技術の特徴と、他社の同様の技術の違いについて回答させたものをまとめた記事で、
技術者が自社製品の技術について語るだけとは異り、ひじょうに興味深い内容だった。

無線と実験やラジオ技術誌がやらなかった記事を、
ステレオサウンドがわかりやすく、しかもつっこんだ内容で、まとめてくれていた。

同様のアンケートを、4ウェイ・スピーカーを発表したメーカーの技術者に対して行なってくれていたら、と思う。
4343をどう捉えていたのかが、はっきりとわかり、ひじょうに面白い記事になったはずだ。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その20)

4343でコヒーレントフェイズを実現するのは相当に困難なことだが、
4ウェイ・スピーカーでコヒーレンスフェイズに近づける、ということになれば、
ホーン型ユニットを使わずに、
ダイレクトラジエーター(ドーム型、コーン型、リボン型など)のユニットで構成すれば、
それぞれのユニットの音源の位置関係のズレは、かなり小さいものとなる。

4343を意識した4ウェイ・スピーカーが、国産ブランドからいくつも登場した。
それらのスピーカーを見ていくことは、それぞれのブランドのスピーカー技術者が、
4343をどう捉えていたのか──長所はどこで、そして欠点はどこなのか、を間接的に知ることといえよう。

1976年、高効率Aクラス・アンプを謳い、
Aクラスで100Wの出力を可能としたスレッショルドのパワーアンプ、800Aが登場した。
当時のAクラス・アンプといえば、パイオニア/エクスクルーシヴのM4が代表的製品で、
出力は50W+50Wだった。空冷ファンを備えていたが、発熱量はかなりのものだった。

それが同じステレオ機で、出力が4倍の200W+200W。800Aもファンによる冷却だが、
発熱量はM4の4倍の出力をもつアンプとは思えないほど少なく、
筐体がカチンカチンに熱くなるということはなかった。

800Aは、二段構えの電源スイッチで、通常はスタンバイスイッチを入れっぱなしにしておき、
使用時にオペレートスイッチをいれるという仕組みで、
冷却ファンも風量を2段階で切り換え可能にするなど、家庭で使うことを配慮した、
アメリカのハイパワーアンプとは思えない面ももっていた。

800Aはそれほど日本には入荷していないそうだが、
私がよく通っていた熊本のオーディオ店には、800Aがなぜか置いてあり、音を聴く機会にもめぐまれた。

800AかSAEのMark2500か──、LNP2Lに組み合せるパワーアンプはどちらかよいか、
買えもしないのに、そんなことを迷っていたりした。

800Aはいいアンプだと思っていた。
おそらく、いま聴いてもなかなかのアンプのように思う。
当時のアメリカのアンプとは思えないような、清楚な印象の音は新鮮だったし、
しかも秘めた底力も持ち合わせている、どこか、そんな凄みがあった。

「800A、いいなぁ」、と思っていたところに、
五味先生が、ステレオサウンドで再開されたオーディオ巡礼の一回目に、
「スレッショールド800がトランジスターアンプにはめずらしく、
オートグラフと相性のいいことは以前拙宅で試みて知っていた」と書かれていたので、
ますます800Aの印象は、私の中でふくらんでいった時期がある。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その19)

JBLの4343と同時代のスピーカーのなかには、ユニットの位置合わせにはじまり、
ネットワークの位相特性にまで配慮した、いわゆるリニアフェイズ、
KEFの言葉を借りればコヒーレントフェイズ指向のスピーカーが登場している。

KEFの#105がそうだし、UREIの813は、特許取得のタイムアライメント・ネットワークで、
同軸型ユニットのメリットを最大限に引き出そうとしていた。

それらのスピーカーと見比べると、4343のユニット配置は、コヒーレントフェイズの観点からは、
考慮されているようには思えない。

瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ妄想・空想していた私は、
4343でコヒーレンとフェイズを実現するには、どういうユニット配置にしたらいいのか、
そんなことも考えていた。

