Archive for category ケーブル

Date: 9月 30th, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その11)

バランス伝送の場合も同じである。
XLRプラグを開け、1番ピンの接続を片側だけ外す。
そしてアース線を用意して接続する。

一度知人宅で試したことがある。
知人宅のリスニングルームは広かった。

コントロールアンプをリスニングポイントの目の前に、
パワーアンプはスピーカーの中央に、という置き方だった。

コントロールアンプとパワーアンプ間はバランスケーブルで、
7mは優にこえていた、と記憶している。
上記のような最短距離での配線でも、これだけの長さが要るほどの広い空間だった。

ラインケーブルにおける左右チャンネルのアースの共通化(一本化)は、
ケーブルが長くなればなるほど効果的であることは理屈からいってもそうである。

それでも私が自分のシステムでやっていたときは部屋が狭いこともあって、
ケーブルが目につかないように部屋の端っこをはわせても、
せいぜいが3m程度であった。それでもはっきりと効果は聴きとれる。

それが倍以上の長さになると、どの程度の変化量となるのか。
その時知人が使っていたアンプはクレルだった。
おもしろいことにパワーアンプにもアース端子が備わっていた。

なので実験は、より簡単に行える。
知人にケーブルに手を加えることの了解を得て、
アース線には、一般的なスピーカーケーブル(太くない)を引き裂いて使った。

10分もかからずにできる。
そんな作業にも関らず、出てきた音の変化の大きさには、二人とも驚いた。
ケーブルの長さに比例して、というよりも、
二乗とまではいいすぎだろうが、それに近いのでは、と思うくらいの変化量だった。

1990年ごろの話で、いまほど高価すぎるケーブルはほとんどなかった時代だが、
知人が使っていたのは、当時としては高価な部類のケーブルであった。

つまり、どんなに高価なケーブルであっても、ここでやっていることは、
アースの明確化であって、それにはこういう方法をとる以外にない。

Date: 9月 29th, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その10)

私がいたころのステレオサウンドの試聴室で使っていたラインケーブルは、
ほとんどが1.5mか2m程度の長さだった。

それ以上の長さのケーブルももちろんあったけれど、
実際に使う長さのケーブルといえば、上記の長さのものだった。

この程度の長さのラインケーブルでも、(その9)で書いていることが発生する。
ラインケーブルのシールドで、
コントロールアンプとパワーアンプのアースは接続されている。

どんな導体にも直流抵抗はあるわけで、
たとえ1.5m程度のケーブルであっても、わずかとはいえ直流抵抗は存在する。
それからインダクタンスもある。

とはいえ、コントロールアンプ側のアースとパワーアンプ側のアースとに、
どれだけの電位差が生じるというのだろうか。

それから左右のケーブル間には浮遊容量が存在する。
1.5mもしくは2mのケーブルの引き回しかたによっては、
二本のケーブルの距離が広いところと狭いところができる。

それによって浮遊容量は変化する。
それでも左右チャンネルのシールドの電位は同じ、といってよい。
同電位間では浮遊容量の影響はほぼない。

こんなふうに考えていっても、理屈に合わないほどの音の変化が確かにある。
ならば試してみるしかないわけで、
ラインケーブルのシールドを、片側だけ外す。

コントロールアンプ側を外すのか、
パワーアンプ側を外すのか。

それは別項「境界線」で書いているように、
それぞれのアンプの領域をどこまでと考えるかによって違ってくる。

私はコントロールアンプの領域は、出力に接がれるラインケーブルまで、
つまりパワーアンプの入力端子まで、と考えるので、
ここではパワーアンプ側のシールドを外すことになる。

RCAプラグを開けて、シールド側にハンダづけされているのを外すだけである。
もちろん、こうしてしまうと音は基本的には出ない。
ただし機器間の浮遊容量があるため、実際には音が鳴ることがある。

そしてラインケーブルの他にアース線を用意して、
コントロールアンプとパワーアンプを接ぐ。

Date: 9月 24th, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その9)

私が働いていたころのステレオサウンドは、六本木五丁目にあった。
ビルの窓から顔を出せば東京タワーが、かなり大きく見える位置にあった。

六本木という繁華街、しかも東京タワーのすぐ近く。
オーディオ的な環境としては、そうとうに悪い。
だからこそ、セッティングに関しては鍛えられた、といえる面もある。

(その8)でちょっと触れたラインケーブルの引き回しの前に、
スピーカーケーブルの引き回しに関しては、
できるかぎり左右チャンネルのケーブルが同じところを通るように注意していた。

