Archive for category アナログディスク再生

Date: 2月 5th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その5)

2月1日のaudio wednesdayでは、この部分、
片持ちになっている先端(プレーヤーボードの右奥の角)に下に、ものをかませることにした。

あらかじめ、喫茶茶会記のアナログプレーヤーについて細部を見ておけばよかったのが、
それを怠ったため、当日になって三点支持だったことに気づいた。
最初からわかっていれば、手頃な角材でも用意してくるのだが、そういう用意はない。

喫茶茶会記にも使えそうな角材はなかったので、アルミケースを使うことにした。
高さが数cmほどたりないので、厚手のフェルトを二枚折り重ねて高さを、なんとか合せる。

なのでがっちりとプレーヤーボードの右奥の角を支えているわけではない。
軽く支えている程度ではあるし、アルミケースも共振体になってもいるが、
それでもはっきりとした効果が、音になって聴きとれる。

片持ち部分を片持ちにしないだけでも得られる変化であり、
よりきちんとした支えにすれば、変化はもっとはっきりしたものとなる。

同じことが十年以上前にもあった。
あるオーディオ店で、あるスピーカーが鳴らされていた。
決してうまく鳴っているといえなかった。

オーディオ店は営業時間だったが、平日ということもあってか、
客は私ら以外にはいなかった。
店のスタッフがひとり、私らが四人で、そのうちの一人がスタッフと顔なじみということもあって、
なんのすこしだけセッティングを変えることになった。

どこをいじってもよかったのだが、いちばん気になっていたところ、
エンクロージュア上部にあるトゥイーターの後部が片持ちになっているところを、
柔らかい素材を使って、軽く後部先端を支えた。

あまり強く支えてしまうと、別のテンションをがかかってしまうため、過度にやり過ぎないことである。
この効果は、やはり大きかった。

ちょうどアコースティックギターが鳴っていたのが、
エレキギター的な音に聴こえていた。
たったこれだけのことでアコースティックギターとして鳴ってくれる。

このときかかった時間も数分程度で音の変化は大きく、
多くの人の耳にもはっきりとわかるぼどである。

腕自慢をしているのではない、
片持ちが音に与える影響と、そこを対処することによる音の変化の確実さを知ってほしいだけである。

もちろん製品によっては、そういったことをわかったうえであえて片持ちにしているモノがないわけではない。
いわゆる音づくりのための片持ちがあるのは理解しているが、
そうではない片持ちの方が多いというのが現状だ。

Date: 2月 4th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その4)

アナログプレーヤーの中心は? ときかれて、どこだと答えるか。
アナログプレーヤーの中心をどう定義するかによっても違ってくるが、
ターンテーブルの中心と答える人が多いのではないだろうか。

ターンテーブルプラッターは回転しているわけだから、
そのセンターはまさしく中心といえる。

そういう考えからすれば、
今回使用したガラード401用のプレーヤーボードは、
その中心が三点支持の中、それも中心に近いところに位置している。

手前が二点、後方が一点の三点支持により形成される三角形の右側には、
片持ちの三角形が存在することになる。

しかもこの三角形はトーンアームがロングアームということもあって、
標準長のトーンアームの場合よりも面積は広いものとなる。

世の中に完全剛体の材質があれば片持ちの構造の影響も抑えられるだろうが、
現実にはそんな材質はないし、アナログプレーヤーの周りをさまざまな振動が囲っている。

一枚の板の一辺を固定して振動させれば、もっとも振幅が大きくなるところはどこだろうか。
その部分にトーンアームを取り付けるということはどういうことなのか。

私はアナログプレーヤーの中心は、
ターンテーブルの中心ではなく、トーンアームの回転軸だと捉えている。

今回の片持ちの構造だと、
私が考えるアナログプレーヤーの中心が大きく揺すられることになる。
もちろんその振動は目で捉えられるわけではないが、
振動モードを解析してみるまでもなく、片持ちの先端がどういう状態なのかは容易に想像がつく。

Date: 2月 3rd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その3)

今回使用したアナログプレーヤーは、いわゆる自作プレーヤーということになる。
ガラード401が取り付けられている木製ボードと、台座から構成されていて、
台座は三点支持であるから、ボードとも三点で接している。

ボード手前の両端と後側の一点の三点である。
後側の一点は左側に寄ったところであり、
おそらくこのプレーヤーを自作した人は重量バランスを配慮しての、
こういう三点の配置にされたのだろう。

