Archive for category JBL

Date: 2月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続々・音量のこと)

Nさんが、MC2300から次にどういうパワーアンプへとうつられたかについては別項にてすこしふれている。
記憶されている方もおられるだろうが、もういちど書いておく。

Nさんはあるところでウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルアンプを聴いて、
それ以来、ウェストレックスのA10の回路をベースとしたアンプづくりへと、大きくシフトした。

そのNさんのところで、350Bと同じくウェスターン・エレクトリックの349Aのプッシュプルアンプを聴いた。
伊藤先生が無線と実験に発表されたアンプそのものである。
出力は8W、回路構成はウェストレックスのA10そのまま、使用真空管に違いがだけだ。

このとき鳴ってきた音は、いまでもはっきりと憶えている。
スピーカーは変っていない。2220に2440の2ウェイ。
MC2300で鳴らしていたときには、しっとりとした音は、
このウーファーとドライバーの組合せからは出てこないんだなぁ、と短絡的にも思いたくなるほど、
私が求めている音、好む音とはベクトルが違っていた。

それが、なんともいい音で鳴ってくれる。
これならば、クラシックも聴ける、というよりも、この音が欲しい、とすら思えるほどの変りようだった。

音量は控え目だった。
良質の蓄音器を思わせる音だった。
低域も高域もそれほどのびていない。
はっきりいえばナローレンジの音なのに、
MC2300で鳴らしたときよりもナローであることを意識させない。

無線と実験に載っている349Aのプッシュプルアンプの周波数特性はそれほどよくない。
このアンプもまたナローだった。

Date: 2月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続・音量のこと)

たとえばQUADのESL。
ピーター・ウォーカーがESLを開発した1950年代、
どのくらいの音量で音楽を聴いていたのかは容易に想像がつく。

当時のQUADのパワーアンプはKT66のプッシュプル構成のII。
出力は15W。しかもESLだから、スピーカーは低能率。
おのずと最大音量と制限されるわけだが、
おそらくピーター・ウォーカーは、それで音量が不足とは思っていなかったはず。

控え目な音量で、音楽を聴くのであれば、ESLとIIと組合せでも音量的な不満は生じない。

D130となると、そこが違ってくる。
だから、ランシングがどのくらいの音量で音楽を聴いていたのかは、
ランシングとともに音楽を聴いたことのある人に訊く以外に、正確なことはわからない。

ただ確たる根拠もなくおもうのは、意外にもそれほど音量は大きくなかったかもしれない、ということ。

私がステレオサウンドにはいったころ、Nさんというジャズの熱心な聴き手の先輩がいた。
彼はJBLの2220を、ステレオサウンド 51号の記事で製作したエンクロージュアにいれ、
中高域は2440と2397ホーンによる2ウェイというシステムだった。
最初のころ、パワーアンプはマッキントッシュのMC2300。

Nさんの住むマンションには何度も何度も行った。
音を聴かせてもらった。

Date: 2月 1st, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(音量のこと)

この項は、JBLの創始者であるランシングが、
D130をどんなアンプで鳴らしていたのか、ということから始めて、まだ書き続けていて、
それと並行しながら考えていたのは、ランシングがD130で、どのくらいの音量で聴いていたのか、についてである。

1940年代のアンプの出力はそれほど大きくはない。
けれどD130の能率は高い。だから相当な大音量まで問題なく出せたわけで、
アンプの出力によって音量が制約されることは、ほとんど考えられない。
音量の設定に関しては、自由であったはず。

ならばランシングは、どのくらいの音量で聴いていたのか。
手がかりは、まったくない。

なのに、なぜ書くのか、何を書くのか、ということになるのだが、
ひとつだけヒントとなることがある。

ステレオサウンド別冊「HIGH TECHNIC SERIES-1」である。
井上先生が、「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」を書かれている。

そこにJBLの130AにLE175にHL91ホーンを組み合わせた2ウェイの組合せがある。
エンクロージュアはバックロードホーン型の4530で、
アンプはコントロールアンプにラックスのCL32、パワーアンプはダイナコのMKIIIとStereo70で、
ラックスキットのエレクトリッククロスオーバーネットワークA2002を使い、
マルチアンプドライヴというシステムである。