つまりFMのT字アンテナのようにスピーカーケーブルは配置する。
たったこれだけのことで、音場感はずいぶん改善される。

こんな引き回しだと左右チャンネルのセパレーションの確保が……、という人もいるだろう。
まったく影響がないとはいわないが、それ以上に、
左右チャンネルのスピーカーケーブルが物理的に離れてしまうことのデメリットが大きい。

蛇のようにくねくねした引き回しで、
部分部分で左右のスピーカーケーブルの距離が広がった狭まったりするようにすると、
とたんに音場感はこわれてしまう。

同じことがラインケーブルでも起るわけである。
ラインケーブルとスピーカーケーブル、どちらもケーブルであることに変りはないが、
スピーカーケーブルはスピーカーシステムに接続されるもので、
スピーカーは左右チャンネルで完全に独立している。

一方ラインケーブルは、コントロールアンプとパワーアンプ、
もしくはCDプレーヤーとコントロールアンプとのあいだを接続するケーブルで、
モノーラルパワーアンプ以外では、アースに関してはシャーシー内部で接続されている。

それでも同じ現象(音の変化)が、ラインケーブルでも起る。
このことで、DINケーブルのもつ優位性に気づくことができた。

Date: 9月 21st, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その8)

自作ケーブルのほうが、いわゆるオーディオ的には優れていた、といえる。
レンジ感も自作のほうが、あきらかにワイドレンジに聴こえる。

もともとのDINケーブルは、なんとなくナロウレンジにも感じた。
そのためもあって、センター定位がなんとなく安定しているように聴こえる──、
そんなふうに勝手に解釈してしまったところがある。

けれどアンプの場合、
RCAコネクターは左右チャンネルで分れていても、
アンプ内部ではアース側は結ばれている。

ステレオアンプであるかぎり、ほぼすべてのアンプでそうなっている。
例外はないはずだ。

つまりコントロールアンプ側でもパワーアンプ側でも、
アースは結ばれているわけである。

なのにコントロールアンプとパワーアンプを結ぶラインケーブルでは、
アース(シールド)が、左右チャンネルで分れている。

つまりどういうことなのかといえば、ラインケーブルの両端ではアース側は結ばれていて、
シールド(アース)は、ケーブルの長さの分だけのループを形成している。

もちろんケーブルの両端はアースに接続されいてるわけだから、
同電位であって、見た目上のループが形成されていても、問題がないように感じるし、
むしろ左右チャンネルのケーブル間でのクロストークを考えれば、
シールドは分れていたほうがよいようにも感じる。

けれど、このループの形成がいちど気になってくると、
これでほんとうにいいのだろうか、という疑問に変ってくる。

一度、井上先生の試聴で、こんなことがあった。
コントロールアンプとパワーアンプ間のラインケーブルが、
接続を替えた際に、物理的に少し離れてしまった。
といっても、いちばん広いところで20cmくらい離れたくらいだった。

そこに気づかれた井上先生が、
左右のラインケーブルをくっつけろ(近づけろ)といわれた。

Date: 9月 21st, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その7)

いまではほとんど使われなくなったDINコネクターだが、
1980年代ごろまでは、ヨーロッパのオーディオ機器にはけっこう使われていた。

ラインケーブルの場合、DINは一つの端子でまかなわれる。
RCAコネクターのように、左右チャンネルで分離というわけではない。
なので左チャンネル、右チャンネルのホット側、
それに左右チャンネル共通のアースとなる。

たいていの場合、ケーブルは左右チャンネルを一本ですませる。
二芯シールドであれば、芯線を左右チャンネルのホットに、
シールドをアースに接続すればいい。
それにDINコネクターは、太いケーブルはまず使えない。

RCAケーブルの立派なみかけのケーブルをみなれた目には、
DINコネクターの接続は、たよりなくうつる。

たとえばQUADのパワーアンプの405。
1976年登場の、このアンプの入力端子はDINである。
これをRCAコネクターに改造した人もけっこういるようである。

DINコネクターに、かなり無理をして左右チャンネル独立のシールド線を通した人もいよう。
私も、人に頼まれてずいぶん昔にやったことがある。

そこそこ評判のいいケーブルを使って自作した。
交換すると、音はよくなった、と感じた。
依頼した人も満足していたので、それでよかったのだが、
一つ、その時気になったのはセンター定位のことである。