高校生が考えつくことは、やはり限られていて、
思いついたものといえば、ウーファーとミッドバスの前面にフロントショートホーンを設けることだった。

UREIの813のネットワークに関する技術的な資料が、当時あれば、
ネットワークによる補正も考えられるのだが、インターネットなどない時代だから、無理である。

となると、フロントショートホーンということになるのだが、
これを4343のスタイルを崩さずにうまくまとめることは、不可能といってもいいだろう。

スケッチという名の落書きを何枚も描いてみたけど、4343のようにカッコよくは、どうしてもならない。
それに、ホーンがついた分、どうしてもサイズが大きくなる。
4343のスマートさとは、正反対のモノになってしまう。

1976年発表の4343を、21世紀のいま、メインスピーカーとして使うために、どうしたらいいのか。
そのためには、4343というスピーカーについて、とことん知る必要がある。
それが、4343を4343足らしめている要素をいっさい損なうことなく、につながる。

4343を現代スピーカーとして甦らせることについては、いずれまとめて書きたいと思っている。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その18)

JBLの4343に憧れていて、瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ空想・妄想していた時期に、
ダイヤトーンのDS505は登場したから、個人的な衝撃は、意外なほどあった。

38cm口径のウーファーをベースとするならば、4ウェイ・スピーカーはかなり大型となるが、
30cm口径ならば、ミッドバスも大きくて16cm、10cm口径のフルレンジ一発でもいける、
うまくすれば、ブックシェルフ型の4ウェイもできるんじゃないか、そんなことも考えたことがあっただけに、
DS505は、アラミドハニカム振動板の特有の色とともに、
当時、高校生だった私には、現実的な4ウェイ・スピーカーであった。

クロスオーバー周波数の、500、1500、5000Hzからも、
3ウェイ・プラス・スーパートゥイーターという構成ではなく、
本格的な4ウェイ・スピーカーとして開発されていることがうかがえる。
ウーファーとミッドバスが小口径になった分、クロスオーバー周波数も高くなり、コイルの値も小さくなる。
このことも、当時、現実的と受けとめたことのひとつでもある。

ステレオサウンドの新製品の記事は、井上先生が書かれていた。
カラーページだった、その記事を何度もくり返し読んだ。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その17)

瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想は、フルレンジから始めるか、
2ウェイから、なのかによって、ユニットの選択肢が変わってくる。

2ウェイからはじめるのであれば、タンノイやアルテックの同軸型ユニットも候補となる。
タンノイだと25cm口径のモノ、当時だとHPD295Aだ。
アルテックだと……、残念ながら30cm口径の605Bもラインナップから消えていたし、
25cm口径の同軸型は最初から存在しない。

もっとも6041の例があるから、システム全体は大型化するものの、604-8G (8H)からのスタートもあり、だろう。

もっとも、この場合、タンノイにしてもアルテックにしても、
同軸型のトゥイーターは最終的には、ミッドハイとなる。

こんなふうに、当時はHiFi Setero Guide を眺めながら、いろんなプランを、私なりに考えていた、
というよりも妄想していた。

スピーカーシステムというように、ひとつのパーツから成り立っているわけでなく、
いくつかのユニットとエンクロージュア、ネットワークなどの、「組合せ」である。

アナログディスク、CDのプレーヤー、アンプ、
スピーカーシステムの組合せからオーディオが成り立っているのと同じように、
スピーカーシステムもアンプそれぞれも、すべて組合せである。

アンプは、増幅素子(真空管やトランジスター、ICなど)、コンデンサー、抵抗などの組合せから成り立っているし、
回路構成にしても、ひとつの組合せである。

さらに言うならば、スピーカーユニットにしても、振動板、エッジやダンパー、
マグネットを含む磁気回路、フレームなどからの組合せである。

オーディオに求められるセンスのひとつは、この「組合せ」に対するものではないだろうか。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その16)