130AはいうまでもなくD130のアルミ製のセンターキャップを紙製に替え、
ウーファーとしてモディファイしたユニットである。

こういう組合せであるから、スタジオモニターとしてのJBLの音ではない。
「比較的に小音量で鳴らすときにはハイファイというよりは、
ディスクならではの蓄音器的なノスタルジックな響き」と表現されている。

このことが意外だったので、ずっと憶えていたわけである。

Date: 1月 13th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その35)

ローインピーダンスのMM型カートリッジには、正直懐疑的だった。

いったいどういうメリットがあるというのだろうか、と考えた。
MC型カートリッジならばコイルも振動系に含まれる。
だからコイルの巻数を減らすことは、わずかとはいえコイル部の質量を小さくすることにモなり、
振動系の実効質量にも関係してくるけれど、
MM型カートリッジではコイル部は振動系には含まれない。

Moving Magnetなのだから振動系に含まれるのはマグネットであり、
コイルの巻数を減らしたところで、カートリッジの自重は多少軽くなることはあっても、
振動系の実効質量には関係してこない。

それにどれだけ強力なマグネットを採用したところで、
推奨インピーダンスが100Ωということはカートリッジのインピーダンスは実際には100Ωよりも低いわけで、
従来の1/2とか1/4といったインピーダンスの低下ではないほど大幅にローインピーダンス化してしまえば、
出力電圧は、インピーダンスとともに低下する。

ピカリングのXLZ7500Sの出力電圧は、たしか0.3mVだった。
この値はMC型カートリッジ並でしかない。

そうなると使用にはなんらかの昇圧手段が必要となる。
ピカリングもスタントンもトランスではなくヘッドアンプを推奨していた。
もしくはハイゲインのイコライザーアンプが必要となる。

いったい、こういうカートリッジにどういうメリットがあるのだろうか、と思った。
音は聴かなければなんともいえないものの、技術的なメリットをすぐには見出せなかった。

Date: 1月 12th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その23)

SUMOのThe Goldの前に、SL600を鳴らしていたのはアキュフェーズのP300Lだった。
そのP300Lでも、すこしだけアルテックの405Aを鳴らしてみた。
そのときの音の違いから、SL600にThe Goldを接いで鳴らしたら……、と期待に胸ふくらましながらの一週間だった。

3日目ぐらいから何度The Goldに接ぎかえようと思ったことか。
問題ないはず、という確信はあったものの、
それでも最初に決めた1週間を405Aで通したのは、
意外にも405Aで聴く、人の声の気持ちよさに魅かれるところがあったためである。

ほーっ、やっぱり小さくてもアルテックなんだなぁ、と感じつつの1週間がすぎ、
いよいよThe GoldでSL600を鳴らす日が来た。

いままで何の不安も感じさせなかったから大丈夫だ、ということはわかっていても、
それでも最初にSL600を接いで電源スイッチをいれるときは、すこし緊張した。

いい音だった。
P300Lに、これといった大きな不満はなかった。
SL600はパワーアンプを選り好みするという印象を持っている人が少なくないので意外な感じもするのだが、
特別なパワーアンプを持ってこなければ、うまく鳴ってくれない、というスピーカーシステムではない。
とはいえ、The Goldけで鳴らしたSL600の音はよかった。

SL600のほうが405Aよりも周波数レンジも広い。
405Aに感じた粗さもない。
けれど人の声、それも男性の声のリアリティが、405Aほど濃厚に出ない。

SL600での男性の声がよくないわけではない。
うまく鳴っている。鳴ってはいるいるけれど、405Aで感じられた、気配のようなものがすこし足りない。
SL600だけで聴いていればそんなことを思わなかったであろう。

でも1週間、405Aで聴き続けた時間がすでに存在していた。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その22)

1985年12月にSUMOのThe Goldを導入したとき、
鳴らしていたスピーカーシステムはセレッションのSL600だった。

The Goldが届いてまずしたことは分解掃除だった。
そして、いきなりSL600を鳴らすのはコワイと思い、
チェック用として用意していたアルテックの10cm口径のフルレンジユニット405Aを収めたスピーカーで鳴らした。
無事、音が出た。スピーカーが飛ぶこともなかった。

