Archive for category アナログディスク再生

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その3)

サウンドワゴン(レコードランナー)にしても、
類似のモデルにしても、そのままではオモチャに属する。

類似の方はブルートゥースで信号を送ることが可能で、
外部スピーカーを鳴らせるというものの、本格的なオーディオシステムを組むモノではない。

サウンドワゴンそのものをオーディオマニア的視点で捉えたいわけではなく、
自走式プレーヤーをオーディオマニアとして捉えてみたい。

アナログディスク関連の自走式といえば、レコードクリーナーもあった。
オーレックスのDC30(4,500円)、
Lo-DのAD093(4,500円)、AD095(8,900円)、
マクセルのAE320(4,500円)、AE341(5,600円)などが、1980年代前半にあった。

同じ自走式といっても、サウンドワゴンの自走と、
レコードクリーナーの自走とは違う。
リンクしているAE320の広告を見ればわかるように、
自走式レコードクリーナーはアナログプレーヤーを必要とする。

正確に言えばセンタースピンドルを必要とする。
サウンドワゴンも類似のモノも、センタースピンドルは必要としない。
だからサウンドワゴンはどんな場所でも、アナログディスクを再生できる。

私が考えているのはセンタースピンドルを必要とする自走式プレーヤーである。
つまり形状としては、サウンドワゴンではなく、AE320に近いモノとなる。
あくまでもアナログディスクを置く台(センタースピンドルも含んで)とのセットでの考えである。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その2)

プロ用機器としてのCDプレーヤーは、ソニーのCDP5000、デンオンのDN3000Fが早かった。
CD登場の翌年1983年のことだ。

どちらもモデルも一部改良され、CDP5000S、DN3000FCとなり、
コンシューマー用として発売になった。
価格はどちらも180万円だった。

CDP5000はメカニズムは、同じプロ用機器であるデンオンとも、
他のコンシューマー用機器とも違っていた。

ディスクが回転し、ピックアップが移動しながらトレースしていくのだが、
ソニーはディスクが回転しながら移動する方式を採っていた。

つまりピックアップは固定された位置から動かずに、
逆転の発想でディスクが移動することでトレースを可能にしている。

アナログプレーヤーのピックアップと違い、
CDプレーヤーのピックアップにはサーボ技術が不可欠である。
ピックアップ部には複数のサーボがかけられているため、その分配線の数も、
モーターへの配線よりも多い。

配線の数の多いピックアップを動かすよりも、
配線の数の少ないディスク(モーター)を動かした方が合理的という考えもできる。
ソニーはそれをやっている。

CDP5000の音は、きわめて安定感があった。
この安定感だけでも、このCDプレーヤーが欲しい、と一瞬でも思った。

ただ180万円という価格と、通常のCDプレーヤーとは大きく異る形態に、手は出せなかった。
それでも、いまも記憶に残る音を聴かせてくれた。

頭で考えればディスクを移動させることは、なんだか不安定な要素になりそうな気もするのだが、
実際の音は違っていた。

ということは自走式プレーヤーも、そうなのかもしれない。

Date: 12月 18th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その1)

いまから30数年前、
当時ステレオサウンドの弟分にあたる月刊誌サウンドボーイの表紙に、
レコード盤の上におかれたフォルクスワーゲンのTYPE 2というプラモデルが使われていた。

この表紙だけでは、どういうことなのかすぐにはわからなかったけれど、
この製品はサウンドワゴンといって、ボディ下部にカートリッジ、
内部にアンプとスピーカーを備えている、いわば自走式のアナログプレーヤーだった。

通常のアナログプレーヤー(当時はレコードプレーヤー)は、
レコードを回転させる。
サウンドワゴンは静止したレコード盤面を、再生しながら走っていく。
確かサウンドボーイの表紙のサウンドワゴンは、
表紙として見映えするように、他のプラモデルのパーツを流用していたはずだ。

面白いモノが出た、と誰もが思ったはずだ。
手に入れた人も少なくないだろう。
手に入れなくとも、記憶に残っている人は多いはずだ。

サウンドワゴン。
本格的なオーディオ機器というわけではないこともあって、
関心を持続していたわけではなかった。
それに製造中止になった、ということも聞いていた。

それから、どのくらい経っただろうか、サウンドワゴンが復活した、というニュースをどこかで見た。
でも、それほど熱心に読んだわけでもなく、また忘れてしまっていた。

そのサウンドワゴンのことを思い出しているのは、ある記事を読んだからだ。
逆(回)転の発想! レコードの上を回って再生するスピーカー」というタイトルがつけられていた。

