Archive for category ケーブル

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その4)

AAとGGに通底するもの(その8)」で書いたことのくり返しになるが、
その時鳴った音は、
左右のスピーカーのあいだに、空気の密度が急激に高まった結果の見えない硬い壁ができ、
それをこれまた、異常に硬いもので叩いた、もしくは貫いた結果の音──、
そんな感じの音だった。

ジェット戦闘機が音速を超える際に発生するソニックブームとは、
こんな感じの音なのかも、と思えるような音だった。

アクースティックな楽器では、いかなる楽器をもってこようとも、
こんな音は絶対に出せないだろう、といった低音(衝撃音に近いかも)が伝わってきた。

これはこれで快感である。
聴く快感であり、こういう音を、周りに気にせず鳴らせることができるのも、
オーディオマニア的快感のはずだ。

でも、それがグレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲の再生には、
まったく寄与していないどころか、
奇妙な異和感をまとって鳴るのだから、やっぱり「欠陥」スピーカーとしかいいようがない。

「欠陥」スピーカーについて、また書き始めると横路にどんどんそれてしまうので、
このへんにしておくが、ゴジラのテーマ曲では、そういう面がずっと洗練されて、
音楽的な魅力をより高めているようにも感じただけに、
カルダスの電源コードでの鳴り方は、惹かれるものがあったし、
それだけでなく自作の電源コードをこれからどういじっていくかの方向も見えてきた。

8月7日のaudio wednesdayでは、自作のコードにちょっとだけ手を加えた。
そんなことは予定していなかったから、材料を持ち合わせていたわけではない。

それでも手元のモノで、どういう傾向になるのかの確認はできる。
試してみると、こういうふうに、やはり変って行くのか、ということを確認できた。

ただ、それから先に進むのかは、また微妙なところである。
それはジュリーニによるマーラーの「大地の歌」を聴いたからである。

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その3)

(その2)で書いたことは、映画だけのことではないようにも思っている。
私は行かないので、実際に鳴っている音がどんな感じなのか想像するしかないのだが、
クラブで鳴っている音というのも、共通するところがあるのではないのか。

こういう音は、アクースティックな楽器を、どんなにいい音で録音して、
それをうまく再生しても、そういう音にはまずならない。

けれど、オーディオマニアとして快感につながっていくと感じてしまうし、
自分の音として日常的に鳴らしたいとは思わないまでも、
一ヵ月に一度、たとえばaudio wednesdayのような集まりでは鳴らしてみたい、
聴いてみたい、と思うわけだ。

このことはスピーカーシステムの音についてもいえる。
別項「AAとGGに通底するもの」で書いている、
「欠陥」スピーカーとついいいたくなってしまう、とあるスピーカーのこと。

非常に高価だし、その時鳴らしていたアンプもCDプレーヤーもまた非常に高価だった。
ラックもケーブルも同じである。
信号、電源ともにケーブルはカルダスだったようにも記憶している。

2009年12月に行われた試聴会でのことだった。
グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲が、試聴会が始まる前から鳴っていた。

バッハのゴールドベルグだ、ということは会場に入ってすぐにわかっても、
誰の演奏なのか、すぐにはわからなかった。

グールドっぽい、とまず思った。
でも聴けば聴くほど、グールドとは思えなくなる。
そのくらい音楽を歪めている、と感じた音である。

試聴会で鳴らされたクラシックのディスクは、
どれも感心しなかった。
改めて「欠陥」スピーカーだ、と再確認できた、と思いながら聴いていた。

それでも最後のほうで鳴らされた一曲は、すごかった。
アメリカのハイエンドオーディオのマニアのあいだで流行っているディスクらしい。

ここでの低音の鳴り方が、今回ここで書いている音と同種、同傾向の音であった。

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その2)

とはいっても音を聴く前からそう感じていたわけではなく、
実際に四種類の電源コードの音を聴いてから、なるほどな、と感じていた。

「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」はサウンドトラック盤だから、
映画のなかで使われた音楽である。
そのなかでも、ゴジラのテーマ曲である。

日本のゴジラ映画を観てきた人にとっては、
懐しいともいえるメロディの、あの曲である。

とはいっても最新の演奏、最新の録音によるゴジラのテーマ曲である。

いつのころからだろうか、
映画の音、そして使われる音楽の音がはっきりと変ってきた、と感じている。
特にCGを使ったアクション、SF、ホラーといった映画で顕著に感じる。