このアルテック405Aで1週間何事もなかったらSL600を安心して接続できるだろう、と決め、
それからの1週間は405Aの(エンクロージュアも凝ったものではない)、
上等とはいえないスピーカーで聴いていた。

10cmのフルレンジで、しかもアルテックのユニットだから低域も高域も伸びてはいない。
ナローレンジな音で、音量はかなりあげられても、
そうすると今度はエンクロージュアの共振が気になってくるような代物だったから、
音量をあげるといっても、それほど大音量で鳴らせたわけではなかった。

このとき感じていたのは、音像定位の安定度の高さ・確かさである。
それは精緻な音像定位といった感じなのではないのだが、
とにかく中央に歌手が気持ちよく定位してくれる。

1週間が経ち、SL600にした。
405Aよりもすべての点で上廻る音が鳴ってくれるものと期待していた……。

Date: 1月 7th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その34)

オルトフォン(Ortofon)は、
ギリシャ語で正確を意味するオルトと音を意味するフォンを組み合わせた造語で、
正確な音になり、オルトフェイズは正確な位相ということになる。

カートリッジに関係する造語ではシュアーのトラッカビリティがもっとも有名で、
いまもこのトラッカビリティが技術用語のひとつだと思っている人もいるくらいに、
一時期広く知れ渡った。

トラッカビリティと比較するとオルトフェイズは、それほどうまい造語とはいえない。
けれど、わざわざオルトフェイズという言葉をつくったということは、
オルトフォンとしては、3Ωという低インピーダンスのメリットの中で、
位相の正確さを重視していたと受け取ることもできる。

カートリッジのインピーダンスの低くとることのメリットは、なにもMC型カートリッジだけにいえることではなく、
MM型、MI型でも1980年代にはいり、
ピカリング、スタントンからローインピーダンス型のカートリッジが登場している。

スタントンは1980年に良質の低ロスのコア材に太めのワイアーを、
できるだけ巻数を少なくして、オルトフォンのMC型カートリッジと同じ3Ωという980LZSを、
1985年にもLZ9S(型番がローインピーダンスであることを謳っている)を発表している。
どちらも推奨負荷インピーダンスは100Ωとなっている。

ピカリングは1983年にXLZ7500Sを出している。
XLZ7500Sも、スタントンの980LZSとほぼ同じ技術内容を謳っているのは、
スタントンがピカリングのプロ用ブランドとして誕生しているわけだから、当然といえよう。

Date: 1月 2nd, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その33)

オルトフォンのMC型カートリッジは、低インピーダンスである。

ステレオサウンド 74号のハーマンインターナショナルが出しているオルトフォンの広告には、こうある。
「必然の数値」。

3Ωという、低い内部インピーダンスこそが、その「必然の数値」ということを、
その広告は謳っている。

3Ωという数値はオルトフォンが「行き着くべくして行き着いたインピーダンスの値」とあり、
「もっとも効率よくいい音を引き出せるコイルの巻数」ともある。

オルトフォンの言い分では、3Ω以上のインピーダンスになれば、
さまざまな問題が発生してくる──、
「コイルの巻数が多いから、エネルギー・ロスが多い」、
「発熱によるサーマルノイズ(熱雑音)が発生する」、
「振動系全体が重くなり、トラッキングアビリティが悪くなる」、
「位相もズレる」
これらをオルトフォンは問題点として挙げている。

この広告のあとしばらくしてだったと記憶しているが、
オルトフォンは「オルトフェイズ」という造語を使っていた(はずだ)。

Date: 12月 30th, 2012
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その21)

ステレオサウンド別冊「いまだからフルレンジ 1939-1997」の巻頭にある「フルレンジの魅力」は、
19ページにわたっている。
単にフルレンジ型ユニットの魅力について書かれているのではなく、
井上先生ならではの解説と使い方へのアドバイスもあり、
この記事を初心者向けのものととらえる人もいるだろうが、
読めばそうでないことは、キャリアのある人ほど実感できるはずである。