この記事で使われている写真は、レコードの上に四角い箱が乗っている。
記事を読んでもらえばすぐにわかるが、サウンドワゴンと同じモノの紹介である。

この記事の執筆者がどの世代の人なのか知らないが、
少なくともサウンドワゴンを知らない世代なのは間違いないだろう。
それに、過去に同じような物がなかったかを調べもしない人なのだろう。
編集部も、そのへんのチェックをせずに、おまかせで記事を依頼しているのだろう。

こういうことを、DeNAのキュレーションサイトが問題になった直後にやってしまう。
また「インターネットはくずだね」と思っている人を喜ばせることになる。

上記記事で紹介されているモノは45回転にも対応できる、とある。
サウンドワゴンは33 1/3回転のみであるという違いはある。

サウンドワゴンは名前を、レコードランナーに変えて現行製品である。

なつかしいな、とまず思った。
それから考えたのは、自走式のアナログプレーヤーの可能性についてである。

Date: 12月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

対称性(その8)

B&OのBeogram以前にもリニアトラッキングアーム搭載のプレーヤーはあった。
マランツのSLT12がそうだし、ナショナル(まだテクニクス・ブランドができる前)のFF253などがあった。
だが1976年ごろは、B&O以外のリニアトラッキングアームのプレーヤーが、
他にどういうモノがあったか、すぐに思い出せる人は少ない。

1977年になると日本からマカラが登場し、
海外ではルボックスからも登場した。
その後、国内からはヤマハ、ダイヤトーン、テクニクス、パイオニアなど、
海外からはハーマンカードン、ゴールドムンドなどからも出てきた。
さらにリニアトラッキングアーム単体も登場してきた。

そういう時代を見て(聴いて)感じるのは、リニアトラッキングアームは、
理想なのか、理想とまではいえなくとも理想にもっとも近いトーンアームの形態なのだろうか、
という疑問である。

レコードのカッティングではカッターヘッドは半径方向に直線に移動する。
リニアトラッキングアームも同じである。
その意味では、カッティング時と再生におけるトレース時の対称性はある、といえる。
一般的なカートリッジの針先が直線ではなく、円弧を描くトーンアームでは、
カッティング時との対称性は崩れてしまっている。

リニアトラッキングアームの問題点は、いくつかある。
これらすべてを解消した、としよう。
そうなったら、通常の円弧を描くトーンアームよりも圧倒的に優れている、となるのか。

カッターヘッドの針先とカートリッジの針先の軌跡。
この点だけで判断すれば、リニアトラッキングアームにまさるモノはない。

けれどカッターヘッドとカートリッジが、構造的に対称性がないといえる。
ウェストレックスのカッターヘッドとウェストレックスのカートリッジ10Aは、
構造的に対称性がある。
10Aというカートリッジならば、リニアトラッキングアームに装着することで、
カッティング時との対称性は非常に高い。

実際のカートリッジは10Aのような構造になっていない。
カッターヘッドと相似の構造とはいえない。
そういうカートリッジが、トーンアームの先に取りつけられている。

Date: 12月 6th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その29)

ここまで読まれて、ふと疑問に思われた方もいるのではないだろうか。
SMEの3012-R Specialをロングタイプ、ロングアーム、
3009-R、3010-Rをショートタイプ、ショートアームとしている。

3012-Rをロングとするならば、3009-R、3010-Rは標準長なのだからショートとするのは間違っている。
3012-Rを仮に標準長とするならば、3009-R、3010-Rはショートということになるが、
この場合は3012-Rをロングとするわけにはいかない。

このことはわかっていてロング、ショートと書いている。
3012-Rはやはりロングアームであって、これを標準長のアームとするわけにはいかない。
けれどカートリッジを取りつけてトーンアーム単体として見た場合、
やっぱり美しいと思い、この長さがあっての美しさということを考えると、
3009-R、3010-Rは、感覚的に私にとってはショートとなってしまう。