瀬川先生の4ウェイ・スピーカーの構想で、ウーファーを加えた時点でマルチアンプ駆動にするのは、
ウーファーに直列に入るコイルの悪影響を嫌ってのことである。

同時に、同じブランドのユニットでシステムを構成するのではなく、
ブランドもインピーダンスも能率も大きく異る点も含まれる混成システムでは、
マルチアンプにしたほうが、ネットワークの設計・組立てよりも、ある面、労力が少なくてすむ。
もちろん多少出費は、どうしても増えてしまうけれども。

出発点だったフルレンジ用にミッドバス用のキャビネットを用意すれば、エンクロージュアの無駄も出ない。

最後に、ミッドハイを加えて、4ウェイ・システムが組み上がる。

もちろんステップを踏まずに一気に4ウェイに取り組んでもいいし、
最初は2ウェイで始めてもいいだろう。

とはいえ、最初にフルレンジだけの、つまりネットワークを通さない音を聴いておくことが、
この瀬川先生の4ウェイ構想の大事なところだと、記事を読んで10年後くらいに気がついた。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その15)

ネットワークにおけるコイルの、音質に与える影響は、
クロスオーバー周波数が下がれば下がるほどコイルの値も大きくなり、それに比例していく。
直流抵抗値も増えていく。

コイルの値は、スピーカーのインピーダンスと関係し、インピーダンスが低くなれば、
同じクロスオーバー周波数でも、小さい値ですむ。

いまでこそパワーアンプの安定度が高くなったため、4Ωのスピーカーがかなり増えているが、
4343の時代(1976年から80年にかけて)は、スピーカーのインピーダンスといえば8Ωであったし、
4Ωのものは、極端に少なかった。

現代の4343といえる4348のウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は、
4343と同じ300Hzだが、インピーダンスは6Ωと、すこし低くなっている。

4348の弟機にあたり、4348と同じウーファー1500FEを搭載している4338は、
ミッドレンジとのクロスオーバー周波数が700Hzと高めになっているため、
システムとしてのインピーダンスは8Ωだ。

4343が6Ωだとしたら、コイルの値も小さくなり、
4343の評価もかなり違ったものになっていた可能性もあるように思う。

4343登場と相前後して、アメリカのパワーアンプは、SAEのMark2500、GASのAmpzilla、
マランツのModel 510M、マークレビンソンのML2Lなどが登場しているから、
6Ωとして設計されていたとしても、アンプの選択に困ることはなかっただろう。

Date: 12月 29th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その14)

コイルの性質には、いくつかある。

まず挙げたいのがレンツの法則と呼ばれているもので、コイルは、電流の変化を安定化する働きをもつ。
それまで無信号状態のところに信号が流れようとすると、それを流させまいと働くし、
反対に信号が流れていて、信号がなくなる、もしくは減ろうとすると、流しつづけようとする。
この現象は、中学か高校の授業で習っているはず。

このとき何が起こっているかというと、コイルからパルスが発生している。
このパルスは、ある種のノイズでもあり、他のパーツに影響をあたえる。

2つ目の性質は、相互誘導作用。
2つ以上のコイルが近距離にある場合、ひとつのコイルに流れる電力が他のコイルにも伝わる。
この性質を利用したものが、トランスだ。

3つ目は、共振。
コンデンサーと組み合せることで、電気的な共振がおこり、
ある周波数でインピーダンスが下がったり上がったりして、
電流が流れやすくなったり流れにくくなったりする。

コイルの性質とは言えないが、共振には機械的な共振もある。
音声信号が流れれば、少なからず振動する。

真空管アンプ全盛時代はそうでもなかったが、トランジスターアンプに移行してからは、
コイルの使用は、アンプでは敬遠されがちである。

やっかいな性質をもっているのは確かだが、コンデンサー型やリボン型などをのぞくと、
ほとんどのスピーカーの動作はコイルによって成り立っているのも忘れてはならない。

Date: 12月 23rd, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その13)

コイルが、どう音に影響をあたえるのか。
両端にコイルが巻きつけてあるRCAケーブルがあれば、それを容易に確認できる。

高額な、最近の、アクセサリーという範疇を超えつつあるケーブルには、
よもや、こんなものはついていないだろうが、
以前は、意外に、ついているモノが多かった。
SMEのトーンアームに付属するケーブルにも、このコイルが巻きつけてあった。