この点、一点に関しては、もともとのDINケーブル。
つまり左右チャンネルで共通のケーブル(つまり一本)のほうが、
しっかりしているように感じた。

自分のシステムではなかいら、気の済むまでじっくりと、
その点に関して聴き込むことはできなかった。

これが最初の疑問の起りだった。

Date: 8月 30th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その5)

ジュリーニのマーラーの「大地の歌」は、1980年代の録音である。
サントリーのCMでも使われていたから、ジュリーニの演奏と知らずに耳にしている人は多い。

オーケストラの録音といっても、
「大地の歌」と「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」とでは、
録音時期の隔たりも大きいし、録音された音楽としてのつくりも大きく異る性質もある。

「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」がうまく鳴ると、
オーディオマニア的快感がはっきりとある。
その快感をとことん追求していきたければ、
硬く太く重たい、しかも高価な電源コードをあれこれ試してたくなるであろう。

「大地の歌」での電源コードによる音の違いは、もちろんあった。
あったけれど、「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」での音の違いと同じではない。

ここではカルダスの電源コードが、
「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」の時ほど魅力的に感じない。
カルダスの電源コードが悪い、といいたいのではなく、
かける音楽の構成、つくられ方などによって、魅力的に感じたり、
それほどでもなく感じたりする、ということである。

これは私の感じ方であり、
この日、いっしょに聴いていた人が、どう感じていたのかまでは確認していない。

「大地の歌」でもカルダスの電源コードがよかった、と感じた人もいたのかもしれない。

それに、ここでの音の印象は、あくまでも喫茶茶会記でのシステムでの音の印象である。
スピーカーが大きく違えば、「大地の歌」を聴いての印象に変化がない、とはいえない。

それにここできいたカルダスは、すでに製造中止になっている。
最新のカルダスや、ライバル的なブランドの電源コードを、数種類まとめて聴けば、
また印象は変っていくであろう。

今回の電源コードの比較試聴は、余興のつもりだった。
なので、それほど時間も割いていない。
やっていて、余興で終らせたくはない、と思ってもいた。

今回の試聴では、スピーカーケーブルは秋葉原では1mあたり80数円で売られているカナレ製だし、
ラインケーブルも1mあたり200円ほどの、
太くも硬くも重たくもない、そして高くもないケーブルである。

信号系のケーブルとの相性も、そうとうにあるように感じた。
機会をあらめたて、じっくり電源コードを集中的に比較試聴してみたい。

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その4)

AAとGGに通底するもの(その8)」で書いたことのくり返しになるが、
その時鳴った音は、
左右のスピーカーのあいだに、空気の密度が急激に高まった結果の見えない硬い壁ができ、
それをこれまた、異常に硬いもので叩いた、もしくは貫いた結果の音──、
そんな感じの音だった。

ジェット戦闘機が音速を超える際に発生するソニックブームとは、
こんな感じの音なのかも、と思えるような音だった。

アクースティックな楽器では、いかなる楽器をもってこようとも、
こんな音は絶対に出せないだろう、といった低音(衝撃音に近いかも)が伝わってきた。

これはこれで快感である。
聴く快感であり、こういう音を、周りに気にせず鳴らせることができるのも、
オーディオマニア的快感のはずだ。

でも、それがグレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲の再生には、
まったく寄与していないどころか、
奇妙な異和感をまとって鳴るのだから、やっぱり「欠陥」スピーカーとしかいいようがない。

「欠陥」スピーカーについて、また書き始めると横路にどんどんそれてしまうので、
このへんにしておくが、ゴジラのテーマ曲では、そういう面がずっと洗練されて、
音楽的な魅力をより高めているようにも感じただけに、
カルダスの電源コードでの鳴り方は、惹かれるものがあったし、
それだけでなく自作の電源コードをこれからどういじっていくかの方向も見えてきた。

8月7日のaudio wednesdayでは、自作のコードにちょっとだけ手を加えた。
そんなことは予定していなかったから、材料を持ち合わせていたわけではない。

それでも手元のモノで、どういう傾向になるのかの確認はできる。
試してみると、こういうふうに、やはり変って行くのか、ということを確認できた。

ただ、それから先に進むのかは、また微妙なところである。
それはジュリーニによるマーラーの「大地の歌」を聴いたからである。

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その3)

(その2)で書いたことは、映画だけのことではないようにも思っている。
私は行かないので、実際に鳴っている音がどんな感じなのか想像するしかないのだが、
クラブで鳴っている音というのも、共通するところがあるのではないのか。