「フルレンジの魅力」の冒頭には、こう書かれている。
     *
フルレンジユニットの魅力は、まず第一に、音源が一点に絞られ、いわゆる点音源的になるために、音像定位のクリアーさや安定度の高さが、何といっても最大のポイントだ。また、シングルコーン型や、ダブルコーン型に代表される複合振動板採用のユニットでは、デヴァイディング・ネットワークが不要なため、これによる音の色づけや能率低下がないことも魅力だ。さらに、振動板材料の違いによる音質、音色の差もきわめて少ないため、音の均質性に優れ、何らかの違和感も生じることがなく、結果として反応が速く、鮮度感の高い生き生きとした躍動感のある音を楽しめる点が、かけがえのない魅力である。
     *
「いまだからフルレンジ 1939-1997」は誌名からわかるように1997年に出ている。
「いまだからフルレンジ 1939-1997」にこまかな不満がないわけではないが、
その程度の不満はどの本に対しても感じることであり、特にここで書こうとは思っていない。

でも、ひとつだけ不満というか注文をつけるとしたら、
本の最後に、筆者後記が欲しかった、と思う。

つまり、なぜ1997年にフルレンジ型ユニットの別冊を企画されたことの意図についての、
井上先生の文章が読みたかったからである。

でも、井上先生のことだから、あえて書かれなかったのだとも思っている。
1997年に、井上先生がフルレンジ型ユニットの本を監修されたのかは、
「いまだからフルレンジ 1939-1997」の読み手が、ひとりひとり考えることであり、
そのことを考えずに「いまだからフルレンジ 1939-1997」を読んだところで、
この本の面白さは半分も汲み取れないのではないだろうか。

Date: 12月 27th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その32)

BL積のBは磁束密度のことで、Lはボイスコイルの長さのことである。
Lは長さなので、技術書ではBL積ではなくBl積と表記されているが、
見難いのでBL積と、ここでは表記していく。

BL積は、磁束密度が高くボイスコイル長が長いほど高くなるわけだ。

そして動電型(つまりダイナミック型)スピーカーにおける駆動力とは、
このBL積にボイスコイルに流れる電流値IをかけたBLIとなり、
磁束密度が同じ磁気回路のスピーカーユニットではボイスコイル長の長いほうが、
電流は少なくても同じ駆動力が得られることになる。

JBLの4インチ径ダイアフラムのコンプレッションドライバーでは、
8Ωよりも16Ωの方が聴感上の結果は良かったわけだが、
だからといって、どんなに場合にもBL積の値が高いほうが好ましい結果が得られるとは限らないだろう。

4インチ口径のコンプレッションドライバーでは高域が延びているといっても10数kHzまでだから、
16Ωの方が良かったのかもしれない。
スーパートゥイーターのように20kHz以上まで延びていると、結果は変ってくることも考えられる。

ボイスコイル長は同じで磁束密度を増してBL積を大きくするのであればいいのだが、
ボイスコイル長を長くした(16Ω仕様とした)場合、
ボイスコイルはその名の通りコイルであるためインダクタンスがその分増すことになる。
このことは高域のインピーダンスの上昇へとつながっていく。

これに関することで思い出すのは、オルトフォンのカートリッジのインピーダンスについてである。

Date: 12月 26th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その31)

いま挙げた例は、いわばスピーカーがアンプに寄り添っていったともいえることである。
たしかにトランジスターアンプで鳴らすのであれば、16Ωよりも8Ωのほうが効率がいい。
けれど効率がいいことが音の良さに必ずしもつながっていくわけではないことを、
オーディオマニアであれば体験上知っているはず。

もう4年ほど前のことだったか、
知人があるオーディオショップでJBLのコンプレッションドライバーの比較試聴を行う、と私に連絡してきた。
比較試聴といってもJBLのドライバーをいくつか用意して、ということではなく、
同一ユニットでインピーダンスの違いを聴き比べる、ということだった。
違いはダイアフラムだけである。

試聴条件はネットワークだと、
ドライバーのインピーダンスによってカットオフ周波数などが変化することを配慮して、
マルチアンプ駆動で行ったそうだ。

知人は連絡してきたときに、こういっていた。
「8Ωのダイアフラムの方がボイスコイルの巻数が少ない分、振動系の質量がわずかとはいえ軽量なので有利なはず」
それに対して私は「BL積が関係してくるから、16Ωの方がきっといいと思うよ」と答えておいた。