三点支持のオーディオ機器は多い。
けれど三点支持はガタツキがなく、楽ではあるが、必ずしも音の面で有利とはいえない。

三点支持によって形成される三角形の中に、オーディオ機器が収まっている関係であれば、
三点支持は確かにいい。
けれど実際にはそんな三点支持はほとんどない。

今回のプレーヤーにおける音質上の問題点は、ここにある。
どうしても三点支持にするのであれば、私なら前後を逆にする。
手前側を一点にして、後側両端の三点支持とする。

このプレーヤーキャビネットを製作された人は、
アナログプレーヤーを前後左右に動かして、それぞれの音を確かめられていないのかもしれない。

アナログプレーヤーは置き場所によって音が変ることはよく知られている。
けれど同じ置き場所(ラックや置き台)であっても、
ラックなら棚板の大きさに少し余裕があるから、前に動かしてみたり、左右に動かしてみたりできる。
斜めに動かすこともできる。

動かせる範囲は狭い。
狭いけれど、ここでの音の変化は決して小さくない。
しっかりした置き台であろうと、少しヤワな置き台であっても、
重量級のプレーヤーであろうと、軽量級のプレーヤーであろうと、
はっきりとした変化が聴きとれる。

この経験がある人ならば、少なくとも三点支持で後一点で、
しかもトーンアームの軸があるところを片持ちにすることはしないはずだからだ。

Date: 2月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その2)

ふたつのスタビライザーを用意して、聴ける音は三つ、と考えがちだ。
スタビライザーを使わない音、
トーレンスのスタビライザーにした音、山本音響のスタビライザーにした音。

けれどスタビライザーがひとつでも、基本的に三つの音を聴くことができる。
だからふたつのスタビライザーがあれば、七つの音が聴ける。

このスタビライザーの、少し意外な使い方による音の変化は大きい。
スタビライザーをレコードのレーベルに乗せるのは、個人的にはあまり好まない。
使う時もあれば、使わない時もある。

スタビライザーの使用によって、音が良くなると考えるよりも、
トーンコントロールみたいなものと思って使っている。
使うスタビライザーの性質をわかっていれば、乗せたり外したりは、すぐに判断がつくようになる。

このスタビライザーによる七つの音は、最後にもう一度行った。
スタビライザーの少し意外な使い方は、私が担当した井上先生の記事で書いている。
記事を憶えている方ならば、すぐにわかるはずだ。

松田聖子のLPをくり返し聴いていたときに、
参加された方の聴いているポイントは少しずつ違っていた、と感じた。

私はというと、Kさんが松田聖子のディスクを持参されることもあって、
ここ数年聴く機会が増えた。

松田聖子のデビューは1980年だから、まだ実家暮しで、
テレビから流れてくる松田聖子の歌を聴くくらいだった。
松田聖子のディスクを買ったことはなく、
1980年ころのテレビでの松田聖子によって、イメージができ上がっていた。

アイドル歌手としての松田聖子だった。
でも松田聖子のCDなりLPを聴く機会があって、感じたのは松田聖子はプロの歌手だということ。
だから松田聖子の声質よりも、松田聖子の歌の表現力がどれだけ拡がるかを、まず聴いている。

Date: 2月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その1)

アナログディスク再生といっても、
セッティングはいつものと基本的には同じ。

いつもCDプレーヤーを置いている位置にアナログプレーヤーを置いた。
スピーカーのセッティングは、実は毎回少しずつ変えている。
視覚的にもわずかな変化だから、毎回来られている方も気づいていないかもしれない。

アナログディスク再生・序夜のアナログプレーヤーは、
何度も書いているようにガラードの401に、オルトフォンのSPUとRMG309の組合せ。
昇圧トランスはオルトフォンのST5である。

この他に常連のKさんがシェルターの昇圧トランスと、
トーレンスと山本音響のスタビライザー、それから是枝重治氏のフォノイコライザーアンプを持参された。

是枝重治氏のアンプは、デンオンのDL103様の昇圧トランス(初期型)を内蔵したもので、
真空管ではなくOPアンプ構成の小型のモノである。
これらを使い、約四時間、あれこれやっていた。

