4343と4350(その6)
見落しといえば、これも見落しなのかもしれない。
ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
瀬川先生がチャートウェルのLS3/5Aで組合せをつくられているのは、別項で書いているとおり。
この年の「コンポーネントステレオの世界」は実践的オーディオシステム構成法として、
バランス型のステップアップ型の組合せを予算に合せて、評論家が考えるという企画である。
LS3/5Aの組合せでは予算60万円でまとめられ、
次のステップとして予算が倍の120万円となる。
60万円でまとめたLS3/5Aの組合せをどういうふうにステップアップしていくのか、
瀬川先生はふたつのプランを用意されていた。
そのひとつとしてLS3/5Aにウーファーを足すことで、グレードアップをはかるというもの。
ウーファーにはJBLの136A、
エンクロージュアには当時JBLの輸入元だったサンスイがJBLの強力を得て開発したECシリーズを使い、
専用アンプを用意してバイアンプ駆動する、というもの。
この組合せについて、こう語られている。
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マルチアンプそれから3Dの場合、大型のウーファーをあとから追加するときに、よく、できるだけ低いところから足したほうがいいだろう、とお考えになる方が多いでしょう。最近はスーパーウーファーばやりで、数多い製品が登場してきていますが、そうしたものが大体100Hzか、それ以下の80、70Hzといったところから下で使っているので、そうお考えになるのも無理からぬところだと思います。
じつはぼく自身が、かつてマルチアンプをさんざん実験していたころ、たとえばウーファーに15インチぐらいの口径のものをもってきて、その上に小口径のコーン型ユニットを組み合わせた場合、理論的にはその小口径のコーンだって100Hz以下の、70とか60Hzのところまで出せるはずです。特性をみても実際に単独で聴いてみても、100Hz以下が十分に出ています。
したがって、たとえば100Hzぐらいのクロスオーバーでつながるはずですが、実際にはうまくいかない。ぼくにはどうしてなのかじつはよく分らないんだけれど、15インチ口径のウーファーで出した低音と、LS3/5Aのような10センチぐらいの小口径、あるいはそれ以上の20センチ口径ぐらいまでのものから出てくる中低音とが、聴感上のエネルギーでバランスがとれるポイントというのは、意外に高いところにあるんですね。
いいかえると、100Hzとか200Hzあたりでクロスオーバーさせていると、ウーファーから出てくるエネルギーと、それ以上のエネルギーと、バランスがとれなくてうまくつながらないわけです。
そして、ぼくの経験では、エネルギーとして聴感上、あるいは感覚的にうまくクロスオーバーするポイントというのは、どんな組合せの場合でも、だいたい250Hzから350Hzあたりにあるわけです。それ以上に上げると、こんどはウーファーの高いほうの音質が悪くなるし、それより下げると、こんどはミドルバスのウーファーに対するエネルギーが、どうしてもつながらない。ということで、この場合でも、300Hzでいいんですね。
もちろん、そうしたことを確認するなり実験するなりしたい方には、クロスオーバーをもっと下げられたほうが面白いわけで、そういう意味では100Hz以下まで下げられるデバイダーをお使いになるのは、まったくご自由ですよ、ということですね。
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「コンポーネントステレオの世界 ’79」は出た時に買って読んでいた。
引用したところも読んでいた。
そして、そうなんだとおもっていた。
にもかかわらず記憶の中から、どこかに落してきてしまっていた。