私にとってロングサイズが想像できないのは、SMEの3009 SeriesIIIぐらいである。
このトーンアームを見て、ロングが欲しい、とおもったことは一度もない。
3009 SeriesIIIは使えるカートリッジがやや制約を受けるけれど、SMEの傑作のひとつだと思っている。

フィデリティ・リサーチのNRT40もまた、
私と同じようにロングアームの美しさに惹かれた者によるプロトタイプのように思う。

NRT30でよかったはずである。
トーンアームもFR66SではなくFR64Sがすれば、ターンテーブルプラッターは30cmですむ。

それをわざわざ40cmにしてFR66Sにしているのは、
ロングアームのためのターンテーブルをなんとかしたかったから──、以外の理由があるだろうか。

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その28)

どうすればSMEの3012-R Specialを取りつけて、美しいプレーヤーシステムが出来上るのか。
しばらく考え続けていた時期がある。
現行製品だけでなく、過去の製品も含めて頭の中でイメージを思い浮べていた。

ガラードの301、トーレンスのTD124も候補として考えたこともある。

オーディオクラフトからAR110が1983年に出た。
AR110Lも同時に出た。型番末尾のLが表すようにロングアームがつく。

期待した。
オーディオクラフトの製品でもあるからだ。
でも新製品として、ステレオサウンド試聴室に届いたモデルには、
ある致命的な欠陥があった。
これでは安心して使えない、ということで候補からは脱落した。

そうこうしているうちに、トーレンスからReferenceよりも安価で、
しかもロングタイプのトーンアームが装着できるモデルが登場するというニュースが入ってきた。

Referenceには3012-R Specialは取りつけられない。
無理をすれば取りつけられるのだが、
Referenceは、その価格ゆえに候補として考えはなかった。

待ちに待ったPrestigeが試聴室に到着した。
見て、触れて、音を聴いて、欲しいとは思えなかった。

こんなことをくり返しているうちに気づいた。
ロングアームがトーンアームには、30cm口径のターンテーブルプラッターは似合わないのだ。
ロングアームそのものが16インチのディスクのためにあるということは、
結局ターンテーブルプラッターの径も16インチ(約40cm)前後なければ、
私が求めている美しいバランスは得られないのだ。

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その27)

ラックスから1977年にPD441というターンテーブルが出た。
この機種は、どういう位置づけだったのだろうか。

PD121の後継機ではなかった。
PD121は1979年にPD121Aにモデルチェンジしている。

PD441と同時にPD444も出た。
このモデルはトーンアームを二本装着できた。
通常の位置にショートタイプのトーンアームを、
左奥にロングタイプのトーンアームを取りつけられる。

PD441とPD444と同じデザイン。
PD444は1980年にバキューム機構を装備してPD555になっている。
PD441はしばらくして製造中止になり、PD300が出た。

PD121Aはこの時点でも現行機種だった。

ラックスのターンテーブルの中で、PD121だけは欲しい、と思った。
PD121にロングアーム、つまり3012-R Specialが取りつけられれば……、と思ったことがある。
現実にはPD121Aのデザインのまま、3012-R Specialが取りつけられるモデルはない。

ロングアームが取りつけられるターンテーブルが、トーレンスから1981年に出た。
TD226である。
型番からわかるように、トーンアームを二本装着できる。
ターンテーブルプラッター右側にショートタイプ、左側にロングタイプとなっていた。
そのために横幅は67.5cm。
この横幅はEMTの927Dstと同じ値である。

TD226は欲しいとは思わなかった。
トーンアームは一本でいいのだから……、と思っていたら、
1983年にTD127が登場した。
TD126がショートタイプ用で、TD127がロングタイプ用であった。

TD126の横幅は50.5cm、TD127は56.5cm。
6cmの差がある。
この6cmがどう捉えるか。

数値で判断するとそれほどの違いには思えないが、
実物を前にするとトーンアームベースがそうとうに横に広くなっている。
つまりターンテーブルプラッターとトーンアームのあいだが、
ショートタイプよりも当然ながら広く空いてしまう。

間が抜けたように感じてしまうのだ。

ラックスのPD121を、トーレンスのTD126からTD127のようにしたら、どうなるか。
PD121の横幅は47.2cm。これが6cm程度広くなる。
これにより印象はどう変るか──、容易に想像がつく。

Date: 12月 5th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その26)