最初に、おおまかなセッティングの調整。
最初に来られたKさん持参のLP(松田聖子)に固定した。
一時間以上、松田聖子の一曲をくり返し聴いていた。

音は確実に変化していくので、楽しいと思う人もいれば、
少なくとも10回以上、20回近く、同じ曲の同じところをくり返し聴かされることにうんざりされたかもしれない。

松田聖子のLPを使ったセッティングは、19時の開始前にやっておく手もあった。
でも、どういうことでアナログディスク再生は音が変化するのかを体験してもらいたかったのと、
私自身、ひどく体調不良で、そこまでの余裕がなかった、ということもある。

松田聖子のLPで、昇圧トランスはシェルターにした。
接続ケーブルもKさん持参のモノにした。トランスの置き方もいくつか試した。

松田聖子のLPで決めたことのひとつは、スタビライザーの使い方である。
トーレンスと山本音響の、ふたつのスタビライザーを聴いた。

スタビライザーを使わない音から始まり、七つの音を聴いた。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その7)

このリード線の処理は、
ステレオサウンド 87号(1988年)の時代よりも、
いまのほうがより重要なポイントといえる。

いうまでもなくカートリッジ出力信号は微小信号である。
しかも低域においては中域よりもレベルが下っていくし、
ローレベルの信号はさらに下るわけである。

実際に自分で計算してみると、ぞっとするような小さいな値になる。
リニアトラッキングアームではリード線の可動範囲がどうしても大きくなる。
この部分をうまく処理しないと、
アナログディスク再生の魅力を大きくスポイルすることになってしまう。

最近のハイエンドのトーンアームの中にも、
リード線の処理について無頓着な製品をみかける。

自走式プレーヤーとなると、このリード線の処理がネックになる。
なにせトーンアーム自体が毎分33 1/3回転、それが約20分ほど続くわけだから、
どの部分からリード線を引き出して、どうするのかをきちんと考えないと、
実際の再生はおぼつかなくなる。

解決策は、ひとつは考えてある。
ただし、この解決策では実験は可能でも、製品とすることは難しい。
なので、なんらかの工夫がさらに必要となってくる。

それでは実際にサウザーのSLA3と同じ機構のリニアトラッキングアームで、
自走式プレーヤーにするかといえば、
ここにもさらなる工夫が必要となる。

リニアトラッキングアームを自分のモノとして使ってはいないが、
ステレオサウンドの試聴室で使っている。
気づいている点がいくつかある。

その点に関しても、考えていることがある。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その6)

ステレオサウンド 87号に「スーパーアナログプレーヤー徹底試聴」が載っている。
副題として、
「いま話題のリニアトラッキング型トーンアームとフローティングがたプレーヤーの組合せは、
新しいアナログ再生の楽しさを提示してくれるか。」
とつけている。

私が担当した企画(ページ)である。
ここで取り上げたのはSOTAのStar SapphireにエミネントテクノロジーのTonearm 2、
オラクルのReferenceにエアータンジェントのAIRTANGENT II、
ゴールドムンドのStudietto、
バーサダイナミックスのMODEL A2.0にMODEL T2.0である。

ゴールドムンドだけがサーボコントロールを採用している、
いわば電動型のリニアトラッキングアームである。

これら四機種は、どれも未完成品といえるアナログプレーヤーばかりである。
87号が手元にある方はページを開いてほしい。

大見出しに
「趣向をかえたプレーヤー試聴。いずれも『未完成』の魅力をもっている。」
とつけている。

この時の試聴は輸入元の担当者にあらかじめセッティングと調整をお願いした。
試聴は、そのセッティングをいじることなく、場所の移動もすることなく、始めた。

それでも一部の機種では不都合が生じ、私が調整しなおすことになった。

実際にこれらのアナログプレーヤーを触ってみると、
未完成品といいたくなる。

もちろんすべてのオーディオ機器が100%完成品といえるわけでもなく、
その意味では少なからず未完成の部分も保留しているけれど、
そういう意味ではなく、もっと積極的な意味での未完成品である。

だから、この記事ではリード線の処理について、写真とともに解説をつけている。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その5)

1980年代なかば、アメリカからSOUTHER(サウザー)というブランドの、
カートリッジの送りにモーターを使っていた、それまでのリニアトラッキングアームとは違う、
モーターに頼らないタイプのリニアトラッキングアームSLA3が登場した。