それまでと違って、重量を感じさせる音が表現できるようになった、
そう感じている。

どの映画から、どの時代から、そういったこまかなことははっきりといえないものの、
よく重低音というけれど、実際の低音は重いわけではない──、
そんなことはオーディオの世界では以前からいわれ続けていることだが、
ここでは、文字通りの重低音のことである。

重低音という言葉から受ける印象通りの音のことである。

実際には、つまりナマの音としてこんな音は存在しないだろうが、
だからといってけしからん、とか、こんな音は認めない、などではない。

映画に必要な音であろうし、必要な音楽としての音として認めているし、
それになっといっても聴いていて快感であるのも事実だ。

カルダスの電源コードは、どちらも、この音の重量感に関しては、
聴き手のこちらを唸らせるものがあった。

Date: 8月 13th, 2019
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その6)

別項「オーディオの楽しみ方(つくる・その39)」で、
DIN用ケーブルを自作していて気づいたことがある──、と書いた。

このことが、ここで書いているアースの共通インピーダンスに関係してくる。
これも以前書いていることだが、オーディオ機器をモノーラル化していくうえでは、
一つとても気をつけなければならないことがある。

モノーラル化していくのは、音の出口に近い方から順にやっていくべきだ。
スピーカーシステムは左右独立しているから、
ようするにパワーアンプからモノーラル化をしていくべきである。

間違ってもステレオ仕様のパワーアンプ、コントロールアンプを使っていて、
D/Aコンバーターをモノーラル化するのは、
アースに着目して考えるならば、おかしなやり方である。

もちろんモノーラル化そのものを否定はしない。
それではっきりと聴きとれる効果があるのは事実だ。

ただし順序を間違えた安易なモノーラル化は弊害ももたらす。
その音への弊害に気づかないのだろうか。

パワーアンプをモノーラル化したならば、次はコントロールアンプ、
そしてD/Aコンバーターというのならば、納得できるモノーラル化の順序である。

D/Aコンバーターも、コントロールアンプもパワーアンプもモノーラル化した。
それでもマルチアンプをやっている人はデヴァイダーもモノーラル化しなければならない。

この順序を守らなかったからといって、ハムが出たりすることはない。
だからこそやっかいともいえる。

このモノーラル化の順序に気づかさせてくれたのが、DIN用ケーブルの自作であり、
1982年ごろに登場したディネッセンのコントロールアンプJC80の電源構成である。

Date: 8月 12th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その1)

8月のaudio wednesdayは、電源コードの比較試聴も行った。
愛知県からの常連のHさんが、カルダスの電源コードを二種類持ってきてくれた。
現行製品ではなくすでに製造中止になっている。

この他に、5月に自作した電源コードと、
それ以前に使っていた電源コード(ベルデン製に少し手を加えている)、
あわせて四種類の比較致傷を行った。

ベルデンに手を加えたモノは、常連のHさん(上のHさんと違う人)が気に入ってくれて、
最初に手を加えたベルデンの電源コードは、Hさん宅で使われている。
喫茶茶会記に置いているのは二本目である。

愛知のHさんは、以前にもカルダスの電源コードを持ってきてくれている。
短い時間だったが、その時も聴いている。
今回は、「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」のサウンドトラック盤から、
ゴジラのテーマ曲で試聴したことが、
前回聴いたときよりもカルダスの音の特徴を抽き出したようにも感じた。

私の自作の電源コードも、ベルデンの電源コードも、
いまとなっては太いとはいわない太さである。
それに硬くない。

硬くないから取り回しも楽である。
カルダスは太いだけでなく、硬くそれに重い。

電源コードの長さは、カルダスがいちばん短く、
ベルデンがいちばん長い。とはいえ極端に違うわけでもない。

それでもカルダスのモノが重い。
この硬さ、重さ、その他をふくめての感触の違いは、
実際の音の印象にかなり近い、と感じる。

Date: 7月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その18)

オーディオというシステムのなかには、いくつものコイルが存在する。
テープデッキのヘッドにも、コイルは存在する。

銀線採用が謳い文句のようになってきたころ、
ヤマハのカセットデッキのK1も、
メタルテープ対応以外にも、ヘッドの巻線を銀線に変更して、K1aへとモデルチェンジした。