こういう音は、アクースティックな楽器を、どんなにいい音で録音して、
それをうまく再生しても、そういう音にはまずならない。

けれど、オーディオマニアとして快感につながっていくと感じてしまうし、
自分の音として日常的に鳴らしたいとは思わないまでも、
一ヵ月に一度、たとえばaudio wednesdayのような集まりでは鳴らしてみたい、
聴いてみたい、と思うわけだ。

このことはスピーカーシステムの音についてもいえる。
別項「AAとGGに通底するもの」で書いている、
「欠陥」スピーカーとついいいたくなってしまう、とあるスピーカーのこと。

非常に高価だし、その時鳴らしていたアンプもCDプレーヤーもまた非常に高価だった。
ラックもケーブルも同じである。
信号、電源ともにケーブルはカルダスだったようにも記憶している。

2009年12月に行われた試聴会でのことだった。
グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲が、試聴会が始まる前から鳴っていた。

バッハのゴールドベルグだ、ということは会場に入ってすぐにわかっても、
誰の演奏なのか、すぐにはわからなかった。

グールドっぽい、とまず思った。
でも聴けば聴くほど、グールドとは思えなくなる。
そのくらい音楽を歪めている、と感じた音である。

試聴会で鳴らされたクラシックのディスクは、
どれも感心しなかった。
改めて「欠陥」スピーカーだ、と再確認できた、と思いながら聴いていた。

それでも最後のほうで鳴らされた一曲は、すごかった。
アメリカのハイエンドオーディオのマニアのあいだで流行っているディスクらしい。

ここでの低音の鳴り方が、今回ここで書いている音と同種、同傾向の音であった。

Date: 8月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その2)

とはいっても音を聴く前からそう感じていたわけではなく、
実際に四種類の電源コードの音を聴いてから、なるほどな、と感じていた。

「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」はサウンドトラック盤だから、
映画のなかで使われた音楽である。
そのなかでも、ゴジラのテーマ曲である。

日本のゴジラ映画を観てきた人にとっては、
懐しいともいえるメロディの、あの曲である。

とはいっても最新の演奏、最新の録音によるゴジラのテーマ曲である。

いつのころからだろうか、
映画の音、そして使われる音楽の音がはっきりと変ってきた、と感じている。
特にCGを使ったアクション、SF、ホラーといった映画で顕著に感じる。

それまでと違って、重量を感じさせる音が表現できるようになった、
そう感じている。

どの映画から、どの時代から、そういったこまかなことははっきりといえないものの、
よく重低音というけれど、実際の低音は重いわけではない──、
そんなことはオーディオの世界では以前からいわれ続けていることだが、
ここでは、文字通りの重低音のことである。

重低音という言葉から受ける印象通りの音のことである。

実際には、つまりナマの音としてこんな音は存在しないだろうが、
だからといってけしからん、とか、こんな音は認めない、などではない。

映画に必要な音であろうし、必要な音楽としての音として認めているし、
それになっといっても聴いていて快感であるのも事実だ。

カルダスの電源コードは、どちらも、この音の重量感に関しては、
聴き手のこちらを唸らせるものがあった。

Date: 8月 13th, 2019
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その6)

別項「オーディオの楽しみ方(つくる・その39)」で、
DIN用ケーブルを自作していて気づいたことがある──、と書いた。

このことが、ここで書いているアースの共通インピーダンスに関係してくる。
これも以前書いていることだが、オーディオ機器をモノーラル化していくうえでは、
一つとても気をつけなければならないことがある。

モノーラル化していくのは、音の出口に近い方から順にやっていくべきだ。
スピーカーシステムは左右独立しているから、
ようするにパワーアンプからモノーラル化をしていくべきである。

間違ってもステレオ仕様のパワーアンプ、コントロールアンプを使っていて、
D/Aコンバーターをモノーラル化するのは、
アースに着目して考えるならば、おかしなやり方である。

もちろんモノーラル化そのものを否定はしない。
それではっきりと聴きとれる効果があるのは事実だ。

ただし順序を間違えた安易なモノーラル化は弊害ももたらす。
その音への弊害に気づかないのだろうか。

パワーアンプをモノーラル化したならば、次はコントロールアンプ、
そしてD/Aコンバーターというのならば、納得できるモノーラル化の順序である。

D/Aコンバーターも、コントロールアンプもパワーアンプもモノーラル化した。
それでもマルチアンプをやっている人はデヴァイダーもモノーラル化しなければならない。

この順序を守らなかったからといって、ハムが出たりすることはない。
だからこそやっかいともいえる。

このモノーラル化の順序に気づかさせてくれたのが、DIN用ケーブルの自作であり、
1982年ごろに登場したディネッセンのコントロールアンプJC80の電源構成である。