日本での当時の輸入元はサエク・コマース。
価格は220,000円していた。

SMEのトーンアームと比較すると、完成度という点では劣る、といえた。
でもモーターを使わないリニアトラッキングアームは、新しく見えた。

サウザーの評価はアメリカの一部では高かったようだ。
その後、エミネントテクノロジー、エアータンジェント、
バーサダイナミックスといったブランドが、
リニアトラッキングアームをひっさげて登場してきた。

サウザーのSLA3はモーターを使わないだけではなく、
アームパイプが存在していないことも目を引く。
パイプがなければ、パイプに起因する問題は起こらないわけで、
このメリットはかなり大きい、といえる。

パイプをなくしたリニアトラッキングアームはSLA3が最初ではなく、
ルボックスのB790もパイプをもたない機構のはずだ。

私がいま思い描いている自走式プレーヤーは、サウザーのSLA3に近いといえば近い。
SLA3は通常のプレーヤー、つまりターンテーブルが回転するプレーヤーに取りつけて使う。

ここで発想を逆転させて、ターンテーブルをストップさせて、
なんらかの方法で SLA3を回転させたら……。
これが出発点になっている。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その4)

アナログプレーヤーはターンテーブルを持つ。
ターンテーブル(turntable)の名の通り、回転する、直径約30cmの円盤である。

円盤の材質は金属が多いが、最近では金属以外の材質も増えている。
重量も数十kgを超えるモノもあれば、軽量級のモノもある。
それぞれに能書きがある。

円盤といってもすべてがフラットな形状ではない。
ここにも各社さまざまな工夫がみてとれる。

ターンテーブルの駆動方式も、ダイレクトドライヴ、ベルトドライヴ、リムドライヴがあり、
それぞれに特徴がある。

アナログプレーヤーのターンテーブルに関することは、
あのサイズの円盤を回転させることによって生じているといえ、
それゆえの難しさと、からくりが成立している。
ここにアナログディスク再生のおもしろさがある。

とはいえ、この時代にもういちどアナログディスク再生を考えてみるときに、
ターンテーブルの存在に縛られすぎてはいないだろうか、というおもいがある。

ターンテーブルの存在について考えていくのもおもしろいし、
別項「ダイレクトドライヴへの疑問」で書いているわけだ。

だがそれとは別の視点でのアナログプレーヤーの発想も必要だと思う。
ソニーのCDP5000がディスクを移動させたのと同じようなことを、
アナログプレーヤーで考えると、それは自走式ということになる。

自走式であればターンテーブルはいらない。
回転しないターンテーブルだから、円盤状のテーブルである。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その3)

サウンドワゴン(レコードランナー)にしても、
類似のモデルにしても、そのままではオモチャに属する。

類似の方はブルートゥースで信号を送ることが可能で、
外部スピーカーを鳴らせるというものの、本格的なオーディオシステムを組むモノではない。

サウンドワゴンそのものをオーディオマニア的視点で捉えたいわけではなく、
自走式プレーヤーをオーディオマニアとして捉えてみたい。

アナログディスク関連の自走式といえば、レコードクリーナーもあった。
オーレックスのDC30(4,500円)、
Lo-DのAD093(4,500円)、AD095(8,900円)、
マクセルのAE320(4,500円)、AE341(5,600円)などが、1980年代前半にあった。

同じ自走式といっても、サウンドワゴンの自走と、
レコードクリーナーの自走とは違う。
リンクしているAE320の広告を見ればわかるように、
自走式レコードクリーナーはアナログプレーヤーを必要とする。

正確に言えばセンタースピンドルを必要とする。
サウンドワゴンも類似のモノも、センタースピンドルは必要としない。
だからサウンドワゴンはどんな場所でも、アナログディスクを再生できる。

私が考えているのはセンタースピンドルを必要とする自走式プレーヤーである。
つまり形状としては、サウンドワゴンではなく、AE320に近いモノとなる。
あくまでもアナログディスクを置く台(センタースピンドルも含んで)とのセットでの考えである。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その2)

プロ用機器としてのCDプレーヤーは、ソニーのCDP5000、デンオンのDN3000Fが早かった。
CD登場の翌年1983年のことだ。

どちらもモデルも一部改良され、CDP5000S、DN3000FCとなり、
コンシューマー用として発売になった。
価格はどちらも180万円だった。

CDP5000はメカニズムは、同じプロ用機器であるデンオンとも、
他のコンシューマー用機器とも違っていた。

ディスクが回転し、ピックアップが移動しながらトレースしていくのだが、
ソニーはディスクが回転しながら移動する方式を採っていた。

つまりピックアップは固定された位置から動かずに、
逆転の発想でディスクが移動することでトレースを可能にしている。

アナログプレーヤーのピックアップと違い、
CDプレーヤーのピックアップにはサーボ技術が不可欠である。
ピックアップ部には複数のサーボがかけられているため、その分配線の数も、
モーターへの配線よりも多い。