さらにヤマハK1aをベースに、dbx対応としたK1dを出してきた。
K1もK1aもK1dも、ヤマハ独自のセンダストヘッド採用なだが、
K1dのヘッドの巻線が銀線なのかどうかは、いまのところはっきりしない。

K1dの内部は、K1aの内部とほぼ同じである。
dbxのエンコード/デコード用の基板が、
メイン基板の上に増設されているくらいの違いである。

もっともこれは目に見える範囲内だけの違いであって、
ヘッドにも変更が加えられているのかもしれない。

K1dのヘッドは銀線の可能性はある。

Date: 7月 22nd, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その5)

いまは違ってきているが、昔はプロ用機器はインピータンスマッチングが前提だった。
それに対しコンシューマー用機器は、
送り側のインピーダンスは低く、受け側のインピーダンスは、
送り側のインピーダンスよりも十分に高い値にするのが前提である。
いわゆるロー送りハイ受けである。

ところでMM型カートリッジの場合このインピータンスマッチングはおろか、
ロー送りハイ受けにもなっていないことに気づいたときは、
やはり驚いた。

国産アンプのPHONO入力はたいていは47kΩだった。
海外製は50kΩ(中には49.9kΩと細かく表示しているモノも)が多かった。

プレーヤーに付属していたカートリッジに慊らず、小遣いを貯めて買ったエラックのSTS455Eだと、
20kHzでのインピーダンスはアンプの入力インピーダンスよりも高くなっている。
これではロー送りハイ受けどころか、ハイ送り(若干)ロー受けとなっている。

STS455Eの実測データをみると、
33kΩ、47kΩ、100kΩでは2kHz以上の周波数特性に違いがある。
同じエラックでもCD4対応のSTS655-D4だと、このへんは違ってくる。

STS655-D4は4チャンネル対応ということなのだろうが、
コイルの直流抵抗は652Ω、インダクタンスは216mHとSTS455Eの約1/2であり、
20kHzのインピーダンスも27kΩと低いこともあって、
受け側のインピーダンスを変化させても、周波数特性の違いはわずかである。

それはアンプの入力容量をかえてもSTS455Eは変化量が大きいが、
STS655E-D6は小さい。

カートリッジの負荷抵抗は、共振周波数のQに関係してくる。
カートリッジの負荷容量は、共振周波数に関係してくる。

どちらも内部インピーダンスの高いカートリッジ、
つまりコイルの直流抵抗とインダクタンスがともに高いカートリッジほど、
負荷抵抗、負荷容量の影響が大きく出る。

Date: 7月 19th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その4)

1970年代のプリメインアンプ、コントロールアンプには、
PHONO入力に負荷抵抗切替えがついているモデルがいくつかあった。
負荷容量が切り替えられるモデルもあったが、
こちらはトーンアームの出力ケーブルでも調整できるため、
負荷抵抗切替えほどは多くはなかった。

そして、このころのオーディオ雑誌には、
負荷抵抗、負荷容量を変化させていった際のカートリッジの周波数特性の変化のグラフが、
よく載っていた。

オーディオに興味をもってすぐのころは、
MM型カートリッジ(MI型、IM型も含む)のインピーダンスが47kΩだと思い込んでいた。

だからアンプの入力インピーダンスは47kΩにすれば、
インピーダンスマッチングがとれるものだ、とも思い込んでいた。

でも数ヵ月もすると、そうでないことがわかってくる。
カタログを見ても、MM型カートリッジのインピーダンスの項目は、ないものもけっこうあった。
インピーダンスを表記しているものでも、1kHzの値でしかなかった。

MM型カートリッジにもMC型カートリッジにもコイルは必要であるが、
コイルの巻数が多く違う。

カートリッジのインピーダンスの等価回路は、
コイルの直流抵抗とコイルのインダクタンスが直列に接続されたものだ。

コイルの巻数が少なければ、可聴帯域におけるインダクタンスの影響は無視できるほどで、
実際に測定してもほぼフラットで、その値はコイルの直流抵抗値といっていい。

ところがMM型カートリッジとなると、そうはいかない。
低域では直流抵抗が支配的で、中域以上ではインピーダンスが上昇していく。

たとえばエンパイアの4000D/IIIのコイルの直流抵抗は432Ω、インダクタンスは166mH、
エラックのSTS455Eは1310Ωと508mH、オルトフォンのVMS20Eは900Ωと625mH、
シュアーのV15 TypeIIIは1350Ωと434mH、スタントンの681EEEは1560Ωと845mHである。