RCAプラグの金属のエッジがケーブルの外被にあたり、ひどいときには断線にもつながるため、
ケーブル保護のためについていた。

SMEの場合、このコイルは鉄製(磁性体)でだった。つまりコイルであり、バネでもあったわけだ。

このコイルに、布製の粘着テープもしくはアセテートテープを一巻き貼るだけでも、
もちろん音は変化する。
さらにこのコイルを、少々苦労するが取り外してみる。

ステレオサウンドのアナログプレーヤーは、私が入社したころは、
パイオニア/エクスクルーシヴのP3だったが、
マイクロのSX8000IIの発表とともに、SMEの3012-R Proとの組合せに変わった。
トーンアームケーブルは、付属の銀線をそのまま使用していた。
つまり両端のコイルもそのままの状態で使っていたわけだ。

あるとき、井上先生から、
「ちょっとめんどうだけど、そのコイルをはずしてみろ」と言われた。
左右両チャンネル、ケーブルの両端にあるので、計4つのコイルをはずす。

面倒な作業だったことは、確かだ。
やっている最中は、「もうやりたくないな、こんな作業は」、と思っていたのに、
その音を聴くと、またやろうと思っていたし、実際、三度やっていた。
そのくらいの十分過ぎる変化だった。

Date: 12月 22nd, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その12)

トゥイーターを追加した次のステップは、ウーファーの選択、追加、そしてマルチアンプ化である。
3ウェイにスーパートゥイーターを追加した4ウェイと、
ミッドバス専用ユニット搭載の4ウェイの大きな違いは、ウーファーのカットオフ周波数にある。

4343の、ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は300Hz、
3ウェイ・プラス・スーパートゥイーターの4ウェイだと、
ウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は低くても500Hzより上、600だったり800Hzだったりする。

4333A(3ウェイ)の、ウーファーのカットオフ周波数は800Hzだ。
4350Aは、250Hzに設定されている。

どれも同じウーファー(2231A)なのに、3ウェイか4ウェイかで違うし、
4ウェイでもネットワークなのかバイアンプ駆動なのか、で異ってくる。

ウーファーのカットオフ周波数を低くしたとき、
ネットワークのコイルの値が大きくなることが問題となってくる。

4343では5.4mHのコイルが、ウーファーに対して直列にはいる。

空心コイルの場合、5.4mHのコイルに使用する線材の長さは、
コイルの内径、厚みによって多少変動するが、60m前後必要となり、
直流抵抗値は、線径が18AWG(1.02mm)だと、おおよそ1Ω、
すこし太い16AWG(1.29mm)で0.7Ω、14AWG(1.63mm)で0.5Ω弱となる。

鉄芯入りだともうすこしワイヤー長が短くできるが、今度は磁気歪みの問題がかわりに出てくる。

Date: 12月 21st, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その11)

瀬川先生の4ウェイ自作スピーカー計画は、次にトゥイーターを足して2ウェイにする。
トゥイーターもいくつか候補を挙げられていた。
JBLの2405、075、KEFのT27、フィリップスのソフトドームなど、いろいろだ。

フルレンジユニットで、LE8Tにした人ならば、2405を選ぶだろう。
2405とLE8Tの能率の違いは、意外に大きい。
通常なら、2405にアッテネーターをかましてLE8Tとの音圧を調整するわけだが、
2405にコンデンサー(もちろん良質のものに限る)を1個だけ直列に接ぎ、
いちばん簡単なローカットフィルターをつくる。レベルコントロールは挿入しない。
2405の推奨クロスオーバー周波数は7kHz以上だから、8kHzから10kHzあたりでローカットするのが通常だが、
コンデンサー1個で、しかも能率差が大きいときは、あえて20kHz以上に設定する。
コンデンサーの容量は、けっこう小さいな値になる。