夜、もういちど知人から電話があった。
すこし興奮気味で「16Ωのほうが良かった」といっていた。

彼は8Ωのほうが軽量な分高域が伸びて、
大型コンプレッションドライバーを使った2ウェイのシステムを考えていただけに、
8Ω仕様に期待していたのが、実際には16Ωの方が、音が鳴りだした瞬間に、優っていたことを知らされた、と。

駆動力に直接関係するBL積は、
私がオーディオをやり始めたころはスピーカーユニットのスペックとして発表されることが多かった。
それがいつのまにか、それほど重要なスペックではない、ということになり、
スペック上から消えていっていた。

でも、私はどこかで、スピーカーの技術者による「BL積(BLファクター)は重要だ」、
という発言を読んでいた記憶がずっとあったため、
私自身は8Ωと16Ωのダイアフラムによる音の違いは実際には聴いたことはなかったけれども、
16Ωのほうが有利ではないか、という推測ができただけである。

Date: 12月 26th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その30)

たとえばアルテックの同軸型ユニットの604シリーズ。
604Eまではインピーダンスは16Ω、
604-8Gから、型番の末尾にアルファベットだけでなく数字の8が加わったことからもわかるように、
インピーダンスは8Ω仕様に変更されている。

これは604Eのころはまだまだ真空管アンプで鳴らされることが前提だったのが、
604-8Gが登場した1975年には真空管アンプは市場からほとんど消え去り、
トランジスターアンプで鳴らされることが多くなってきていたからである。

トランジスターアンプは真空管アンプのように出力トランスをしょっていないため、
スピーカーのインピーダンスによって出力が変る。
理論通りの動作をしているパワーアンプであれば、
16Ω負荷では8Ω負荷時の1/2の出力に、4Ω負荷では8Ω負荷時の2倍の出力となる。

真空管とくらべるとトランシスターは低電圧・大電流動作のため、
スピーカーのインピーダンスはある程度低いほうが出力を効率よく取り出せる。

アルテックの604シリーズを例に挙げたが、
他のメーカーのスピーカーでも、これは同じことであり、それまでは16Ωが主流で32Ωのユニットもあったのが、
1970年代にはいり、スピーカーのインピーダンスといえば標準で8Ωということになっていく。

トランジスターのパワーアンプが登場する前、
真空管アンプで出力トランスを省いたOTLアンプが一時的に流行ったころには、
16Ωでも真空管のOTLアンプにとってはインピーダンスが低すぎて、
効率よく出力を取り出せないために、
OTL専用のスピーカーユニットとしてインピーダンスが100Ωを越えるものが特注でつくられていた、と聞いている。

スピーカーのインピーダンスの変化をみていくと、
それはアンプの主流がなんであるかによって変っていっているわけだから、
アンプが、その意味では主ともいえなくもないわけだ。

Date: 12月 25th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その29)

コーン型スピーカーの始まりは、1925年に世界初のスピーカーとしてアメリカGEの、
C. W. RiceとE. W. Kellogの共同開発による6インチのサイズのものとなっている。
けれど以前にも書いているように、スピーカーの特許は、
エジソンがフォノグラフの公開実験を成功させた1877年に、アメリカとドイツで申請されている。

このときの特許が認められなかったのは、
スピーカーを鳴らすために必要不可欠なアンプが、まだ世の中に誕生していなかったからである。
ようするに真空管が開発されアンプが開発されるまでの約50年間の月日を、
スピーカーは待っていたことになる。

スピーカーはスピーカーだけでは、ほとんど役に立たない。
おそろしく高能率のスピーカーと、同程度に高出力のカートリッジがあれば、
カートリッジをスピーカーを直接接続して音を出すことはできるだろうが、
それは音が出る、というレベルにとどまるであろう。

現在のような水準にまで高められたのは、やはりアンプが誕生し、改良されてきたからである。

こんなふうに歴史を振り返ってみると、
オーディオの再生系においてスピーカーが主でアンプは従という関係は、
実のところスピーカーが従であり、アンプが主なのかもしれない──、
そんな見方もできなくはない。