SMEの3012-R Specialは、これまで見てきたトーンアームの中で、最も美しい。
ステレオサウンド 57号の広告、58号の記事に登場したときも、美しいと思ったし、
1981年春、無理して購入して自分のモノとして触れた3012-R Specialは、やっぱり美しかった。

音でいえばSMEのSeries Vのほうが優れている。
Series Vも欲しい、と思ったトーンアームである。

3012-R Specialが登場して35年が経った。
改めて美しいトーンアームだと思っている。

3012-Rも金メッキを施したGoldモデルと、
内部配線を銀にし、ナイフエッジを金属にしたProモデルが出た。

日本では金メッキというと、成金趣味と捉えられがちだが、
3012-R Goldの金メッキはしっとりした感じで、これはこれでいいと思う。

価格はずいぶんと高くなったけれど、3012-R Specialよりも音はいいように感じた。
金メッキはトーンアーム全体を適度にダンプしてくれるようで、
金という金属は、オーディオにとっても特別な金属であることを認識することになる。

とはいえ、いま欲しい、つまりもう一度欲しいと思うのは、3012-R Specialである。
Series Vでもなく、GoldでもProでもなく、スタンダードな3012-R Specialがいい。

3012-R Specialに続いて、3009-R、3010-Rも登場した。
パイプのサイズが違うだけのモデルが出てきて、
ますます3012-R Specialが美しいかを感じていた。

ロングアームが音がいい、という人もいれば、そうではない、という人もいる。
使用するカートリッジによっても、そのへんは変ってくるし、
音だけで選ぶならば他のトーンシームがある。

いま、この齢になって欲しいと思うのは3012-R Specialであり、
特にオルトフォンのSPUのGタイプのようにボリュウムのあるカートリッジの場合、
3012-R Special以上に美しさのバランスのとれたトーンアームは他にない。

けれど3012-R Specialう装着して美しいと思えるターンテーブルがない。
このことは以前にも書いたように、プレーヤーシステムとしてバランスがくずれてしまう。

Date: 12月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その25)

1978年のオーディオフェアには、国内メーカーからいくつかのアナログプレーヤー、
それもプロトタイプといえるモノが展示されていた。

といっても、当時は熊本住いだったから、オーディオ雑誌の記事で知っている程度でしかない。
後に製品化されたモノではマランツのTt1000。
1978年のオーディオフェアでは、Tt700の名で展示されていた。

ビクターはスーパーターンテーブルとして原盤検聴用に開発された、
上下二重ターンテーブル方式のモノを、
トリオはRP6197という型番の、
超重量級のプレーヤー(これが後のケンウッドL07Dにつながっているといえよう)、
テクニクスはカッティングレーサー用のSP02を展示していた。

私がいいな、と思ったのはフィデリティ・リサーチのNFT40というアナログプレーヤーだった。
トーンアームにはFR66Sがついている。

NFT40という型番は、おそらくNon Friction Air Push up Turntableから来ていて、
末尾の40は、40cm径のターンテーブルプラッターを示している、と思われる。

だからロングタイプのFR66Sが、NFT40には取り付けられて展示されていた。

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」の巻末の記事で、
NFT40のことを知った。知ったといっても、
さほど大きくないモノクロのぼんやりした写真から得られたくらいでしかない。

ターンテーブルプラッターは、40cm径とはいえ、
あくまでも30cmLPのためのプレーヤーを意識してのことだろうが、
段差がついて形状となっているように見える。

レコードのかけかえはやりやすそうである。

NFT40は、世に登場することはなかった。
この試作品は、その後、どうなったのだろうか。
どんな音がしたのだろうか。

まったく情報はない。
そんなプレーヤーのことをいまごろ思い出しているのは、
SMEの3012-R Specialのことを、どうしても忘れられないからでもある。

Date: 11月 20th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その24)

Beogram 8000はデザインが優れていたために損をした──、
そう書いた。

損をしたのは、B&Oなのだろうか。
B&Oは、それまでのことから各国でどういう扱いをされるのかは在る程度予測していたはず。
Beogram 8000のダイレクトドライヴの方式は、あまり注目されないことはわかっていたと思う。