Date: 8月 12th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その1)

8月のaudio wednesdayは、電源コードの比較試聴も行った。
愛知県からの常連のHさんが、カルダスの電源コードを二種類持ってきてくれた。
現行製品ではなくすでに製造中止になっている。

この他に、5月に自作した電源コードと、
それ以前に使っていた電源コード(ベルデン製に少し手を加えている)、
あわせて四種類の比較致傷を行った。

ベルデンに手を加えたモノは、常連のHさん(上のHさんと違う人)が気に入ってくれて、
最初に手を加えたベルデンの電源コードは、Hさん宅で使われている。
喫茶茶会記に置いているのは二本目である。

愛知のHさんは、以前にもカルダスの電源コードを持ってきてくれている。
短い時間だったが、その時も聴いている。
今回は、「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」のサウンドトラック盤から、
ゴジラのテーマ曲で試聴したことが、
前回聴いたときよりもカルダスの音の特徴を抽き出したようにも感じた。

私の自作の電源コードも、ベルデンの電源コードも、
いまとなっては太いとはいわない太さである。
それに硬くない。

硬くないから取り回しも楽である。
カルダスは太いだけでなく、硬くそれに重い。

電源コードの長さは、カルダスがいちばん短く、
ベルデンがいちばん長い。とはいえ極端に違うわけでもない。

それでもカルダスのモノが重い。
この硬さ、重さ、その他をふくめての感触の違いは、
実際の音の印象にかなり近い、と感じる。

Date: 7月 14th, 2019
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その18)

オーディオというシステムのなかには、いくつものコイルが存在する。
テープデッキのヘッドにも、コイルは存在する。

銀線採用が謳い文句のようになってきたころ、
ヤマハのカセットデッキのK1も、
メタルテープ対応以外にも、ヘッドの巻線を銀線に変更して、K1aへとモデルチェンジした。

さらにヤマハK1aをベースに、dbx対応としたK1dを出してきた。
K1もK1aもK1dも、ヤマハ独自のセンダストヘッド採用なだが、
K1dのヘッドの巻線が銀線なのかどうかは、いまのところはっきりしない。

K1dの内部は、K1aの内部とほぼ同じである。
dbxのエンコード/デコード用の基板が、
メイン基板の上に増設されているくらいの違いである。

もっともこれは目に見える範囲内だけの違いであって、
ヘッドにも変更が加えられているのかもしれない。

K1dのヘッドは銀線の可能性はある。

Date: 7月 22nd, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その5)

いまは違ってきているが、昔はプロ用機器はインピータンスマッチングが前提だった。
それに対しコンシューマー用機器は、
送り側のインピーダンスは低く、受け側のインピーダンスは、
送り側のインピーダンスよりも十分に高い値にするのが前提である。
いわゆるロー送りハイ受けである。

ところでMM型カートリッジの場合このインピータンスマッチングはおろか、
ロー送りハイ受けにもなっていないことに気づいたときは、
やはり驚いた。

国産アンプのPHONO入力はたいていは47kΩだった。
海外製は50kΩ(中には49.9kΩと細かく表示しているモノも)が多かった。

プレーヤーに付属していたカートリッジに慊らず、小遣いを貯めて買ったエラックのSTS455Eだと、
20kHzでのインピーダンスはアンプの入力インピーダンスよりも高くなっている。
これではロー送りハイ受けどころか、ハイ送り(若干)ロー受けとなっている。

STS455Eの実測データをみると、
33kΩ、47kΩ、100kΩでは2kHz以上の周波数特性に違いがある。
同じエラックでもCD4対応のSTS655-D4だと、このへんは違ってくる。

STS655-D4は4チャンネル対応ということなのだろうが、
コイルの直流抵抗は652Ω、インダクタンスは216mHとSTS455Eの約1/2であり、
20kHzのインピーダンスも27kΩと低いこともあって、
受け側のインピーダンスを変化させても、周波数特性の違いはわずかである。

それはアンプの入力容量をかえてもSTS455Eは変化量が大きいが、
STS655E-D6は小さい。

カートリッジの負荷抵抗は、共振周波数のQに関係してくる。
カートリッジの負荷容量は、共振周波数に関係してくる。

どちらも内部インピーダンスの高いカートリッジ、
つまりコイルの直流抵抗とインダクタンスがともに高いカートリッジほど、
負荷抵抗、負荷容量の影響が大きく出る。

Date: 7月 19th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その4)

