ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(電源の場合・その3)
(その2)で書いたことは、映画だけのことではないようにも思っている。
私は行かないので、実際に鳴っている音がどんな感じなのか想像するしかないのだが、
クラブで鳴っている音というのも、共通するところがあるのではないのか。
こういう音は、アクースティックな楽器を、どんなにいい音で録音して、
それをうまく再生しても、そういう音にはまずならない。
けれど、オーディオマニアとして快感につながっていくと感じてしまうし、
自分の音として日常的に鳴らしたいとは思わないまでも、
一ヵ月に一度、たとえばaudio wednesdayのような集まりでは鳴らしてみたい、
聴いてみたい、と思うわけだ。
このことはスピーカーシステムの音についてもいえる。
別項「AAとGGに通底するもの」で書いている、
「欠陥」スピーカーとついいいたくなってしまう、とあるスピーカーのこと。
非常に高価だし、その時鳴らしていたアンプもCDプレーヤーもまた非常に高価だった。
ラックもケーブルも同じである。
信号、電源ともにケーブルはカルダスだったようにも記憶している。
2009年12月に行われた試聴会でのことだった。
グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲が、試聴会が始まる前から鳴っていた。
バッハのゴールドベルグだ、ということは会場に入ってすぐにわかっても、
誰の演奏なのか、すぐにはわからなかった。
グールドっぽい、とまず思った。
でも聴けば聴くほど、グールドとは思えなくなる。
そのくらい音楽を歪めている、と感じた音である。
試聴会で鳴らされたクラシックのディスクは、
どれも感心しなかった。
改めて「欠陥」スピーカーだ、と再確認できた、と思いながら聴いていた。
それでも最後のほうで鳴らされた一曲は、すごかった。
アメリカのハイエンドオーディオのマニアのあいだで流行っているディスクらしい。
ここでの低音の鳴り方が、今回ここで書いている音と同種、同傾向の音であった。