そして、いまのスピーカーシステムは、
いまのパワーアンプ(定電圧駆動)でうまく鳴るようにつくられている。

そんなこと当然じゃないか、といわれるかもしれない。
でも、ほんとうに再生系においてスピーカーシステムが主であるならば、
主であるスピーカーシステムをうまく鳴らすようにつくられるのはアンプのほうであるべき、ともいえる。

このことは鶏卵前後論争に近いところがあって、
そう簡単にどちらが主でどちらが従といいきれることではない。

Date: 12月 24th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その28)

私はD130を、いまいくつかの形式のアンプで鳴らしてみたい、と考えている。

市販のほぼすべてのパワーアンプでそうであることからも、
現代のアンプとして一般的な形式で定電圧駆動をひとつの基準としたうえで、
あえてD130が生れたころと同時代のアンプで鳴らすということ、
それから定電流駆動という選択も当然考えている。

定電圧駆動と定電流駆動の中間あたりに属するアンプもおもしろいと思う。
トランジスターアンプでも出力インピーダンスが高めで、ダンピングファクターが低めのもの。
市販されているアンプではファーストワットのSIT1が、これに相当する。
出力インピーダンスが4Ωだから、16ΩのD130に対してはダンピングファクターは4になる。
真空管のOTLアンプも考えられるが、
年々夏が暑くなっているように感じられる昨今では、
あの熱量の多さを考えると、やや消極的になってしまう。

それからヤマハのAST1で聴いた負性インピーダンス駆動とバスレフ型の組合せがもたらした、あの低音の見事さ。
ASt1を聴いた時から考えているのが、負性インピーダンス駆動とバックロードホーン型の組合せである。

AST1において負性インピーダンス駆動をON/OFFすると、低音の表情は大きく変化する。
この音の変化を聴いている者には、負性インピーダンス駆動とバックロードホーンの組合せが気になって仕方がない。
必ずしも、うまくいくとは思っていない。
失敗の確率もけっこう高そうではあると思いつつも、一度は試しておきたいパワーアンプの形式である。

どれがD130+バックロードホーンに最適となるのかは、
他の要素も絡んでくることだからなんともいえないことはわかっている。
それでも、実際にこんなことを試していく過程で、
これまで見落してきたこと、忘れてきたことを再発見できる可能性を、そこに感じてもいる。

D130はもともと高能率で、それをバックロードホーンにおさめるのであれば、
パワーアンプにはそれほどの出力を求めなくてもすむ。
これは、いくつもの形式のアンプを試していく上でも大きなメリットになる。

Date: 12月 17th, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その27)

JBLのD130は60年以上前に開発・設計されたスピーカーユニットであり、
その、いわば大昔のユニットを、これまた昔の主流であったバックロードホーンにいれる──、
いまどきのスピーカーシステムを志向される人からみれば、
いまさら、なにを……とあきれられることをやろうとしている。

D130とバックロードホーンの組合せで聴いている人は、
日本においては少数派ではないかもしれない。意外に多いようにも思っている。

でも、ずっと以前から、この組合せで聴いてきた人たちと、
いまごろD130とバックロードホーンの組合せで聴こう、とする私とでは、同じに語れないところもある。

このことは私だけのことでもないし、D130だけにあてはまることではない。
他のスピーカーでも、ほかの人の場合にでも、同じに語れないところがあるからこそ、
スピーカー選ぶことの難しさを感じ、それを面白い、とも思うわけだ。

ずっとずっとD130を鳴らしてきている人に対し、
私は「いいスピーカーを鳴らされていますね」と本音でいう。
そんな人はいないと思うけれど、私が書いたものを読んで、
JBLのD130に興味をもち、鳴らしてみようという人がいたら、
「やめたほうがいいかもしれません」と、やはりこちらも本音でいう。

スピーカーの真の価値は、そういうことによっても変化するものである。

つまり私にD130を鳴らしてきた、いわば歴史がない。
しかも、もう若くはない。
そういう歳になって、こういうスピーカーを鳴らそうとしているわけだから、
D130を鳴らすことにおいて、徹底してフリーでありたい、と思う。
特にパワーアンプの選択に関しては、それを貫きたい。

だからといって、なにも数多くの既製品のパワーアンプをD130で聴きたい、ということではない。