だから、損をしたのはB&Oというより、われわれだと思う。
われわれとはオーディオ雑誌の編集者、オーディオ評論家を含むオーディオマニアである。

B&Oはデザインの優れたオーディオをつくる会社、というバイアスが、
われわれにあったことが、Beogram 8000の内側に関心をもつことをしなかった。

いまもアナログプレーヤーについては、
その21)で書いたような、議論になっていない議論のようなことが行われている。
本質から外れての、議論になっていない議論のようなことにしか思えないことが少なくない。

そういうところでB&Oのダイレクトドライヴ方式が話題になることはない。

もしアナログプレーヤーの開発にかかわることができるのならば、
私は、B&Oと同じく電力計の原理によるダイレクトドライヴを推す。
Beogram 8000の構造とは違う構造をとる。

Date: 11月 20th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その23)

「これはデザインで損している」とか「デザインで得している」とか、
そういった評価みたいなことを聞くことがある。

こんなことをいう人は、デザインを付加価値としてしか捉えていない。
だから、損している、得している、といったことをいうのだろう。

B&OのBeogram 8000は、そんな次元の話ではなく、
デザインで損している、といえる。
デザインが悪いからでもなく、デザインを付加価値と見てのことでもない。

デザインが優れていることで、デザインのことでしか語られないことがある。

B&Oは新製品を毎年のように出す会社ではなかった。
Beogram 8000の前のモデル、Beogram 2402、Beogram 4004はベルトドライヴだった。
Beogram 2402は1980年の新製品である。

Beogramシリーズはデザインとリニアトラッキングアーム、それにフルオートであること、
この三つのことがまず語られる。

その内側に盛り込まれている技術については、あまり語られることはない。
Beogram 8000がダイレクトドライヴになったことは知っていても、
一般的なダイレクトドライヴと同じ方式だと思っている人が大半かもしれない。

しかもB&Oは、あまり技術的なことをことこまかに語ることはしない。
Beogram 8000が「デザインで損している」とは、そういう意味である。

Beogram 8000は1981年の新製品である。
ダイレクトドライヴ方式についての音質面での追求が、
各メーカーでなされている時期であり、それぞれに工夫があった。

これらについてはオーディオ雑誌で取り上げられていたのに、
ダイレクトドライヴの技術的な考察からのBeogram 8000の記事はなかった。

Date: 11月 18th, 2016
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その22)

ダイレクトドライヴは、なにもセンタードライヴである必要はない。
その18)で書いたように、
ターンテーブルプラッターというマスをもつものを廻すには、
中心に力を加えるよりも外周に力を加えた方が理に適っている、はず。

外周に……、ということになると、ベルトドライヴやアイドラードライヴということにななる。
ダイレクトドライヴで外周(最外周でなくとも、外周より)で力を加える方式が、
ダイレクトドライヴのひとつの理想形といえるのではないだろうか。

ずいぶん前に、そんなことを考えた。
とはいっても具体的な方式は考えつかなかった。

どのぐらいしてだろうか、一年、二年くらい経ってのことだ、
電力計の円盤が回転しているのを見て、これはアナログプレーヤーに使えるのでは、と。

使用している電力に応じて回転するスピードは変化する。
それになめらかに回転している。

あの当時、インターネットがあれば、すぐさま「電力計 原理」と検索するところだが、
そんなものはなかった。
すぐに電力計の原理について知ることはできなかった。

それからまた一年か二年経ったころに、あるアナログプレーヤーが登場した。
電力計と同じ原理でターンテーブルを回転させていた。

私が思いつくのだから、メーカーのエンジニアも思いつく。
彼らは原理を知っている。そしてアナログプレーヤーに応用している。

B&Oのダイレクトドライヴ型プレーヤー、Beogram 8000がそうである。
それまでベルトドライヴだったB&Oが出してきたダイレクトドライヴは、センタードライヴではなかった。

Date: 10月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その7)

電子ボリュウムの操作性の悪さ、と書いているので、
もしかしたら電子ボリュウムすべてが操作性が悪いと受け取られたかもしれない。

そんなことはない。
電子ボリュウムでも操作性に不満を感じないモノは、当り前に存在している。
すべての電子ボリュウム採用のオーディオ機器に触れているわけではないから、
どちらが多いのかを正確には把握していないが、問題のないモノの方が多いのではないだろうか。

電子ボリュウムの操作性は、一般的なポテンショメーターよりも劣るわけではない。
むしろ良くすることが可能な技術であるはずだ。
にも関わらず、操作性の悪さを残したままのモノが存在しているということ。