配線の数の多いピックアップを動かすよりも、
配線の数の少ないディスク(モーター)を動かした方が合理的という考えもできる。
ソニーはそれをやっている。

CDP5000の音は、きわめて安定感があった。
この安定感だけでも、このCDプレーヤーが欲しい、と一瞬でも思った。

ただ180万円という価格と、通常のCDプレーヤーとは大きく異る形態に、手は出せなかった。
それでも、いまも記憶に残る音を聴かせてくれた。

頭で考えればディスクを移動させることは、なんだか不安定な要素になりそうな気もするのだが、
実際の音は違っていた。

ということは自走式プレーヤーも、そうなのかもしれない。

Date: 12月 18th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その1)

いまから30数年前、
当時ステレオサウンドの弟分にあたる月刊誌サウンドボーイの表紙に、
レコード盤の上におかれたフォルクスワーゲンのTYPE 2というプラモデルが使われていた。

この表紙だけでは、どういうことなのかすぐにはわからなかったけれど、
この製品はサウンドワゴンといって、ボディ下部にカートリッジ、
内部にアンプとスピーカーを備えている、いわば自走式のアナログプレーヤーだった。

通常のアナログプレーヤー(当時はレコードプレーヤー)は、
レコードを回転させる。
サウンドワゴンは静止したレコード盤面を、再生しながら走っていく。
確かサウンドボーイの表紙のサウンドワゴンは、
表紙として見映えするように、他のプラモデルのパーツを流用していたはずだ。

面白いモノが出た、と誰もが思ったはずだ。
手に入れた人も少なくないだろう。
手に入れなくとも、記憶に残っている人は多いはずだ。

サウンドワゴン。
本格的なオーディオ機器というわけではないこともあって、
関心を持続していたわけではなかった。
それに製造中止になった、ということも聞いていた。

それから、どのくらい経っただろうか、サウンドワゴンが復活した、というニュースをどこかで見た。
でも、それほど熱心に読んだわけでもなく、また忘れてしまっていた。

そのサウンドワゴンのことを思い出しているのは、ある記事を読んだからだ。
逆(回)転の発想! レコードの上を回って再生するスピーカー」というタイトルがつけられていた。

この記事で使われている写真は、レコードの上に四角い箱が乗っている。
記事を読んでもらえばすぐにわかるが、サウンドワゴンと同じモノの紹介である。

この記事の執筆者がどの世代の人なのか知らないが、
少なくともサウンドワゴンを知らない世代なのは間違いないだろう。
それに、過去に同じような物がなかったかを調べもしない人なのだろう。
編集部も、そのへんのチェックをせずに、おまかせで記事を依頼しているのだろう。

こういうことを、DeNAのキュレーションサイトが問題になった直後にやってしまう。
また「インターネットはくずだね」と思っている人を喜ばせることになる。

上記記事で紹介されているモノは45回転にも対応できる、とある。
サウンドワゴンは33 1/3回転のみであるという違いはある。

サウンドワゴンは名前を、レコードランナーに変えて現行製品である。

なつかしいな、とまず思った。
それから考えたのは、自走式のアナログプレーヤーの可能性についてである。

Date: 12月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

対称性(その8)

B&OのBeogram以前にもリニアトラッキングアーム搭載のプレーヤーはあった。
マランツのSLT12がそうだし、ナショナル(まだテクニクス・ブランドができる前)のFF253などがあった。
だが1976年ごろは、B&O以外のリニアトラッキングアームのプレーヤーが、
他にどういうモノがあったか、すぐに思い出せる人は少ない。

1977年になると日本からマカラが登場し、
海外ではルボックスからも登場した。
その後、国内からはヤマハ、ダイヤトーン、テクニクス、パイオニアなど、
海外からはハーマンカードン、ゴールドムンドなどからも出てきた。
さらにリニアトラッキングアーム単体も登場してきた。