インピーダンスは、というと、4000D/IIIが1.1kΩ(1kHz)、10.4kΩ(10kHz)、21kΩ(20kHz)、
STS4555Eが3.5kΩ(1kHz)、32kΩ(10kHz)、64kΩ(20kHz)、
VMS20Eがが4.0kΩ(1kHz)、40kΩ(10kHz)、80kΩ(20kHz)、
V15 TypeIIIが3.0kΩ(1kHz)、27.3kΩ(10kHz)、55kΩ(20kHz)、
681EEEが5.5kΩ(1kHz)、53kΩ(10kHz)、105kΩ(20kHz)となっている。

Date: 7月 18th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その3)

スピーカーのインピーダンスは、カタログには4Ωとか8Ωと表記されていても、
可聴帯域内だけをみても、大きく変動していることはいうまでもない。
そんなインピーダンスカーヴをもつスピーカーに対して、
スピーカーケーブルのインピーダンスを4Ωとか8Ωとしたところで、
どれだけのメリットが考えられるのか、となると、なかなか難しい。

インピータンスマッチングの代表例である600Ωラインは、
送りの出力インピーダンスも、ケーブルのインピータンスも、受けの入力インピータンスも、
600Ωで統一されている。

これをスピーカーとパワーアンプにあてはめれば、
スピーカーのインピータンスが8Ωなら、
ケーブルのインピータンス、パワーアンプの出力インピーダンスも8Ωとなる。

これを実現したとして、どれだけの意味があるのか。
たとえばテクニクスのリーフ型トゥイーターの10TH1000は、
そのインピータンスカーヴをみると、受持帯域においては8Ωと一定である。

こういうユニットをマルチアンプで、ネットワークを介さずにドライヴするのであれば、
8Ωラインというのを構築してみるのも興味深いように思われるが、
10TH1000のようなユニットは、他にはそれほどないし、
コーン型ユニットにはまずない。

600Ωラインは、伝送距離がコンシューマーオーディオよりもずっと長い。
スピーカーケーブルは、短くしようと思えば、
アンプにプリメイン型ではなく、セパレート型にし、さらにパワーアンプをモノーラルにして、
スピーカーシステムの間近に設置すれば、1mよりも短くしようと思えば可能である。

そしてパワーアンプとスピーカーのインピータンスに関しては、
ダンピングファクターという要素も関係してくる。
そうなるとスピーカーにおけるインピータンスマッチングは……、である。

インピータンスマッチングでは、MM型カートリッジもほとんど無視といえる状態だ。

Date: 7月 18th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その2)

ビクターのスーパースピーカーケーブルが登場したころ、
インピーダンス表記をしていたスピーカーケーブルは他にあっただろうか。

1970年代も終りのころになると、
オーディオニックス、ソニーからも、インピーダンス表記をしたスピーカーケーブルが登場した。

オーディオニックスのケーブルは、
ビクターのスーパースピーカーケーブルに構造的に近い、というか同じといっていい。
0.18mmの6本撚りの十二芯構造で、インピーダンスは9.15Ωと発表されている。

ソニーのスピーカーケーブルは、
リッツ線を芯線とする同軸ケーブルを二連にした構造で、インピーダンスは8.5Ω。

私が知っている範囲ではこれだけだが、他にもあったのだろうか。
カタログにはインピーダンス表記はないが、
メルコのスピーカーケーブルの構造は、
0.18mmの12本撚りの二十四芯なので、ビクター、オーディオニックスと近い値のはず。

これらのスピーカーケーブルのどれも聴いていない。
周りに使っていた人もいない。
実際のところ、音はどうだったのか。

インピーダンスだけでケーブルの音が決定的になるわけではないが、
興味としてはあるし、現在の高価なスピーカーケーブルで、
インピーダンスを発表しているところはあるのだろうか。
これも気になっている。

Date: 7月 17th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その1)

BTS(放送技術規格)にもスピーカーケーブルの項目はある。
一芯あたり0.18mm径の30本撚りの、二芯平行ケーブルとなっている。

つまり赤黒の一般的なケーブルが、これにあたる。
このケーブルの場合、インピーダンスは110Ωくらいになる。

スピーカーシステムのインピーダンスは、4Ωから16Ωくらいである。
その意味ではインピータンスマッチングはとれていない。
それにもともと駆動源であるパワーアンプの出力インピーダンスは、
トランジスターアンプであれば、0.1Ωを切るほどに低い。