そのひとつがテクニクスのSU-R1であり、
しかもテクニクスのスタッフが、
レコードかけかえの作法をきちんを行っていたから、露呈したわけである。

私がテクニクスのスタッフが、仮に入力セレクターを使っていたら、何も書かなかった。
入力セレクターの切替えでやることを批判も否定もしない。
その人の考え方次第であるからだ。

瀬川先生は流れるような動作で、ボリュウム操作までを行われる。
対照的に語られるのが岩崎先生のレコードのかけかただ。

カートリッジを盤面数cm上から、文字通り落とされる。
だから、場合によってはカートリッジがバウンドすることもあった、と、
複数の人から聞いている。

けれど岩崎先生は、瀬川先生と同じように器用な指さばきで、
レコードの任意の位置に針をていねいに降ろす技術をもっていたうえでの、
そういうレコードのかけかたをされていたわけである。

作法を身につけずに、豪快といえるレコードのかけかたをされていたわけではない。

今回、この項を書いていると、
ほんとうに忘れられつつあることが見えてきたような気がする。

Date: 10月 7th, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その6)

レコードのかけかえごとのボリュウム操作は、
こまめにボリュウムを変えない人にとっては、非合理なこととうつるはずだ。

ボリュウム操作にこだわっていることを、
瀬川先生のマネをしていると捉えられるかもしれない。

けれど私くらいの世代(上の世代)にとって、
それはレコードをかける作法といえるのであって、身につけておくべきことと捉えていた。

オーディオは、レコードのかけかえは、
個人のリスニングルームという、いわは密室内でのことだから、
レコードのかけかえごとにボリュウム操作をするしないは、
それによって誰かに迷惑をかけるわけでもないし、誰かを不愉快にさせるわけでもない。

だから合理的だということで入力セレクターの切り替えで、
針の導入音を鳴らさないようにするのも、ボリュウムの上げ下げで鳴らさないようにするのも、
どちらをとっても自由である。

ただ私は、オーディオショウという場で、
ボリュウム操作性の悪いSU-R1を使いながらも、
入力セレクターの切替えではなく、
ボリュウム操作を選択していたテクニクスのスタッフに好感を持ったということである。

それから常にレコードのかけかえごとにボリュウム操作をするわけではない。
たとえばカートリッジ、トーンアームの調整をする際は、
ボリュウムのツマミはまったくいじらない。

トーンアームの高さ、針圧、インサイドフォースキャンセル量の調整では、
一枚のレコードに固定して、ターンテーブルは廻したままで、
針圧を少し変化させては針を降ろす。

入力セレクターも使わないから、導入音がする。
この導入音も調整時には判断要素として重要なことのひとつである。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(忘れられつつあること・その5)

テクニクスの事業推進室長をつとめる小川理子氏は、
オーディオ雑誌やウェブサイト、テレビなどに、テクニクスの顔として登場されている。

いわばテクニクス・ブランドのプロデューサー的役割の人のように見受けられる。
このことはいいことだと、インターナショナルオーディオショウの前までは思っていた。
けれどSU-R1のボリュウムの操作性の悪さを見ていて、
この人の役割はいったいなんなのだろうか、と疑問に思っている。

小川理子氏はテクニクスの、現在の製品を使っているのだろうか。
使っていたとしても、アナログディスクは聴かれているのか。
聴かれているとしたら、どういう聴き方なのか。

SU-R1のボリュウムに関しては、自分で使ってみれば、すぐにでも改善したいと思うはず。
それは試作品の段階で気づくべきことであったし、
気づけなかったとしても、発売から一年以上も経っていて、そのままということは、
特に問題だとはしていないのか。

オーディオ雑誌は、そのことにインタヴューしたのだろうか。

疑問に感じることは、オーディオ評論家にもある。
試作品の段階で、間違いなく試聴している。
製品となってからも試聴している。
にも関わらず、SU-R1のボリュウムについて指摘した人は誰もいないのか。

テクニクスがSL1200を復活させていなければ、何も書かずにおこうとも思うが、
アナログディスク再生も、テクニクスはやっていく。
SU-R1のボリュウムの操作性を、どうするつもりなのだろうか。

もうそんなことはどうでもいいことと考えているのだろうか。