1970年代のプリメインアンプ、コントロールアンプには、
PHONO入力に負荷抵抗切替えがついているモデルがいくつかあった。
負荷容量が切り替えられるモデルもあったが、
こちらはトーンアームの出力ケーブルでも調整できるため、
負荷抵抗切替えほどは多くはなかった。

そして、このころのオーディオ雑誌には、
負荷抵抗、負荷容量を変化させていった際のカートリッジの周波数特性の変化のグラフが、
よく載っていた。

オーディオに興味をもってすぐのころは、
MM型カートリッジ(MI型、IM型も含む)のインピーダンスが47kΩだと思い込んでいた。

だからアンプの入力インピーダンスは47kΩにすれば、
インピーダンスマッチングがとれるものだ、とも思い込んでいた。

でも数ヵ月もすると、そうでないことがわかってくる。
カタログを見ても、MM型カートリッジのインピーダンスの項目は、ないものもけっこうあった。
インピーダンスを表記しているものでも、1kHzの値でしかなかった。

MM型カートリッジにもMC型カートリッジにもコイルは必要であるが、
コイルの巻数が多く違う。

カートリッジのインピーダンスの等価回路は、
コイルの直流抵抗とコイルのインダクタンスが直列に接続されたものだ。

コイルの巻数が少なければ、可聴帯域におけるインダクタンスの影響は無視できるほどで、
実際に測定してもほぼフラットで、その値はコイルの直流抵抗値といっていい。

ところがMM型カートリッジとなると、そうはいかない。
低域では直流抵抗が支配的で、中域以上ではインピーダンスが上昇していく。

たとえばエンパイアの4000D/IIIのコイルの直流抵抗は432Ω、インダクタンスは166mH、
エラックのSTS455Eは1310Ωと508mH、オルトフォンのVMS20Eは900Ωと625mH、
シュアーのV15 TypeIIIは1350Ωと434mH、スタントンの681EEEは1560Ωと845mHである。

インピーダンスは、というと、4000D/IIIが1.1kΩ(1kHz)、10.4kΩ(10kHz)、21kΩ(20kHz)、
STS4555Eが3.5kΩ(1kHz)、32kΩ(10kHz)、64kΩ(20kHz)、
VMS20Eがが4.0kΩ(1kHz)、40kΩ(10kHz)、80kΩ(20kHz)、
V15 TypeIIIが3.0kΩ(1kHz)、27.3kΩ(10kHz)、55kΩ(20kHz)、
681EEEが5.5kΩ(1kHz)、53kΩ(10kHz)、105kΩ(20kHz)となっている。

Date: 7月 18th, 2018
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(BTSの場合・その3)

スピーカーのインピーダンスは、カタログには4Ωとか8Ωと表記されていても、
可聴帯域内だけをみても、大きく変動していることはいうまでもない。
そんなインピーダンスカーヴをもつスピーカーに対して、
スピーカーケーブルのインピーダンスを4Ωとか8Ωとしたところで、
どれだけのメリットが考えられるのか、となると、なかなか難しい。

インピータンスマッチングの代表例である600Ωラインは、
送りの出力インピーダンスも、ケーブルのインピータンスも、受けの入力インピータンスも、
600Ωで統一されている。

これをスピーカーとパワーアンプにあてはめれば、
スピーカーのインピータンスが8Ωなら、
ケーブルのインピータンス、パワーアンプの出力インピーダンスも8Ωとなる。

これを実現したとして、どれだけの意味があるのか。
たとえばテクニクスのリーフ型トゥイーターの10TH1000は、
そのインピータンスカーヴをみると、受持帯域においては8Ωと一定である。

こういうユニットをマルチアンプで、ネットワークを介さずにドライヴするのであれば、
8Ωラインというのを構築してみるのも興味深いように思われるが、
10TH1000のようなユニットは、他にはそれほどないし、
コーン型ユニットにはまずない。

600Ωラインは、伝送距離がコンシューマーオーディオよりもずっと長い。
スピーカーケーブルは、短くしようと思えば、
アンプにプリメイン型ではなく、セパレート型にし、さらにパワーアンプをモノーラルにして、
スピーカーシステムの間近に設置すれば、1mよりも短くしようと思えば可能である。

そしてパワーアンプとスピーカーのインピータンスに関しては、
ダンピングファクターという要素も関係してくる。
そうなるとスピーカーにおけるインピータンスマッチングは……、である。

インピータンスマッチングでは、MM型カートリッジもほとんど無視といえる状態だ。