ここにインピーダンスマッチングの考えは、ないともいえるのだが、
スピーカーケーブルのインピーダンスがスピーカーのインピーダンスよりもかなり高いということは、
ケーブルでの減衰が発生することになる。

1970年代にビクターが発売していたスーパースピーカーコード(JC1100シリーズ)というのがある。
0.18mm径の7本撚りを十六芯平行ケーブルにしたもので、
このスピーカーケーブルのインピーダンスは13Ω程度とかなり低くなっていた。

ではこのスーパースピーカーコードは、理想に近いといえたのか。
少なくとも一般的なケーブルよりもインピーダンス的にはそういえなくもないが、
ビクターのこのケーブルだと、アンプが発振する場合もある、と聞いている。

プロ用機器のラインレベルでは、インピーダンスマッチングについて、
昔の機器であれば重要であったことは確かだ。

MC型カートリッジの昇圧トランスにおいても、
場合によってはインピーダンスマッチングがかなり有効なこともある。

ならばスピーカーにおいても──、
とつい考えたくなるが、ここにおいてはまだ答を出せずにいる。

Date: 7月 8th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(Aleph 3の場合)

7月のaudio wednesdayでは、
別項で書いているようにパワーアンプはPASSのAleph 3。

このアンプを使われている方ならば、
リアパネルを見たことのある人ならば、スピーカーケーブルの接続が、
難しい、やっかいとまではいかないものの、
少し面倒なことは確かなのはわかっているはず。

ヒートシンクで囲まれている筐体のどこに、
入出力端子、電源スイッチ、ACインレットがあるかというと、
ヒートシンクとヒートシンクの、わずかな隙間に垂直方向に配置されている。

この隙間の幅が広ければ何の問題もないのだが、狭い。
しかもスピーカー端子の取り付け方向から、ケーブルは上下から差し込むのではなく、
左右から差し込まなければならない。

スピーカー端子とヒートシンクの間は、それこそほんのわずかであり、
被覆を剥いたスピーカーケーブルの先端は直角に曲げなければ、
スピーカー端子の穴に入れることはできない。

つまり太いスピーカーケーブルは物理的に無理な端子の配置である。
末端処理をYラグでやったとしても、そのYラグを直角に曲げなければならないし、
それでも太いケーブルはかなり難儀するはずだ。

もちろんバナナプラグを使えば、ある程度の太いケーブルまでは楽に接続できる。
でも、私はバナナプラグ、
それも太いケーブルに対応した見た目が立派すぎるバナナプラグを、
決していいとは思っていない。

往々にしてキャラクターの強い音が、それらのバナナプラグを使うと乗ってしまうからだ。
それを、音が鮮明になった、と喜べる人はそれでいいと思う。

とにかく太いスピーカーケーブルだと面倒なことはわかっていたので、
最初から細いスピーカーケーブルを買ってきた。

オーディオテクニカのAT365Sという、細いスピーカーケーブルだ。
ここまで細くなくともいいが、細いケーブルでいいと思う。

Aleph 3の出力は8Ω負荷で30Wである。
このくらいの出力なのだから、このくらいの細さのスピーカーケーブルで十分だよ、
設計者のネルソン・パスがそういいたげなAleph 3の入出力端子の配置である。

Date: 2月 17th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・余談その2)

スピーカー端子もコイズミ無線で購入したもので、
いわゆる普及タイプのもので、特に凝った造りの端子ではない。

ファストン端子も含め、端子はそこに使われている材質、構造が音に影響する。
端子が介在することによる音への影響を積極的に利用するという手もあるが、
今回銀線を選択したこともあって、できるだけ端子に起因する音の影響を排除したかった。

いろんなケースで検証したわけではないが、銀線の音の印象を良くしていくには、
できるかぎり端子による音への影響を排除していくのがいいように感じている。

もっとも銅線でも同じなのだが、特に銀線はその傾向が強いのではないだろうか。

今回のスピーカーでは、内部配線の銀線をスピーカー端子に取り付けているわけではない。
エンクロージュアの外まで銀線をひっぱり出して、
アンプから来ているスピーカーケーブルとともに、スピーカー端子の穴に通している。