そういう時代を見て(聴いて)感じるのは、リニアトラッキングアームは、
理想なのか、理想とまではいえなくとも理想にもっとも近いトーンアームの形態なのだろうか、
という疑問である。

レコードのカッティングではカッターヘッドは半径方向に直線に移動する。
リニアトラッキングアームも同じである。
その意味では、カッティング時と再生におけるトレース時の対称性はある、といえる。
一般的なカートリッジの針先が直線ではなく、円弧を描くトーンアームでは、
カッティング時との対称性は崩れてしまっている。

リニアトラッキングアームの問題点は、いくつかある。
これらすべてを解消した、としよう。
そうなったら、通常の円弧を描くトーンアームよりも圧倒的に優れている、となるのか。

カッターヘッドの針先とカートリッジの針先の軌跡。
この点だけで判断すれば、リニアトラッキングアームにまさるモノはない。

けれどカッターヘッドとカートリッジが、構造的に対称性がないといえる。
ウェストレックスのカッターヘッドとウェストレックスのカートリッジ10Aは、
構造的に対称性がある。
10Aというカートリッジならば、リニアトラッキングアームに装着することで、
カッティング時との対称性は非常に高い。

実際のカートリッジは10Aのような構造になっていない。
カッターヘッドと相似の構造とはいえない。
そういうカートリッジが、トーンアームの先に取りつけられている。

Date: 12月 6th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その29)

ここまで読まれて、ふと疑問に思われた方もいるのではないだろうか。
SMEの3012-R Specialをロングタイプ、ロングアーム、
3009-R、3010-Rをショートタイプ、ショートアームとしている。

3012-Rをロングとするならば、3009-R、3010-Rは標準長なのだからショートとするのは間違っている。
3012-Rを仮に標準長とするならば、3009-R、3010-Rはショートということになるが、
この場合は3012-Rをロングとするわけにはいかない。

このことはわかっていてロング、ショートと書いている。
3012-Rはやはりロングアームであって、これを標準長のアームとするわけにはいかない。
けれどカートリッジを取りつけてトーンアーム単体として見た場合、
やっぱり美しいと思い、この長さがあっての美しさということを考えると、
3009-R、3010-Rは、感覚的に私にとってはショートとなってしまう。

私にとってロングサイズが想像できないのは、SMEの3009 SeriesIIIぐらいである。
このトーンアームを見て、ロングが欲しい、とおもったことは一度もない。
3009 SeriesIIIは使えるカートリッジがやや制約を受けるけれど、SMEの傑作のひとつだと思っている。

フィデリティ・リサーチのNRT40もまた、
私と同じようにロングアームの美しさに惹かれた者によるプロトタイプのように思う。

NRT30でよかったはずである。
トーンアームもFR66SではなくFR64Sがすれば、ターンテーブルプラッターは30cmですむ。

それをわざわざ40cmにしてFR66Sにしているのは、
ロングアームのためのターンテーブルをなんとかしたかったから──、以外の理由があるだろうか。

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その28)

どうすればSMEの3012-R Specialを取りつけて、美しいプレーヤーシステムが出来上るのか。
しばらく考え続けていた時期がある。
現行製品だけでなく、過去の製品も含めて頭の中でイメージを思い浮べていた。

ガラードの301、トーレンスのTD124も候補として考えたこともある。

オーディオクラフトからAR110が1983年に出た。
AR110Lも同時に出た。型番末尾のLが表すようにロングアームがつく。

期待した。
オーディオクラフトの製品でもあるからだ。
でも新製品として、ステレオサウンド試聴室に届いたモデルには、
ある致命的な欠陥があった。
これでは安心して使えない、ということで候補からは脱落した。

そうこうしているうちに、トーレンスからReferenceよりも安価で、
しかもロングタイプのトーンアームが装着できるモデルが登場するというニュースが入ってきた。

Referenceには3012-R Specialは取りつけられない。
無理をすれば取りつけられるのだが、
Referenceは、その価格ゆえに候補として考えはなかった。

待ちに待ったPrestigeが試聴室に到着した。
見て、触れて、音を聴いて、欲しいとは思えなかった。

こんなことをくり返しているうちに気づいた。
ロングアームがトーンアームには、30cm口径のターンテーブルプラッターは似合わないのだ。
ロングアームそのものが16インチのディスクのためにあるということは、
結局ターンテーブルプラッターの径も16インチ(約40cm)前後なければ、
私が求めている美しいバランスは得られないのだ。