-6db/oct.というゆるやかなカーブでも、カットオフ周波数が高いおかげで、2405でも問題なく使える。
このテクニックについては、「HIGH TECHNIC SERIES」のvol.1に、瀬川先生が書かれている。

Date: 12月 20th, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その10)

瀬川先生の、4ウェイの自作スピーカー計画の記事のオリジナルは、かなり以前に発表されたもので、
私が読んだのは、「HIGH TECHNIC SERIES」のvol.1のマルチアンプ特集のなかで再度ふれられていたもの。

フルレンジユニットを鳴らすことから始まるこの計画は、ステップを踏んで、
2ウェイ、3ウェイとすすみ、最後にマルチアンプ化とともに4ウェイとなるものだ。

フルレンジは、ヴォーカルの再現性に優れるものが多い、20cm口径前後のものを選択する。JBLのLE8T、
アルテックの755E、フィリップスのユニット、ダイヤトーンのP610、
2発使用を前提にジョーダンワッツのモジュールユニットなどをあげられている。

これらのユニットを、最終段階でウーファーを収める、要するに大型のエンクロージュアに取りつけるわけだ。

このフルレンジユニットは、最終的に、4ウェイに発展時にはミッドバスユニットにあたるわけだ。
だからといって、ミッドバスのバックキャビティの内容積(4343だと約14ℓ)だと、
最初の音が貧弱になることもある。
中途半端な大きさのエンクロージュアをつくると、無駄になることもある。
それらのことをふまえて、
横置きの、フロントバッフルが傾斜しているエンクロージュアをすすめられている。
バスレフ型である。

フルレンジからスタートすることは、ネットワークを通していない音に馴染む意味でも、
いちど経験しておきたいことである。

Date: 12月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その9)

ダイヤトーンのDS505が登場した1980年、
瀬川先生の4ウェイ自作スピーカーの記事を読んでしばらくしてのころということもあって、
高校3年だった若造にとって、このスピーカーは、かなり魅力的に感じていた。

憧れであり、目標だったスピーカーは、もちろん4343だったが、高校生がバイトに精を出したところで、
たやすく買える金額のものではない。
何事にも例外はあって、友人のAさんは、高校生の時、土方のバイトをがんばり、4343を現金で購入している。
アンプ、プレーヤーは予算不足で購入できず、
しばらくはシャープのダブルラジオカセットに接いでいたというエピソードつきだ。
4343は、そこまで駆り立てる魅力をもっていたスピーカーともいえよう。

熊本の片田舎では、高校生ができるアルバイトといえば新聞配達ぐらいで、しかも朝刊のみ。
それで稼げるお金は、上限が決っている。

私にとっては、サンスイのAU-D907 Limited が精いっぱいだった。
それも新聞配達のバイト代だけでは足りず、修学旅行を旅行を休んで、
その積立金を加えて、やっとこさ購入できたのだった。

Date: 12月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その8)

ビクターは、ずいぶんと早い時期に4ウェイ・スピーカーを開発している。

1970年前後に発売されていたBLA405とBLA-E40だ。
とはいえ、ビクターにとって、本格的な4ウェイ・スピーカーは、Zero1000が最初といっていいだろう。
Zero1000はブックシェルフ型というサイズの制限もあってだろう、ミッドバスユニットを備えた4ウェイではなく、
3ウェイ・スピーカーにスーパートゥイーターを追加した4ウェイ・スピーカーである。

このことは、Zero1000の1、2年後に出た3ウェイのZero100を見ても明らかだし、
ビクターのカタログにも、ミッドバスという表記はなく、
ウーファー、スコーカー、トゥイーター、スーパートゥイーターとある。
クロスオーバー周波数を見ても、そのことは明らかだ。

同じブックシェルフ型ながら、ミッドバス搭載の4ウェイ・スピーカーが、ダイヤトーンのDS505だ。

ダイヤトーンは1970年にDS301、74年にDS303を出している。
どちらも、3ウェイにスーパートゥイーターを追加した4ウェイ構成であり、
中低域の充実を図った4ウェイは、ダイヤトーンにとってDS505が最初である。