つまりスピーカーケーブルと銀線が直に接触している。
そのためのスピーカー端子、つまり固定用としての端子の使い方だ。

もちろん内部配線に使っている銀線をさらに長くして、
アンプの出力端子までもってくるという手もあるが、今回は上記のやり方をとった。

こまかなことではあるが、この手の配慮は確実に音に効いてくる。
トゥイーターを追加しているが、もちろんトゥイーターへの配線も銀線を使い、
スピーカー端子のところで、三本の線を接触させている。

普及クラスのユニット、普及クラスのエンクロージュア、
普及クラスの端子などを使っているが、
普及クラスだから、配慮をしなくていいわけではない。

普及クラスだからこそ、意を尽くしたい。

Date: 2月 16th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・余談その1)

別項「オーディオの楽しみ方(つくる)」で書いているスピーカーの内部配線材は、
銀線、それも単線のかなり細いものを使っている。

しかもかなり余裕をもたせた長さにしている。
ファストン端子は使っていない。
ユニットの端子に銀線をハンダ付けしている。

スピーカーケーブルの末端処理をする。
どんな端子、高価で立派そうに見える端子であっても、
むしろそういう端子のほうが、キャラクターの強い音にしてしまう傾向がある。

そんな傾向がのるのをわかったうえでやっているのであれば、
それはそれでひとつのやり方ではあると思うが、
私はできるだけ、こんなところで強いキャラクターをのせたいとは考えない。

ファストン端子は便利ではある。
でも、ファストン端子を使うのと使わないのとでは、音の差が生じる。
わずかな違いだろう、といわれても、使わない音を一度でも耳にしていれば、使いたくない。

今回使ったエンクロージュアは完成されたモノだから、
フロントバッフルも裏板も接着されていて外せないから、
最初の組立て後に、いろいろやっていこうと考えていたから、内部配線材は長めにした。

それに長めにすることで積極的に銀線の音を活かしたいという気持もある。
それがどのくらい効いているのかは、短くした状態の音を聴いていないので、
なんともいえないが、少なくとも最短距離にしてピンと張ってしまうよりは、
余裕をもたせた状態のほうが好ましい結果が得られることは、
ケーブルの種類に関係なくいえることだ。

ファストン端子を使わないことを徹底する意味でも、
スピーカー端子のところも一工夫している。

Date: 12月 30th, 2017
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その21)

送り出し側が600Ω負荷でも問題としなければ、
600Ωラインが音がいい、とは昔からいわれていることである。

もっとも600Ωにするために送り出し側にトランスを入れることを問題視する人もいるが、
トランスなしでも600Ωラインは可能であり、600Ω出しの600Ω受けはひとつのスタンダードだった。

600Ω負荷では、ラインケーブルに流れる電流は、ハイインピーダンス受けよりも電流が多く流れる。
つまり電流密度が高くなる状態だ。

そのことが600Ωラインの音の良さ、と説明する人は昔からいた。
600Ωラインにすれば、ケーブル、接点の影響も受けにくくなる、ということもいわれていた。

たしかにそう感じることはある。
けれど一方で、受け側のインピーダンスを、SUMOのThe Goldのように1MΩまで高くすると、
当然ラインケーブルに流れる電流密度はぐんと低くなる。

ならばケーブルや接点の影響を受けやすくなるかというと、
理屈ではそうではない。

たとえば接点。
接点のもつ接触抵抗の影響を受けにくくするには、電流を小さくすることはひとつの手である。
接触抵抗に電流をかけあわせた値、つまり電圧が発生して悪影響を与える。

接触抵抗が同じであれば電流が小さいほど、発生する電圧も低くなる。
これはケーブルのもつ直流抵抗に関しても、同じことがいえる。

The Goldを使っていたとき、最初はバランス入力で鳴らしていた。
しばらくしてGASのThaedraで鳴らすようになった。
アンバランスで、1MΩ受けとなる。

Thaedraのラインアンプは、小型スピーカーならばパワーアンプなしに鳴らせるくらいに、
終段のトランジスターにたっぷりと電流を流している設計で、
コントロールアンプとは思えぬほどシャーシーは熱くなる。

そうThaedraにとっては、受け側のインピーダンスの低さは問題にならないはずである。
けれどThaedraで鳴らしたThe Goldの音は、いろいろと考えさせるほどに見事な音だった。