4343と国産4ウェイ・スピーカー(その21)
スレッショルドの800Aは、1976年当時、118万円だった。
価格的に4343とほぼ同じだが、まったく無名の新興ブランドということもあってか、
実物を見たこともないという人も少なくない。
けれど、800Aが、国産ブランドのアンプの技術者に与えた影響は、4343のそれと匹敵するかもしれない。
800Aの登場以降、国産アンプの謳い文句に「Aクラス」の文字が増えている。
思いつくまま挙げれば、テクニクスのクラスA+(SE-A1に採用されている)と
ニュークラスA(SE-A3などプリメインアンプにも採用)、
ビクターのスーパーAクラス、デンオンのリアルバイアスサーキットによるAクラス、
Lo-DのノンカットオフA動作、などがある。
800Aも登場したばかりのころは、正確な情報がなかったため、純Aクラス・アンプのように思われたが、
実際は基本動作はABクラスで、出力が増えてBクラス動作に移行したとき、
通常ならば発生するスイッチング歪、クロスオーバー歪を、
特殊なバイアス回路の採用で発生そのものを抑えている。
これに刺激されて、各社から、独自のノンスイッチングアンプが登場したわけだ。
このとき、ステレオサウンドは、国産メーカー各社のアンプ技術者にアンケート調査を行なっている。
自社の技術の特徴と、他社の同様の技術の違いについて回答させたものをまとめた記事で、
技術者が自社製品の技術について語るだけとは異り、ひじょうに興味深い内容だった。
無線と実験やラジオ技術誌がやらなかった記事を、
ステレオサウンドがわかりやすく、しかもつっこんだ内容で、まとめてくれていた。
同様のアンケートを、4ウェイ・スピーカーを発表したメーカーの技術者に対して行なってくれていたら、と思う。
4343をどう捉えていたのかが、はっきりとわかり、ひじょうに面白い記事になったはずだ。